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「半年の成長、2週間の成長」~2021.4.3 J1 第7節 川崎フロンターレ×大分トリニータ BBC風オカルトプレビュー

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第7節
2021.4.3
川崎フロンターレ(1位/6勝1分0敗/勝ち点19/得点19 失点4)
×
大分トリニータ(11位/1勝2分2敗/勝ち点5/得点5 失点7)
@等々力陸上競技場

戦績

直近の対戦成績

図1

 直近10試合で川崎が7勝、大分が2勝、引き分けが1つ。

川崎ホームでの試合

図2

 直近10試合で川崎が8勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・リーグ戦はホームチームが3連勝中。
・直近7回のリーグ戦での対戦でどちらか1チームが複数得点を挙げたのは2回だけ。
・J1での対戦において先制されたチームが勝利を手にしたことがない。
・J1での等々力での試合において、川崎は大分に負けたことがない(W6,D2)

 ホームチームが連勝を続けており内弁慶傾向といえるカードだ。ロースコアになりやすいのも特徴で、直近7試合のうち複数得点を挙げたのは等々力で2019,2020と川崎が記録した2回だけ。今回とは異なるが特に大分ホームではロースコアになりやすい。

 逆転勝ちがないというのも、片側のチームがそもそも無得点に抑えられているケースが多いから。最後の逆転勝ちは2002年の11月、大分がJ2優勝を決めた試合までさかのぼる。

 等々力でのJ1においては勝利を挙げたことがここまでない大分だが、ジンクスにのっとればまずは先制点を奪い川崎から勝利を挙げるチャンスをうかがいたい。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・登里享平は練習試合で実践復帰。
・大島僚太はふくらはぎの負傷で離脱中。

【大分トリニータ】

・野村直輝は左膝内側側副靭帯損傷で離脱中。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・リーグ戦12試合無敗(W9,D3)
・1週間より長い間隔で行われた試合は直近6戦で2勝のみ
・ホームでのリーグ戦は7連勝中。
・今季ここまで交代選手が挙げた得点がない。
・登里享平が出場すれば2020年最終節以来の復帰。
・山根視来は今季ここまで4アシスト。リーグリーダー。

 リーグ戦は年をまたいで12試合無敗と好調が続く。一時期は内容の低下も叫ばれていたが、埼スタでは快勝。課題はあれどいい雰囲気のまま代表ウィークを過ごすことが出来たはずだ。

 だがいくつか懸念はある。まずリーグ戦で最後に敗れたのは大分戦だ。谷口の一発退場で10人になった試合をひっくり返すことが出来なかった。

 そしてもう1つは休み明けの試合の戦績。1週間よりも長い期間空いたのちのリーグ戦は直近6試合で2勝のみと振るわない。せめてもの救いは勝った2試合は共にホームであるということ。7連勝を上げており、クリーンシートも直近4試合で3つと好調な等々力でスムーズに再始動をしたいところだ。

 用兵で気になるのは両SB。旗手と山根は共にフル稼働気味なうえに代表活動にも参加。特に山根は今季攻撃面でもクロスで貴重な存在になっており、現在はリーグのアシスト王でもあるが、ここの代役に目途が立ったかは今後のポイントの1つになる。

 一方で左は登里享平の実戦復帰が話題に。満を持しての帰還となれば、旗手の起用法も含めてチームとしての幅は広がる。先発した試合での勝率は抜群。10人で戦った先述の大分戦を除けば、彼が先発出場したリーグ戦で敗れたのは2019年9月の神戸戦までさかのぼる。やや長期の離脱となったため、まずはパフォーマンスを戻すことからなのだが、詰まり気味な左サイドのビルドアップの特効薬として期待は高まる。中断明けの川崎はまずはSBに注目だ。

【大分トリニータ】

<大分のMatch facts>
・直近5試合の公式戦でのアウェイ戦は1敗のみ(W2,D2,L1)
・リーグ戦3連敗になれば2020年8月以来。
・直近7試合でトップハーフとの試合は1勝だけ。
・今季ここまでの24人の起用はリーグにおいて横浜FCと並んで最多。
・長沢駿は直近4試合の川崎戦で3得点1アシスト。
・上夷克典が先発出場した2試合は今季無敗。

