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「味スタで狙う2つのリベンジ」~2021.4.11 J1 第9節 FC東京×川崎フロンターレ BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第9節
2021.4.11
FC東京
(6位/4勝3分1敗/勝ち点15/得点14/失点11)
×
川崎フロンターレ
(1位/8勝1分0敗/勝ち点25/得点22/失点4)
@味の素スタジアム

戦績

近年の対戦成績

図1

直近5年の対戦でFC東京の3勝、川崎の8勝、引き分けが2つ。

FC東京ホームでの戦績

図2

直近10試合でFC東京の3勝、川崎の7勝。

Head-to-head

<Head-to-head>
・直近5試合のリーグ戦での対戦は川崎が4勝で負けなし。
・FC東京は直近5試合のクラシコで1得点のみ。
・直近4試合の等々力での公式戦のクラシコでは川崎は1勝のみ(D1,L2)
・J1において川崎が首位で迎えたクラシコは過去に4回。いずれも川崎が勝利を挙げている。

 近年のクラシコは川崎が優勢。直近5試合で負けはない。FC東京は特に得点面での苦しみが目立つところ。直近の対戦である等々力でのディエゴ・オリベイラのゴールがここ5試合のクラシコで唯一の得点となっている。

 ただし、等々力に限ればFC東京側の戦績は悪くない。一泡吹かせた昨年のルヴァンカップの準々決勝を含めて直近4年で2勝を挙げている。今回は味スタだけど。

 だが、勢いに乗ったタイミングの川崎をリーグ戦で止められた過去は今のところはない。川崎が首位で迎えたクラシコはすべて川崎の勝利。川崎が首位で迎えた4試合のクラシコはいずれもここ6年に集中しており、直近は昨年の等々力。一番古いのは大久保と小林が計3得点で逆転勝ちを決めた2016年の味スタだ。

スカッド情報

【FC東京】

・渡辺剛は今節は出場停止。
・紺野和也は左膝前十字靭帯損傷、渡邊凌磨は左第五中足骨骨折でそれぞれ長期離脱。
・中村帆高は名古屋戦で負傷交代。

【川崎フロンターレ】

・チョン・ソンリョンは腰椎横突起骨折で4週間の離脱。
・山村和也は左大腿二頭筋肉離れで3か月の離脱。
・大島僚太も長期離脱中。
・旗手怜央は前節の鳥栖戦欠場。

予想スタメン

画像3

Match facts

【FC東京】

<FC東京のMatch facts>
・リーグ戦直近5試合負けなし(W3,D2)
・勝敗がついた試合は全て1点差。
・今季のリーグ戦の4勝はいずれもホームで挙げたもの。
・ビハインドから得た勝ち点は10でリーグ最多。
・長谷川監督が川崎相手に挙げた直近4勝は全て等々力でのもの。

・ディエゴ・オリベイラは5試合連続味スタの公式戦で得点中。

 直近の成績は好調。リーグ戦は直近5試合で負けなしだ。いずれも1点差と接戦なものの、しぶとく勝ち点を手にしている。

 特にホームでは好調で今季のリーグ戦の勝利は全て味スタで挙げたものとなっている。もう1つ特徴として挙げられるのは逆転勝ちの多さ。4試合中逆転勝ちしたのは3勝。ビハインドから得た勝ち点は10で2位の神戸の倍であり圧倒的なリーグトップである。

 ホームでは驚異的な得点力を誇るディエゴ・オリベイラの存在も心強い。現状では5試合連続で得点を決めており、今季は全得点を味スタで挙げている。ただし、長谷川健太監督が川崎相手に勝利を挙げた試合は直近4試合とも等々力で開催されたもの。ホーム味スタでは勝利を決めていないし、得点も取ったことがない。

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・リーグ戦は直近15試合負けなし。
・リーグ戦3試合連続クリーンシート。
・今季アウェイゲームは3試合で11得点。
・関東でのアウェイでのリーグ戦は16試合連続無敗(W12,D4)。
・鬼木監督は直近6試合のリーグ戦で敗れた相手のうち日本人監督が相手のチームは1つだけ。
・丹野研太は先発したここ2試合で受けた枠内シュートが1。

