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「Catch up EURO 2020」~Match day 3 Group D-F~ 2021.6.22-23

第2節後半はこちら。

第3節前半はこちら。

目次

⑦【グループD】チェコ×イングランド

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■宿題は据え置き

 第2節が終わった時点では突破をかけたガチンコの直接対決のはずだった。だが、他グループの結果で一変。共に突破を決めている両者にとってはただの通過順位決定戦ということになった。

 それでもイングランドはキッカケが欲しいところだろう。特にこの試合ではマウントが不在。前と後ろのつなぎ役として代替が難しい彼の欠場でイングランドがどう動くのかは注目ポイントであった。

 その答えは前線をひたすら下ろしまくること。ケインもスターリングもサカもグリーリッシュもとにかくボールを受けに来る。全員がボールを運べるタイプではあるから問題ないっちゃないのかもしれないけど、バランスとしてはあんまりよくないし、即興性も否めない。

 そんな中でクラブでやったことが活きていた場面も散見された。例えば、開始直後のスターリングをお膳立てしたケインの前線へのパス、マグワイアの持ちあがりからの楔など。個人の良さすら見られなかった第1節、第2節よりはよかったかもしれない。

 途中交代の選手の中で際立っていたのはヘンダーソン。攻守のバランスのとり方とサイドの顔の出し方が絶妙で、周りの人と調和したプレーが見られていた。個人的には彼がいるイングランドの方が好き。

 イングランドがバリバリよかったわけでもないが、チェコもチャンス創出に苦しんだ。序盤から右サイド偏重でサイド攻略に挑む。中心となっているのはダリダで、トップ下の彼が自在に両サイドを使うことで相手を押し下げたいのだろう。

 気になるのはソーチェクのエリア内での攻め上がりのチームの武器としてあまり共有できていないこと。この日のようにシック1人でなんとかするのが難しいCBが相手の時は彼がエリア内に入って、シックを助けたいところ。ただ、チームとしてあんまりソーチェクを押し上げる仕組みができていない気がする。それさえできれば、より強固な守備ブロックが待ち受けているノックアウトラウンドでのサイド攻撃がより武器として磨きがかかるだろう。次の相手のオランダとかすごく効きそうだけど。

 イングランドは人の組み合わせのケミストリーが、チェコはレギュラー選手を活かす仕組みが物足りない一戦。ノックアウトラウンドに持ち越した宿題を抱えた両チームはトーナメントでインパクトを残すことができるだろうか。

試合結果
チェコ 0-1 イングランド
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
ENG:12′ スターリング
主審:アルトゥール・ディアス

⑧【グループD】クロアチア×スコットランド

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■低調な決戦をバロンドーラーが片付ける

 他のグループの結果を受けてこのカードは両チームにとって勝てば突破、引き分け以下なら共倒れという非常にわかりやすいデスマッチになった。だが、残念なことにそのヒリヒリ感が伝わってくるほど緊迫感がある試合とは言えなかったのが正直なところである。

 ボールを握ったのはクロアチア。しかし、ビルドアップの重心は全体的に下がりすぎており、前進がままならない。元々このチームはモドリッチにおんぶにだっこに肩車であった。しかしながら、今大会ではモドリッチに組み立てや縦パスでの前進、守備での献身を要求するのは序の口。攻撃を完結させるためには、オフザボールの動きがほぼ皆無な前線にはスルーパスによってモドリッチが次のプレーを導くパスを出すことが求められていた。

 それくらいクロアチアの前線には展開を前に進めようという気概がなかった。ひとたびその気になれば、先制点のような得点を挙げることが出来るのに、モドリッチに促されなければ動かないのだからもったいないとしか言いようがない。

 スコットランドもスコットランドである。先の先制点のシーンでは5バックにも関わらずエリア内の守備が非常にルーズ。ボールホルダーにトラップする余裕がある間合いまでしか詰められないのならば、失点につながるのは当然としか言いようがない。

 攻撃も相変わらずの左偏重。アダムスがサイドに流れて引き出し、ロバートソンがクロスを上げるところまではいいのだが、その先がない。予選では得点源となったマッギンはエリアに入るタイミングを掴めていないよう。得点シーンはこのお決まりのクロスが流れた形からだったが、チャンスメイクという部分でのじり貧さは相変わらずである。

 むしろ、チャンスがあったのはクロアチアのビルドアップ。重たいのはモドリッチより前だけでなく、後ろも同じ。マイナスパスにプレスをかければチャンスになる機会は十分。クロアチアもスコットランドに手を差し伸べていたかのような試合だった。

