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「一息入れられる余裕があるか」~2020.11.18 J1 第30節 川崎フロンターレ×横浜F・マリノス BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第30節
2020.11.18
川崎フロンターレ(1位/22勝3分2敗/勝ち点69/得点71 失点23)
×
横浜F・マリノス(7位/14勝5分13敗/勝ち点47/得点67 失点53)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

図1

直近5年の対戦で川崎の7勝、横浜FMの2勝、引き分けが3つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の5勝、横浜FMの3勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head①>
・直近6試合の横浜FM戦で川崎は1敗のみ。
・直近3試合においてホームチームの勝利はない。

 近年の神奈川ダービーで優勢なのは川崎の方。直近6試合でわずかに1敗と試合結果でリード。ただ、その1敗の内容がなかなかに鮮烈。昨年11月、等々力で優勝を決定づける勝利を挙げた横浜FMの前に無力さと2019年シーズンの限界を感じた川崎ファンも多いことだろう。川崎側もスネに傷がある試合といえる。

 直近3試合のリーグ戦はアウェイチームの2勝1分でありホームチームは苦戦傾向にある。ただし、川崎がリーグ優勝を果たした2017年と18年はいずれも等々力では川崎が完封勝利を決めている。

<Head-to-head②>
・直近3試合の対戦は両チームともすべて得点をしている。
・勝利すれば川崎は2016年以来のシーズンダブル。

 直近3試合は両チームとも点の取り合い。成績が悪いホームチームですら点が取れていない試合は直近では少ない。特に川崎はここ6試合連続横浜FM戦では得点を決めている。川崎が勝利すれば2016年以来のダブルだが、裏を返せば優勝したシーズンにはダブルは達成していないということでもある。

<Head-to-head③>
・川崎は直近5試合のホーム横浜FM戦で1敗のみ(W3,D1)
・直近10試合の等々力での対戦において、どちらのチームも得点したのは2回だけ。

 ホームチームが苦戦傾向とはいえ、昨季を除けば等々力での成績は川崎に軍配が上がっている。また点の取り合いの傾向が強いカードとも紹介したが、等々力での対戦においては直近10試合でどちらも得点した試合は2つだけ。昨季と後半追加タイムに3得点がなだれ込んだ2016年を除けば、あとは片方が片方をやり込めるワンサイドゲームになる傾向がある。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・小林悠は左ハムストリング肉離れで離脱中。
・山村和也は前節試合終了時に負傷との情報あり。

【横浜F・マリノス】

・直近での目立った負傷情報はなし。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts①>
・リーグ戦では直近2試合勝ちなし。
・直近のリーグ戦3試合で3得点。

 今季2回目の2試合連続勝ちなしである。連勝を止められて、引き分けで次を踏みとどまるというのは1回目の2試合連続勝ちなしと全く同じパターン。つまり、今季1回目の挫折はここから連勝でリカバリーしたということ。直近では得点力に陰りが見える川崎。ここ3試合で3得点は今季を3試合区切りで見た時に最も少ない数字。ここから反発は効くだろうか。

 仮に3試合連続勝ちなしになれば2019年9月のリーグ戦6試合連続勝ちなし以来のことに。ホームでの連敗もかかっており、こちらは2018年5月以来となる。

<川崎のMatch facts②>
・昨季同時期と比較して失点が3少なく、得点が30多い。
・11月の試合は3試合未勝利。

 得点力不足とはいえ、今季は昨季同時期よりも得点が30多いと聞くと贅沢をいうものではないなと思ってしまう。特に昨季苦しんだホーム等々力では現状37得点と昨季同時期(18)の倍以上。たくさん点は取れている。鳥栖戦と札幌戦しか見に行っていない俺は等々力でのゴールはまだ見れていないけどな!!

 ちなみに11月のリーグ戦は直近3試合勝ちなし。起点は昨季の等々力の横浜FM戦だ。優勝したシーズンは最後のブーストで他チームを引き離したり、迫ったりしたもの。今季ももうひとエンジンかけることが出来るだろうか。

<川崎のMatch facts③>
・レアンドロ・ダミアンは直近4試合のリーグ戦で無得点
・川崎が今季敗れた3試合はいずれも大島僚太が先発していない試合。

 小林悠の離脱によりシーズン序盤戦と同じく出ずっぱりが続いているダミアン。直近の試合では得点が決められていない。鹿島戦では守備時にやたら下がっている場面も多く、攻撃時にはサイドに流れてのチャンスメイクも増えた。PA内に張ること以外にも幅を広げているようにも見える。ただ、試合終盤にバテているところをみると、チームとしてはなるべくPA内での仕事に役目を限定したいところではある。

