MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~Match week 11~ 2020.12.5-12.7

目次

①バーンリー【19位】×エバートン【8位】

画像1

■思わずつなぐほど牧歌的

 昨今のサッカーはよく遊びがないといわれる。プレミアリーグも例外ではなく、スペースを埋めて相手に攻める隙を与えない。そんなサッカーを下位チームでも問題なくできるリーグになった。そのため、ボールが行き交ういわゆる『プレミアリーグらしい展開』である試合はかなり減ってしまっている。

 しかし、この試合はどこか牧歌的な試合だった。よく言えば共にゴール前まで迫る展開の連続。悪く言えば間延びした守備同士の対戦ということだろう。ロングボールを優先する度合いが高いバーンリーですら、間でつなぐことを多く選ぶくらい両チームのブロックには隙があった。

 共に機会が同じならば質で勝るエバートンの方がいい展開を見せる気がするが、この試合ではなかなか苦戦していた。負傷気味のコールマン、ディーニュの不在により同サイドでの崩しの質と頻度が低下しており、これにより良質なクロスの供給が出来なくなっているのが一因。

    オフザボールで活きる選手の不在で開幕直後に猛威を振るったハメスを使った短中のパスの崩しは不発に。リシャルリソンの持ち上がりはアクセントになっていくが、両WBを使った新しい攻めの形は早めに確立したいところ。クロスさえ上げてしまえば、内側にはキャルバート=ルーウィンがいるため、好機は期待できる。

   ただ、むしろ機会でいえばチャンスがよりあったのはバーンリーの方。アランとドゥクレの行動範囲の広さを利用して、DF-MF間にパスをつなぎ、そこからクロスに持っていくことが出来ていた。互角にやれていただけに勝ち点3は欲しかったところだが。

試合結果
バーンリー 1-1 エバートン
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:3′ ブレイディ
EVE:45+3′ キャルバート=ルーウィン
主審:アンソニー・テイラー

②マンチェスター・シティ【11位】×フルハム【17位】

画像2

■快勝の再現を許さない貫禄

 レスターを撃破して勢いにのるフルハム。貴重な2勝目を挙げたやり方を継続したいのは当然。ということでボールを持たせてしまえ!というやり方が果たしてシティに通用するのかという腕試しをすることになる。

 シティとレスターで異なるのは、バックスのボールの扱い方である。ストーンズやエデルソンを擁するシティの方がより後方でのパスワークのスキルが高い。フルハムはここに積極的にプレッシャーをかけに行く選択をする。しかし、そうなるとフルハムのCHが行動範囲が広がってしまうことに。前節はシャドーが下がり中盤の行動範囲を抑制することで、狙いを定めてボールをハントすることができていた。

 しかし、この試合ではフルハムのCHが動かされることでMF-DF間にいるシティの選手に縦パスが通るように。5枚いるとは言えフルハムの最終ラインの強度はそこまで高くない。DFラインの前でデ・ブライネやスターリングが前を向かせてしまえば厳しい。シティが前半に点を取ったシーンは彼らがここでボールを持ち、加速できた場面である。

 後半はやり返したいフルハムだったが、快勝した前節に比べるとボールを取る位置が低く、カウンターに手数がかかるように。ボールを奪った後の2本目、3本目がつながらずにチャンスを作るまで至らない。そのうえ、逆にボール奪取直後のパスをカットされることで、ショートカウンターを食らう場面も。

 ボール保持時は良さも悪さも出るフルハムの軽さを伴うパス回しはスペースが空きやすいシティ相手には効きそうだったが、その中核を担うケアニーを外したことからももう少し高い位置で相手を止めて馬力で押し切りたかったのではないだろうか。

 この試合ではそのフルハムが描いた青写真の甘さをシティのボール保持が咎める形に。終盤はまるで勝敗が決まっているグループステージの試合のようなまったりとした展開になった。貫禄のあるシティの保持は「そんじょそこらのチームとは違うんだよ」とフルハムを諭しているかのようだった。

試合結果
マンチェスター・シティ 2-0 フルハム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:5’ スターリング, 26‘ デ・ブライネ
主審:ジョナサン・モス

③ウェストハム【5位】×マンチェスター・ユナイテッド【9位】

画像3

■うまい×うまい=強い

 前半は完全にウェストハムのものだったといえるだろう。ミドルゾーンに構えた5-4-1にユナイテッドのビルドアップは完全に沈黙。後方からはギャップが作れず、前線は後ろ向きでしか受けることができずにウェストハムのバックラインのマークを振り切れない。

