マンチェスター・ユナイテッド、24-25シーズンの歩み。
第1節 フラム戦(H)
理想的な自己紹介でユナイテッドがオープニングを飾る
24-25のプレミア開幕を告げる一戦はオールド・トラフォードから。ユナイテッドがホームにフラムを迎える試合である。
立ち上がりからボールを持つ機会が多かったのはユナイテッド。2人のCBに加えて、カゼミーロもしくは片方のSBが入る形で3バックに変形する。カゼミーロが落ちる時はメイヌーをアンカーとする3-1-6、どちらかのSBがバックスに入る時は3-2-5。ビルドアップの枚数を流動的に変えながら相手を動かしていく。
フラムは冷静な対応。バックラインには無理にプレスに行かず、縦と横にコンパクトな守備でユナイテッドを迎え撃つ。ライン間へのパスは厳しく挟み込みをしていたし、サイドに人を多くかけるユナイテッドの攻撃に対しても4-4-2の陣形を大きく崩さないまま圧縮することに成功していた。
保持に転じた際には右サイドのトラオレを使ったカウンターが軸となる。スピードはさすがであるが、仕上げのところが物足りないといういつものトラオレらしい陣地回復であった。
自陣からのビルドアップではショートパスを軸に降りてくる中盤に縦パスをつける場面がしばしば。ユナイテッドはフラムと同じく4-4-2で構えることが多かったが、降りていく選手にはかなり積極的についていく。フラムは背中にマークを背負っているマーカーにもボールをつけてしまうため、保持での安定感はかなり怪しいものがあった。バックスの中でこの人にボールを預けておけばOKという人はおらず、レノのパスミスから決定的なピンチを迎えることもあった。
しかしながら、縦パスの刺す場所としてはムニスは別格。ユナイテッドのCBが捕まえきれない9番にボールを届けることができれば左右への展開からクロスまで視野に入れることができそうなフラムの攻撃であった。
優勢だったのはどちらかといえばユナイテッドだろう。しかしながら、前線のポジションを自在に入れ替える効果は限定的。22分のマズラヴィの瞬間的な列上げや、34分のルキッチを釣り出してのワンツーでの中央突破など単発で効きそうなものはあったが、外に流してファーにラインを下げるようなクロスを狙う形はフラムが十分に対応できるものであった。逆にいえば、パリーニャがいなくなったフラムがそれだけきっちりと締めるところの優先度を決めながら対応できたということだと思う。
後半も保持でユナイテッドが解決策を探る立ち上がり。ハイプレスに出ていき、フラムの自陣でのミスを探るなど保持と非保持の両面で得点を狙っていく。
前半よりも存在感を増したのは左の大外のラッシュフォード。大外で起点となることでマウントのボックス内の侵入やメイヌーのミドルを誘発する。
フラムのベースとなるのはトランジッション。前半より前がかりになったユナイテッドに対して、カウンターから時には数的優位の場面を作るときも。しかしながら、ペレイラやトラオレなど個々の判断がカウンター完結の障害になり、攻め上がり時の数的優位を思ったようにシュートにつなげることができなかった。
トランジッション局面が増えることでユナイテッドも前線の交代を行うが、交代した選手がなかなか存在感を示すことができず。アタッキングサードのクオリティで難を抱える両チームは徐々にジリジリとした展開を迎えることとなる。
そうした状況で一発回答を見せたのは新加入のザークツィー。自陣深い位置まで下がることで前進のスイッチを入れたブルーノに連動するように中盤に下がりサイドに展開すると、遅れてボックス内に入りワンタッチで貴重な先制点を決める。
フラムのバックスはファーの山なりのクロスもグラウンダーの速いクロスにもどちらにもかなりシャープに対応していたが、ボックス内にマクトミネイという最終兵器がいたこともあり、遅れて入ってきたザークツィーへのチェックが間に合わなかった。
以降はユナイテッドがきっちりと時間を使ってゲームクローズ。新加入ストライカーがいきなり結果を出すという理想的な形で開幕戦を飾ることとなった。
ひとこと
ゴールの場面はザークツィーらしい中盤での関与とフィニッシャーとしての両面の働きが見える。オールド・トラフォードの観客への自己紹介としてはかなり理想的なものだった。
試合結果
2024.8.16
プレミアリーグ 第1節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 フラム
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:87‘ ザークツィー
主審:ロベルト・ジョーンズ
第2節 ブライトン戦(A)
左サイドからお膳立てした2得点でブライトンが開幕連勝を飾る
