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「Catch up UEFA Champions League」~Round16 1st leg②+α~ 2021.2.23-2.25

目次

①アトレティコ・マドリー×チェルシー

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■押し上げで解放されたジルーが大仕事

 5大リーグでトップを誇る失点数。バルセロナとレアル・マドリーが揃って不振のリーガを堅守を軸に席巻しているという自分のアトレティコへのイメージはどうやら一昔前のもののようである。直近4試合のリーガでわずかに1勝。失点は7試合連続で直近5試合では複数失点が2つと前半戦の好調は一転苦しんでいる。

 そういった背景から踏まえるとこの日アトレティコが選択した6-3-1のような形の守備ブロックは、通常の4-4-2では臨めないくらいアトレティコのコンディションが悪かったというやや消極的なスタート地点から来たものと考えるのが妥当である。

 アトレティコにこう守られるとまずチェルシーは幅を取るメンバーが機能せず、中央は相手に囲まれたジルーが孤立する。撤退守備における強さはアトレティコはさすが。膠着した相手に本来はジルーの高さは活きそうなものだが、そもそもアトレティコの守備陣がニアで跳ね返してしまうのならば話は別。ジルーにクロスが届かなければ意味はない。

 アトレティコがお見事だったのはロングボールでの陣地回復が難しい分、ハイプレスで陣地回復していたこと。相手がボールを下げた場合は前からビシバシ捕まえに行く。当然全体は間延びするのだが、きっちりと捕まえきるところまではやれるのだからすごい。非保持で陣地回復はすごいなぁ。一方のチェルシーは長いキックでのバックスからのキックは習得しておきたいスキルであることが再確認できた。

 後半はさすがのアトレティコも徐々に前に出ていく。SBと前線を行き来するコレアはいつかはぶっ倒れるんじゃないかなという目で見ていた。出ていったことでその分チェルシーに対してDFライン後方に抜けるスペースを作るようになってきたアトレティコ。6-3-1の起因となる保持時の怪しさはこの日も健在。むしろトランジッションでジルーのバイシクルで刺されてしまい先制点を献上する。

 6-3-1は堅さはあったし、プレッシングでの陣地回復ができるのだとしてはアトレティコの作戦としては理解できるものである。だからこそ評価が難しい。後半に見せた保持のクオリティは6バック採用に説得力を持たせるくらいには低調だったし、失点シーンだってカウンターで色気を見せたせいでそもそも6枚構えていない場面だ。一方で今のアトレティコでさえ少しは色気を見せるのだから、そもそも90分間ジリジリしたままでは色気をシャットアウトできるチームはこの世にあまり存在しないのかもしれない。

 チェルシーは2ndレグにおいてジョルジーニョとマウントが出場停止。特にファイナルサードでの貢献が光るマウントの不在は痛い。中盤の要をチェルシーは欠くことになる。CLでは転んでもただでは起きないイメージのシメオネのアトレティコ。ただ得点を取るにはもう少しリスクはとりたい。ここから2ndレグまでのリーグ戦のパフォーマンスで6-3-1から何歩分の前に出る勇気を付けることが出来るだろうか。

試合結果
アトレティコ・マドリー 0-1 チェルシー
スタディオヌル・ナショナル・アレナ
【得点者】
CHE:66′ ジルー
主審:フェリックス・ブリヒ

②ラツィオ×バイエルン

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■強度と頻度と代償と

 前回王者のトーナメント初陣はラツィオ。イタリア勢のトレードマークといえる守備における堅固さ。ラツィオもその強固さを有するチーム。5-3-2の陣形は非常にコンパクト。後方は5バックで5レーンを埋めつつ、前方には3センターがスライドしながらケア。バイエルンのSBにはラツィオはIHが出ていって後方の人数を確保した状態で迎え撃つ。

 バイエルンはサイドで多角形を作りながら崩していくスタイル。CH、SB、WGに加えてボールサイドの+1になるムシアラがアクセントになっていた。2点目はゴレツカが嚙んだ分、ムシアラへのマークが間に合わなくなってしまった感である。

