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「質問に答えてみましょう」~2020.12.19 プレミアリーグ 第14節 エバートン×アーセナル レビュー

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■粗々でも終着点が違う

 ドラフトやら詰まっているプレミアの試合消化やらJリーグレビュー完走の余韻に浸っているやらですっかり忘れていました。明日はチェルシー戦ですね。ここ数試合は徒然なるままに形式でつづっていたので、本当は試合直後に書いた方がいいんだろうなと思いつつ延び延びになってしまった状況にすると、やっぱり試合直後に書いた方がいいなと思いました。

 今節の対戦相手はエバートン。レスターとチェルシーを撃破しており波に乗っているチームです。彼らのここ数試合のスタイルは中盤のマンマークを主体として無秩序になっていた行動範囲を制御しつつ、受け渡しを整理することにより中盤のコンパクトさを維持するやり方がハマっています。

 チェルシーはWGのビルドアップ関与が甘くインサイドハーフがマンマークを振り切れない限りは活路が見いだせません。そしてレスターはWGがエバートンが網を張っている内側にカットインする動きが崩しの主体でした。なので共にエバートンの打った改善策には相性が悪い相手でした。

 そういう意味では今節のアーセナルは彼らにとっては相性がいいタイプとは言えません。なぜなら彼らは中央を使わないからです。そもそも捨てています。なのでエバートンが網を張っている部分とは別のところから攻めていくアーセナルは対策がばっちりハマる相手ではありません。

 ただし、アーセナルは攻撃が完璧に流れていたかといわれるとそれは全く別の話です。中を使わずに外々の傾向は相変わらず。いわばトッテナム戦やバーンリー戦と変わらない攻め筋です。それがうまくいっていないことはさんざん述べてきたので、今更それは述べません。

 しかし、エバートンはいい形でボールを奪えなかったのは事実なので、そういう部分では攻め手には苦しんでいました。彼らのここ数試合の攻め手は上がったSBの裏から素早くカウンターで刺すというものがメイン。奪い方が良くなければそのムーブまではいくことができません。

 ハメスがいなければ大きな横の揺さぶりは使えないし、同サイドのオーバーラップを活かしたコンビネーションもありません。というわけでイウォビの内側での切り込みからスペースを作り出すのが攻め手になります。逆サイドのリシャルリソンをメイトランド=ナイルズが食い止められたのもエバートンの攻め手を狭めた一因です。

 それでもエバートンの方が攻め手の筋は良かったと思います。なぜならば、彼らにはアバウトなクロスさえ上げてしまえば、キャルバート=ルーウィンという高さだけでなくスペースへの入り込みに特化しているストライカーがいるからです。このエリア内の優位はそこまでのアバウトさを帳消しにできます。

 「アーセナルに今誰でも連れてこれるとしたら誰がいいですか?」という質問が質問箱に投げられており、この質問には「アレクサンダー=アーノルドかキャルバート=ルーウィン」と答えます。これは今のアーセナルのクロス攻勢を正当化するためには優れたクロッサーとエリア内のターゲットのどちらかが欲しいという意味です。

 エバートンのこの試合のボール保持にはハメス、ディーニュ、コールマン(ベンチにはいたけど)の不在を感じさせるものでしたが、それをキャルバート=ルーウィンで正当化しているというイメージです。

■結局よくなっているの?

 せっかくなのでもう1つだけ質問に答えて終わりにしようと思います。こっちの質問にはまだ答えていないのだけども。

「内容はよくなってきてると色々な人がよく言われますが、どこがよくなっていると思いますか?良くなっていないと思いますか?」

 そのあとの文章に「得点はクロスのみ。またサカ単騎で守備もカバい(原文ママ)」と続くので、まずこの方は今のアーセナルがあまりよくなっているという印象を持っていないのではないかなと思いました。

 良くなってきている部分として挙げられるのはこの試合の後半でしょうか。確かに内側も使えるようになっていた気はしますし、直近のアーセナルの中では悪くない内容だったように思います。

