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「ここがアジアの第一歩」~2020.12.19 J1 第34節 柏レイソル×川崎フロンターレ レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
違和感の正体

 共にいつも通りのフォーメーションで臨んだ試合。川崎は4-3-3、柏は5-2-3を基本の立ち位置としていた。互いに中盤の噛み合わせを強く意識していて、柏は川崎の3センターに対して大谷、三原、江坂の3枚で守る。通常の立ち位置で言うと江坂はシャドーなのだが、ロールとしてはトップ下に近い役割だった。アンカーである守田をケアしていたし。ちなみに川崎の守備時は逆に江坂を守田が監視していた。

 なんとなくこの日の川崎のボールの動かし方には違和感があった。なんというか真ん中に立つ選手がいないなと思った。守田が最終ラインに落ちる動きをすることは珍しくないけども、インサイドハーフの2枚もブロックの外側に位置することが多かった。大体は柏のMFラインの手前か、DFラインに張ることが多かった。

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 どちらかと言えばインサイドハーフは前に張る役割の比率が高め。ここ数試合は立ち上がりに田中が守田とフラットでビルドアップの手助けをする機会が多かったのだが、この試合ではそれも控えめ。旗手に「降りてくるな」と指示が飛んだことも踏まえても、インサイドハーフには高い位置で何かしらの役割を果たしていた可能性は高い。

 中に人がいないということで川崎のSBは外循環が中心となる。柏はオルンガ、クリスティアーノ、江坂で川崎のCB+アンカーを追いかけていたので、SBには比較的時間を与えられやすい。というわけで1つここが起点になることが多かった。

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 おそらく川崎が狙いたかったメカニズムは以下の通り。

①後方からDFラインに張る選手に縦へのパスを入れる
②ポストから裏に抜けるパスをつなぐ(横パスを挟んでもいい)
③裏に抜けた選手と並走する選手にクロスを出してフィニッシュ

 例えばこんな感じ。

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 19分のシーンとかは川崎が狙いたい形だったのではないか。1分半のシーンとかもうまくはいっていないのだけど、上記の形が狙いたかったのではないかということが類推できる。

 田中や旗手が前線に張る機会が多かったのは、裏抜けする選手とは別に③においてその選手と並走する選手を数人確保しておきたいからであり、インサイドハーフには走り込みの選手がある両名を起用したものと考える。

 こういう形を使ったのは柏の中盤の前方へのボールハントの力を鑑みてではないだろうか。川崎のDFの選手が中央に立つ選手にパスを出しても、前を向くことは許されずに後ろにパスを出すしかない場面はあったし、ボールを奪われて危険なショートカウンターに陥る場面が多かった。狙いとしてはこのような中盤でのデュエルを回避するための物だろう。直近で鳥栖や清水など中盤でタイトなバトルを仕掛けてくる相手に対しての1つの解決策の案なのかもしれない。

 ただし、その川崎の狙いがハマったシーンは多くなかった。この日の川崎の前線にはタメが作れる選手があまり多くなく、ワンタッチでつなぐことを試みる機会が多かった。確かに、柏は前に出てくる過程において後方のスペース管理が甘くなりがち。なので通れば面白いのだが、川崎もまたその早いテンポでのプレー精度が伴うことはなくパスミスでの攻撃終了は非常に多かった。

    柏はカウンターの馬力でいえばおそらくリーグトップクラスの破壊力。リアクション主体の展開となったが、高い位置で止められているうちは問題なし。というよりむしろ持たせて中盤で刈り取れている前半の後ろ半分は明らかに柏ペースといっていいだろう。

 カウンターの終着点となったオルンガに関して言えば、マッチアップがずれると即死案件なのがハード。ずれなくても単騎で止められるわけではないが、CB以外の相手と競り合ってもほぼ無駄という状況。先制点の場面では山根が最後に競りかけたけど、まぁあんまり意に介していない感じでした。見事我々もオルンガ被害者の会に入会いたしました。諸先輩方よろしくお願いします。