 サイドに追い込まれるとウェストハムの圧縮にあうが、そこからの脱出が今度は苦しい。特にウェストハムはワン=ビサカには強気で当たっていく姿勢が見られた。

 中盤で相手を捕まえてからのロングカウンターが光ったウェストハム。セットプレーから先制点を奪うと、その後も流暢な試合運びを実現。スムーズなサイドチェンジで幅を使いながら追加点に片手をかけつつも手中には収められない展開が続く。

 流れを一変させたのは後半に交代で入ってきたブルーノ・フェルナンデスとラッシュフォード。間で受けるブルーノから、最終ラインの裏をとれるラッシュフォードのラインができたことでユナイテッドはチーム全体が生き返る。

 ヘンダーソンのロングキックを起点にポグバがスーパーなミドルでまずは同点。2得点目はグリーンウッドの反転が美しかった。どちらも質でぶん殴るウルトラゴールといえる。2試合連続の後半からの前線の活性化が呼んだ逆転劇でユナイテッドが難敵を退けることに成功する。

試合結果
ウェストハム 1-3 マンチェスター・ユナイテッド
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:38’ ソーチェク
Man Utd:65′ ポグバ, 68′ グリーンウッド, 78′ ラッシュフォード
主審:アンドレ・マリナー

④チェルシー【3位】×リーズ【12位】

画像4

■彼の季節がやってくる

 ここ数週間めっきり寒くなってきた。そろそろコタツを引っ張り出す季節になっただろうか。社会人になってからコタツは使ったことないけども。それはそれとして、チェルシーは今年もタンスにしまっていたジルーを引っ張り出す時期が来たようである。

 リーズと対戦する際はどのように相手のマークを振り切るか、空けたスペースをどのように使うかが肝になる。そういう面で周りを活かすジルーのスキルはこの試合では貴重。縦関係の入れ替わりを頻発させてスペースメイクをする。チアゴ・シウバが流れの中でエリア内に侵入するほどの流動性が高かった。

 しかし、先制点はリーズ。チェルシーの4-3-3のプレスの泣き所である、高い位置を取るSBが起点。チェルシーのSBを釣りだすと、CBとのギャップをついてさらに奥に侵入。再三見られたこの形から得点を得る。

 ビハインドのチェルシーを救ったのはジルー。どこぞのFWには「カート」呼ばわりされていたが、セビージャ戦以降は絶好調。周りを活かすだけでなく自ら得点を決めることもできる。なんで毎年開幕から使わないんだろう。

 後半にセットプレーから勝ち越し点を得たチェルシーは、ジルー⇒エイブラハムのリレーでロングカウンターにシフト。ボールを持たされて沈黙したリーズを尻目に長い距離を走れるエイブラハムとヴェルナーを軸に、試合を締めつつ追加点を狙うことができていた。仕上げの3点目を決めたチェルシーが最後は実力差を見せることに。ジルー⇒エイブラハムの展開に合わせたランパードの采配も光る試合運びだった。

試合結果
チェルシー 3-1 リーズ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:27′ ジルー, 61′ ズマ, 90+3′ プリシッチ
LEE:4′ バンフォード
主審:ケビン・フレンド

⑤ウェスト・ブロム【18位】×クリスタル・パレス【15位】

画像5

■数的優位で強みを悠々と

 ウェストブロムは5-2-1-2という形でスタート。大外から積極的な攻め上がりを見せるWBに、中盤から厚みをもたらすことができるIHの飛び出し。いつものようにこの日のウェストブロムも攻め込むことさえできれば面白い攻撃をすることができるチームであった。

 もちろん、そのタクトを振るうのはペレイラ。彼がいることで攻めあがる両WBの幅も、エリアに飛び込むCHも有効に生かすことができる。しかし、前半のうちのそのペレイラは退場。しかもこれから複数試合はいなくなってしまいそうな一発退場。この試合だけでなく、ここから先のウェストブロムに陰を落とす判定になった。

 ザハの帰還で上積みのあったパレスに対してそれまでは互角に渡り合っていたウェストブロムだが、この退場によって展開は一気に苦しくなる。10人になってからは5-3-1に移行したウェストブロム。これによりクリスタル・パレスはより積極的なSBのオーバーラップが可能になった。

 パレスのオーバーラップといえばファン・アーンホルト。タメの効くエゼとのコンビは連携もばっちりで、すっかりザハ以外のパレスの攻撃のストロングポイントを得た形である。10人相手だったこの試合ではここまでどう持っていくか?という部分はかなり軽く解決できたものの、帰還したザハの得点も含めて大量5ゴール。パレスは久々に気持ちのいい勝利を挙げることができた。