第2節の幕開けを飾るのは開幕戦で勝利したチーム同士の一戦。ブライトンとユナイテッドのゲームである。
アンカー役のウィーファーは欠場したが、ギルモアが中央に入ってもブライトンの仕組みは第1節と全く同じ。サイドに広くビルドアップを行いながら、WGとIHが出口になることで対応する。第1節と少し味変をした部分があるとすれば、右サイドに流れるなどジョアン・ペドロの行動範囲が広がったこと。左右均質なイメージを受けたが、この試合は右サイドに偏重する意識はあったかもしれない。
それでも立ち上がりはユナイテッドの方がほんのりペースを握った感もあった。高い位置からのプレスから立ち上がりに不安定なブライトンのビルドアップに漬け込むことができていたし、逆にユナイテッドの保持ではハイプレスを左右に動かしながら外し、大きくスライドするブライトンのSHを外して前進する。
トランジッション局面で光っていたのはメイヌー。プレスバックでの自陣でのカバーとプレス耐性の両面で格別のプレーを見せていた。その分、前線の出来はやや計算外。特に右の大外のディアロの出来はブレーキになってしまった感。カットインドリブルのキレがなく、パスの判断も悪い。ロストした後のファウルも含めて典型的な波に乗れないストライカーだった。
その前線の切れ味でゴールを決めたのがブライトン。右サイドに流れたペドロのクロスが逆サイドまで届くと、三笘→ウェルベックのラインから先制点をゲット。アシストのクロスの軌道とインサイドの動き直しの両面で素晴らしいゴールだった。
ブライトンはゴールをきっかけにヒンシェルウッドが内側に絞るなど左サイドの旋回をビルドアップに加えることでユナイテッドのプレス隊を翻弄。前半終了間際には立ち上がりにあったプレスの手ごたえをユナイテッドは感じることができず。時間の経過とともにペースはブライトンに流れていった前半となった。
後半、左サイドからの崩しからスタートするなどブライトンのフィーリングは引き続き良好。ミルナーの抜け出し、ウェルベックとペドロの連携からのラインブレイクなどから前進し、ボックス内ではマグワイアの対応の甘さもあり決定機を迎えることができていた。
しかし、ユナイテッドもカウンターで応戦。ザークツィーを交代で投入した効果は前節同様すぐに出た感じはしなかったが、中盤からの加速で同点に追いつく。メイヌーとマズラヴィのコンビネーションからディアロのラインブレイクに成功。この日は対面の相手とのフィーリングが良くなかったディアロだが、ヒンシェルウッドが全力で戻って対応しなければいけなかった分、このシーンでは切り返しが刺さった。
このゴール以降もブライトンのバックスを晒すことでユナイテッドはゴールに迫る。ファン・ヘッケはかなり根性での対応を強いられる展開に。ユナイテッドはディアロを軸としての右サイドの崩しからガルナチョがネットを揺らすがザークツィーがアクロバティックなオフサイドでゴールを無効化してしまう。
終盤の展開はフラット。保持からブライトンも再び押し返して得点の匂いをさせるように。勝負を決めたのはセットプレーの流れからの左サイドのアディングラを起点とした崩し。ユナイテッドの守備陣がボールに全集中した分、ファーで余ったジョアン・ペドロがガラ空きになり、土壇場の決勝点を手にする。
開幕戦白星対決を制したのはブライトン。連勝で勢いにのり、次節はエミレーツに乗り込むことになる。
ひとこと
ブライトン、普通に90分間ずっとユナイテッドと互角以上に渡り合っている。ややWGのタスク過多は気になるけども、型を固めながら結果も出せているのはいいことに違いない。
試合結果
2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
ブライトン 2-1 マンチェスター・ユナイテッド
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:32‘ ウェルベック, 90+5′ ジョアン・ペドロ
Man Utd:60′ ディアロ
主審:クレイグ・ポーソン
第3節 リバプール戦(H)
充実な結果の上で懸念が出るということは
長期政権後の新監督は一般的に成果が出ない貧乏くじとされている。しかしながら、スロットのリバプールは開幕から好調をキープ。連勝スタートでファンもひとまず不安からは解放されている。今節の対戦相手はファーガソン以降、まだリーグタイトルを取り戻すことが出来ていないユナイテッドだ。
互いにバックラインから小気味よくパスを入れていくスタート。ユナイテッドはカゼミーロが最終ラインに入るところからマズラヴィが列を上げる形に変形。リバプールの4-4-2気味の陣形の間を取りながら前進をしていく。