 そんな低調な内容の試合に決着をつけたのは、この試合においてただ一人別格だったモドリッチ。コバチッチの落としを受けてミドルシュートを叩き込むと、続くCKではペリシッチの得点をアシスト。クラブでも代表でも負荷の高いプレーを35歳になっても続けるモドリッチが重たいクロアチアを細い両腕で引き上げ、決勝トーナメントになんとか間に合わせた。

試合結果
クロアチア 3-1 スコットランド
ハンプデン・パーク
【得点者】
CRO:17′ ヴラシッチ, 62′ モドリッチ, 77′ ペリシッチ
SCO:42′ マクレガー
主審:アンドレス・ラパッリーニ

⑨【グループE】スウェーデン×ポーランド

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■大エースたる所以は見られたが…

 勝ち点4を稼ぎすでに突破が決まっている首位のスウェーデン。迎えるのは最下位ながらも勝てば自力突破が可能であるポーランドである。

 勝たなければいけないポーランドの立ち上がりは慎重だった。ゆったりとしたボール回し、そしてレバンドフスキ目掛けたロングボール、そしてそのこぼれ球を押し上げた2列目が拾うという泥臭いやり方だった。

 しかし、その慎重な姿勢は早々に崩される。イサクのポストからワンツー気味にシュートコースを作ったフォルスベリが先制パンチ。スウェーデンが先制したのは開始わずか2分のことだった。

 というわけでスウェーデンは早速得意な4-4-2での塹壕戦をスタート。ポーランドはスロバキアやスペインに比べば前線のクロスに合わせる能力は高かった。それでもスウェーデンの牙城を崩すのはハードモード。時折、アクシデンタルにカウンターのチャンスがポーランドに転がってくることもあったのだが、スムーズに縦に急ぐスキルが足りていない様子だった。

 レバンドフスキをうまく使えないポーランドを尻目に、イサクを使ってラインの駆け引きをするのは問題なくできていたスウェーデン。機会は少ないが、DFラインとの勝負で優勢に立つことは多かった。

 ビハインドのポーランドは後半に3-1-4-2に変更。前線の受け手とプレスの強化を行うことで、より前の圧力を高めるやり方である。しかし、このやり方は初戦のスロバキア戦で見せた被カウンター対応がスカスカの形。当然、スウェーデンにカウンターの機会を与えるようになる。

 このきっかけを活かしたのは途中出場のクルゼフスキ。コロナウイルスで合流が遅れたメジャー大会の初舞台において、見事なカウンターを発動。フィジカルを活かしてフォルスベリのお膳立てをした。

 しかし、カウンターを完結させる個の力なら大エースのレバンドフスキも負けていない。強引な1点目は2人のDFの間からGKの届かないところに叩きこむミラクルショット。ポーランドは選手交代でWBにアタッカーを動員。突破力を強化すると、クロスを再びレバンドフスキが叩きこみ同点に追いついた。文字通りの大エース。

 だが、最後に試合を決めたのはスウェーデンの方。再びカウンターからのクルゼフスキ。今度は後ろから走りこむクラーソンを使い、後半追加タイムに勝ち越し。奇跡の逆転を願うポーランドサポーターを地獄に叩き落した。

 レバンドフスキの孤軍奮闘が目立った3戦だったが、最終節に敗れてポーランドは敗退。スウェーデンの強固なDFブロックとフォルスベリ、クルゼフスキの2人のテクニシャンにグループステージ突破を断たれてしまった。

試合結果
スウェーデン 3-2 ポーランド
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
SWE:2′ 59′ フォルスベリ, 90+4′  クラーソン
POL:61′ 84′ レバンドフスキ
主審:マイケル・オリバー

⑩【グループE】スロバキア×スペイン

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■女神が微笑んだゴールラッシュ

 未勝利で突破が決まらないまま最終節を迎えてしまったスペイン。立ちはだかる圧倒的な得点力不足というお題。これに対してどのように解決策を見出すか。これが自分たちより上にいるスロバキアを退けるためのキーになるのはだれの目から見ても明らかだ。

 無論、得点までの過程はそこまで悪いわけではない。この試合では左の大外を起点としてモラタや右のサラビアが入り込む動きでゴールに迫る。左の大外を取る役割をWGのモレノにやらせるのはちょっと不思議だったけど、相変わらずPA内の動き出しまでは元気であることを証明していた。

