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「光が当たりますように」~2024.4.17 UEFAチャンピオンズリーグ Quarter-final 2nd leg バイエルン×アーセナル マッチプレビュー~

目次

Fixture

UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 2nd leg
2024.4.17
バイエルン
×
アーセナル
@フースバル・アレナ・ミュンヘン

戦績

過去の対戦成績

 過去の10回の対戦でバイエルンの5勝、アーセナルの3勝、引き分けが2つ。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • バイエルンは1st legをアウェイで2-2で終えた直近2試合の欧州のノックアウトラウンドでいずれも勝ち抜けている。07-08のUEFAカップの3回戦のアバディーン戦(5-1)と15-16のCL Round 16のユベントス戦(延長戦での4-2)。
  • バイエルンはバルセロナと並んでアーセナルを欧州大会のノックアウトラウンドから4回と最も多く敗退に追い込んでいるチーム。バイエルンにとってはマドリーに次いで最も多く敗退に追い込んでいる相手となる。

スカッド情報

Bayern
  • アルフォンソ・デイビスは累積警告で出場停止。
  • ルロイ・サネ、キングスレイ・コマン、セルジュ・グナブリーはいずれも打撲で欠場見込み(ただし、サネはトゥヘルが出場を明言している)
Arsenal
  • ブカヨ・サカ、マルティン・ウーデゴールは評価が必要。
  • ユリエン・ティンバーが唯一の確実な欠場者。

Match facts from BBC sport

Bayern
  • 直近3シーズンのCLのQFはいずれも敗退。ハンジ・フリッツの20-21はパリにアウェイゴールルールで敗退、ユリアン・ナーゲルスマンの21-22はビジャレアルに2-1、トゥヘルの22-23はマンチェスター・シティに4-1。
  • 12-13~15-16のパリに並び、4シーズン連続でQFで敗退する2つ目のクラブになる可能性。
  • 最後にQFを通過したのは19-20のバルセロナ戦(8-2)でこのシーズンはビッグイヤーを掲げている。
Arsenal
  • CLのQF以降のアウェイゲームでは過去8試合で勝利したことがない(D4,L4)
  • ミケル・アルテタにとっては20-21のELでスラビア・プラハに勝利してから2回目の欧州カップ戦のQF。
  • 直近6回のCLのQFでは2回勝ち抜け。05-06のユベントス(2-0)と08-09のビジャレアル(4-1)

予習

CL QF 1st leg アーセナル戦

第29節 ケルン戦

予想スタメン

展望

示唆される王道型への回帰

 ロンドンでのバイエルンとの1st legは酸いも甘いも感じる内容だったというのが正直なところである。結果としては満足はしていないが。明らかに浮き足立っていた2つのミスからの失点は今のところこのラウンドの勝ち抜けにおいて致命的なダメージにはなっておらず、きっちりとした2つの崩しから試合をタイスコアに保つことができている。より良い結果を得ることができた内容ではあったが、これまでに比べるとバイエルンといるステージが違うという感覚はなかったこと自体がオールド・アーセナルファンにとってはまず1つの手応えになると言えるだろう。

 ただし、上に述べたようにCLではこれ以降のラウンドでアーセナルはアウェイでの勝利がないチーム。健闘した以上の成果を得るためには、歴史の扉を動かす必要があるという状況となっている。Round 16のラツィオもおそらくミュンヘンに乗り込む前の段階までは「やれる」という手応えが先に来ているはず。本当の勝ち抜けに向けての試練はここからになる。

 ホームでの1st legを振り返ると、想像よりもアーセナルが押し込む時間が長かった。2つの得点はきっちりとしたブロック守備を崩したものであり、バイエルンがリードした展開における2点目は特にアーセナル側としては自信になるものだったはずである。