一方のリバプールはロバートソン以外の3人にマック=アリスター、グラフェンベルフを絡める形でビルドアップを行っていく。ポゼッションで優位だったのはリバプールの方だろう。ユナイテッドのプレス隊は中盤をケアしつつ、リバプールのバックスにプレスに行くが、これをあざ笑うかのようにリバプールは滑らかに縦パスを入れていく。中でもグラフェンベルフの列上げと時折左サイドのやや低い位置に顔を出すショボスライの気づかいは目を見張るものがあった。
またインサイドでルートを作れなかった場合には、リバプールには両サイドに対角のパスを出せばいいという保険もある。ディアス、サラーを向こうに回しておいて「保険」呼ばわりはあまりにも贅沢だが、中央のパスルートが仮に開かなくても即詰みにはならないということである。
ハイプレスに出ていけなくなったユナイテッドに対して、リバプールのプレスは勢いを増すように。インサイドに差し込むことを狙うリサンドロ・マルティネスのパスミスは何とか咎められずに済んだが、直後のカゼミーロのパスミスからリバプールは先制ゴールをゲット。ファーで合わせたディアスが完全にフリーになっていた光景に、先日のブライトン戦のジョアン・ペドロがフラッシュバックしたユナイテッドファンもいたかもしれない。
勢いに乗るリバプールは前半の内に追加点。同じくカゼミーロのところを咎めることに成功すると、今度は中央からディアスが正確なショットでオナナの守るゴールを射抜く。ポゼッションで主導権を握り、押し下げてからのハイプレスで仕留めるというプランでユナイテッド相手に優位に試合を進める。
ユナイテッドは2失点に絡んだカゼミーロを下げてコリア―を投入。チャレンジ枠で後半に挑む。前線への飛び出しなど見どころが全くないわけではなかったが、後半もリバプールの保持をベースに強度の高い展開が見られるようになると、少しずつおいていかれるようになったのは否定できないところだ。
リバプールはメイヌーを捕まえたところからカウンターに成功。サラーが3点目を仕留めて完全に試合は決着ムードとなる。
しかし、リバプールが盤石だったかといわれるとそういうわけでもない。終盤はボールを運ぶことができたユナイテッドに対してのクロス対応が非常に甘かった。ユナイテッドのアタッカー陣の精度には助けられたが、より競っている展開であれば致命傷になっていてもおかしくはない。ファン・ダイクとコナテにしては珍しい終盤の出来だなと思った。
ひとこと
多くの人が想像するよりも上を行っている出来なのは間違いないリバプール。盤石でない部分はまだあるので、そこを伸ばしつつ安定感をどこまでつけていけるかだろう。特に後ろの迎撃のパフォーマンスは監督交代の影響が少ない部分だと思うので、ここは早急に目途を立てたい。といってもクリーンシートなんだけど。充実な結果が出ている上で懸念が出ているという時点で上々の滑り出しだろうなと思う。
試合結果
2024.9.1
プレミアリーグ 第3節
マンチェスター・ユナイテッド 0-3 リバプール
オールド・トラフォード
【得点者】
LIV:35’ 42‘ ディアス, 56‘ サラー
主審:アンソニー・テイラー
第4節 サウサンプトン戦(A)
内容の改善はスコアに反映されず
連敗で開幕3戦を終えたサウサンプトンは4-4-2にシフトチェンジ。再起を図ってユナイテッドの胸を借りる一戦に挑む。
総じて、この4-4-2は悪くなかった。序盤はユナイテッドの圧力に対して蹴っ飛ばすばかりだったが、ユナイテッドの圧力が弱まってからはスムーズな前進が可能に。3バックの際はやや目的化していてミスの引き金にもなっていたCBの複雑な移動もなくなり、かなりシンプルになった。
そうした中でウゴチュク、ダウンズのCHコンビが移動しながら互いにパスコースを作り、ユナイテッドの4-4-2の2トップを外すことができていた。SBも好調。菅原とウォーカー=ピータースは2トップの脇に立つことでビルドアップの出口になっていたし、アタッキングサードではWGを利用しての抜け出しから高い位置でフリーになることもしばしば。
もちろん、大外ではブレアトン、ディブリングのコンビが好調を維持。ディブリングはダロトを置いていくことでPKを獲得したが、アーチャーが仕留めきれず先制のチャンスを逃す。オナナは素晴らしい仕事をした。
ゆったりとしたポゼッションをしていたユナイテッドはサウサンプトンがペースを握ってからは押され気味。カウンターでWGを軸にした形から反撃を狙う時間が続く。だが、アーチャーがPKを外したタイミングでユナイテッドの攻撃は加速。ラッシュフォードとザークツィーの2人で敵陣に運ぶと、セットプレーからデ・リフトが仕留めて先制。ピンチの直後のチャンスを得点に変える。
