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「Catch up UEFA Champions League」~Round16 2nd leg①+α~ 2021.3.9-3.11

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①ユベントス×ポルト

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■ピュアで繊細で儚い

 0-0で終われば勝ち抜けはポルト!ということで彼らにとって1stレグよりも相手を捕まえに行くプライオリティは低かったのだろう。ポルトは前節よりも前からプレスをかける頻度が低かった。ポルトのSHはクアドラードとキエーザに合わせて立ち位置を下げて、時には6バックのように守ることがあった。

 6バックにした状態では前に出ていけないだろう!と思うのだが、前に圧力をかける瞬間やカウンターで出ていく瞬間は共有されていて、人数をかけた攻撃をできているのは割と不思議だった。むしろ、出ていける瞬間を共有できているから後ろを厚くしているのかもしれないけども。PKで先制点を取った後はより重心が後ろに向くようになった。

 一方のユベントスは前半から攻撃パターンが徹底していた。大外から対角のファーサイドに向けてのクロス。ポルトのSBの裏側にクロスを上げて競らせる形。キエーザの2点目はこの形から生まれたものである。ポルトの6バックにケチをつけるならばこの部分で、後ろに重心をおくならばせめて幅は網羅しておきたいところだった。

 1stレグからここまでハードなプレーの巧みな線引きでグレーゾーンをうまく渡り歩いてきたポルトだったが、ついに退場者が出てしまう。タレミのオフサイド判定にボールをけっ飛ばしての2枚目の警告という流れはこれまでのグレーゾーンに比べて非常にデリカシーがないように思えた。

 数的優位を得たユベントスだったが、一向に勢いが上がる気配はない。キエーザかクアドラードがオープンになるまでは動かず、彼らのパターンもファー一辺倒。そもそもニアでの崩しのパターンはほぼ用意されておらず、奥行きを持ってボールを引き出す動きも非常に少なかったユベントス。1得点目のシーンのロナウドや、ペペがすんでのところでクリアしたキエーザの抜け出しなど決定機の多くは裏抜けから生まれているのに、こういったボールの引き出し方の頻度は上がってこない。

 エリアで勝負したいロナウドという制約があるのはわかるけど、大外でピン止めできる選手や中盤で相手を引き付けられるアルトゥールという存在がいるにも関わらず、それを活かした前進の形がほぼ見られず。手詰まり感はポルトが10人になっても延々と続いた。

 2戦トータルスコアがタイの状況で90分は終わりで試合は延長戦に。10人になってからは前に出ていくタイミングを掴めなかったポルトだが、交代で入ったディアスを軸に徐々に時間を作れるように。すると、ポルトは延長後半にFKから直接ゴールをゲット。千載一遇のチャンスをモノにする。とはいっても、このシーンのユベントスの壁の作り方はお粗末だった。ユベントスと言えば老獪で狡猾な印象だったのだが、この180分のユベントスはピュアで繊細で神経質な印象を受けた。

 むしろ、ユベントスらしさを感じたのはポルトのユニフォームをまとったペペの方。危ういシーンでの最後の砦としての存在感や、危機を察知しピンチを未然に防ぐ能力はこの日のユベントスが喉から手が出るほど欲しかったものではないだろうか。

試合結果
ユベントス 3-2 ポルト
ユベントス・スタジアム
【得点者】
JUV:19′(PK) 115′ オリベイラ
POR:47′ 63′ キエーザ, 117′ ラビオ
主審:ビョルン・カイペルス

②ドルトムント×セビージャ

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■不確定要素の針が振れた先には

 1stレグでビハインドのセビージャは立ち上がりから積極策を敢行。高いテンションと激しいマンマークで主導権を握る。立ち上がりはドルトムントに対して持ち出しを許さずにハーフコートゲームで無限攻撃を続けた。

4-1-4-1のミドルブロックで迎え撃つドルトムントに対して、1トップの脇から運んでいくセビージャ。この選手を捕まえるのはドルトムントのインサイドハーフの役割。このインサイドハーフの後方にドルトムントはCB、アンカー、SH、SBの4人でグリットを作り迎え撃つ構造。セビージャはこのグリッドの外と中にそれぞれ選手を配置し打開を狙う。特に圧巻だったのはオカンポス。大外から斜めにえぐるようなカットインでドルトムントの守備陣を揺らす。

