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「Catch up Premier League」~Match week 22~ 2021.2.2-2.4

目次

①シェフィールド・ユナイテッド【20位】×ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン【19位】

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■逆天王山は個性のぶつかり合い

 入れ替わりの激しい首位争いは現在はマンチェスター勢のマッチレース。序盤戦で低迷した両チームのV字回復は今季のプレミア覇権争いの混迷の象徴でもある。一方で、最下位争いは開幕からほぼ変わらない顔ぶれだ。このカードは常に降格圏にどっぷりの両チームによる逆天王山である。

 試合は互いの個性がぶつかる一戦に。ウェストブロムの4-4-2ブロックに対してブレイズの3バックが数的優位を使いながら押し込む一方、ウェストブロムは手早いカウンターとディアーニュへのロングボールで直線的な攻撃を仕掛ける。

 ブレイズはおなじみになっていたサイドに多角形を作りパスコース作りと裏抜け、幅取りを組み合わせることでウェストブロムのサイドの攻略に挑む。しかしながら、エリア内に人が確保できない状況でのクロスからはなかなか決定機は生まれない。

 そうこうしているうちにウェストブロムは速い攻撃から得点。外に張ったロビンソンのクロスから最後はフィリップスが詰めて先制する。あとがなくなったブレイズは中盤を一枚削りマクバーニーを投入。そして何でも屋のマクゴールドリックが中盤に移るというやり方で起点を作る。下がりがちなマクゴールドリックの他にFWを2枚用意する形で全体の重心を高くする作戦だ。

 全体の重心が高くなったことでインサイドハーフのエリアへの侵入やワイドCBの攻撃参加の頻度が増えたブレイズ。2得点は共にバシャムが攻めあがった場面から。ワイドCBの的確で機を見たサポートというブレイズらしい持ち味を活かして見事に逆転に成功する。個性がぶつかり合った一戦は最下位のブレイズが制し、今季3勝目を挙げた。

試合結果
シェフィールド・ユナイテッド 2-1 ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:56′ ボーグル, 73′ シャープ
WBA:41′ フィリップス
主審:ポール・ティアニー

②ウォルバーハンプトン【14位】×アーセナル【10位】

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■数的不利でも優位でも残る懸念

 開始早々にサカが迎えた決定機はこの試合の前半を端的に表していた。ボール保持するアーセナルに対して、アタッカー4枚を並べた強気のウルブス。だが、ジャカを下ろして最終ラインに数的優位を作ったアーセナルに対してはプレスの対応策を見出すことが出来ず、ラインをずるずる下げてしまう。ボールホルダーへの制限もなく、簡単に裏を取られるウルブスをアーセナルが圧倒してシュートの場面を作り出す前半だった。

 立ち上がりのサカの決定機に加えて、ラカゼットのオフサイドなど決めそうで決まらない嫌な流れを変えたのはこの日は左サイドに起用されたニコラ・ペペ。対面のセメドを手玉に取る突破から逆足でシュートを突きさし待望の先制点をゲットする。

 しかし、試合は前半終了間際に一変。ダビド・ルイスの一発退場で流れは一気にウルブスに傾く。ウルブスの守備ブロックや攻撃時の人のかけ方を見れば、アーセナルは10人でも十分にショートパス主体での崩しに取り組めそうだったが、逆転を許すとミスが目立つようになる。レノが飛び出しの判断を誤り、この日2人目の退場となったところでこの日は詰みだった。

 一方のウルブスはルイス退場を誘発したウィリアン・ジョゼのいぶし銀の働きは光った。一方でアタッカーが突破一点集中のドリブルジャンキーになってしまっているという課題は相変わらず。数的優位を生かしてもっと楽に勝てる試合だっただけに逆転勝ちしてなお懸念が残る内容だった。

試合結果
ウォルバーハンプトン 2-1 アーセナル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:45+5′(PK) ネベス, 49′ モウチーニョ
ARS:32’ ペペ
主審:クレイグ・ポーソン

③マンチェスター・ユナイテッド【2位】×サウサンプトン【11位】

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■1分半でジエンド、余裕のスールシャールが息切れのセインツを一蹴

 実質、試合の大勢は1分半で決まったといっていいだろう。レギュラーメンバーを数名欠くサウサンプトンには、マンチェスター・ユナイテッドの面々を10人で迎え撃つ準備はできなかった。この後の試合運びを見ると11人いてももしかすると無理だったかもしれないけども。いずれにせよ、1分半で退場したヤンクヴィッツは舞い上がってしまっていてこの試合でプレーする準備ができていないことが浮き彫りになった。