サウサンプトンのサイド攻撃は相変わらず好調だったが、仕留めきれないとユナイテッドの反撃が飛んでくるというのがこの試合のお決まり。サイドからのクロスに中央でバタバタしたサウサンプトンのチャンスの直後に、セットプレーからラッシュフォードが技アリのシュートを決めて追加点。内容的には手応えあるサウサンプトンだったが、要所のセットプレーで揺さぶってくるユナイテッドに対して、失点を重ねる前半となった。
ビハインドとなった後半のサウサンプトン。前半の焼き直しをするかのように、ボール保持からリズムを整えていく。前半以上に目立っていたのは、鋭いグラウンダーのパスを中央に刺す意識を見せていたラムズデールであった。
しかし、ユナイテッドは2点のリードを得ている落ち着きを見せて反撃。自陣でゆったりとボールを持ち、余裕を持ってひっくり返す。より深い位置まで進撃していたのはユナイテッドの方。復活のエリクセンが高い位置で確実性の高いカウンターに導いていく素晴らしいパフォーマンスを見せていた。
勝負に出たラッセル・マーティンの4枚替えもボール保持からユナイテッドが平定。サウサンプトンは徐々にパフォーマンスが萎んでいく。
追い討ちとなったのはステーフェンスの退場。これで試合は完全に決着。ユナイテッドの保持を追いかけ回すモチベーションがなくなったサウサンプトンは以降の時間無抵抗に。ユナイテッドは仕上げにガルナチョが3点目を仕留めて難なく逃げ切り勝利を挙げた。
ひとこと
サウサンプトン、前節に比べれば抜群に良くなっているけども、スコアにはその改善は反映されなかった。まずはこのパフォーマンスを継続することだろう。
試合結果
2024.9.15
プレミアリーグ 第4節
サウサンプトン 0-3 マンチェスター・ユナイテッド
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
Man Utd:35‘ デ・リフト, 41‘ ラッシュフォード, 90+6′ ガルナチョ
主審:スチュアート:アットウェル
第5節 クリスタル・パレス戦(A)
効いてる動きを繰り返せずスコアレスドロー
前評判の高さとは異なり、なかなか今季は勝利が掴めないパレス。前節サウサンプトンを下してアウェイ連勝を狙うユナイテッドと対戦する。
前節はかなり慎重な入りだったパレスだが、今節は高い位置から積極的なプレスに出ていく。奪ったら縦という形も徹底。マテタへの長いボールからチャンスを作っていく。立ち上がり直後のデ・リフトはかなり冷や汗をかいたことだろう。
だが、パレスはマテタへのロングボール以外に前進の手段が皆無。降りるエゼは潰されてしまい、エンケティアは存在感が薄くボールを受けることができずに苦戦する。
さらにはバックスの連携不足も露呈。一つずれを作られるとラインが簡単にガタガタになってしまうという苦しい状況であった。つまり、ユナイテッドからすると縦パスを入れてパレスのバックラインの誰かを引っ張り出せればチャンスになるということ。オフサイドにかからない裏抜けからチャンスを作るユナイテッドがパレスのゴールに迫る中盤戦に。
だが、ヘンダーソンのセーブやクロスバー連打などシュートの精度に欠けるユナイテッドはこのチャンスを活かすことができない。チャンスの数では優位に立ったユナイテッドだが、セットプレーのデ・リフトを含めてネットを揺らすことはできなかった。
パレスはきっかけが見つけられない状況であったが、大外を起点にする手数をかけた攻撃が前半終盤にほんのり見られるように。後半に希望をつなぐ形でハーフタイムを迎える。
後半、パレスは2枚替えを敢行。下がるのはマテタとウォートン。タクティカルな判断であるならば驚きの交代であった。これにより前線で体を張る役目はエンケティアに回ってきた感があったが、マテタに比べると収めることができずに苦戦。パレスは前半の最後のペースを手放してしまう。
後半もユナイテッドの有効打の基準は同じ。クリスタル・パレスの最終ラインからを人を釣り出し、その背後に侵入できるかどうかであった。ザークツィーとブルーノの2人はこの原則を守りながらボックス内への侵入を試みることができた。
だが、徐々にユナイテッドは個々人の突破に頼る力押しにシフトしてきた感がある。交代選手のパフォーマンスがそういった点では迫力が物足りなかったため、ユナイテッドの勢いは少しずつ停滞するように。
一方でパレスは交代選手を有効活用した感がある。サールはオフザボールの動きでユナイテッドを押し下げていたし、ヒューズはサイドから押し下げられた局面から前線への飛び出しで存在感を発揮。終盤にかけて得点の機会をフラットに引き戻す。
だが、オナナという最後の牙城は強力。こちらも最後の一山を越えることができないままタイムアップ。試合はスコアレスドローでの決着となった。
ひとこと