 鹿島戦で復帰を果たした大島僚太。今季敗れた試合はいずれも彼がスタメンではない試合ばかり。鹿島戦でも途中出場という形での復帰となっている。ちなみにリーグ戦の2敗でどちらも先発がなかったのは登里享平も同じ。役割としては代替が難しい重要任務を背負っている両選手といえそうだ。

【横浜F・マリノス】

<横浜FMのMatch facts①>
・直近4試合のリーグ戦で3敗。
・今季のリーグ戦13敗中上位6チームに喫したものが8敗。

 前節の浦和戦で連敗は止めたものの、直近は負けが込んでいる。特に目につくのは失点の多さ。直近4試合で9失点、クリーンシートはない。昨季1年間と比べて失点の総数はすでに15多い。

 昨季と比べると悪化している数字はもう1つ。上位陣との対戦成績だ。昨季はトップハーフとの対戦を5敗でしのぎ、その倍の10勝を挙げることで上位勢から勝ち点をふんだくってきた。しかし、今季は上位6チームだけで8敗。トップハーフにも僅か4勝しかしていない。トップハーフとの敗戦がいずれも無得点ではないというのは彼ららしいといえばらしいけど。

<横浜FMのMatch facts②>
・前半に最も多くの得点を挙げているチーム。
・逆転負けが今季7回でリーグ最多。ただし、90分以降の得点9もリーグ最多。

 前節の浦和戦でもそうだったが前半がフルスロットルで相手を爆速で置いていく試合も珍しくはない。開始15分で3得点というのは圧巻。今季最も前半で点を取っているチームに躍り出た。

 ただし、逆転負けも多い。今季リードした回数は23回と川崎に次いで多いのだが、9回の逆転負けはリーグ最多。それでも終盤にめちゃめちゃ弱いかといわれるとそういうわけでもなく、90分以降の得点が9つと取る方も取っている。

<横浜FMのMatch facts③>
・ジュニオール・サントスが得点を決めた試合は8戦7勝。
・高丘陽平はキャリアにおける川崎戦においていまだに失点を喫したことがない。

 夏に加入して以降、爆発的な得点力でチームを牽引するジュニオール・サントス。前節の浦和戦でもまさしく大爆発。得点した試合の勝率も上々。その理由の1つは固め取りの多さだろう。得点を決めた8試合中4試合は複数得点を記録している。ハマったら手が付けられないジュニオール・サントスをゴールから遠ざけておけるかが川崎のポイントとなる。

 高丘は鳥栖時代に川崎と2回対戦しており、いずれもクリーンシート。その2回はいずれも等々力で記録したものであり、現状は180分等々力で無失点の男となっている。ただし、失点はないものの彼が出場している時間の得点もない。2試合はいずれも0-0のスコアレスドロー。川崎相手には点を取られたことはないけど勝ったこともない。そんな不思議な相性である。

展望

■手順重視だがそれだけではない

 今年の夏に対戦した時の横浜FMはだいぶとがっていたように思う。ジュニオール・サントス、エリキ、前田大然という3トップで爆速カウンターをとにかく縦に仕掛けて相手をスプリントとスピードで上回るトランジッションゲームを展開するというもの。

 あの日に比べれば今の横浜FMはだいぶピーキーさはなくなった。必ずしも前線のスピードを生かした縦への勝負が第一選択肢というわけではない。ビルドアップは大きく開くCBの前にSB、CHが並ぶ。彼らはある程度の横移動を伴って最終ラインからボールを引き出す試みはするものの、一時期よりはSBのフリーダムなポジションは減ったように見える。

 横浜FMはこのポジションにテンポを整えながら縦に刺せる選手が多いのが特徴。ボランチコンバートで昨季から開花した感のある和田拓也が代表的。SBでは小池龍太が派手さはないものの的確な受け方と前への展開で求められた役割をこなす仕事人。扇原貴宏にボールが渡ればもちろん大きな展開で幅を使うことが出来る。

    一時期はアタッキングサードでのハーフスペース突撃(扇原もたまにやっていたね)など仕上げまでに顔を出すことまで求められていたCHやSBも今はまずは後方から相手の1stプレスを回避するための役割を優先させているように見えた。

 1stプレス隊を退けた後の目的はまずは中に起点を作ること。ジュニオール・サントスのポストも悪くはないだろうが、あらゆるところに顔を出せる機動力と前を向くスキルを考えるとトップ下にボールを預けた方がそのあとの展開で期待が持てる。ここからサイドの展開を狙うのがトップ下の役割だ。