試合結果
ウェスト・ブロム 1-5 クリスタル・パレス
ザ・ホーソンズ
【得点者】
WBA:30′ ソーヤーズ
CRY:8′ フーロン(OG), 55′ 68′ ザハ, 59′ 82′ ベンテケ
主審:ポール・ティアニー

⑥シェフィールド・ユナイテッド【20位】×レスター【4位】

画像6

■矢の数と鋭さで勝負あり

 互いに相手の5バックをどう崩すか?と頭を悩ませる一戦になった。ワイドCBを積極的にビルドアップに関与させるブレイズも、変幻自在のビルドアップを駆使するレスターも共にボール運びには自信があるチームといえるだろう。ただ、この試合ではそこの最後の一歩である相手陣に迫ってからの崩しの質が問われた試合でもあった。

 この部分でより優れていたのはレスターの方だろう。なんといっても裏抜けマエストロであるヴァーディの存在が大きい。5バックは面でぶっ壊す。今季ほぼ出ていないアジョゼ・ペレスすらばっちり動き出しに合わせたパスを出すことができているので、ロジャーズはヴァーディの裏抜けに合わせられるようにベンチの選手にもプログラムを仕込んでいるのだろう。

 レスターのいいところは裏抜けがヴァーディだけではないところである。チームとして相手に裏の選択肢を常にちらつかせておくことで、ブレイズの最終ラインには迷いを与えることができていた。

 個人で見た時に上積みを感じさせるパフォーマンスを見せられたのはジャスティン。先制点は彼のクロスから。このシーン以外にも持ち運びエリア内にクロスを上げられる場面は作ることができていた。

 ブレイズも相手陣まで進むことはできていたがもうひと味を加えることができず。バークに裏抜けを依存しているのがやや苦しい。ヴァーディほど絶対的な存在ではない上に、分業気味で裏抜けは彼に任せられがち。ほかの選手の動きはやや乏しかった。最終ラインを統率し続けていたエバンスの存在も大きかった。それでもセットプレーから貴重なゴールをマクバーニーが今季初得点を叩きこみ同点に追いつく。

 それでも均衡したスコアの中で試合は終盤まで進む。最後の決勝点はマディソンのボール奪取からヴァーディの裏抜けで勝負あり。「質」で決着をつけたレスターが勝ち点3を手にした。

試合結果
シェフィールド・ユナイテッド 1-2 レスター
ブラモール・レーン
SHU:26′ マクバーニー
LEI:24′ ペレス, 90′ ヴァーディ
主審:スチュアート・アットウィル

⑦トッテナム【1位】×アーセナル【14位】

画像7

■笑顔のモウリーニョが見せた余裕。段違いの完成度で白が赤を一蹴

 ダービーに向かうまでの道のりは対照的だった。宿敵を叩きのめす好機に心脅されているトッテナムファンとは異なり、アーセナルファンは試合前から不安と期待が同居する人もいたのではないだろうか。

 試合内容は試合前のファンの心情を表す結果になった。序盤はアーセナルがボールを握る。大きいサイドへの展開や、裏を突く動きなど立ち上がりの攻撃のルートは悪かったわけではない。ただし、相変わらずどこを使って攻め込むのか?という点は共有されておらず。

 プレビューでは「シソコがサイドに出てきたスペースは利用できる」と述べたのだが、8分にサカのケアに出てきたシソコが空けたスペースをアーセナルの選手が使う素振りはなし。ここ使ってみてほしかったんだけど。

 それに加えてクロスの精度があまりにも低いアーセナル。特にベジェリンが送り込むラストパスはことごとく味方に合わず、カウンターの起点になってしまっていた。最終ラインが5⇒4になってからのアーセナルのカウンター対応は一層脆さが増している(5枚のアストンビラ戦もダメだったけど)印象。

 アルテタは「ワールドクラスの得点」と手放し称賛の姿勢を見せていたが、1失点目はここ数試合のアーセナルのダメなところの詰め合わせがトッテナムのスーパープレイの数々を際立たせていたのは間違いない。5⇒4バックの移行の影響はどこまであるかわからないが、少なくともチームは上昇気流に乗っているとはいいがたい。

 トーマスをケガで欠くと中盤での攻防でより後手に回るアーセナル。トッテナムは得点における前線のユニットだけでなく、後方のユニットの安定感も増している。動き回るシソコと司令塔のホイビュアの中盤はもちろん、CBにアルデルワイレルドが入るとより一層放り込み体制は強化される印象だ。後半のアーセナルのクロス攻勢は確かに1点くらいは入ってもおかしくはない感じはしたが、それが決まったとしてもスパーズには反撃の余力があったように思う。