ユナイテッドはもっと愚直にパレスの仕組みを壊すことにフォーカスしたかったところ。ホイルンドが収まらないのとかは仕方ないけども、もう少しこの日効いてる攻撃を繰り返したかった。
試合結果
2024.9.21
プレミアリーグ 第5節
クリスタル・パレス 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
セルハースト・パーク
主審:デビッド・クート
第6節 トッテナム戦(H)
あまりにも遅すぎる目覚め
いわゆるビッグ6の中で突き抜けられない戦いが続く両チームの一戦。だが、この試合においてはくっきりと立ち上がりから両チームの明暗が分かれたと言っていいだろう。
トッテナムの高い位置からのプレッシングを基調とするハイテンポなプレーにユナイテッドは完全において行かれてしまった感がある。3分のジョンソンのゴールシーンはファン・デ・フェンの持ち上がりを止めに行くのが遅れたウガルテとデ・リフトにも問題はあるし、守備がスライドできていないのに何故か逆サイドがフリーになるという不思議さもあるゴールだった。
失点前のシーンではブルーノがキャリーを怠ったところからトランジッションが発生。運んで欲しいところを運ばずに、豪快なドリブルで敵陣に侵入されたという一連の流れも切ないものだった。
失点したユナイテッドはカウンター勝負にフォーカス。縦に速い展開で巻き返しを狙う。だが、保持者にタメが効く人がおらず攻め上がりの時間は作れないし、スプリントしながらのプレーになるためパスの精度が落ちるという苦しい循環。かといって自陣でのポゼッションをすれば横パスからトッテナムのプレスの餌食になってしまう。
トッテナムからすると、速いテンポを仕掛けられてもサイドの低い位置に流れるソランケとマディソンに預けることができるので、プレス回避は心配なし。さらには先制点以降も左サイドのハーフスペースをウガルテを軸に攻略することができていた。あとは決めるだけという決定機を逃してしまったのがトッテナムの前半の唯一の心残りだろう。
ユナイテッドは自陣でのデ・リフトやダロトのパスミスでリズムをさらに悪くすると、40分過ぎにはブルーノが一発退場。さらにはメイヌーも負傷交代に見舞われることに。悪い状況は前半にさらに悪くなり、ハーフタイムを迎えることとなったユナイテッドだった。
後半、ユナイテッドはカウンターをベースに10人での戦い方を提示する立ち上がり。しかしながら、トッテナムは早々にひっくり返すことに成功。右サイドへのロングボールを起点にしたラインブレイクで一気に押し下げると、右サイドからの折り返しをアクロバティックにクルゼフスキが仕留めて追加点をゲット。ユナイテッドは交代で入ったカゼミーロの対応がエラー。前半で入ってきたマウントの余計なイエローしかり、入ってきた選手が士気が下がるようなプレーをしてしまうと苦しい。
2点目が決まったところでユナイテッドはようやく目を覚ました感がある。前線は高い位置からプレッシャーに行くなどアクティブさは11人以上と言ってもいいくらいだった。
CKから押し下げる機会を作るとユナイテッドは一気に攻撃に打って出る。ゴールに押し込むことはできないが、前線でも少しずつチャンスを得て、数的不利を感じさせない時間を作る。
だが、終了間際にトッテナムは追加点。押し込まれる陣形を跳ね返すように攻撃に打って出ると、3点目を奪取。試合を完全に決める。
10人で2点差になりようやく目を覚ましたユナイテッド。それでもスコアを動かすことはできず、0-3での完敗を喫した。
ひとこと
入りが全てだと思う。火事場になってからようやく覚悟が見えるのでは遅すぎる。
試合結果
2024.9.29
プレミアリーグ 第6節
マンチェスター・ユナイテッド 0-3 トッテナム
オールド・トラフォード
【得点者】
TOT:3′ ジョンソン, 47′ クルゼフスキ, 77′ ソランケ
主審:クリス・カヴァナー
第7節 アストンビラ戦(A)
ブレイクスルーを見出せないスコアレスドロー
ともにミッドウィークにタフな試合を戦った両者。リーグ戦では先週勝利を逃しており、代表前に勝ち点3を積み上げたいという意識は強いだろう。
ボールを持つのはビラ。ミドルブロックに構えるユナイテッドに対して、バックラインからボールを動かしていく。キャッシュ、コンサ、トーレスが3バックを形成し、ユナイテッドの2トップの脇から縦にボールを差し込んでいく。特にコンサからのボールはチャンスメイク。ユナイテッドはCBがタフなチャージができず、ロジャーズに決定機を許す。
しかしながら、ビラはコンサが負傷。再びパスを仕掛けるルート探しに奔走することになる。ユナイテッドのサイドを動かしながらチャンスを伺うが、ラインを揺さぶる背後へのアクションが少なく、ライン間がコンパクトな状態を緩和することができず。ユナイテッドのバックス。特にCBのタイトさが徐々に増していく。エバンスはよりビラの得点の匂いがしたトランジッション局面でもチャンスを潰すことができていた。