 ラツィオはバイエルンの左右のSBに対して差をつけた対応。スピードがあるデイビスは早めに捕まえに行く一方、逆サイドのズーレには内側を切りながら、縦のスペースは空ける対応が多かった。だが、ズーレはその状況を利用して積極的に攻めあがる。決してスピードがあるとは言えないが、スペースを正確に見極めて仕掛けられるドリブルは比較的効いていた。

 ただ、攻撃を完結できない時はズーレの高いポジション取りはアキレス腱になる。同サイドのボアテングもスピードがある方ではないので。ラツィオはこちらのサイドからカウンターを作る。ノイアーに冷や汗を作る場面も何回かあった。

 しかし、トランジッションにおける強度という点ではバイエルンがはるかに上。同サイドに閉じ込めたいという意図は両チームとも同じなのだが、囲い込む素早さや攻撃に転じる迫力は段違いだった。特にラツィオが後方を向いてやり直そうとした時のバイエルンのラインの回復のスピードはとても速かった。

 したがって、ラツィオは直線的に先述のズーレの裏からシュートを狙う必要が出てくる。戻すと囲まれるし圧力かけられてゴールから遠ざかってしまうから。だが、バイエルンのエリア内の守備は対人能力が抜群。あと1枚を剥がせないパターンも良く見られた。ラツィオは形としては悪くないが、シュートまで持っていく精度はバイエルンの方が上。この試合でも囲い込みによるボール奪取からラツィオの陣形が整わないうちに早い時間から得点を重ね、前半で180分の大勢を決めてしまった。

 ラツィオとしても組織立った守備での健闘は見られたが、1失点目や3失点目のようなはっきりしたミスが出てくるとバイエルン相手には厳しい。このレベルにおける代償をきっちり払わされた格好になった。

試合結果
ラツィオ 1-4 バイエルン
スタディオ・オリンピコ
【得点者】
LAZ:49′ コレア
BAY:9′ レバンドフスキ, 24’ ムシアラ, 42′ サネ, 47′ OG
主審:オレル・グリンフィールド

③アタランタ×レアル・マドリー

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■摩訶不思議、マドリーの世界

 昨年は旋風を巻き起こしたアタランタは2年連続のノックアウトラウンドに進出。相対するはCLの重鎮であるレアル・マドリーである。レアル・マドリーはなんとこの試合にスカッド入りしたトップチーム登録のフィールドプレイヤーはわずかに11人。ケガによる影響、でかすぎ。というか良く11人組めるような形で満遍なくケガしたね。

 というわけで意図をもってこの日のマドリーのスタメンを読み解くのはほぼ不可能。もっとも竹内さんによると怪我人まみれじゃなくても、マドリーの狙いを紐解くのはハードモードらしいのだけど。

 それでもボール保持はマドリーの方が優勢。アタランタはRWBのハテブールの欠場が響いているのか昨年のイメージよりもローテーションアタックは非常に控えめ。マドリーを押し返す場面は少なく、アタランタがシュートまでご気つける場面はとても少なかった。

 マドリーの攻撃は読み取るのが難しかった。基本的にはサイドのトライアングル、特に左サイドを使うことが多いのだが、これもかなり即興性が強い。まずはクロースがアタランタのケアが薄い低い位置まで降りることでボールの収めどころになる。

 収めるところはいいのだが、これより先の手順が決まっていないように見えた。例えば、メンディのインナーラップは非常に多く見られた形。だが、前方のヴィニシウスがコースを空ける動きをするわけではないし、トップの位置にいるイスコが中のスペースを空けるために降りてくるわけでもない。

 相手を動かすという意識はあまり強くなく、それぞれがそれぞれの様子を見ながらそれぞれの原則にのっとってプレーしているように見えた。なので「メンディがインナーラップするから前を空ける」ではなく、「前が空いたからメンディがインナーラップする」みたいな形になっているように見えた。

 それでもうまいし、成り立ってはいる。現にメンディのインナーラップはアタランタの退場者を招く一手となった。だが、アタランタが数的不利に陥った際にそれを有効活用するような動きは見られない。具体的にはクロースやモドリッチ、イスコが低い位置で組み立てる代わりに高い位置で仕事をする選手がぼやけがちで、全体的に後ろに重くなったりする。試合終盤にはカゼミーロがCFのお仕事をしていたのだけど、竹内さん曰くこれもこれでおなじみの光景のようである。