 対戦カードの戦績でいえば、内弁慶シリーズなのだが、直近の大分の戦績はどちらかといえばアウェイの方が好調である。今季の公式戦2勝もすべてアウェイで挙げたものだ。

 なんだかんだ連敗は少なくまとめることが多く、3連敗になればおよそ1年ぶりのことになる。その理由はテーブルのボトムハーフのチーム相手に昨季僅かに3敗と安定した成績を出していたから。逆にトップハーフのチーム相手には勝てていないが、直近7試合のトップハーフとの対戦での唯一の勝利が先述の川崎戦ということになる。

 長沢駿は近年のゴール数の多さを見ると川崎キラーとして恐れている川崎ファンは多いはず。確かに数字を見ると点を取ってはいるのだが、それがなかなか勝利に結びつかない。というか、キャリアにおいて長沢は出場した川崎とのリーグ戦7試合で勝ったことがない(D2,L5)という一風変わった川崎キラーである。

 大分ファンの期待がかかるのは上夷。退団した岩田の後釜として大分の攻撃を後ろから支えることが出来るかどうか。プレータイムはまだ伸びていないが、主力定着の期待がかかる1人だ。

展望

■豊富なビルドアップパターン

 直近3試合の大分のビルドアップはいずれも趣が異なっていた。

1. FC東京戦風

画像4

 大分の基本フォーメーションは3-4-3。FC東京戦の大分はこの形をそのままベースにしたもの。3-2型といえるやつである。大きくバランスを崩すことがない代わりに前線やシャドーへの縦パス一本で勝負する嫌いがあるので、前線の収める能力や後方から通す縦パスの質が問われやすい。

2. C大阪戦風

画像5

 中盤2人の棲み分けがはっきりするパターン。アンカー役の小林裕(広島戦で実際にこの役割を務めたのは長谷川)が中盤でへそとして君臨する一方で下田はフリーマン的に動き回る。最終ラインが4枚になることもしばしば。アンカーという基準点を軸に周りの選手が動き回るイメージである。

3. 広島戦

画像6

 ビルドアップ時に小林裕と下田が共に最終ラインに入ることも珍しくなかったパターン。ワイドのCBの外側での仕事を増やし、WBをサイドの奥に押し上げるという指針の元、中央の選手が落ちる動きが特徴。絞るシャドーや大外の高い位置でのWBなど従来の大分のイメージに近い形ともいえそう。DFラインのポジションの可塑性が高く、最もポジションチェンジが多い。

 ボール保持に比べると非保持のパターンはやや画一的で、広島戦はプレッシングの志向がやや強かったくらいだろうか。

 さて、ここで言いたいのは川崎戦ではどのパターンで来るでしょうか?とかではなく、大分は連戦の中でも多様なメンバーを駆使しながらビルドアップの形を数多く用意していたということである。CHのコンビは動の下田と静の長谷川or小林裕の組み合わせなどの一定の共通点はある。だが、2週間というブランクと直近で結果が出ていないことを踏まえれば、川崎相手に策を練ってくる可能性は大いにあるといえるだろう。

■ポイントは『あの男』

 ここまでの数試合を見て大分の戦い方のポイントは大きく分けて2つ。1つ目はビルドアップにおける攻守のバランスである。

 ぱっと見、ビルドアップの視点だけ考えれば直近の広島戦が一番機能していたといえそうである。しかしながら、大分は岩田や鈴木などバックラインに移籍した選手が多く、ここまで最終ラインのメンバーを固定できていない。したがって、従来の大分に比べると、ややビルドアップ時の動きのスムーズさにかけているイメージがある。メンバーが入れ替わる分、同じ画を共有できていないという意味合いである。

 どこに誰がいるかの共有にやや甘さを感じるので、相手の圧を感じるときのボール保持にやや慌てる側面がある。広島戦の終盤は前からのプレッシングに屈して、ショートカウンターを食らいまくってしまった。1枚ずつプレスを外していた以前ほどの精度にはまだ至っていないというのが現状ではないだろうか。