ユナイテッドの攻撃は縦に早くという流れ。今週TLでチラホラ見かけたブルーノ論争だが、この試合でも縦への速さは健在。なかなかパスが刺さりきらない。ただ、スローダウンした際のブロックを攻略する手段が乏しいのも事実。終盤はダロトがオフザボールでギャップを作りに行ったが、ブルーノメソッドがそれなりに上位に君臨するのも納得という攻撃の内容だった。
後半の頭も前半と似たようにアストンビラの保持ベースでスタート。ユナイテッドは前半と同様に機を見たいハイプレスでアストンビラ陣内でプレッシャーをかけていく。だが、ボールを奪い切ることはできず。同様にビラもこのプレスをひっくり返すことで決定機を作ることはできなかった。
ミドルゾーンで加速する局面自体は増えた後半だったが、肝心のゴール前での決定機はあまりない展開。早い攻撃の中で互いのアタッカー陣のミスとバックスの優れた対応が連鎖する。
どちらかといえばチャンスがあったのはビラの方だろう。だが、終了間際のフィロジーンの決定機はダロトのブロックにあってしまい、仕留めることが出来ない。
試合は結局そのまま終了。後半は前半に輪をかけてなかなか決定機を作れない堅い展開に対して、ブレイクスルーを見つけることができないままタイムアップを迎えることとなった。
ひとこと
ユナイテッドはこれで得点数が5。サウサンプトンに次いで少ない得点数だ。
試合結果
2024.10.6
プレミアリーグ 第7節
アストンビラ 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
ビラ・パーク
主審:ロベルト・ジョーンズ
第8節 ブレントフォード戦(H)
CFに帰還した大きな柱が逆転勝ちを牽引
現在の順位は14位。ユナイテッドに求められるのは一刻も早い勝ち点3である。しかしながら、序盤はその思いとは裏腹にうまくペースを握ったのはブレントフォード。ハイプレスでの高い位置からのプレッシャーでユナイテッドを敵陣まで押し込んでいく。
一方、保持ではショートパスからの前進にこだわる姿勢を見せるブレントフォード。構える方針で受けるユナイテッドだったが、ダロトが飛び込んではピンチを迎えてしまうなど不安定な状況はここでもという感じであった。
しかし、そんなユナイテッドの救世主になったのは縦パスをきっちり収めてくれる前線の起点。スターターにようやく戻ってきたホイルンドを軸としたコンビネーションから左右に大きく振ることでチャンスを作る。もちろん、ホイルンドと繋がった選手が直接ゴールに向かってもOK。大外で仕掛けの機会を待つガルナチョとインサイドからの抜け出しを狙うブルーノとラッシュフォードという攻め筋でユナイテッドはアタッキングサードでチャンスを作っていく。
ブレントフォードも保持の仕上げには左WGのルイス-ポッターが関与。両チームとも左サイドは仕上げになる。だが、ガルナチョも含めてなかなか試合を決めるようなワンプレーを見せることができない。
時間の経過とともに押し込む機会を増やしたのはユナイテッド。ホイルンドというボールの預けどころを活かして、ブレントフォードを自陣に押し込む。ブレントフォードはカウンターのカラーが濃くなるように。プレスラインは一旦下げてブロックを組むことを受け入れる。
だが、先制点は引いて受けるブレントフォードが仕留める。セットプレーからピノックが豪快なゴール。ユナイテッドとしては治療のためデ・リフトがいない間にゴールを決められたという不満が残る1点となった。
しかし、後半にすぐさまユナイテッドは追いつくことに成功。ホイルンドを軸としたコンビネーションは後半も健在。押し込む機会を作っていくと、ラッシュフォードからのボールをガルナチョが仕留めて試合を振り出しに戻す。中央で作ってサイドで仕上げるという連携が完成した瞬間であった。
さらにユナイテッドはそのまま追加点をゲット。今度はホイルンドがブルーノとの連携で中央をこじ開けることに成功し、リードを奪う。
最後はブレントフォードにボールを渡し、ブロックを組んで守り切ることでミッションコンプリート。攻め筋を完結させたユナイテッドがホームで勝ち点3を手にした。
ひとこと
ホイルンドを軸とした連携は抜群。大きな戦力が帰ってきた。
試合結果
2024.10.19
プレミアリーグ 第8節
マンチェスター・ユナイテッド 2-1 ブレントフォード
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:47‘ ガルナチョ, 62’ ホイルンド
BRE:45+5’ ピノック
主審:サム・バロット
第9節 ウェストハム戦(A)
