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「EURO 2020 チーム別まとめ」~ハンガリー代表編~

目次

チーム情報

監督:マルコ・ロッシ
FIFAランキング:37位
EURO2016⇒ベスト16
W杯2018⇒予選敗退

招集メンバー

GK
1 ペーテル・グラーチ(ライプツィヒ/ドイツ)
12 デーネシュ・ディブス(フェレンツヴァーロシュ)
22 アーダーム・ボグダーン(フェレンツヴァーロシュ)

DF
21 エンドレ・ボトカ(フェレンツヴァーロシュ)
14 ゲルゲー・ロブレンチチュ(フェレンツヴァーロシュ)
26 ベンデグーズ・ボラ(フェヘールヴァール)
5 アッティア・フィオラ(フェヘールヴァール)
2 アーダーム・ラング(オモニア・ニコシア/キプロス)
4 アッティラ・サライ(フェネルバフチェ/トルコ)
3 アーコシュ・ケチケシュ(ルガーノ/スイス)
6 ヴィリ・オルバン(ライプツィヒ/ドイツ)

MF
7 ロイク・ネゴ(フェヘールヴァール)
10 タマーシュ・チェリ(メズークヴェシュド・ジョーリ)
16 ダーニエル・ガズダグ(ブダペスト・ホンヴェード)
13 アンドラーシュ・シェーファー(ドゥナイスカー・ストレダ/スロバキア)
11 フィリプ・ホレンデル(パルチザン/セルビア)
15 ラースロー・クレインヘイスレル(NKオシエク/クロアチア)
8 アーダーム・ナジ(ブリストル・シティ/イングランド)

FW
9 アーダーム・サライ(マインツ/ドイツ)
20 ロランド・サライ(フライブルク/ドイツ)
19 ケヴィン・ヴァルガ(カスムパシャ/トルコ)
24 サボルチ・ショーン(ダラス/アメリカ)
17 ロランド・ヴァルガ(MTKブダペストFC)
25 ヤーノシュ・ハーン(パクシュ)
23 ネマニャ・ニコリッチ(フェヘールヴァール)

各試合振り返り

GS第1節 ポルトガル戦

画像1

■幸運なゴールで均衡が一変

 コロナ禍に世界が襲われてからおよそ1年3か月。我々は満員のスタジアムを見なくなってからことに1年以上の月日が経った。だがこの日、本拠地のプスカシュ・アレナにはハンガリーを応援する観客がスタジアムを埋め尽くすことになる。文字通り圧巻の光景だ。

 そんな観客の声援を後押しとするかのように、ハンガリーは積極的なスタンスでポルトガルと対峙する。ハンガリーの5-3-2はWBの手前をどう閉じるかが構造的な問題となる。ここまでのいくつかのチームがそうしてきたように、大外を捨ててエリアに引きこもる選択もあり得たはず。だが、ハンガリーはIHが高い位置までチェックに出ていくことにより、ポルトガルの前進を寸断。中央をケアしつつサイドでボールを食い止めるやり方でミドルゾーンで踏ん張る。

 ポルトガルはこれにだいぶ手を焼いた。ボールこそ問題なく握れるものの、ビルドアップはU字型になってしまい、なかなか前進できない。個人個人のオフザボールの質は十分なのだが、どうも組み合わさらない。ベルナルドの縦横無尽の動きもラファエル・ゲレーロの斜めのランも他の選手とつながらない。

 裏抜け頼みの単調な攻撃に終始するポルトガル。もう1つ可能性を感じたのは左右のクロス。特にCHの片方(ダニーロはそういえばRSBもできるよね)がサポートに出張する右サイドからのクロスはチャンスがあった。エリア内のジョッタとロナウドのコンビはクロスに合わせる能力が抜群。ジョッタはやや硬さが目立つ初戦だったが、入り込むところまでできていた。したがって、クロスまで行ければポルトガルにチャンスができる形にはなった。決まらなかったけど。

 ハンガリーの攻撃はポストが主体。特に9番のアダム・サライにボールを集める。カウンターの際に多少遠回りになってもまず彼を探す場面が目立っていたので、恐らく相当頼られているのではないかなと思う。確かにフィジカルは強靭だった。

 後半はディアスやセメドが前半以上に前がかりになるポルトガルの裏を取り、ハンガリーがカウンターから主導権を握る場面すらあったほど。対人守備で強みのあるポルトガルをファウルせざる形に追い込んだり、オフサイドとはいえ途中交代のシェーンがネットを揺らし、あわやという場面を作っていた。

 だが、勝利の女神がこの日微笑んだのはポルトガル。クロスもシュートも相手に当たって方向が変わるという非常にラッキー要素が強い得点で均衡を破る。そうなるとここからはロナウド劇場。隙ができてきたハンガリーの守備陣に途中交代のサンチェス⇒アンドレ・シウバのラインでPKを奪取。これをロナウドが決めると、後半追加タイムにはおかわり。