 ただ、それは個人個人のパフォーマンスや特性の範疇を出ないように思えます。例えばサカやマルティネッリは動き出しに特徴である選手です。というか、今のアーセナルではオフザボールでの動き出しを意識している前線の選手がとても少ないので彼らはとても目立ちます。サカがいなければ、よりアーセナルの前線は停滞感が増していることでしょう。困ったものですね。

 ウィリアンあたりは動きのシャープさや守備での献身性(なんでこれが出来なくなったんでしょうね)は感じませんが、攻撃において顔をだすべきところに出すようにしようとする意識は見て取れます。そういうスペース感覚のある選手とサカやマルティネッリのような動き出しができる選手が組み合わされば、チャンスになる時もあります。

 今のアーセナルにとって「うまくいく」とか「良くなっている」というのはそうした選手同士の組み合わせがハマったとかそういう次元の話のように思います。例えば、「ラカゼットがエンケティアよりもボールを収められる」とか「トーマスがいれば中央をかち割れる」とかもそういう部類の話な気はします。

 しかし、エルネニーやセバージョスはトーマスにはなれません。彼らは彼らなりに特性がある選手です。それも、周りと組み合わせて使わなければ特性は出てきにくいタイプです。アルテタがよしとしている(少なくとも表向きは)今の中央を回避することがベースとなるシステムが続く限りは、彼らが貢献度が高いプレーを見せるのはまず無理だと思います。

 単騎でも持ち味が目立ちやすい選手はいますし、そういう選手が多い分今のアーセナルはいい状態に見えるのだと思います。悩ましいのは今のアーセナルでダメな選手が、アルテタのアーセナルになってから輝きを放っていた選手であることです。

 昨季のセバージョスはトランジッション局面で攻守に起点として十二分の働きができていたし、エルネニーがオールド・トラフォードで称賛を浴びたのはたった2か月前のことです。彼らはアーセナルで何も証明できていない選手ではありません。それでも今のアーセナルで輝けないのは当然の帰結のように思えます。今のアルテタ政権にNO!と言い切れない人の一部にはなまじこうしてできていた時期があるからというのが理由として挙げられる人もいると思います。自分にもその部分は大いにあります。選手も監督も初めからダメダメならばあきらめるのも簡単なのですが。

 前線の動き出しの部分などは選手のモチベーションに大いに依存する部分でもあるでしょうが、仕組みが浸透していない結果ともいえるでしょう。いくら彼らの動き出しが鋭くとも、彼らが動き出してから「あ、動いたわ」となってボールを出しても効果は薄いです。複数選択肢を提示できていれば相手の動きを見ながらプレーを選択することの効果は大いにありますが、今のアーセナルはアドリブの動き出しでなんとか1つ目の選択肢を捻出している状態といえます。

 確かに良くなっているように見える時間帯もあります。仮に勝ちという結果が出れば、もともと足りていないエネルギーの部分での上積みがもたらされ、ここまでのレビューで散々述べているじり貧の根元が改善される可能性もあります。

 しかしながら、志向するサッカーというハード面は明らかにアーセナルにとって大きな問題です。ここ数年のフロントの迷走ぶりを前提とすれば、アーセナルが今現在リーグテーブルのトップにいないことはアルテタの責任とは言えないでしょうが、15位に沈んでいる状況でアルテタに責任はないということもまた無理がある話でしょう。選手たちが「監督に責任はない。自分たちの問題。」といくら擁護しようが、それは別の問題に思えます。アーセナルにおいて、15位に沈んだ責任がない人が指揮を執っているのなら、それもそれでおかしな話です。

 起用されている選手、動き出しの少なさ、生かすレパートリーのなさを考えれば、その1勝を理屈を持って引き寄せるサッカーをしていると胸を張って言える状態ではありません。

 昨年は敗れながらも確かな手ごたえを感じたのがアルテタが就任して間もないチェルシー戦でしたが、あの日とは全く違う心持ちでアーセナルとアルテタはビックロンドンダービーを迎えることになります。

試合結果
2020.12.19
プレミアリーグ
第14節
エバートン 2-1 アーセナル
グディソン・パーク
【得点者】
EVE: 22′ OG, 45′ ミナ
ARS: 35′(PK) ペペ
主審:アンドレ・マリナー

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