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「Catch up UEFA Champions League」~Semi-final 1st leg+α~ 2021.4.27-4.29

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①レアル・マドリー×チェルシー

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■沈黙の後半はどちらに微笑むのか

 最終ラインの怪我人に苦しみながらもリバプールを下したレアル・マドリー。この試合ではカルバハルとヴァランが復帰、準々決勝よりは人員が揃った状況でチェルシーを迎え撃つことになった。

 非保持ではマウントの位置を下げて、マドリーの3センターに対してかみ合わせる形をとるチェルシー。マドリーはクロースが左サイドに落ちる動きでチェルシーの守備網から逃れることで起点になる。マドリーはクロースを基準にマルセロ、ヴィニシウスが動き、パスコースを作る。

 保持ではやりようがあったマドリーだが、非保持では後手を踏む。特に苦しかったのはDFライン。チェルシーの3トップのボールを引き出す力に対してやや苦戦した感がある。特に際立っていたのがプリシッチ。先制点も取った彼は、ボールを引き出す部分、そしてそこからの推進の部分で力を発揮。マウントの負荷を軽減し、ベスト8からのチェルシーの上積みになった。

 プリシッチがボールを引き出してから、右に流れるヴェルナーも動きとしては上々。ただ、その後のボールタッチがからっきしだったことで評価を下げたが、レアル・マドリーを揺さぶるという意味では脅威になっていた。

 チェルシーの保持においてもう1つポイントになったのはアスピリクエタのところ。非保持でマンマーク気味になるマドリーに対して、マルセロとマッチアップする彼のところで呼吸をできたことはチェルシーにとってありがたかった。内でボールを引き出す動きが際立つカンテとのコンビも良好。マドリーに対して2,3手先を行くビルドアップで主導権を握り先制点を得た。

 しかし、マドリーはベンゼマのバイシクルで前半のうちに同点にする。この同点ゴールを機にマドリーはマンマーク色を弱め、ラインを下げる頻度を上げる。これによりチェルシーの先読みが効いていたビルドアップに対して、後方の人数を確保しスローダウンさせることに成功。代わりに自らの攻撃機会も遠くなるが、そこは彼らなりに相殺を受け入れたように見えた。

 この試合のマドリーで際立ったのはモドリッチ。負傷欠場になったバルベルデの1人2役のタスクをガッツリこなしたうえに、後半はビルドアップにおける自陣での裁き役としても躍動。攻守に広範囲にタスクをこなし健在をアピールする。

 交代選手は両チームともにテンポアップには貢献ができず。見る人によっていかようにも見れる後半だった。個人的にはこの試合では共倒れを狙ったマドリーが狙った通りに時計を進めた後半のようにみえる。推進力の部分で優位に立ったチェルシーの方が、交代のたびにテンポが落ちる分思ったように試合を進めることができなかった。

 だが、マドリーがあと90分ゴールから遠ざかれば自動的にチェルシーは突破が決まる。その部分で試合を殺すしかなかったマドリーに次の手段はあるのだろうか。いずれにしてもこの後半の様子見の45分がどう転がるかは2ndレグ次第。沈黙の後半が2ndレグにどうつながるのか、今から来週が楽しみである。

試合結果
レアル・マドリー 1-1 チェルシー
アルフレッド・ディ・ステファノ
【得点者】
RMA:29′ ベンゼマ
CHE:14’ プリシッチ
主審:ダニ―・マッケリー

②パリ・サンジェルマン×マンチェスター・シティ

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■『ベンゼマのように』ではなく『デブライネらしく』

 2年連続のCL決勝進出がかかったパリに立ちはだかるのは、悲願のクラブ史上初の決勝進出に挑むシティである。例年のシティとの最も大きな違いは、少ない人数における守備陣のカウンターの耐性。大きかったのはルベン・ディアスというDFリーダーの加入。彼の存在によってDF陣は大幅にスケールアップ。昨季パリと同じフランス勢のリヨンに敗れた時に比べると格段に少ない人数での守備力は増した。

 そんなシティに対する王道策は内を閉じてコンパクトを維持し、外にボールを誘導してそこで攻撃を食い止めることである。大外のアタッカーが優秀なシティにとってはこのやり方は祈る部分もあるのだが、内側をポンポン進まれるよりはまだいい。パリも4-4-2を組みつつ、このやり方を踏襲する。

 この日の前半はパリの両SBのフロレンツィとバッカーの出来はパーフェクト。対人でシティの両サイドアタッカーを封じてみせた。特にバッカーはバイエルン戦に比べると非常にたくましくなった印象。彼らの活躍によって前半のパリはサイドで『祈る』必要がなくなった。

 パリは保持においても工夫を施す。ネイマール、ムバッペを前線に擁することを踏まえれば、すぐに縦に蹴り飛ばしてもいいものだが、一度プレスをいなしてポゼッションを落ち着けつつ相手陣に迫ることが多かった。この部分で大きな貢献をしていたのはヴェラッティ。彼が一度ボールの預けどころになることでパリはチーム全体を押し上げることに成功。2トップだけでなく2列目やSBも高い位置を取り、アタッキングサードでの仕上げが分厚いものになった。