ロンドンで旅を終えたテン・ハーグ
不安定な成績が続く両チームの一戦。立ち上がりの展開も互いに非常にバタバタとしたもの。高い位置でのハイプレスを掛け合う形で相手のバックラインに襲いかかる。
特にプレスに強い意識を見せていたのはウェストハムの方。ソレール、ロドリゲスのジャンプから人を捕まえにいく形でマンツー気味のプレスにいく。仮に抜けられたとしても前線は根性のプレスバックでなんとか間に合わせる形をキープ。でて行った時にひっくり返されるリスクを運動量で潰す。
マンチェスター・ユナイテッドはフリーランでマンツーのプレスを回避。特に相手のCHを前と後ろに開かせるようなフリーランを仕掛けることで他の誰かが中盤の中央を使えるような設計がなされていた。中央のスペースに立つことが多かったのは少ないタッチで裏に抜けるガルナチョをアシストしてあげられる選手。特にホイルンドとブルーノがこれに該当する。マンツーでやや後手を踏んでいたウェストハムは徐々にリトリートの成分を増強して構えるようになる。
しかし、マンチェスター・ユナイテッドの前進は縦パス+裏抜けの縦に速い設計。ウェストハムの前進も左のエメルソンからアントニオに縦パスを当てて一気に進んでいく形だったので、徐々にオープンさが出てくるという流れだった。
チャンスが多かったのはマンチェスター・ユナイテッドの方だろう。一番インパクトが大きかったのは抜け出したダロトの決定機逸だろうが、前を向いて仕掛ける機会が多かったガルナチョももう少し大きな成果を残したかった感もあった。それでも押し込みながらセットプレーでチャンスを作るマンチェスター・ユナイテッドが相対的には優勢な形で前半を終える。
後半も縦に速い展開からスタート。中盤でのワンタッチ裏抜けからチャンスを作りアップテンポな展開を作り出す。
後半はウェストハムが押し込む展開を作っていく。先制点は敵陣でのカットから。ガルナチョ→ブルーノのパスをカットし、右サイドからのカウンターを発動。ボーウェン、イングスと繋ぎ、サイドはHT3枚替えの一角であるサマーフィルが仕留めて先制する。
それでもマンチェスター・ユナイテッドはガルナチョの左サイドからのクロス連打で反撃。拙いボックス内の対応を見せたウェストハムに対して、最後はカゼミーロが押し込んで同点に追いつく。
一進一退の攻防となった試合は微妙なPKで決着。デ・リフトの信じられない表情を意に介さず、ボックス内での接触はOFRの末にPKが宣告される。これをボーウェンが仕留めてウェストハムが後半追加タイムにリードを奪う。
試合はこのまま終了。試合後にテン・ハーグは解任の憂き目に。ロンドン・スタジアムでの敗戦でテン・ハーグのマンチェスター・ユナイテッドは幕を閉じることとなった。
ひとこと
まぁ、あのPKをOFRされるのは気の毒ではあるが、試合を通してどっちに転がってもおかしくない展開にしてしまったのは正直マンチェスター・ユナイテッドという看板を考えると力不足だなとは思う。
試合結果
2024.10.27
プレミアリーグ 第9節
ウェストハム 2-1 マンチェスター・ユナイテッド
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:74′ サマーフィル, 90+2′(PK) ボーウェン
Man Utd:81′ カゼミーロ
主審:デビッド・クート
第10節 チェルシー戦(H)
局地戦特化の後半は痛み分けに
ロンドン・スタジアムでの悲劇的なPK判定による敗戦の末、ついにテン・ハーグ解任に踏み切ったユナイテッド。アモリム就任が決まっている中でファン・ニステルローイ暫定監督の元、チェルシーとの一戦に挑む。
序盤は激しいトランジッションの中でスタート。中盤でのデュエルを行いながら、主導権の綱引きを行っていく。しばらく時間が経つとボールを持ったのはチェルシーであった。バックスにプレスをかけないユナイテッド相手に落ち着いてポゼッションをするように。
チェルシーの保持に少し変化があったのは微妙な配置。ベースとなる形は3-2-5で固定。変化があるのはどこに誰が立つかである。いつもであれば右サイドに立つパルマーが左のハーフスペースに。右にはSBのグストが列を上げて出て行く。
左のパルマーは少し微妙な感じもしたが、降りるアクションをするアクションは前節から引き続き良好。ボールを引き出しユナイテッドのプレスの隙間から前進していく。ただ、痛かったのは右のマドゥエケが1on1の状況からゴールに向かうのに苦戦したこと。仕上げの部分でチェルシーは難をかかえる。
ボールを持つ基本はチェルシー。しかしながら、ユナイテッドも徐々にプレスでリズムを作っていくように。相手を捕まえるスライドに慣れていくようになり、チェルシーの前進を阻害していく。
