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「上位進出のキーになるポジションは」~2021.1.30 プレミアリーグ 第21節 アーセナル×マンチェスター・ユナイテッド レビュー

スタメンはこちら。

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目次

レビュー

■同サイド封鎖が互いに成功

 前回対戦は両チームにとってきっかけとなった。勝利したアーセナルはここから7試合未勝利の泥沼に突入。逆に敗れたユナイテッドは奮起。前節のブレイズ戦まで無敗街道をひた走ることになる。今回の対戦も何かのきっかけになる一戦になるのだろうか。

 両チームともテンションは高い立ち上がり。自陣からのビルドアップによるスムーズな前進は難しい状況だった。特に前線からの献身的な守備は両チームとも際立っていた。サイドにボールを出しても中盤のスライドが十分間に合っており、そこから先に進むことは難しい。

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 前線が起点を抑えることに成功しているので中盤のスライドを上回るサイドチェンジが機能しない。基本的にはどちらが攻撃側に回っていても同じ。同サイドを防いで逆サイドに展開することも防ぎ、後方に戻すというムーブが目立つ。

 唯一、左SHに起用されたポグバだけはベジェリンを背負ってキープすることができたが、周りが落としを拾ったところからの前進は不可。預けどころ以上の機能を果たすことはなかった。

 そうなるとユナイテッドの崩しは裏への脚力勝負になる。ジャカをラッシュフォードが振り切ったシーンのように個人が個人を出しぬくスピード勝負が効果的だった。

 ユナイテッドの前進でもっとも好印象だったのは13分のシーンだろうか。この場面では単純な身体能力ではない要素でアーセナルの守備網を打開。ブルーノ・フェルナンデスの横移動を軸にSBの裏をとることに成功する。ただ、このシーンもそうなのだがアーセナルのCB陣はスピードで後手を踏む分、読みがさえていた。加速しドリブルを開始する前に咎めることで簡単に前進はさせない。

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 プレビューでも触れたようにユナイテッドの今の難点は前線の動きが乏しいこと。仕上げとなる動き出しの鋭さに欠ける場面が多かった。

貴重だったスミス=ロウ

 アーセナルの前進もユナイテッドと同じでなかなか簡単に前には進めない。ただし、変な引っかけ方もしないので、ショートカウンターも起きない。激しいのだけど堅い展開だった。

 サイドからの多角形崩しが機能しないアーセナルは縦方向に速いパスでの打開が必要になる。そういう意味ではスミス=ロウのボールに絡みながらも連続的にオフザボールで動ける能力はこの試合で重宝した。空いた位置に立てばそれだけでボールを受けることができない相手に対しては、5分のシーンに見られるように立ち位置を動かしながら受け手と出し手の両面を連続的に行う必要がある。余談だけどスミス=ロウに代わってウーデゴールが入ってきたときの課題になりそうなのはこの要素かなと思っている。

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 動的な要素をもたらすという意味ではマルティネッリの存在も貴重だった。けどもこの日は少々ボールコントロールにアラがあり、プレッシャーに屈する場面も少なくはなかった。

 中央ではフレッジをどうどかすか?という部分が肝になる感じ。食いつきがいいのは間違いないので、ドリブルをしつつ一発で取りに来たところをかわして加速したスミス=ロウのようになれば理想なのだが、そう簡単にはいかない。先ほど図示したようにパス交換から食いつく形でずらしていくのが理想か。

 ただこの日はポグバが守備もやる気満々だったのでサイドにフレッジがカバーに行かなきゃいけない状況はそこまで多くなかった。厄介。まぁ、向こうもペペはもう少し守備をしない計算だっただろうけども。

  30分に差し掛かるとアーセナルがリトリートをして試合のペースを調整するシーンが目立つ様になる。サイド大外からのクロスがファーでフリーのラッシュフォードの下に落ちたシーンはアーセナルファンは冷や汗をかいただろうが、ユナイテッドもアーセナルのブロックには手を焼いていた。

 アーセナルは逆に撤退守備から前線の脚力でロングカウンターで裏返すやり方に。ただこちらもゴールに近いチャンスを創出するには至らず。前半は両チームとも理想的な加速から相手ゴールに迫るシーンがない堅い展開だった。

■マルティネッリ⇒ウィリアンの交代を考える

 後半頭、マルティネッリに代わってウィリアンが入る。アルテタによると戦術的な交代。攻守において至らない点があったとの評価のよう。

 マルティネッリは非保持においては割と自陣に戻ってのスーパークリアが目についた分、好印象だったのだが、ポジショニングや細かい個人戦術の部分でもう少しやりようがあったという判断だろう。自陣まで戻る献身性は問題なかったのだけど。