 ここからは難しい流れになってしまったサウサンプトン。ひたすら自陣にこもるも、サイドでの守備が不安定。大外と内側を散らしながら攻めるマンチェスター・ユナイテッド相手になす術がなかった。懸念だった選手層の薄さが一気に噴出してしまった格好で屈辱の2シーズン連続の9-0(前回はレスター)を食らってしまった。

 ユナイテッドはこの日もルーク・ショウのクロスがさえわたっていた。特にワン=ビサカへのクロスは鮮やかでクロッサーとしてもワンランク上の選手になったといえそう。対人守備やビルドアップでのボール引き出しなど今季は一皮むけたシーズンになっている。

 試合のテンションがだいぶ緩んだとはいえ、マルシャルに徐々に動き出しが戻ってきたのは朗報。得点を決めてここからより緊張感の高い試合でも結果を出していきたいところ。主力を休ませ、懸念の前線にも得点というきっかけができたユナイテッド。ベンチでいつも通りリビングでお茶を飲んでいるかのように佇んでいるスールシャールも上々のミッドウィークを満喫したはずだ。

試合結果
マンチェスター・ユナイテッド 9-0 サウサンプトン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:18′ ワン=ビサカ, 25′ ラッシュフォード, 34′ OG, 39′ カバーニ, 69′ 90′ マルシャル, 71′ マクトミネイ, 87′(PK) フェルナンデス, 90+3′ ジェームズ
主審:マイク・ディーン

④ニューカッスル【15位】×クリスタル・パレス【13位】

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■噛み合わなさをうまく利用したのは

 試合が落ち着く前に早々に先手を取ったニューカッスル。クリスタル・パレスはクロスに対してジョエリントンに注意が行ってしまい、完全にシェルビーのミドルシュートのコースを空けてしまった。

 展開が落ち着くと互いに中盤の噛み合わなさが浮き彫りになる。中盤をフラットにしたクリスタル・パレスは幅を使った攻撃を行う。ニューカッスルは中盤菱形にしてサイドチェンジの起点を抑えたいところだが、どうもうまくいかない。中盤の距離感が遠く、クリスタル・パレスのボールの動かし方に対して後追いになる。

 結局サイドをえぐって深さを作ったところから同点に。ミドルを打つシチュエーションはニューカッスルの先制点と似た形だった。直後に見事なセットプレーから点数を重ねたクリスタル・パレスは試合を一気に逆転する。

 ニューカッスルはむしろ段差の多さのギャップをアルミロンを中心につきながら試合を進めていくが、クリーンな状況でのシュートのシチュエーションをなかなか作ることができない。クリスタル・パレスの守備はそこまで間を埋めるのが上手い感じはしなかったのだが。

 終盤は撤退したクリスタル・パレスを前に打つ手がないニューカッスル。頼みのサン=マクシマンもスペースがない状態では輝けず。逆に終盤はバチュアイやベンテケへのロングボールを駆使しながら、ザハが負傷で交代した後もうまく試合を進めたクリスタル・パレスの試合運びが光った終盤になった。

試合結果
ニューカッスル 1-2 クリスタル・パレス
セント・ジェームス・パーク
【得点者】
NEW:2′ シェルビー
CRY:21′ リーデヴァルド, 25′ ケーヒル
主審:ダレン・イングランド

⑤バーンリー【16位】×マンチェスター・シティ【1位】

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■プレスでわかる格の違い

 首位に立ち快進撃を続けるシティにバーンリーが胸を借りる一戦になった。バーンリーはボールを持たずとも90分ブロックで引きこもるようなチームではない。というか、プレミアのチームはもう割と90分引きこもるだけでは勝ち点を取るのが難しいことはわかっている。なのでミドルゾーンに構えつつ、保持されながらもなるべくゴールから遠ざけるようなライン設定をしているといったところだろう。

 ここ数試合のバーンリーの相手はアストンビラとチェルシー。いずれも最終ラインのショートパスでのビルドアップに難があるチーム。彼らに対しては場合によってはハイプレスを発動させて、アバウトに蹴ったボールを回収するというプレスを披露したこともあるバーンリー。

 ただ、この日の相手はシティ。ことビルドアップでのプレス回避に関しては彼らよりも上手。試しにプレスをかけてみるも、涼しい顔で縦パスを通したシティに対して、バーンリーが無駄なチャレンジをすることはあまり多くはなかった。