もう1つ、ドルトムントを乱す存在だったのはクンデ。大胆な持ち出しと流れの中からもエリア内に侵入するCBはドルトムントにとっては不確定要素だったに違いない。

しかし、ドルトムントにとっての不確定要素はセビージャにとっても不確定要素でもあった。セビージャの押せ押せペースの中で先手を取ったのはドルトムント。クンデの持ち上がりの際に発生したロストからドルトムントがボール奪取。スイッチONにしたプレスからショートカウンターで一気に攻め込むと、最後はハーランドが1stレグに続いてゴールを決めた。

このハーランドはセビージャのマンマークの最大のネック。1人くらいなら平気で吹っ飛ばせるハーランドに1人が基本となると、本当に1人くらい吹っ飛ばされる。2点目のシーンのPKはその直前のタックルや蹴り直しなどやたらわちゃわちゃしたが、最後はハーランドがゲット。なお、挑発するタイプのセレブレーションをやったせいでめっちゃもめた。

 トータルスコアは追いすがったセビージャだったが、1点差まで追いついたのは95分のこと。やや時すでに遅しだった感がある。数的同数の前提のマンマークのメカニズムを壊したのはハーランド。セビージャを力技でねじ伏せてベスト8に駒を進めた。

試合結果
ドルトムント
2-2 セビージャ
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
BVB:35′ 54′(PK) ハーランド
SEV:68′ 90+6′ エン・ネシリ
主審:ジュネイト・チャキル

③リバプール×ライプツィヒ

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■イケイケ感を体現した中央の縦関係

 1stレグは勝利したものの、リーグ戦は絶不調。ホームゲームでは6連敗という苦しい状況になっているリバプール。ホーム扱いの2ndレグがハンガリーで行われるのは移動はハードでもメンタル面にとってはラッキーなのかもしれない。

 先に言っておくけど、この試合はちょっと消化しきれなかった感じがする。ので、また後日見る。ひとまず思ったことを書いていくのでご承知おきいただきたい。

 この日のリバプールには違和感があった。一番初めに感じたのはチアゴがやたらエリア内に入っていく頻度が高いことである。攻撃的なイケイケ感を感じた。チアゴはやたらフリーダムにエリア突撃していく姿は最近のリバプールでは見られない光景である。

 じゃあイケイケなのかこの日のリバプールは!となりそうだが、そういうわけでもない。ライプツィヒはフォーメーションの噛み合わせ的にアンカー(カンプルが移動してきて3-1-5-1みたいになってた)とWBが空くんだけど、移動してライプツィヒがフリーにしようとしたアンカーとは違いWBは初めから浮いているポジション。イケイケなリバプールなら、まちがいなくここはSBで駆逐しに出てくるはずなのだが、出てこずにライプツィヒに明け渡したイメージ。

 そのせいで浅いサイドの位置からPA内に巻くようなクロスを放つのだが、このクロスは今一つ精度が出ない。出れば武器になりそうなものだけど。どこまでリバプールはわかっていたのだろう。

 後半のリバプールは前半よりも積極的にプレスに出てくる。交代で入ったセルロートがサイドに流れるプレーを多くするせいか、リバプールはフィリップスがつり出される頻度が増加。この空いたスペースを素早くつきたいライプツィヒだが、その一手が見当たらず。前半に引き続き惜しい感である。

 一方のリバプールの攻めは得点シーンで少しクリアになったように見えた。これまでのリバプールは開かないWGがフィルミーノの隣に並び、開くWGのサイドからクロスを上げて勝負!みたいな形だったが、この日はアタッカーが中央で縦関係を形成。ポストで前を向く選手を作り、サイドに振り、逆サイドのWGと中央の選手でフィニッシュという3トップ+トップ下のような形での攻撃だった。確かに怪我する前のジョタがいるときはこんな感じの攻撃が多かった気がする。

 チアゴのトップ下起用も、ケイタが躍動した理由もこれなら腑に落ちる。一方でこの日のリバプールの変わり身がライプツィヒ対策によるものとは考えにくい部分もある。これは勘なんだけど、どっちかというと自分たちにベクトルが向いた修正変更に見える。のびのび攻めるの楽しいよね?みたいな。おおざっぱすぎるか。なので代表ウィーク中にもう一度見返してみようと思う。

試合結果
リバプール 2-0 ライプツィヒ
アンフィールド
【得点者】
LIV:70′ サラー, 74′ マネ
主審:クレマン・トゥルパン

④パリ・サンジェルマン×バルセロナ

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■メッシよりもムバッペよりも・・・

 1stレグのスコアを見ればバルセロナは絶体絶命に追い込まれているといっていいだろう。突破には奇跡が必要なバルセロナである。この日のバルセロナのスタメンは3-4-3を採用。90分を通してバルセロナのボール保持主体で試合は進む。