 マルコス・ジュニオールはこの役割はお手の物。ここから最後のフィニッシュにまで絡む力はすでに多くの試合で証明済み。しかし、浦和戦のオナイウ阿道のトップ下には驚かされた人が多いのではないだろうか。得点こそ取れなかったものの、中央で起点になり前を向いてサイドに鋭く展開するというタスクは何の問題もなくこなすことが出来ていた。

 中央でボールを受けて、相手の視点を内に集めてから今度は外に展開する。ここから先はWGの選手によってカラーが異なる。個人での突破が期待できる松田や仲川の場合は大外からのカットインを期待して任せてしまっていいだろうし、エリキや前田の場合はよりフィニッシュに近い位置で受ける形の方がベター。SBの手助けで内側に侵入する形まで持って行った方がいい。

 夏の第1ラウンドの時と比べて最もチームにおける存在感が大きくなったと感じる選手は断トツで水沼宏太。彼の場合は外で受けてからの第一選択肢は抜ききらないクロス。グラウンダーでもハイクロスでも精度とタイミングを高次元で兼備。エリア内でのチャンスをおぜん立てする。

 川崎は前節の鹿島戦で後半の相手の右サイドからの広瀬(この人も横浜FM産・・・)のクロスに苦しめられたが、今節も水沼にプレッシャーがかからなければ、右サイドからガッツリ攻略される憂き目にあう可能性が高い。4-3-3を維持したまま守ることが増えた川崎にとっては高丘からサイドへのダイレクトな展開も要警戒だ。

画像4

 基本的には手順を踏んでサイドからWGの特色に沿った崩しを軸に攻略を狙うチームだが、浦和戦のように隙があれば縦への早い展開を主体に相手のDFラインを強襲も可能。いくつかの引き出しを駆使しながらより多様な顔を見せるようになった。それが今の横浜FMへの印象だ。

狙いどころはあるが走り合いは避けたい

 守備の特徴は攻撃に比べると大きく変化はしていない。ナローなポジションをとる4バックに対して、前半戦で川崎が多用した対角のパスは依然として有効だろう。相手SBの裏は狙い目で、自軍のSBにはここから追い越して裏を狙う動きを求めていきたいところ。

 前線の守備能力の影響かはわからないが、ハイプレスも昨季ほどの強烈さはない。ライン間への縦パスに対しては後方から厳しくチェックはいくが、挟むようにして取り切るケースはあまりなく、個人個人がそれぞれのタイミングでアタックに行くケースが多い。そのためラインの押し上げや周辺の守備の動きと個人のプレスが連動しないこともしばしば。間をつなぐときはここが狙い目で、プレッシャーを受けた選手は相手のプレッシャーを利用し、まず少ないタッチで周辺のフリーの選手に前を向かせる形を作るのが効くはず。

画像5

 ただ、前提として注意したいのは走り合いになった時に先に苦しくなるのは川崎だろうということ。鹿島戦においては家長やダミアン、田中碧など疲れが見えたり、少しパフォーマンスが落ちている選手を代えることが難しいベンチメンバーだった。守田や旗手、山村のベンチ入り可否に拠るところはあるが、交代ブーストも込みで考えれば走り合いも辞さない形でも挑めた夏の対戦時とは少し事情が違う。横浜FMはMatch factsで述べたように終盤でも相手に襲い掛かれるチーム。浦和戦では90分を通して縦に早い展開での強さも示している。

 となると川崎に求められるのは『休むこと」である。ボールを取った後に無理に急ぎすぎず落ち着かせる場面も作る。前線のポジションが整うまでは後方でボールを回して時間を作るという一息入れるムーブが重要になってくる。横浜FMの攻略において、DFの裏をダイレクトに狙う動きはもちろん有効だが、これをひたすら繰り返していると後半の飲水タイムには息切れすることが目に見えている。トライできる回数は限られているという考えのもとに後方でやり直しを挟みつつ、一気にスピードアップしたい。

 この緩急を冷静に使い分けできていたのが何を隠そう日産での試合。あの日は早い時間に先制を許しながらも徐々に試合を手中に収めることに成功した。未勝利を2で食い止めたい気持ち、優勝を早く決めたい気持ちなどいろいろあるだろうがまずは一息入れて陣形を整える時間を作ること。走り合いに付き合いすぎないこと。優勝もダービーも自分たちのペースで手繰り寄せる。日産でできたことを等々力で再現することが昨年の雪辱を晴らす第一歩だ。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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