 中盤に入ったブスケッツもタクト役を十分にこなしていたしコンディションは充分。IHは無駄に下がらず高い位置で取る分攻撃に厚みは出ていた。この部分はややスロバキアのケアは甘かった。自陣に引く割りには間に通されるし、ホルダーを簡単に離す場面も見られた。

 ただ、スペインが決定機に頭を抱える状況は変わらず。ややアクシデンタルな形で得られたPKはドゥブラーフカがストップ。モラタはまたしても頭を抱えることになった。ちなみにスペインはこれで5連続PK失敗らしい。

 しかし、得点力不足は意外な形で解決することに。シャトカのパスミスで得たシュート機会をサラビアがポストに当てると、この処理をドゥブラーフカが誤りオウンゴールに。痛恨の処理ミスでスペインに先行を許す。

 こうなると勢いが出るスペイン。WGの左右を入れ替えたスペインはモレノが右に抜け出すとセットプレーで残っていたラポルトにアシスト。前半のうちに追加点を得る。

 後半のスロバキアは中盤のチェイシングを強化し、奪回後、即座にCB間の前線の裏にパスを出すなど狙いはだいぶ整理された印象だった。しかし、点が入ったのはスペイン。左で作って右で決めるというこの日のお決まりの流れから3点目を奪取。これで勝負あり。やや女神がほほ笑んだ感もあったが、今大会最大の得点差で得点力不足のイメージを払拭したスペインがノックアウトラウンド進出を決めていた。

試合結果
スロバキア 0-5 スペイン
エスタディオ・ラ・カルトゥーハ
【得点者】
ESP:30′ ドゥブラーフカ(OG), 45+3′ ラポルト, 56′ サラビア, 67′ フェラン・トーレス, 71′ クツカ(OG)
主審:ビョルン・カイペルス

⑪【グループF】ドイツ×ハンガリー

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■スクランブルドイツに捉えられたグッドルーザー

 ドイツは引き分け以上でグループステージ突破が確定。死の組とされたグループFの突破まであと一歩である。この日のドイツも平常運転。3バックがベースだが、ギンターにSBの役割を与えることで右サイドを押し上げる。

 どちらかと言えば変更を施したのは勝たなければいけないハンガリーの方。これまでのハンガリーはWBが守備時に高い位置を取ることでラインを下げずに対応することが特徴だった。だが、この日は純粋な5バックで裏を簡単に取られないようにしながら最終ラインをコントロール。WBが出ていくときは、CBとWBの距離感を大事にしながらなるべく隙を出さないようにする。

 左右満遍なく攻めるドイツだが、決め手に欠ける状況が続く。そんな中で先制点を奪ったのはなんとハンガリー。エリアに向けたクロスで出し抜いたサライが貴重な先制点。ドイツはゴセンスがラインを下げた影響でクロッサーがフリーに。リュディガーが出ていくも間に合わなかった。

 得点後の雨もハンガリーにとっては恵みだろう。明らかにドイツの崩しがワンランク停滞した。ハンガリーのサポーターの席だけ雨が降られないで騒いでいる様子はまるで前半の象徴だった。

 雨が止んだ後半のドイツは右サイドに狙いを絞る。狭いスペースでの駆け引きができるハフェルツを軸に右サイドに奥行きを作ることでハンガリーをサイドから抉る。逆サイドでスタートしたサネも右に集結。ただしこちらは大外で相手を引き付けるフリ。本命は間でも裏でも受けられるハフェルツにいい形で渡すことだ。

 攻め立てるドイツはその勢いで同点に。右サイドからのクロスに飛び出したグラーチがはじけず。最後はハフェルツが押し込んだ。ここまで積極的な飛び出しでチームを救ってきたグラーチだったが、この試合では痛恨のミス。大きなミスとなった。

 だが直後にハンガリーが再度勝ち越し。意識が前に前に行ったドイツの右サイドをあっさりと裏を取られる。右サイドで最後に体を投げ出していたのがサネというのは結構ハードモードである。

 再び敗退の危機に晒されたドイツ。左右にさらにガンガン攻撃のタレントを投入し、サイドの偏重を解消し、再び左右両方から攻める。そんな中で結果を出したのが左サイド。左のWBというわけわからないポジションで投入されたムジアラがサイドからクロスを入れたのが決勝点に。最後に決めたのはほぼフェライニの役割で投入されたゴレツカだった。