 1st legのプレビューでも書いたが、今季のバイエルンは本来は王道型のポゼッションに傾倒しているチーム。そういう意味では従来のトゥヘルのチームよりも自分たちの良さを出すことにフォーカスしているいわば盟主的な振る舞いをしている。バイエルンという切り口で考えればそれが普通なのだけど、トゥヘルのチームという捉え方をすれば異質なチームである。

 1st legで最も意外だったのはケインとミュラーの縦関係を解体したことだ。このコンビは押し込むフェーズにおけるスペースメイクにおいて無類の強さを誇っており、バイエルンの王道型を支える最も重要なユニットの1つだ。

 おそらくこの判断はムシアラをサイドで使うことを嫌がったためだろう。サイドに使われたニャブリーは自陣のバックラインまで下がり、アーセナルの右サイドに対抗するための重たい守備のタスクを担っていた。このタスクを追うならばニャブリーでかつムシアラは外せないという判断が縦関係の解体につながったのだろう。

 一般的にはホームの方がより攻撃な布陣を敷くことが多い。加えて、ニャブリーはコマンと共に2nd legは負傷欠場が見込まれている。ゲレーロを1列前に置いて同じタスクを託すこともできなくはないだろうが、彼がスタメンを務めるのであればデイビスが不在のLSBの方が可能性としては濃いだろう。スカッド的な観点で言うとWGの負傷者とデイビスの出場停止の2点がミュラーとケインの縦関係の再結成を示唆している。

 ムシアラのサイド起用回避が守備でのタスクに関係するものだとするのであれば、ミュンヘンではロンドンよりもアーセナルを押し込んでこのタスクの負荷を軽減する必要がある。ポゼッションにおいてはCHのパウロヴィッチの存在は大きな後押しになるだろう。アストンビラ戦からも分かるとおり、アーセナルは左サイドでのプレッシングにおいては右サイドよりも強力ではなく、このセクションでパウロヴィッチとキミッヒがポゼッションの主導権を握ることでアーセナルのハイプレスを撃退できる公算は強まると考えて良いだろう。

 ただし、ハイプレスでアーセナルを捕まえにいく振る舞いはそこまで多くはなく、この部分がアーセナルの攻撃に対する抑止力にどこまでなるか。保持で押し込むことにこだわることができれば、2点を奪ったアストンビラの再現は当然十分に可能。押し込んでからの攻撃のバリエーションに関しては明らかにアストンビラよりも上となる。

 もっともどういう展開になっても得点を取ることは可能であることは1st legで証明している。問題は試合を掌握しながらスコアを重ねることができるか。交代選手も含めて前線がややエネルギーに欠けている傾向になっているアーセナルを考えれば、押し込む王道の踏襲ができれば自ずと道は開けてくるはずである。半ば強制的な回帰が予想される王道型での支配力発揮がアーセナル撃破の最短ルートになるはずだ。 

相応しい対価を受け取ってほしい

 バイエルンのやるべきことが王道型への回帰だとするのであれば、アーセナルのやるべきことはアストンビラ戦の回避である。保持の局面で押し返すことができず、単騎での陣地回復が期待できるマルティネッリの途中投入が不発になってしまうことである。

 アストンビラ戦では押し込む時間が半分、押し返された時間が半分という流れ。45分よりも押し込む時間が長くなるかどうか?というのは重要な観点になるだろう。バイエルンと比べてもアストンビラの保持にこだわる姿勢とスキルは個人的にはヒケを取らないと思っている。CBの資質だけで言えば、バイエルンを凌ぐものがあると言ってもくらいである。特に1st legのようにダイアーを左のタッチライン側に追い込むことができればここからクリーンな脱出は難しいだろう。その点ではパウ・トーレスがいたアストンビラとは違う。

 ただし、バイエルンには逃げ道がある。落ちてくるムシアラと収めることができるケインがもちろんこれに該当する。ケインとムシアラのプレーの傾向とバイエルンの今のスカッドを考えると、左から引き取って右のサネに展開するという1st legのバイエルンのやり方は焼き直しになるだろうが、これがどう転がるかはより重要になるはず。この部分でアーセナルのプレス隊がチャンスを創出し、モノにすることができればより勝利に近づくはずである。ただし、深追いでのガス欠はすでにアストンビラ戦で経験済み。どこまでがリターンがある状況なのかを都度判断しながらプレスのアクセルを踏む必要がある。