 この試合を良く表しているのはアーセナルがバックパスを手でキャッチしたように見えたシーンにも笑って気にも留めないモウリーニョだ。試合後のアルテタとアーセナルを称賛する発言も含めて、彼に冷や汗1つかかせられなかったのが今のアーセナルの現在地だ。

試合結果
トッテナム 2-0 アーセナル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:13’ ソン, 45+1‘ ケイン
主審:マーティン・アトキンソン

⑧リバプール【2位】×ウォルバーハンプトン【7位】

画像8

■現実と向き合える王者の強み

 負傷者続出のリバプール。CLでの過密日程も佳境で薄くなったスカッドに疲労によるダメージもピークだろう。しかし、この試合では王者の貫禄を見せることができた。

 ビルドアップはいつも通りインサイドハーフとCFのフィルミーノの縦方向の列移動から。ウルブスは5バックの撤退守備から4バックへの移行で比較的ラインは高めに設定されているが、まだラインコントロールの精度は未熟。リバプールのセンターラインの縦方向の揺さぶりから、裏をとられるシーンが出てくるように。その裏へのボールから守備ブロックのミスを見逃さなかったサラーがリバプールに先制点をもたらす。

 ウルブスは負傷したヒメネスの代役を務めたファビオ・シルバがベンチスタート。中央はポデンスという高さを活かす布陣ではなかった。したがってサイドを切り崩さなければいけないのだが、サイドチェンジの速度、精度共にこの日は不十分。リバプールのスライドが対応できる範疇の攻撃に収まってしまっていた。後半はアダマ・トラオレをネコ・ウィリアムズにぶつけるなどの工夫はあったものの、リバプールの牙城は最後まで崩せなかった。

 リバプールがハイインテンシティのままぶつかってきてくれればウルブスにももうすこし分があっただろう。ウルブスもカウンターは質が高いチームだ。しかし、過密日程と怪我人からこの日はボールを渡したり急がない。90分間を強大なエネルギーで支配するやり方とは異なる手法で強さを見せたリバプール。セットプレーとカウンターで淡々と得点を重ねる彼らの背中に、久々のアンフィールドのスタンド帰還を果たしたKOPも王者の貫禄を感じたはずだ。

試合結果
リバプール 4-0 ウォルバーハンプトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:24′ サラー, 58′ ワイナルドゥム, 67′ マティプ, 78′ OG
主審:クレイグ・ポーソン

⑨ブライトン【16位】×サウサンプトン【6位】

画像9

■二の矢でイーブン、最後は悪癖が

 今季は善戦する試合が多いものの勝ち点がついてこないブライトン。彼らはどんな相手にもチャンスを作れる。例えば、リバプールが相手でも、チャンスの数でいえば少なくとも前半は互角だったといえるだろう。モペイのPKが決まっていれば試合はわからなかった。

 こんな『たられば』はサッカーでは御法度なのだが、今季プレミアで最も『たられば』を言いたいのはブライトンかもしれない。彼らはとにかくシュートが決まらない。チャンスは作ってもそれを得点にすることが出来ない。この試合でもサウサンプトン相手に速い展開で互角に渡り合った。中盤でのプレス合戦でもビスマを中心に速い展開が得意なサウサンプトン相手に引けを取らない戦いを披露する。

 サウサンプトンはSBがオーバーラップした状態でロストが多かったため、その裏は使い放題。2枚ではCBもラインコントロールはハードで、実質オフサイドは存在しないといってもいいくらいDFラインはぐちゃぐちゃだった。押し込む時間が多かったブライトンはウォード=プラウズのハンドでPKをゲット。先手を取る。

 速い展開が不発でもサウサンプトンには二の矢がある。当然セットプレーだ。もはやおなじみとなったCKからのウォード=プラウズ⇒ヴェスターゴーアのホットラインはこの日も炸裂。わかっていても止められないのだから厄介である。

 勝ちそうで勝てないブライトンのもう一つの欠点は試合運びの拙さである。とりわけ終盤に顔をのぞかせる慌てた対応、無謀なチャレンジは非常に目につく。この試合でもその悪癖は健在。2人で挟む体制だったウォーカー=ピータースに対して、マーチは慌てて対応に行く必要はなかった。俯瞰で見れれば、仮に突破を許しても中はブライトンのDFが数的にも位置的にも優位。確認することは難しかったとはいえ、褒められた対応ではない。またしても悔しい勝ち点の逃し方をしたブライトンであった。

試合結果
ブライトン 1-2 サウサンプトン
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:26′ グロス
SOU:45′ ヴェスターゴーア, 81′ イングス
主審:デビッド・クーテ

   おしまいじゃ。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次