 攻撃面では確かに足元のおぼつかなさはあった。だが、述べたようにこの日のアーセナルの攻撃面での2列目の役割には相手陣を縦断するようにオフザボールの動きの連続性が求められる。そういう意味では多少おぼつかなさがあってもウィリアンよりはマルティネッリの方がその役割をこなせるように思えた。

 ただ、後半は前半よりもアーセナルがボールを保持しながら押し込むような場面が多くなった。理由としてはいくつか考えられるが、まずはラカゼットが大きく落ちる動きを増やしたことで中央の起点が安定したこと。そしてその動きに合わせるように代わりに高い位置で受ける選手を用意して、縦方向のレイヤー移動を増やした。特にこれが見られたのは左サイドだった。

 予想通り、ウィリアンは加速して相手陣に迫ったり、オフザボールで積極的に裏をとる動きはなかった。それでも連続性が担保されたのは彼をフォローするセドリックの存在が大きい。

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 ペペがストライカー寄りに振舞ったこともラカゼットが落ちることを許容していた。左でも右でもいいけど、崩しの局面よりもう少し手前のシュートかラストパスに関わる最終局面で彼を使うことが一番大事なのかもなぁと彼を見ていて思う。

■サイドバックにはまだまだ求めたい

 さて、それでもアーセナルは点を取ることができなかった。どうやったら点をもう少し取ることができるだろうか。前線の調子が戻ってきたとはいえ、少ないチャンスをクリーンな形で仕留める昨季のようなスタイルに依存するのは微妙。仮にうまくいっても決定力という水物に頼ってばかりではなかなかにしんどい。

 となるともう少しチャンス創出の回数を増やす必要がある。キーとなるのは個人的にはSBだと思う。先に断わっておくが、この試合でのセドリックやベジェリンのパフォーマンスは悪くはなかった。が、今順位表が上にいるチームと比べるとSBの攻撃関与が物足りないように見える。

 確かにティアニーのクロスは精度が高い。が、彼から生まれたアシストは今季のリーグ戦ではわずかに1つ。アシストが全てではないとはいえ、彼のクロスの質を考えればもっとここから点は取れていいはず。チームとして彼のクロスを活かす仕組みは欲しい。

 他のSBは単純なクロスの質に難があるように思う。セドリックはサイドチェンジの質はいいが、左サイドだとえぐりにくい上にクロスを期待するのは厳しい。ベジェリンは逆にえぐれるが、キックの精度が攻撃に十分に寄与しているとは言えない。ナイルズは序列が低い上にどちらかと言えば時間とスペースを享受するタイプだ。

 割とSBに求められる早くてポイントに合うキックというスキルはハッキリしてきたので、それをばっちりやるのがまず理想なのは間違いない。ただし、そんな一朝一夕では改善は難しい。そう考えると彼らにはよりボールを引き出すという崩しのサポートの場面での活躍を期待するのがいいだろうか。

 この試合で見せたウィリアンのセドリックへのサポートもその1つ。81分に見られた内側に絞りながら縦へのパスを引き出すベジェリンの動き出しも有効だろう。できればこれらの動きはもっと長い時間見たいところ。このような動き出しはそもそもトーマスがスタメン復帰したころから見られるようになった。縦へのパスコースを見逃さないトーマスの存在が、アーセナルのSBのオフザボールの動きを促してくれるのならば好都合。

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 その81分のシーンのように前線のストライカー(このシーンではペペ)へのお膳立てへの機会を増やしたいところ。CHが深く構えるタイプばかりなので、どうしてもこの部分はSBが前に出ていって仕事をするほかない。上積みがあるとしたら彼らのオフザボールの動きだろう。

あとがき

■試合コントロールは◎だが

 勝ちたかったけど相手がソリッドだったので仕方がない!というのが両チームの感想ではないだろうか。試合としてどちらがプランが効いている時間が長かったかといわれればアーセナルの方な気がするが、決定的なシーンがどちらが多かったか?といわれるユナイテッドになる気もする。

 アーセナルは90分を意識しながらある程度ペースをコントロールしていたことが好印象。おかげで後半にも主導権を握る展開を作ることができた。前線の不調というシンプル(そして今季のアーセナルが通った道)な原因の改善が必要なユナイテッドに比べると、課題はやや複雑。どう対応するだろうか。

 そして、残念だが順位表を見ればこの引き分けには満足したとは言えない。両チームとも。未勝利負債がまだあるアーセナル。星取りにはシビアにならなきゃいけない状況ではあるがサカ、オーバメヤン、ティアニー不在でなんとか勝ち点をゲットしたのは大きい。何とかあと2勝で連戦を締めくくり、欧州カップ戦争いに首を突っ込みたいところである。

試合結果
2021.1.30
プレミアリーグ
第21節
アーセナル 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
主審: マイケル・オリバー

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