 10人の上に理不尽なフィジカルを見せられそうなサパタが負傷となれば、アタランタには攻めあがる余裕はない。この試合でのシュート数はわずかに2本。枠内シュートは1つもなく、ひたすら我慢し続ける展開に。それでも我慢できそうな展開ではあったが、ここで勝利をもぎ取れるのがCLのマドリーたる所以。メンディの逆足でのミドルは仕組みとしてマドリーがアタランタに仕掛けた上で起こった出来事ではないものの、ここで勝ち切ってしまうのが恐ろしいところ。

 マドリーはとても面白いチームだった。なんかそれぞれ手練れの職人がもくもくとそれぞれの作業をやっている職場!って感じ。「あの人、こうやってるからこれやっとくか」みたいな。ベンゼマとかはそういう部分のスペシャリストのイメージだったけど、この試合のマドリーはそれぞれがそんな感じで結びついていたように見えた。つくづく不思議なチームである。

試合結果
アタランタ 0-1 レアル・マドリー
ゲヴィス・スタジアム
【得点者】
RMA:86′ メンディ
主審:トビアス・スチュイラー

④ボルシア・メンヒェングラートバッハ×マンチェスター・シティ

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■タイトな陣形を上下動で揺さぶる

 クラブ史上初めてのCLのノックアウトラウンドに駒を進めたグラードバッハ。彼らの門番として立ちはだかるのは優勝候補のマンチェスター・シティ。門番というには豪華すぎる相手がグラードバッハに立ちはだかることになった。

 共に4-3-3同士のフォーメーションの一戦。ボールの保持はマンチェスター・シティがメインで進める。昨年、中盤期間に見たグラードバッハはもっとストーミング寄りだったイメージだが、この試合ではじっくりと腰を据えて受けるスタイルだった。イメチェンしたのか、それともアップテンポにしたとて分が悪い相手という判断なのかはわからない。

 ということでじっくり構えたグラードバッハに対してシティがどのように攻略していくかが争点になる。グラードバッハの守備は非常に良く組織されていたと思う。彼らはまずはとにかくDFーMF間に侵入されないように中を塞ぐ。SHは高い位置を取りプレスにいくこともある。その際は同サイドの外に張るSBにIHがスライドしながらプレスに行く。出て行ったスペースはSHがカバーすることも。IHとSHが左右関係が入れ替わることがあるイメージ。それでも全体の陣形のバランスを崩さないまま保っている。

 大外はSBが出ていくところまではOK。CBはずらされないようにエリア内での立ち位置を維持する。ならば、シティの攻略法は外から打ち抜くことである。グラードバッハの2列目のラインの手前から解決策を提示したのはカンセロ。自陣低い位置ではアンカー、高い位置ではインサイドハーフのような振舞いだったこの日も間のスペースに顔をだすセンスは抜群。左サイドからラインを下げるようなクロスをベルナルドにピンポイントで送り先制する。

 2点目もダイレクトにラインをパスで通すのではなく、ラインの上下動の駆け引きをシティが制した形。シティはラインを下げるために大外のスターリングに預けて2人を引き付ける。そこでマイナスのスペースにカンセロの登場である。カンセロはまたしても先制点と似た球質のクロスを通すと、今度はベルナルドは折り返しを選択。これをジェズスが押し込んだ。

 グラードバッハもカウンターでは数回好機を得たものの、シュートにつながるラストパスが通らずシュートまでは至らない。地上を固めたグラードバッハも非常に健闘したが、ラインの上下動で主導権を握り、クロスで解決策を見出したシティの方が上手。やはりグラードバッハは不運な門番に当たってしまったようだ。

試合結果
ボルシア・メンヒェングラートバッハ 0-2 マンチェスター・シティ
プスカシュ・アレナ
【得点者】
Man City:29′ ベルナルド,65′ ジェズス 
主審:アルトゥール・ディアス

⑤アーセナル×ベンフィカ

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■キーワードは『一点突破』。締まらない90分を若武者とエースで跳ね返す