 そして、崩しにおいてもシティは違いを見せる。ハーフスペースから裏に抜ける形で先制点を引き出したのはベルナルド。出し手とのタイミングバッチリなオフザボールでの引き出しで、バーンリーの陣形を斜めに切り裂く。

 追加点はマフレズの引き付けから。2枚の相手を引き付けたところでニアサイドに抜けていくギュンドアンでラインを押し下げるとクロスに合わせたのはスターリング。対4-4-2のサイド攻略はこうやるんですよ!みたいなお手本の崩しで得点を重ねる。

 おそらくバーンリーはここまでの保持型チームとは一段上のステージの相手と戦う羽目になったことを途中で悟ったはずだ。頼みのロングボールもバーンズとウッドというレギュラーの2トップが不在では厳しい。多くのチームに一泡吹かせてきた今季のバーンリーだったが、この日ばかりはうまくシティに丸め込まれてしまった。

試合結果
バーンリー 0-2 マンチェスター・シティ
ターフ・ムーア
【得点者】
Man City:3′ ジェズス, 38′ スターリング
主審:マーティン・アトキンソン

⑥フルハム【18位】×レスター【4位】

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■引きずり込めずとも磐石

 前節はリーズのハイペースに付きあって敗れたレスター。ただ、終盤までペースを変えなかったことを考えると、もしかすると今のヴァーディ抜きのチームではある程度ハイテンポでのサッカーを志向しているのかもしれない。この試合も頭からレスターはハイプレス+縦に速い攻撃の繰り返しでフルハムをハイテンポに引きずりこもうとする。

 しかし、フルハムはそれに付き合おうとはしなかった。ボール保持でプレスを交わして整えることで試合のテンポを上げない。フルハムはWBのティティのところでプレスを脱出。このサイドのアタッカーのバーンズは後方の押し上げを確認しないまま前に出ていくため、フルハムはここをペースの落ち着けどころとする。

 ただし、この日のフルハムはその先のパスがつながらず、攻撃を完結させることができない。その上、レスターのカウンターがさえるという苦しい展開。中盤のプレスが弱く広いレンジのパスをのびのび送るチョーダリーは初めて見た気がする。先制点はフルハムのパスミスを起点としたカウンター。チョーダリーのパスを受けたマディソンのピンポイントクロスを沈めたのはイヘアナチョだった。

 さらに続く2点目はジャスティンが躍動。起点とフィニッシャー両方をこなす大車輪の活躍。オフザボールの巧みさ、攻め上がりの速さ、そしてフィニッシュの冷静さも含めて100点。今季の成長をうかがわせる得点だった。

 レスターが望むほどフルハムをハイペースには引き込めなかったような気がする。が、それでもミスを逃さず刺す姿はさすがの完成度。無理にテンポ上げなくてもいい気がするんだけどなぁ。

試合結果
フルハム 0-2- レスター
クレイブン・コテージ
【得点者】
LEI: 17′ イヘアナチョ, 44′ ジャスティン
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑦リーズ【12位】×エバートン【8位】

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■土俵を踏み散らかす個の力

 前節の対戦相手だったレスターを「リーズの土俵に乗ってきた」と評したが、この日のエバートンはそのレスターよりもリーズの土俵に乗っかってきたチームだった。試合はコンパクトさよりもボールが行きかうダイレクトさが主成分だった上に、エバートンもリーズと同じくCBのみを余らせるマンマークが主体である。

 唯一、エバートンでこの流れに乗り切れていないのがリシャルリソン。マーク相手のエイリングを離して、自由に侵入されることは一度や二度ではなく、ここは明確にプレスバックが機能していなかった。したがってリーズはこのサイドからズレを作ることができていた。だが、序盤戦のリーズと違いズレをズレのまま正確につなぐことができず、シュートシーンまでスムーズに向かうことができない。コンディションのせいなのか、再三指摘している芝の悪さ(ちょっとだけよくなったかも?)なのかはわからないけども。

 むしろ、ズレを活かす部分で強さを見せたのはエバートンの方。アンドレ・ゴメスの大きなパスで一気に局面が前に進むと、対面したラフィーニャを出し抜いて隙を作ったディーニュのクロスからシグルズソンが先制点をマーク。クロスが上がる際にニアに立っていたストライクはCBとしては余りにも諦めがはやすぎた。その他の場面でもマンマーク主体のゲームではリーズに対してのエバートン優位のマッチアップが所々で見られる前半だった。