 一方で、初期配置のままでビルドアップを進めたFC東京戦でも苦しんだ。長沢は優秀なストライカーではあるが、ラインを下げたりポストで味方に時間を作るタイプというよりはもう少しゴールに近い位置で抜け出しに専念させたい選手。周りを生かすというよりも仕上げで活きるタイプだろう。

 ボールを運べる田中達也や野村直輝は移籍や負傷で不在。となれば、配置であまりにも割り切ったやり方に傾倒してしまうと、今度は手詰まりになってしまうというジレンマがある。

 いくつかあるボールの動かし方だがこの攻守のバランスを見抜くカギは下田北斗にある。彼がどれだけの自由度を与えられているか、ビルドアップでどの位置にいて、どのような役割を担っているか重要なポイントになる。

 ビルドアップ時の攻守のバランスと並んでもう1つポイントとなるのがプレッシング。昨年10月の川崎戦での勝利は川崎に前からのプレッシングを外させなかったことが大きなファクターになった。昨年の再現に成功し、高い位置から川崎のプレスを嵌めることが出来れば、ビルドアップでの『運び役がいない』という悩みもやや解消されることになる。

画像7

 ただ、この部分も昨季ほどの練度があるかといわれると微妙なところ。大分のプレッシングはCHの前線との連動があってこそ。この動きを長谷川が抜群の動きでこなしていたからこそ、退場者が出る前の時点でも川崎は大分に苦しんでいた。

 今季プレスで前に出ていく機会が多いのは下田だが、この出ていったスペースのケアや、下田自身が前に出ていくタイミングなどの懸念点も多い。ビルドアップ同様に練度が下がっている印象だ。

 攻守のバランスやプレスのタイミング。大分を読み解くポイントはこの2つ。いずれもリスクをどこまで取れるか、そしてそのキーパーソンは下田北斗である。

■より警戒すべき局面は・・・

 川崎にとっては大分が撤退してブロック守備を敷いてくれれば割と楽。割り切ったローラインでもなく、最終ラインにプレスに行くわけでもないので、単純な裏へのボールは効く。

 加えてもう1つ。大分の2列目はシャドーがCHよりも高い位置に出てくるため、縦のラインにギャップができやすい。特にSBの前、シャドーの後方、CHの脇のスペースには侵入ができる。SBにもぴったりマークが来るわけではないので、割とシャドーは迷子になりがちである。

画像8

 したがって、後方の選手には大分のプレスの強弱に関わらず、豊富な引き出しを用意しておいてほしいところ。1stラインを通過し、ラインのギャップと裏を織り交ぜながら前進を手助けしたい。

 より警戒しなければいけないのは昨年に引き続きプレッシングで詰まらされること。シミッチは守田と比べれば機動力に長けているわけではないので、単純な機動力の観点でいえばマンマークの難易度は下がる。タフな展開になると消えがちな脇坂にとっても昨季からの成長を見たい部分。中盤中央でのマンマークでつぶされた昨季の再現はまず避けたい。

 加えて気にしなければいけないのは川崎の左サイド。ここまで右利きの旗手が起用されてきたこともあり、ライン際のスペースをややうまく使えず、ここで詰まらされる傾向にある。特に低い位置に関してはハイプレスの狩りどころになりがちである。この部分は代表ウィークに実戦復帰した登里が待たれるところだが、旗手自身の向上も同時に期待したいところだ。

 川崎の非保持においてはプレッシングが肝になる。ここまでの大分の試合を見ると、バックスからの縦へのパスから前進するパターンが比較的少ない。特に高木がボールを持った際はボールが来た方向と逆側のWB(大外に張る選手)に向かって、長いキックを蹴るパターンが多い。

画像9

 川崎としてはここは咎めたいところ。同サイドのプレス脱出の精度がやや落ちている大分に対して、川崎は同サイド圧縮しながら高い位置で食い止めてショートカウンターのチャンスを作りたい。ここは今季頭から取り組んでいるハイプレッシングの精度が問われる部分である。

 組織でいえばハイプレスの練度、個人でいえば後方のボール運びや代表に選ばれた脇坂や旗手の伸びが今後期待したい部分。長いスパンでチームや個人で取り組んでいる部分と、代表に選ばれて刺激を受けた選手たちのさらなる成長がここから始まる連戦の見どころになりそうだ。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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