 バランスぐっちゃぐちゃで残りの時間を過ごさなければいけないドイツ。ムジアラ、クロース、ミュラーのトライアングルで根性で左サイドで時間を鬼のように空費していた。ハンガリーも最後の最後まで食い下がったがここまで。ドイツ、フランスの両雄に勝ち点をもぎ取ったハンガリーの旅路はここで終わり。だが、グループステージを最も盛り上げたチームの1つであることは間違いないだろう。

試合結果
ドイツ 2-2 ハンガリー
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
GER:66′ ハフェルツ, 84′ ゴレツカ
HUN:11′ アダム・サライ, 68′ シェーファー
主審:セルゲイ・カラゼフ

⑫【グループF】ポルトガル×フランス

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■やりたい放題の両軍エース

 グループBの結果を受けてまずはフランスがグループ突破を一足先に確定。ポルトガルもドイツがしっかり勝てばほぼほぼ問題なしという状況。結局ドイツがふらふらしたせいで危なかったけどね。

 看板だけ見ればビックなカードだけど、両チームとも手堅く実を取りに言った試合だと思う。ポルトガルの目下の課題はドイツにぺしゃんこにされた5レーンをどう封鎖するか。その答えは片方のWGを早い段階でDFラインに下げることであった。特に献身的なプレスバックを見せたのは右のベルナルド・シウバ。この役割が彼でいいのかというのは言いっこなしでお願いしたい。

 したがって撤退型の5-4-1をメインに据えたこの試合のポルトガル。撤退し、自陣のスペースを埋めることを優先をした。前進の手段はお馴染みのロングカウンター。一辺倒だとあまりに単調なのだけど、うまくそれを解消していたのがレナト・サンチェス。球持ちがよく、フランスの中盤に当たり負けがしない中盤は前進の推進力をもたらすことができる。

 フランスは左はIHのカンテ、右はWGのグリーズマンが高い位置までプレスをかけにいく。パリでもそうなんだけど、こういう時に意外と前線に残されずにしっかりSHの位置まで下がることが多いムバッペ。前残りさせた方がいいんじゃないかというのは素人考えなのだろうか。攻撃の部分を見るとムバッペの左からの裏抜けに比重を置いていた。単純だけど効く。面白くないけど効く。シンプルに点が取れる形ほど正義である。

 狙い目はハッキリ、だが工夫は多くなく、ジリっとした展開になったこの試合。試合を左右したのは要所に現れたPK。まずはロリスが偶発的とはいえ相手選手をガッツリパンチ。先制点を許す。

 ビハインドのフランスはポルトガルの5バックを縦に割るイメージで。前半のPK奪取のシーンや、後半の逆転ゴールはポルトガルのバックスが整う前にベンゼマで攻略しきってしまうというフランスのやり方が実ったシーンだ。

 しかし、フランスがベンゼマならポルトガルにはロナウドがいる。後半、左サイドからカットインのチャンスを得ると、クンデがハンド。これはなんかもうどう見てもハンド!これで得点をまた伸ばしたロナウド。PKを決めるなんて当たり前と思うかもしれないが、直前にスペインの試合を見ている自分には口が裂けても『PKは簡単』となどと易々といえることはない。

 この同点ゴールで火が付いたフランス。失点に絡んだクンデは高い位置まで出ていってビルドアップの列越えを手助け。CBでも割と行動範囲は広いイメージだけど、SBだと輪をかけて動き回っていた。攻撃面では頼りになることは間違いない。

 しかし、ポグバのミドルをパトリシオに防がれるなどフランスは失点直後は反撃に出た。しかし、70分過ぎると両チームともにトーンダウン。他会場の経過を把握したのかわからないが試合のテンションがグッと下がった。

 試合を引き分けに終わらせることが大方合意した両チーム。ロナウドとベンゼマが音頭を取って前にボールを進めないという協定を無言で結ぶ。1人で急に相手をぶち抜いたコマン以外は言うことを聞いていた。多分コマンはあとで2人にボコボコにされたと思う。色んな意味でまさに最初から最後までロナウドとベンゼマ祭りだった。

 何はともあれ、何とかGS突破を決めたフランスとポルトガル。だが、ノックアウトラウンドは初戦からイングランド、ベルギーというハードな組み合わせ。負荷の高いグループステージを過ごしてきた両チームはいきなりぶつかる強豪相手にどのようなパフォーマンスで臨むのだろうか。

試合結果
ポルトガル 2-2 フランス
プスカシュ・アレナ
【得点者】
POR:31′(PK) 60′(PK) ロナウド
FRA:45+2′(PK) 47′ ベンゼマ
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

  続きはこっち。

Round16前半

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