 川崎としては流れの中で山村が上がっているタイミングだったのが痛かった。どうしても攻撃を完結させなければいけない場面であったが、齋藤のクロスが跳ね返されてしまったところから一気に攻め込まれてしまった。

 ボール奪取、あるいは川崎のパスミスからはチャンスが作れていた柏だが、ビルドアップの局面になるとやや拙さを見せる。川崎の4-3-3にはWG裏のスペースを突くのが定石だが、ここの位置にサイドの起点を作れるケースは非常に稀。33分のシーンくらいだろうか。中盤がマンマーク気味になっているのはお互い様なので、柏も柏で強引に縦に展開できなければ手詰まり感はあった。

 それでも前線の迫力だけで川崎のバックスには対抗できることは非常に大きい。もう少しロジックで詰め切りたい川崎を尻目に柏がパワーで押し切って前半は終了する。

【後半】
両WGで整う

 後半の立ち上がりにはバッタバッタと両チームとも得点を入れる展開に。川崎が2点、柏が1点。共に相手のプレスに屈した格好である自陣での1点ずつと、川崎はセットプレーからもう1点。

 柏は後方のラインコントロールが怪しいという要素があることが前からの強気のプレスの要因の一つだろう。リードしてなお高い陣形を保ち続けていたのは理由があるはずだ。リーグ最多の15失点を喫しているセットプレーを避けたいという意志もあったはず。失点したけど。川崎は当然ビハインドなので、テンポを上げる必要がある。後半のそうしたリズムの早さもどこか落ち着かない立ち上がりの演出に一役買っていたのかもしれない。

 盤面の話でいえば、後半は川崎が有利だった。局面を変えたのは交代で入った両WGの三笘と家長。メカニズムは前半に述べた動きと同じでDFラインの前で受けて、そこからずれた裏を狙うという流れだったのだが、時間を作れる預けどころとしてまず家長が機能したことでかなり棲み分けが出来た印象だ。

 タメを作れる家長の登場により、前半は少し迷子に見えた旗手も、自分は受けるのではなく、PAに走りこむ役割だ!と割り切ることが出来た様子。後半は少し遅れてPA内に走りこむことで相手の対応を惑わせていた。

 DF前で前を向ける状況を作れたら今の登里-三笘のコンビを止めるのは難しい。家長のキープから展開されてきたボールからPAに迫るアタックを量産する。

 柏は徐々にプレスのラインが下がるように。家長と三笘の登場で前半よりも高い位置で触ることが出来るようになった川崎のSBに柏のシャドーが徐々に引っ張られるように。5-4-1のような形で重心が下がっていく機会が増えていく。

 こうなると陣地回復も難しくなってくる。オルンガには当てることはできるが、周りの選手との距離が遠く当てた後の選択を持つことが徐々に厳しくなっていった。交代で入った呉屋も仲間も奮闘していたし、実際にチャンスを作ることはできていたが、独力で味方を引き上げるまではいかず、機会という面では前半よりもグッと減ってしまった。

 いい攻撃はプレスから!なんだけど、中盤にだんだんと疲労を感じるようになってきた柏。そんな柏を尻目にいいプレスから決勝点を決めたのが川崎。小林悠のパスカットから、最後は三笘⇒家長のWGコンビで逆転弾を生み出す。最後は柏の猛攻を受けるも、ここは守備陣が奮闘する。立ち上がりこそリズムを崩された川崎だったが、徐々にペースをつかむと見事前節に続く逆転勝利を飾ることに成功した。

あとがき

■課題の局面を減らすことが上位進出の鍵

 柏は強みと弱みがはっきりしているチームだった。プレス&カウンターの局面に限定できている時間帯はおそらくリーグでもトップクラスの実力のチームだろう。しかしながら、受けに回ったりだとかボール保持の時間帯を与えられたりするとチームとしての怖さはトーンダウンしてしまう印象。