 先制点となったCKでのセットプレーもニアゾーンに殺到することでマルキーニョスがフリーになる形。その後のCKでペレイラのヘッドに終わったシーンでのマルキーニョスが同じ動きをしたことを踏まえると、このCKはプレーブックに基づいたものに思える。

 シティにとっては厳しい前半だった。保持ではほぼ工夫を見せることができず。カンセロの中央への絞りやデ・ブライネとベルナルドの2人をそろえたドリブルでの運び屋もコンパクトなスペースの中で沈黙。サイドアタッカーも封じられ、プレスも空転し、セットプレーで仕留められるという1失点で済んでよかったという内容だった。

 シティの問題点は最前線に張るデ・ブライネの存在感の薄さである。最前線に1人選手が張ることが必要な展開ではあると思うが、デ・ブライネはそういった黒子としての役割よりもむしろオンザボールで輝いてほしい存在。多少位置は下がったとしてもブロックの手前から加速さえできれば、十分に相手陣を切り裂くことができる。

 後半のシティの配置変更はその方針にのっとったもの。左のハーフスペース付近にデ・ブライネが落ちることでボールタッチ数を増やす。同サイドWGのフォーデンが内側に絞り、SBのカンセロが大外に動くことで前線の幅を確保し、人員を増やした。

 この変更がクリティカルだったかは微妙なところ。なぜならその分パリにも反攻のチャンスを与えるから。ムバッペやネイマールにとって両サイドが上がりやすい後半のシティのやり方はロングカウンターのチャンスが広がる。実際にムバッペがストーンズを振り切ったシーンや、ネイマールの飛び出しをエデルソンが防いだシーンなどはその例といえるだろう。

 しかし、シティはアクロバティックな形から同点に追いつく。セットプレーの流れでエリアの外からクロス性のシュートを放ったデ・ブライネのボールがそのままネットを揺らす。直前のシーンではベンゼマのようにオーバーヘッドを試みているデ・ブライネを見て『ベンゼマのようにチームを救うのかな?』と思ったのだが、ベンゼマのようにではなく、多彩なキックを持ったデ・ブライネらしい形でチームを救って見せた。

 このゴールをきっかけに試合は一変。パリは4-4-2ブロックで急にバタバタ動き出したり、ネイマールがボールを受けにやたら低い位置に動いたりなど。後半はシティがパリを飲み込んだといえる展開だったが、シティが強度で支配したというよりは、先制点でパリが怯えて動き出してしまい、シティにゆっくり攻める余裕を与えてしまったというのが正しいように思う。ゲイェの危険なタックルもその一部といえるだろう。

 マフレズの勝ち越し弾で後半の勢いをそのままにおびえるパリを押し切ったシティ。前半は完璧だったパリだったが、デ・ブライネの活躍で試合は一変。サッカーの魅力と恐ろしさが詰まった90分だったといえるだろう。

試合結果
パリ・サンジェルマン 1-2 マンチェスター・シティ
パルク・デ・フランス
【得点者】
PSG:15′ マルキーニョス
Man City:19′ デ・ブライネ, 71′ マフレズ
主審:フェリックス・ブリヒ

③ビジャレアル×アーセナル

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 主要人員の離脱者が目立つアーセナルだが、アルテタは負傷者の全員復帰を示唆。若干ブラフ感があったが、蓋を開けてみれば半分は真実。オーバメヤン、ルイスはベンチに復帰できていたが、ラカゼットとティアニーは間に合わなかった。

 ビジャレアルの4-4-2ブロックに対して、アーセナルはCFにスミス=ロウを起用。はっきり言えばこの配置が全くフィットしなかった。守備においてはプレス隊として全く機能せず。スミス=ロウもウーデゴーアもGKまでプレッシャーはかけず。深い位置を取るビジャレアルのCB2人に対して、アーセナルのWGの外切りは効果が薄く、SBのフォイスには効果的に運ばれたり、そもそも配球源となるパレホへの供給ルートを断つことはできなかった。1stプレス隊のカバーリングを任されたセバージョスは機動力に難ありで、物理的にこの役割を背負うのは無理がある。ビジャレアルとしては前線への収まりも十分。アーセナルは無駄に高いラインのリスクのみを背負う結果に。

 スミス=ロウにはGKにプレッシングまではいってほしかったが、それを正当化するにはそもそもバックスがフィードで勝算が見込めなくてはいけない。根本的にはアーセナルがGKへのプレッシングにチャレンジしなかったことがビジャレアルのビルドアップが安定した要因であるが、そもそも人員的にそれにチャレンジしに行く土壌が整っていない感があるのが不思議だった。

 攻撃においてはパスミスを連発。確かに水気を含むピッチで対応が難しかったのは確かだが、連動が甘いビジャレアルの守備陣に対してパスが2本とつながらない状況では崩すのは難しい。特にCFを置かない状況では相手を背負えない上、パスの受け渡しをしてこそ本領発揮するスミス=ロウにボールが届かず。攻撃においても死に体で、非常にもったいない使い方だったように思う。