 自陣からのビルドアップでバイエルンのプレスを撃退できる可能性はアーセナルには十分にあるはず。よって、ケインやムシアラに収められても後ろで跳ね返すことができれば問題ないという考え方もある。当然サネとマッチアップするLSBの人選は重要なポイントになる。

 最も適性が高い人材は冨安だろう。1on1での守備の不安が最も少なく、サイド攻撃におけるWGの解放も可能。先発出場がないというゲーム勘が唯一の不安であり、ここを乗り越えられると考えるかが重要なポイントとなる。

 サネとの対人にフォーカスすれば、ジンチェンコも悪くない守り方ができてはいたが、やはり保持におけるミスの多さが持ち味に蓋をしてしまっていることと、押し込まれる局面が多くなった時のラインコントロールには不安がある。悪い流れを変えるのにはアリアンツ・アレナはかなりタフな舞台になる。サネとのマッチアップで完全に後手を踏んでしまったキヴィオルにも切り口こそ違えど同じことが言える。マッチフィットネスを重視するのか、それとも適性を重視するのかは重要なポイントになる。

 左サイドで言えばWGの人選も気になるところ。プレスが効かなくなった時間帯から単騎での陣地回復が見込めるマルティネッリという週末のプランは少なくとも机の上のアイデアとしては悪くないもののように思えるが機能しなかった。コンサ→キミッヒに相手が変わることで変化があるのかどうかは気になる。

 あるいはマルティネッリは主導権が握りやすい序盤に置いて、ある程度途中交代からのブーストを期待できるトロサールを後ろからということも考えられる。ただし、マルティネッリと比べるとトロサールは展開を選ぶので、この辺りは博打要素が強くなる。あるいはジェズスをこちらサイドにおいて、左セクションのプレスの強化役を担ってもらうという考え方もできる。いずれにしても注目のポイントとなる。

 全体を通して言えるのはバイエルンにどれくらいボールを握られるかの想定をどこまでするかがキーポイントになるということだろう。プレスがどこまで効くのか、効かないのか。その見積もりが実態と乖離すればしんどいし、持てないにしても想定できるのであれば、ある程度景色は違ってくる。少ない手数での陣地回復の目処が立てばなお良し!という感じだ。

 バイエルンに勝ちきれなかったこと、アストンビラ戦で敗れてシティに首位を明け渡したことはいずれもショッキングな出来事だったことは確かである。しかしながら、フルタイムの笛を待つ前に現地のファンが席を立つほど酷いパフォーマンスでなかったことは胸を張って言える。週末の試合後の彼らが目にするべきは空席の目立つエミレーツではなく、満員のアーセナルファンからのミュンヘンでの激闘に向けての後押しであって欲しかった。他のファンの振る舞いに物申すのは好きではないのだけども、選手とスタッフには今の成果や内容に相応しい対応を受けてほしいという気持ちを隠すつもりはない。

 勝てなければ、その試合の印象は黒く塗りつぶされてしまうというのは多かれ少なかれあるのだろうけど、アーセナルにおいては特にその傾向が強いように思う。これは近年のアーセナルが重ねてきた敗北の歴史が重くのしかかっているからだろう。自分のメンタリティは前向きだが、悪い想像が先に気持ちがわからない訳ではない。

 ならば、自分が願うことは勝って歴史を変えること。CLでバイエルンと渡り合うパフォーマンスを見せているアーセナルに勝利という形で光が当たることである。なんとしてもドイツでの一戦での勝利を敗北の歴史に終止符を打つ一歩目にしたい。大きなことを成し遂げる夜になることを心から願っている。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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