 連勝ではないものの15試合連続で負けなしというのは昨シーズンのどの時期よりも長い無敗のラン。高い安定感をキープしている。特に目を見張るのは失点の少なさ。リーグ戦では3試合連続でクリーンシートを達成。これは2020年10月以来のことで、この時も4試合目がFC東京だった。この時はディエゴ・オリベイラの得点によってクリーンシートを阻止された。

 アウェイで目立つのは得点力。3試合で11得点で1試合平均3点越え。得意な関東遠征と掛け合わせると非常に好相性である。

 鬼木監督は対日本人監督には好相性。直近で敗れた日本人監督は昨年のアウェイの大分で片野坂監督に敗れた以来。それ以前はさらに1年以上前の城福広島までさかのぼる。

 ゴールマウスは2試合前からソンリョンに代わり丹野が務めているが、この間受けた枠内シュートは1つだけ。最後尾でチームを鼓舞する丹野自身ももちろん、チーム全体で背番号1の穴を埋める働きを見せている。

展望

■左右非対称なWGの役割

 割とFC東京ファンの友人は多いのだが、彼らの多くは4-3-3の難しさを嘆いているイメージが強い。WGの渡邊凌磨や紺野の負傷による長期離脱もそれに拍車をかけているようだ。しかしながら少なくともここまでは彼らは4-3-3のシステムをメインに据え続けている。ということでまずはそのスタイルから見ていく。

 ボール保持はオーソドックスな4-3-3の強みを活かそうという部分が見て取れる。後方から徐々に段差を作りながらパスコースを複数用意にしながら前進していく形だ。縦に速い攻撃は流れの中で狙う時ももちろんあるが、それを積極的に引き起こすようなプレースタイルではなく、どちらかと言えばショートパスをつなぎながら崩していきたいのだろう。

 つまり、4-3-3としてはオーソドックスでも、FC東京っぽい従来のイメージとは微妙に違うのが今年のスタイルである。

 サイドにおいては左右で異なる役割を求めている。ざっくり言うと左で作って右で仕留める形。わかりやすいのが左右のWGの役割の違いである。左を務めることが多いアダイウトンが大外に張りながら仕掛けるのとは対照的に、右サイドはクロスに合わせるフィニッシャー。内側に絞りながらクロスに飛び込んだり裏に抜けたりなどオフザボールにおける動きの量と質が求められる。

画像4

 したがって右サイドはストライカー色が強い人選になることが多い。永井や田川がメインで、おそらく必要ならばディエゴ・オリベイラもこの役割をこなすことができるだろう。先に挙げた渡邊や紺野の負傷も関係あるかもしれないが、役割の部分で言えば擬似2トップっぽくなっている。

 アダイウトンをサポートするように左サイドには人をかける。同サイドのIHやSBはもちろん、CFのディエゴ・オリベイラも左サイドに流れながらポストなどで崩しに関与することも多い。SBの小川諒也や昨年と比べるとかなりプレーの自由度が増えた印象。ワールドカップアジア予選のモンゴル戦でも割と幅広い保持における役割に驚いていた人も多かったが、割と今季のFC東京では似たような役割を求められているように思う。インナーラップは推奨されているし、大外で追い越してのクロス以外にもレパートリーが増えたようにみえる。

 余談だが、この4-3-3に今出場機会を減らしているレアンドロを組み込むとしたら1トップが最も適しているように思う。大外に張る左サイドでは得点から遠ざかってしまうし、右サイドのようにオフザボールやクロス合わせる部分で持ち味を出すタイプではない。左ハーフスペース付近で崩しに関与しつつフィニッシュに絡むCFが最も適任であるように思う。後述する守備におけるWGの役割もサイドでの起用をためらう要素である。

■決めたい外誘導

 非保持は4-5-1。まずWGには中盤の守備ブロックに加わる役割が求められる。5枚が並ぶように中盤を埋めるような形になる。高い位置に出ていきながら前線のプレスに出ていく役割はWGよりもむしろIHに求められる。