 80分までの均衡に似つかわしくない3点差という結果で決着。ハンガリーのサポーターたちは悔しさを噛み締めつつ、善戦した代表選手たちをバイキングクラップでたたえていた。

試合結果
ハンガリー 0-3 ポルトガル
プスカシュ・アレナ
【得点者】
POR:84′ ゲレーロ, 87′(PK) 90+2′ ロナウド
主審:ジュネイト・チャキル

GS第2節 フランス戦

画像2

■下さなかったファイティングポーズ

 80分まで粘ったものの、難敵のポルトガルに屈してしまったハンガリー。1試合目同様に満員で埋まったプスカシュ・アレナで迎えるのはW杯王者のフランスである。

 ポルトガル戦でも立ち上がりから引きこもることなく、勇猛果敢に前に出ていったハンガリー。WBは今節も高い位置から相手を追い回す。ハンガリーが狙いを定めたのはフランスの右サイド。このサイドの裏を積極的に狙うことでハンガリーはボール奪取から素早く縦に。フランスは早々に右のSBのパヴァールが警告を受けると、このサイドでは劣勢になる。ハンガリーが付け入るスキは十分にあった。

 立ち上がりは面食らったフランスだが、10分踏ん張ると徐々にペースを取り戻す。5-3-2のブロックに対して、WBの手前のスペースを積極的に使う。そして3センターの幅を広げてライン間に楔を入れるための駆け引きをする。

一度前線にボールが入るとさすがの貫禄。ハンガリーがWBを高い位置まであげる守備をする分、ムバッペ、ベンゼマ、グリーズマンと同人数で対応しなければいけない機会が増えてしまう。

 特に斜めの動きを駆使することで受け渡しの動きを増やす。特にグリーズマンがオフザボールでギャップをサポートするのが上手かった。ベンゼマもムバッペもこういう動きは得意。前線勝負に持ち込めればやはり力の差は感じる内容だった。

 サイドでもプレスでだいぶ足を使わされたハンガリー。おそらく、終盤まで足は持たないので何とか前半に点を取りたかったはず。それが実ったのが前半追加タイム。立ち上がりから狙ったフランスの右サイドをロングカウンターから攻略したカウンターだった。

 パヴァール、ヴァランの対応が軽くなってしまったフランスに対して、最後に得点を決めたのはWBのフィオラ。単騎でロングカウンターを完結できる力がないハンガリーにとってはWBが高い位置でカウンターに参加できるかが重要。高い位置を取り続け、ファイティングポーズを下ろさなかったハンガリーの粘りが先制点につながった。

 後半も前半と同じく攻め続けるフランス。前半の自由度がさらに上がったように見えたし、ポグバはよりサイドに流れるようになった。しかし、ハンガリーは後半もファイティングポーズを下げない。いざとなれば狙うのはフランスの右。フランスは業を煮やしたキンペンベがこちらまで飛んでくることもしばしばだった。

 そんな中で次に点を取ったのはフランス。ロリスのパントキックから相手を出し抜いたムバッペからの後方支援のグリーズマンがゴール。前線でシンプル勝負という機会を得ることができたフランスが質の高さで同点に追いつく。

 このまま押し切りたいフランス。ジルー、デンベレなど押し込んだ前提で機能するメンバーを次々と送り込む。しかし、前線の機動力が下がったことでハンガリーが最も嫌な斜めの動きが減少。さらにはプレスにも出にくいメンツなので、普通に保持ができるハンガリーに最後10分で体力差を利かせることができず。

 最後まで粘り切ったハンガリー。90分間下ろさなかったファイティングポーズが実り、満員のスタンドと共に勝ち点1を祝うことができた。

試合結果
ハンガリー 1-1 フランス
プスカシュ・アレナ
【得点者】
HUN:45+2′ フィオラ
FRA:66′ グリーズマン
主審:マイケル・オリバー

GS第3節 ドイツ戦

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■スクランブルドイツに捉えられたグッドルーザー

 ドイツは引き分け以上でグループステージ突破が確定。死の組とされたグループFの突破まであと一歩である。この日のドイツも平常運転。3バックがベースだが、ギンターにSBの役割を与えることで右サイドを押し上げる。

 どちらかと言えば変更を施したのは勝たなければいけないハンガリーの方。これまでのハンガリーはWBが守備時に高い位置を取ることでラインを下げずに対応することが特徴だった。だが、この日は純粋な5バックで裏を簡単に取られないようにしながら最終ラインをコントロール。WBが出ていくときは、CBとWBの距離感を大事にしながらなるべく隙を出さないようにする。

 左右満遍なく攻めるドイツだが、決め手に欠ける状況が続く。そんな中で先制点を奪ったのはなんとハンガリー。エリアに向けたクロスで出し抜いたサライが貴重な先制点。ドイツはゴセンスがラインを下げた影響でクロッサーがフリーに。リュディガーが出ていくも間に合わなかった。