 1失点目はプレスを漏らしたところからジャカとマッチアップしたチュクウェゼがセバージョスを外におびき寄せたスペースにトリゲロスが入り込む。2失点目はニアでジェラール・モレノがスラしたところから最後はラウール・アルビオル。モレノに競り合うことすらしなかったパブロ・マリは、後半のブロック守備におけるパフォーマンスも不可解なレベルでガブリエウとの序列に疑問を覚えるファンは多かっただろう。

 案の定、守備で過負荷を負ったセバージョスは後半に2枚目の警告で退場。このまま2失点のビハインドを背負って敗退するかと思いきや、ここからビジャレアルは迷走。重心を後ろに下げて攻撃の比重を下げると、点差を考慮しないチャレンジングなビルドアップでボールロストを連発。PKを与えたトリゲロスのチャレンジもサカへの2枚目の警告がでたカプエのアプローチも共に軽率でチームの悪い流れを促進するものだった。

 10人同士の試合で2-1という最低限の結果を得ることができたアーセナル。攻守ともに不可解だった前半で180分が決着しなかったことは非常に幸運と言わざるを得ない。攻撃において希望の光となったサカ、ペペと希望をつないだレノの活躍により、主力復帰が待たれる2ndレグにすべてをかけることになる。

試合結果
ビジャレアル 2-1 アーセナル
エスタディオ・デ・ラ・セラミカ
【得点者】
VIL:5′ トリゲロス, 29′ アルビオル
ARS:73′(PK) ペペ
主審:アルトゥール・ディアス

④マンチェスター・ユナイテッド×ローマ

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■不運のローマを飲み込み、優勝候補筆頭の名乗り

 ユナイテッドの4-2-3-1とローマの3-4-3はあらゆる部分で噛み合わないフォーメーション。ということで自動的にズレができるボールを保持する方に比べると、ボールを持たない側は頭を使わなければいけない。

 まず、ローマのやり方は後ろに重心をかけつつフレッジとマクトミネイの両CHにはマンマーク気味に追い回す。したがってユナイテッドの保持は外側に誘導されるようになる。ただ、ローマは縦パスを出されたとの受け手へのチェックがワンテンポ遅いため、出てきたスペースから前進されるようになる。

 そのズレを使ってマンチェスター・ユナイテッドは先制。左サイドでとっととストロングポイントを作り、あっさりと先手を取った。そのユナイテッドの非保持はローマよりも積極的に前線から圧をかける。システマティックというよりは力で押し切るタイプのプレスだが、ローマの前進を阻害するには十分だった。

 そんな中でローマの希望の光だったのは左のWBのスピナッツォーラ。対面にワン=ビサカという対人の鬼を回しつつ、苦しい体勢で受けても体を入れ替えて突破。タイトなユナイテッドの守備陣に対して真っ向から張れる貴重な存在となり攻撃を牽引した。彼のボール運びから同点弾を得たローマは、その勢いでポグバからPK奪取。ハンドは確かに不運だが、現状のルールではポグバのあの手の開き方でスライディングをしてしまうのはすでに不用意とされても仕方がない。

 ハーフタイムを迎えた時点でアウェイの地で2-1のリード。これだけならば万歳したくなるはずだが、ロマニスタにとっては厳しい前半となった。というのも負傷交代が前半だけで3回。すでに交代回数を使い切っており、ハーフタイムより後ろの時間帯での交代は認められないことになる。すなわち、後半頭に出てきた11人で後半を戦い抜かなければいけない。しかも、負傷者の1人は前半の殊勲者スピナッツォーラであるのだから、なおさらしんどい。

 当然流れはユナイテッドに傾く。風向きが変わったのは同点のシーンだろうか。フレッジのアクロバティックなつなぎからこれまでローマが防いできた中央からの加速を許すと、これをカバーニが仕留めて追いつく。

 この得点を境にユナイテッドはどこからでも攻め込むことができるように。3得点目はショウを起点にバイタルを横断。ローマは厳しい形でPA内での攻撃を受けるように。高さのあるユナイテッドの鈍器力はローマにはハードで、逆転をしてからは殴られ続ける状況が続く。そして、流れを変えるための交代ももうできない。

 ここまで点差がついたのはローマの交代枠がなくなってしまったことが大いに関係がある。だが、終盤に向かうにつれて押し込んだ際の引き出しの多さをユナイテッドが見せたのも事実。ローマを下したユナイテッドのこの夜のパフォーマンスは堂々たる優勝候補筆頭の名乗りにふさわしいものだった。

試合結果
マンチェスター・ユナイテッド 6-2 ローマ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:9′ 71′(PK) フェルナンデス, 48′ 64′ カバーニ, 75′ ポグバ, 86′ グリーンウッド
ROM:15′(PK) ペッレグリーニ, 34′ ジェコ
主審:デル・セーロ・グランデ

   おしまいじゃ!!

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