 後半はリーズが押し込む場面が目立つものの、指摘したつなぐ過程でのズレとエバートンのGKオルセンが立ちはだかる。キャルバート=ルーウィンの追加点を前半の内に決めていたエバートンに対して1点差まで縮めるのが限界だった。

 押し込まれた後半はともかく、前半のエバートンは間延びした展開に対してあまり心地の悪さを感じていなかったように思う。リーズの土俵に上がっていたというよりは、その土俵にずかずかと上がりこんでいた。そんなイメージだった。

試合結果
リーズ 1-2 エバートン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:48′ ラフィーニャ
EVE:9′ シグルズソン, 41′ キャルバート=ルーウィン
主審:マイケル・オリバー

⑧アストンビラ【9位】×ウェストハム【5位】

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■輝く新戦力と黒子、実らなかった『勝ってなお反省』

 アストンビラは右サイドハーフのトラオレに代えてエル・ガジが入ったこと以外はいつも通りの面々がスターティングイレブンに名前を連ねた。一方で、並びはいつも比べて少々変更。普段はトップ下起用のバークリーをスリーセンターの一角とする4-3-3のような並びでこの試合に臨む。

 このマイナーチェンジの文脈としては直近のセインツ戦でのパフォーマンスがあげられる。勝利を収めたものの、4-2-3-1の中央ブロックを割られる縦パスをバシバシ通されて相手に侵入を許すシーンが多発。そこから先のパフォーマンスで詰まったセインツに助けられて勝利を手にしたものの課題を残す試合となっていた。その縦パスに対応するための変更だろう。

 成果としては半々か。グラウンダーのパスを塞げる部分はあったものの、アントニオにはロングボールが収まってしまうため、グラウンダーパスに対する手打ちが前進の制御にはならなかった。3センターの連動もまだまだで正式に使いこなすにはまだ時間が必要という印象だ。

 一方のウェストハムは新加入のリンガードが先発起用で躍動。ボールサイドに顔を出しまくる+1の働きでサイドからの崩しに貢献。本来のポジションを空けてサイドに流れたり降りたりするので、攻めあがりたいソーチェクとの相性も抜群。得意なダイナミズム溢れる展開からの2得点はウェストハムとしての船出にこの上ないものとなった。

 地味ながら一風変わった起用だったのが右のサイドハーフに起用されたフレデリックス。1列後ろが多かった彼をこの位置でわざわざ起用した意図はおそらくグリーリッシュを気にしてのことだろう。それを嫌がってかグリーリッシュは後半に逆サイドへ移動した。タイトな守備からは幾分か解放されたものの、左に流れることが多いワトキンスやバークリーとの距離が離れてしまい独力での崩しを余儀なくされた。

 新戦力と黒子で攻守にアストンビラを上回ったウェストハム。まだまだ上位に食らいつく準備はできていそうだ。

試合結果
アストンビラ 1-3 ウェストハム
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:81′ ワトキンス
WHU:51′ ソーチェク, 56′ 83′ リンガード
主審:アンディ・マドレー

⑨リバプール【3位】×ブライトン【17位】

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■奇策はアクセント、狙い通りにアンフィールド制圧

 ブライトンの対王者との試合の狙いはなるべくトランジッションを減らしながら戦うことにあった。不用意にプレスをかけすぎないが、前線のプレス隊は比較的ボールサイドに寄り目。近いパスをつないでペースをアップさせないようにパスコースを塞ぐ。

 この日のブライトンの左サイドのバックラインはCBがウェブスター、WBがバーン。はっきり言ってスピードはない。リバプールの攻め手はシンプルにサラーのスピードを活かして、同サイドの裏をとりえぐることだった。ただ、このパターンは成功するものの、ここの歪みを全体に上手く伝達させることができないリバプール。発生した右サイドの歪みをシュートシーンに持っていくことができなかった。

 その理由はおそらくオフザボールの動きの不足。インサイドハーフの役割や高さを頻繁に変えながらクロップは修正を試みるが、この日はなかなか攻撃の強度を上げる動きを見せることができない。ようやく途中交代のオックスレイド=チェンバレンが出てきたタイミングで少し縦方向の動きが出てきた程度だろう。逆にブライトンのバックラインは3人とも体を投げ出しながら輝いた。