ユナイテッドは前線のレーンを入れ替えながらのカウンターも繰り出していくように。チェルシーは前線のFW-MF間のコンパクトさをあまり維持できておらず、即時奪回の機会を見出すことが出来なかった。
後半、チェルシーはパーマーが右サイドに移動。いつも通りの位置に入りながら攻撃にs中する。だが、後半もマドゥエケが仕留められないのは同じである。
後半は両チーム激しいデュエルでオープン化。両チームとも相手をきっちりと捕まえる迎撃プレスを繰り出すことで局地戦の様相を増やす。
一進一退となった後半に輝きを放ったのはカゼミーロ。ボックス外からの正確なクロスがサンチェスの飛び出しの遅れを誘発。PKをうばいとるのに大きく貢献する。
先制したユナイテッドだったが、4分後にチェルシーは同点に。カイセドの枠外からの豪快なシュートであっという間に試合を振り出しに戻す。
終盤はさらなるゴールを狙ったものの両チームこれ以上に得点は生まれず痛み分け。局地戦に特化した試合は引き分けに終わった。
ひとこと
チェルシーサポーターがやたらとOTに苦手意識があったようだが、この日もその傾向は健在だった。
試合結果
2024.11.3
プレミアリーグ 第10節
マンチェスター・ユナイテッド 1-1 チェルシー
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:70’(PK) ブルーノ・フェルナンデス
CHE:74‘ カイセド
主審:ロベルト・ジョーンズ
第11節 レスター戦(H)
左サイドの詰まりを解消し、ファン・ニステルローイの最後を飾る
高い位置から相手を捕まえにいく積極的なスタートとなったのはレスター。ユナイテッドのバックスに対してプレスをかけていく。ただし、プレスの足枷になったのはトップの役割。アイェウ、エンディディの2人はユナイテッドの中盤をケアしつつ、前に出ていく役割になっていたのでユナイテッドのCBを捕まえきれないことも。
特に浮くことが多かったのはリサンドロ・マルティネス。中盤とCBを往復するレスターの2トップを尻目に、外側で受けることでキャリーに成功する。割を食ったのはブオナノッテ。自分の前に登場するマルティネスとマーカーのマズラヴィの葛藤に悩まされる場面が出てくるように。
よって、徐々にレスターはバックラインにプレスにいかない場面を作るように。そうなると、今度はレスターの保持に悪影響が出てくる。ボール奪取位置が後ろになるため、ヴァーディ抜きで前進するにはなかなかにしんどいものがある。
なんとか左のファタウとアイェウの裏抜けから敵陣でプレーするチャンスを作るレスター。だが、先制点はマンチェスター・ユナイテッド。ディアロが陣地回復に成功したところからの流れで左サイドを攻略。左サイドで相手の目先を変えるアシストも披露。ブルーノのミドルのコースを埋めるべき、スマレはディアロに釣り出されることとなった。
ユナイテッドは後方の左サイドからのキャリーは安定していたが、前線ではやや動き出しのところが噛み合わない感があった。それでもその左サイドから追加点をゲット。2人のCBを惹きつけたホイルンドの背後から出てきたブルーノがオウンゴールを誘発する。
レスターは1-0の段階でアイェウとンディディがデ・リフトを挟み撃ちにすることで大チャンスを作り出す。だが、この前半唯一の決定機はオナナが落ち着いて対応。レスターは前半にスコアを動かすことができなかった。
後半はレスターの保持が中心となってスタート。右サイドから横断する形からチャンスを狙っていく。だが、左サイドで横断を完了させてもなかなかそこから仕上げることができない。
一方のユナイテッドは左サイドからのカウンターが中心。だが、パスのズレやコントロールの甘さから十分なチャンスに持っていくことができない。
チャンスを作れない状況が続く後半。どちらもチャンスを作れないならば、リードしている方が有利である。結果を出したのもユナイテッド。左に入ったガルナチョがミドルで仕上げて追加点。ようやく外から得点に絡んだガルナチョによって、試合は完全に決定づけられてしまった。
すでに勝敗は決していることを悟っているのか、追加点以降は何も起きない状態で試合はそのまま終了。ユナイテッドがファン・ニステルローイの指揮最終試合を白星で飾った。
ひとこと
ようやく、ユナイテッドは2桁得点に到達。アモリム就任で欧州カップ戦出場権争いに食い込めるか。
試合結果
2024.11.10
プレミアリーグ 第11節
マンチェスター・ユナイテッド 3-0 レスター
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:17′ ブルーノ・フェルナンデス, 38′ クリスチャンセン(OG), 82′ ガルナチョ
主審:ピーター・バンクス