 おそらくだが、中盤はボールを外側に誘導したいのだろう。中を制限しながらIHが前に出ていくことでまずは中の選択肢を削る守備をしたいはずである。

画像5

 だが、このIHの前に出ていく動きがチームにハマらない時がある。具体的には前と中盤で縦にスペースができてしまうことがあり、制限したいはずの中央のスペースにギャップができてしまう。WGは献身的なプレスバックを行うが、IHが出ていったスペースのカバーを積極的に行うわけではないし、アンカーの森重も行動範囲で勝負できるわけではない。チーム全体が息を合わせたプレスが出来なければ、全体が間延びした状態になってしまうこともある。プレスモードの時はDFラインをそろえることは比較的軽視。CBも積極的に高い位置まで相手を捕まえに行く。

 より自陣側に近い非保持の局面においてはCBの跳ね返しの強さをSBで補う形。ボールサイドのSBはホルダーと1on1のデュエルが求められ、逆サイドはエリア内に絞りながら守備に加わる。特にFC東京の右サイド側から攻められる際はこの傾向が顕著。小川はエリアの中央まで絞り空中戦の手助けをする。

■やり残したことをやり遂げられるか

 ここまで紹介したように今季のFC東京の主なスタイルは4-3-3。ただ、多摩川クラシコでのFC東京は今季これまでのスタイルを捨てて4-4-2でのロングカウンター狙いに移行する可能性も全くもって否定はできない。

 おそらく、ここまで紹介した今季のオーソドックスなスタイルで来る方が川崎にとってはやりやすいはずだ。まずFC東京のビルドアップの際は彼らのボールスキルを問うようなプレスで精度を試す価値は大いにあると思う。

 圧をかけてパスコースを消していくような立ち上がりでFC東京がどのようなリアクションを取るのかをまずは見てみたいところである。

 4-4-2でのロングカウンター志向の際は川崎がどう攻撃を終わらせるかが重要。なのでここでは割愛する。4-3-3で普段通りに攻めてくる選択をするならば、まずは同サイドに圧縮しながら彼らのサイドの崩しにおけるスペースと時間を奪いたい。ビルドアップにおけるプレッシング同様に狭いスペースへの圧縮と速い寄せで彼らのプレーの難易度を上げてミスを誘発したい。

 ここまで序列の低い高萩がいなければ、サイドチェンジからの大きな展開はあまりレパートリーとしては考えなくてよさそう。プレスもサイド攻略も相手のクオリティを問うような選択肢と時間を奪うような寄せを見せたいところである。

 攻撃においてはやはりまずはIHを前に引っ張り出しFC東京の中盤を間延びさせたい。川崎としては攻略するサイドをあらかじめ定めておいて、ダミアンが降りてポストしたりIH2人を固めながら相手の中盤が出てくるスペースを攻略するのもアリだ。

画像6

 中盤5枚での守備における秩序を崩しながら間をつなぎつつ手早く前進したい。最終ラインが前に出てくるのならば当然裏を狙うのもOK。渡辺剛が不在のDFラインにダミアンをぶつけてパワーとスピードで勝負できるのも川崎としては大きな強みとなる。

 FC東京がよりラインを下げてロングカウンター主体の4-4-2に移行した場合は三笘とSBのマッチアップがより重要になる。昨季、ルヴァンカップで負けた際はFC東京がここで優位を取れたのが大きかった。先発が予想される中村拓海には大きな仕事が任されることになる。

 逆サイドはおそらく家長の先発が予想されるが、クロスに合わせる部分を重視して小林悠を起用するのも面白い。外からの斜めの動きでエリアに入り込んで小川とのマッチアップで勝負するのもいいし、この斜めの動きによって田中や山根が外に回れるスペースを作れるのも面白い。渡辺不在の最終ラインにおいては小川はより中央を助けようという意識は強いはず。この意識の強さを逆手に取り、大外への走り込みを活かすのも面白いのではないだろうか。

画像7

 もっともこの右でフィニッシュする狙いも左できっちりチャンスメイクができてこそ。的確なポジショニングで崩しをサポートする登里の助けを借りて、三笘にはFC東京のブロックにヒビを入れることが求められる。

 三笘にとっては昨季のルヴァンカップでのリベンジに加えて、ここ味の素スタジアムは日の丸を背負ったアルゼンチン戦で悔しい思いをした地でもある。このFC東京相手にサイドから崩しの機会を作り決定的な仕事をすることは踏み越えていくべきステップの1つ。世界との差を感じたこの場所で、三笘はまた一つ国内でやり残した仕事を成し遂げることができるだろうか。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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