 ブライトンはビルドアップにおける自在な人数調整でリバプールのプレスをいなす。問題なく敵陣に運ぶ機会が確保できるくらいブライトンのビルドアップはポテンシャルが高い。この日の特色はWBのバーンへのハイボールを送り、アレクサンダー=アーノルドとのミスマッチを作ること。ここの空中戦は全勝といってもいいくらい。最終ラインからの長いボールでの起点作りと、逆サイドからのクロスへの飛び込み役としてバーンは効いていた。念願の決勝点の場面はそのバーンの折り返しをアルザテが何とか押し込んだもの。狙ったパターンからのリバプール攻略に成功したといえるシーンだった。

 奇策に見えるバーンのWB起用もそれだけに頼らないボール保持のスキルがあってこそ。メンバーも並びも変わりまくりなのに普通に機能している。奇策をあくまでアクセントにして結果を得たブライトン。リード後も悠々と時計の針を進める立ち回りを見せたブライトンは、アンフィールドで勝ち点3を得る資格が十分にあったチームといえるだろう。

試合結果
リバプール 0-1 ブライトン
アンフィールド
【得点者】
BRI:56′ アルザテ
主審:ケビン・フレンド

⑩トッテナム【6位】×チェルシー【7位】

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■まぶされたプランは絵に描いた餅に

 ブライトン戦で披露した3-4-3は早々に店じまい。この日のモウリーニョが送り出したイレブンは4-2-3-1だった。特徴としては前の4枚が非常にナローに守り、チェルシーの攻撃のスイッチ役であるジョルジーニョとコバチッチを取り囲む。

 空いたサイドからのチェルシーの攻撃に対しては幅取役をSB、裏抜け役をCBが監視。間で受けるシャドーにはCHが根性でスライドして対応する。スイッチを入れられるCHを封じられたチェルシーは攻撃を加速させることが難しくなる。

 一見間延びしたように見えるトッテナムだが、前に残った4人はカウンター要員。キープ力に長けたケインの不在を数でカバーする。間延びしたスペースにマウントが降りてきて受け役になるチェルシーだが、その先でフィニッシュに至らない場面もカウンターのチャンスもできる。

 どうだろうか。これがこの試合のスパーズの狙いをなるべくポジティブにとらえた解釈である。しかし、あくまでこれは「狙い」。実際はどうだったかというと、前に残った4人は数がいても時間は作れず、裏抜けのケアを任されたダイアーは非常に軽率な対応でPKを献上。チェルシーに対してご丁寧にリボンを付けて先制点をプレゼントしたようなものである。

 前後分断したトッテナムの守備では間延びした中央のスペースでコバチッチに受けられると運ばれて押し下げられてしまう。ビハインドを背負ってさらに前線が前がかりになってからは空洞化した中盤を使われて簡単に前進を許す場面が増える。後方から押し上げたプレスで裏を空けるよりは、間を使われる方がリスクは少ないとモウリーニョは判断したのだろう。取り切れなかったリスクの分だけチェルシーに運ぶ余裕を与えてしまった印象だ。

 コバチッチが下がり押し下げるメカニズムを失ったチェルシーに対して終盤は攻める場面もあったスパーズだが、勝ち点を得るのにはふさわしくないパフォーマンスだったことは明らか。守り切れないバックスも、数がいても押し上げられない前線も期待には応えられず、ケイン不在の呪縛からは解き放たれなかった。そもそもの「狙い」もうまくいく可能性がなかなか薄いものだったように思う。得点は遠くリーグ戦3連敗となった。

 一方のチェルシーは3試合連続無失点。システムで言えばトゥヘルの人選から考えても、おそらくトップに純然CFを置かない前線の組み合わせがひとまず一歩リードといったところなのだろう。しかし、連携はまだまだ。この日もヴェルナーがうつむくシーンはとても目立った。

 ずっと俺のターンでのハーフコートゲームをここまで試行していたトゥヘルにとってはチアゴ・シウバの離脱も痛手。危険の芽をあらかじめ摘み取ることで、スピードのない最終ラインをプロテクトする大黒柱の離脱が長引くようだと懸念は膨らむ。

 試合が続く日程で多くを望むことは難しいかもしれないし、トゥヘルは短時間で箱を作っただけで十分だともいえる。ただ、現状ではランパードが最後まで苦しんだ前線が輝く仕組み作りまでは手付かず。そこに手を付ける日まで勝ち点を重ね続けることで、ファンとフロントの信頼を得られるかがまずはトゥヘルにとってのハードルになりそうだ。

試合結果
トッテナム 0-1 チェルシー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
CHE:24′(PK) ジョルジーニョ
主審:アンドレ・マリナー

   おしまいじゃ!!

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