 得点後の雨もハンガリーにとっては恵みだろう。明らかにドイツの崩しがワンランク停滞した。ハンガリーのサポーターの席だけ雨が降られないで騒いでいる様子はまるで前半の象徴だった。

 雨が止んだ後半のドイツは右サイドに狙いを絞る。狭いスペースでの駆け引きができるハフェルツを軸に右サイドに奥行きを作ることでハンガリーをサイドから抉る。逆サイドでスタートしたサネも右に集結。ただしこちらは大外で相手を引き付けるフリ。本命は間でも裏でも受けられるハフェルツにいい形で渡すことだ。

 攻め立てるドイツはその勢いで同点に。右サイドからのクロスに飛び出したグラーチがはじけず。最後はハフェルツが押し込んだ。ここまで積極的な飛び出しでチームを救ってきたグラーチだったが、この試合では痛恨のミス。大きなミスとなった。

 だが直後にハンガリーが再度勝ち越し。意識が前に前に行ったドイツの右サイドをあっさりと裏を取られる。右サイドで最後に体を投げ出していたのがサネというのは結構ハードモードである。

 再び敗退の危機に晒されたドイツ。左右にさらにガンガン攻撃のタレントを投入し、サイドの偏重を解消し、再び左右両方から攻める。そんな中で結果を出したのが左サイド。左のWBというわけわからないポジションで投入されたムジアラがサイドからクロスを入れたのが決勝点に。最後に決めたのはほぼフェライニの役割で投入されたゴレツカだった。

 バランスぐっちゃぐちゃで残りの時間を過ごさなければいけないドイツ。ムジアラ、クロース、ミュラーのトライアングルで根性で左サイドで時間を鬼のように空費していた。ハンガリーも最後の最後まで食い下がったがここまで。ドイツ、フランスの両雄に勝ち点をもぎ取ったハンガリーの旅路はここで終わり。だが、グループステージを最も盛り上げたチームの1つであることは間違いないだろう。

試合結果
ドイツ 2-2 ハンガリー
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
GER:66′ ハフェルツ, 84′ ゴレツカ
HUN:11′ アダム・サライ, 68′ シェーファー
主審:セルゲイ・カラゼフ

大会総括

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■大会屈指のグッドルーザー

 ドイツ、フランス、ポルトガルというクソみたいな組に放り込まれてしまったハンガリー。それでも満員のプスカシュ・アレナでの大歓声を背にアンダードッグとして死のグループを搔きまわす役割は十分に達成。大いにグループFを暴れまわった。

 ポルトガルとの第1節は終わってみれば3-0の完敗だったものの、ポルトガルにボールを持たせつつ5バックでブロックを組む。サイドのスペースは3センターがスライドしながらケア。間に合わなければWBが高い位置に出ていく。なるべく高い位置から止めつつ、カウンターに専念する。

 U字ポゼッション以外に打ち手を見いだせないポルトガルに対して、ハンガリーがカウンターから活路を見出す場面も多く、むしろ主導権を握っているといってもいい時間もあった。オフサイドとはいえシェーンがネットを揺らしたシーンでは冷や汗をかいたポルトガルファンも多いはずだ。

 しかし、80分以降に守備が決壊。そこからあれよあれよという間に失点を重ねてしまった。それでも大歓声は健闘した彼らに大きな拍手を送った。

 その後の強敵相手にもハンガリーは積極的な姿勢を崩すことはなかった。圧巻だったのはフランス戦。強力な個を擁するフランスの攻撃に対してぐらつきながらも、フランスが空けやすいサイドの裏を狙って反撃。特に早々に警告を受けたパヴァールのサイドは苦しい対応が続いた。積極的なWBの高いポジション取りは前半終了間際の先制点に効いてきたといえる。その後は追いつかれてしまったものの、歴史的な勝ち点1を獲得した。

 最終節のドイツ戦は真骨頂。勝てば突破の状況の中で、前節よりも低めのライン設定でドイツを引き込み、ロングカウンターの機会を待つ。その結果、エースのサライの先制点が入り、ドイツを慌てさせることに。最後の最後はゴレツカのゴールで引き分けまで追いつかれてしまったが、一度追いつかれても即やり返すなど最後までドイツにかみつき続けた。

 エースのサライ、積極的に攻撃に絡むWB、そして根性を見せたバックス。死のグループで負けたのは唯一ポルトガルだけ。フランスとドイツという新旧ワールドカップ王者に対して、一歩も引かずに渡り合う姿にはプスカシュ・アレナに集ったサポーターはもちろん、世界中のサッカーファンからも拍手喝采であった。

頑張っていた選手⇒アダム・サライ
 少しカウンターのスピードが落ちたとしてもまずここを見て預けていたので、信頼度は相当高いのだろう。ドイツ戦では実際にそれに応え、少ない機会を得点につなげるストライカーとして大国を脅かした。

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