 1stレグはベンフィカホーム扱いでのローマで1-1。2ndレグはアーセナルホーム扱いでのギリシャでの対戦になる。勝ち抜けにゴールが必須なのはベンフィカの方。まずは内側を固めてアーセナルを迎え撃つ。中盤の3センターがスライドしながらボールを保持するアーセナルを同サイドに追い込む。

 アーセナルはオーバメヤンが左サイドに流れるリーズ戦スタイル。しかし、この試合ではスミス=ロウとポジションを入れ替えながら左に流れるというよりは、デフォルトで左サイドにいることが多く流動性が高いスタイルではなかった。崩しの手段も一点突破。オーバメヤンの左サイドからの裏抜けを仕上げの形としてベンフィカを崩しに行く。

 アーセナルも全く工夫がなかったわけではなく、ベンフィカの3センターを右に寄せながら、オーバメヤンのサイドを薄くしてから裏抜けしているので一点突破のための下準備はされていた。先制点のシーンはその布石を活かした場面。左サイドへの展開が始まるかと思いきや中央のオーバメヤンの抜け出しからダイレクトに陥れる形で先制点をゲットする。

 一点突破とはいえ、狙いを持ってボールを動かしていく攻撃はいつもならある程度評価はできる。だが、それでよし!とこの日はできなかったのは、守備陣の対応が怪しいシーンが多かったからである。基本的には難しい対応では撤退して相手の攻撃を遅らせることを優先するアーセナル。だが、この日はプレスの押し引きのバランスが悪く、無理筋で前に出ていくことでカウンター時に状況を悪化させる場面が散見された。それもティアニーやマガリャンイスのように割と信頼度が高い選手たちがこの判断をミスることも多かったのは気になる。

 無理筋のプレスがなくなっても、今度は引きすぎるせいで中盤がスペースを空けてしまう場面も。同点ゴールをぶち込まれたシーンでは明らかにセバージョスが最終ラインに吸収されてから中盤の立ち位置を取り直すのが遅い。セバージョス、なかなか去年中断明けのいい時のパフォーマンスが戻らない。2失点目もだけど、この日は厳しいものがあった。

   全体としてはチームとしての守り方がおかしかったというか、個々人の判断のおかしさの積み重ねがチームに不具合をもたらしていたという印象が強い。空中戦でマガリャンイスとルイスが完敗したのもなかなか珍しい。

 後半にビハインドを抱えて2点が必要になったアーセナルは両サイドに展開できるトーマスとサイドの崩し強化としてウィリアンを投入。特にウィリアンの投入は効いていた。それまでは裏抜け一辺倒だった左サイドの攻撃に内側に折り返す味を加える。ティアニーの魂こもった同点弾を呼んだのは、ウィリアンを投入し、攻め手の剣先を変えたことも一因だろう。ベンフィカも中盤をフラットな4枚にして、外をカバーできるような形に変更したが守り切れなかった。逆に押し込まれる機会を増やしてしまったかもしれない。

 あと一点必要なアーセナル。終盤はベジェリン⇒ラカゼットという壮絶なパワープレーに走った。その交代を機に前からの守備は死に、ベンフィカにボールを回され、空中戦は主導権を握られるという苦しい展開に。しかし、タレントを残したことで、千載一遇のチャンスをものにする。サカからのピンポイントクロスがこの日さえわたる動き出しだったオーバメヤンに。

 空中戦で主体として押し込む機会はあったベンフィカ。しかし、シュートまでの工程であまりにミスが多すぎた。対するアーセナルは苦しい時もチームを引っ張り続けた若武者と苦しい中で今季ピカイチのパフォーマンスを見せたエースのコンビネーションが終盤に光った。この日のテーマとなった一点突破は最後の場面でもキーワードに。見事に勝ち上がりに必要な3点目をモノにした。

試合結果
アーセナル 3-2 ベンフィカ
スタディオ・ヨルギオス・カライスカキス
【得点者】
ARS:21′ 88′ オーバメヤン, 67′ ティアニー
BEN: 43′ ゴンサウヴェス, 61′ シウバ
主審:ビョルン・カイペルス

   おしまいじゃ!!

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