 どこのチームでも弱い局面はあるものだが、それを対策で覆い隠すのも現状では難しいような気がする。90分あればどこかの時間帯で相手に付け込まれるタイミングは起きてしまうのかなと思った。ざっくりビルドアップと撤退守備におけるラインコントロールに不満を感じたので、来季はそのどちらかが修正できれば今季より上の順位で争うことが出来そう。前線のスピード感を活かすなら撤退守備の方かな。セットプレーの守備も含めて引いた時の堅さを備えたいところである。

 今回、アウェイの柏戦ということで「柏でよりみち アディショナルタイムズ」にご縁があって寄稿させていただきました!もともと当カードの開催予定だった3月にも原稿をアップまで行ったのに、ゲーム自体が飛んでしまうということでリベンジの第2回。中村憲剛についてガンガン書いたもののベンチ外ということで、ガチっとハマった感のあることをかけなくてごめんなさい。楽しかった。ありがとうございました。川崎人くん写真借りました。

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■直近の課題の克服チャレンジだった?

 最終節にして非常に示唆に富んだゲームだったように思う。大分戦、札幌戦、鳥栖戦、清水戦と中盤にタイトにマンマーク色強く挑んでくる相手にことごとく勝ち点を落としていたのが後半戦の川崎の特徴だった。なのでこの試合はまずそこはなるべく使わない。中盤を低い位置でプレーすることにより、相手の前後分断を促して中盤を広げる。そして楔を使って一発で前進するというテーマがあった気がする。

 つなぐ過程でデュエルの機会はどうしても出てきてしまうが、中盤でショートパスの連続をつぶされるよりは、DFラインに近い位置の方がリスクも低く済むということだろう。なんとなくACLっぽい課題だし、無視はできないよね。試合の中である程度解決できたというのはポジティブな気もするが、一方で解決策はここ数試合で依存度が目に見えて上がっている家長と三笘というのは変わっていない。

 守備においても体格でアドバンテージにならないFWとのマッチアップは貴重。挟まないと難しいし、カバーリングでSBが入ったとしても無理。流れの中でジェジエウがサイドに流れる局面をどこまで減らせるかが来季の課題になりそう。山根が出ていったところをジェジエウが埋めるのはなんか既定路線ぽい守り方だったので。終盤の登里目掛けてのロングボールのあたりもACLではやってくるチームは多そう。

 来季の大目標とあるアジアへの挑戦には編成も含めてまだまだ対応が必要なのが現状だ。とりわけ自分は外国人枠が気になっている。

さいごに

 天皇杯で記事はまだ書きますが、ひとまずリーグ戦が終了ということで今年も1年間ありがとうございました。優勝が決まってからはプレビューをサボってしまいましたが許してください。

 多くの嬉しいお言葉をいただきながら前に進むことが出来ました。嬉しいお言葉を投げ続けてくれた皆さん、ありがとうございました。過密日程は書くのもしんどいですが、読むのもきっとしんどかったでしょう。せっせと読んで拡散してくれた皆さんのおかげで何とかなりました。そして今年もたくさん読んでくれた相手チームのサポーターの皆さん、ありがとうございました。

 そしてチームの皆様もお疲れ様でした。レビューを書くより読むより遥かに大変な仕事なのは言うまでもありません。優勝おめでとうございます。そしてもう一仕事頑張ってください。

 相変わらず今は来季の記事のコンセプトを決めるほどの余裕はありません。疲れました!とりあえず、来季どんな感じで記事を書いていくかはシーズンが始まる頃にまた考えさせてください。寂しさもありつつ、毎年シーズンが終わってホッとした感があるのはレビュワーあるあるなのでしょうか。それとも僕だけなのでしょうか。僕は毎年ホッとしています。今年はだいぶずれ込んだけどね!

 そしてあさってはJ1ドラフトだからそれも興味ある人はぜひよろしくな!

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