 パリの布陣は4-5-1風だった。『風』というのは左サイドのムバッペが完全に中盤を埋める役割を果たしてはいなかったから。前残りでバルセロナにカウンターとしての脅威を突き付けていく形。ただし、中盤は3センターで構えているように見える場面もあったので、4-5-1と4-4-2の中間のように見える。

 バルセロナは3CBで数的優位を確保しつつ、中央に入ったデ・ヨングが左右にパスを供給する司令塔。3CBが持ちあがれば中盤が動くので、バルセロナは空いているところからボールを運べばいい。パリの中盤が実質4枚だと大外両方をカバーできないので、バルセロナとしてはWBを活用して左右に振る形でまずはポゼッションを安定化させた。

 サイドだけでなく中央でも打開策は用意をされている。パリはある程度降りてくるメッシを気にしながら中盤のラインが決まる(決められる?)感じがしたのだが、その歪みをペトリやブスケッツ、グリーズマンが使うのが上手かった。バルセロナは前後半通じて間のパスを入れてからフィニッシュに向かうまでがスピーディ。後半はよりパリがマンマーク基調でマークしてきたため、この中央における歪みを使って前進するパターンが増えた。応援しているアーセナルがこの部分に課題があることもあるんだけど、バルサには1stレグよりも個人的にははるかにいい印象を持った。

 仕上げを担当したのは裏に抜けるデンベレ。サイドにせよ、中央にせよ個の裏抜けはバルサの攻撃の出口になっていた。もう少し決定力があれば!といいたくなってはしまったけども。

 リードがあるパリが少し受け身だったこととか、それでも点を取ってしまうムバッペとか、メッシのマーベラスな得点とかいろんなトピックがあったけど、このバルセロナにとって最もポジティブなのは外と中にルートを作り、高い技術を活かしてシュートシーンまで持って行けたということではないだろうか。

試合結果
パリ・サンジェルマン 1-1 バルセロナ
パルク・デ・フランス
【得点者】
PSG:30′(PK) ムバッペ
BAR:37′ メッシ
主審:アンソニー・テイラー

⑤オリンピアコス×アーセナル

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■ぬぐえない疑問と咎められない幸運

 欲しい結果を手にしたアーセナル。だが、この日のアーセナルはよろしくなかったように思う。まずは守備ブロック。バーンリー戦を踏襲するような前線からのマンマークを行っていた。だが、特に前線はオリンピアコスのバックスにプレッシャーを激しくかけにいくわけではなく、オーバメヤンとウーデゴールはとりあえず前に出ていくだけ。無駄に陣形を間延びさせるだけであまりプレスの役には立っていなかった。

 さらに気になるのは2列目の守備。ボールが逆サイドにある時もSHがタッチライン幅に広がって守るせいで2列目の間はスカスカに。オリンピアコスは縦パスが通し放題の状況だった。ちなみにDFラインはSBがペナ幅くらいだったのだけど、これはどういう意味があるのだろう。

 攻撃においても停滞感は否めない。サイドの連携は立ち上がりこそよかったものの、徐々に停滞。ボールホルダーにパスコースを作る動きが完全に止まってしまったせいで、その先に進むことが出来なかった。序盤はティアニー、ベジェリンがホルダーを軸に追い越す動きを見せたことでサイドの攻撃は完結していたのだが、だんだんとその動きも減少。サカを除けば、打開のためにオフザボールに汗をかく選手はわずかだった。

 幸運だったのはこの日の相手がオリンピアコスだったことだろう。彼らにはアーセナルの守備のギャップをつくほど緻密ではなかったし、守備においてもアーセナルのブロックへの侵入に対するケアが甘かった。どうやらバックスに負傷者が多いようである。だからこそ、得点はプレスがハマった1点にとどまったのだし、普段ミドルの少ないアーセナルが2本もミドルを決められることになるのだろう。

 内容的には不安が募るアーセナルだが、ひとまず結果が大事な試合であることも確か。ウーデゴール、マガリャンイス、エルネニーのスーパーゴールが少しでもアーセナルの雰囲気を上昇気流に乗せてノースロンドンダービーにいい状況に臨めることを今はただ願うばかりだ。

試合結果
オリンピアコス 1-3 アーセナル
スタディオ・ヨルギオス・カライスカキス
【得点者】
OLM:58′ エル・アラビ
ARS:34′ ウーデゴール, 79′ ガブリエウ, 85′ エルネニー
主審:ダニエル・シーベルト

   おしまいじゃ!!

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