イプスウィッチ、24-25シーズンの歩み。
第1節 リバプール戦(H)
裏の駆け引きの精度で上回り就任初陣を制する
一時代を築いたユルゲン・クロップに別れを告げ、新監督にアルネ・スロットを迎えたリバプール。その初陣は23年ぶりにプレミア復帰を果たしたイプスウィッチのホームスタジアムであるポートマン・ロードからのスタートだ。
立ち上がり、リバプールはゆったりとした保持からスタート。アレクサンダー=アーノルドがインサイドに入り、アンカー役のグラフェンベルフをサポートするという昨季も見られた形であった。強いていえばマック=アリスターとグラフェンベルフが位置を入れ替えてプレーすることを普通に行っていたのがオリジナリティかもしれないが、これはアンカーの位置にグラフェンベルフが入ったというパーソナティによるものかもしれない。
イプスウィッチはバーンズが列を下げ、トップ下のチャップリンがサイドを埋めるなど、序盤は自陣をきっちり埋めるモードかと思われた。しかしながら、以降は枚数を合わせて高い位置からのプレスに出ていくように。序盤のフィーリングは悪くなかったが、1枚目の警告が早々に出るなど後方の同数受けはやや無理が出てくる。徐々に裏に走るサラー、降りてくるジョッタ、陣地回復をするディアスといった面々にハイラインを突かれるようになる。
イプスウィッチも前3枚が同数や数的優位でカウンターに打って出る場面もあったが、そこから1本有効打となるパスが繋がらず。ミスになってしまったり、コネることでスローダウンしてしまったりなど、シュートを打ち切ることができない場面が目立つ。
むしろ、そうした状況に漬け込んだ感があるリバプール。定点保持よりもファストブレイクの方が効果的だった前半ではイプスウィッチの精度の低いカウンターは、自分たちの速いテンポでの攻撃の養分。前3枚の陣地回復力を生かした速攻とセットプレーをベースに前半はチャンスを作ったリバプールだった。
迎えた後半、ゆったりとボールを持つリバプールに対して、カウンターベースで対抗するイプスウィッチ。そうした中で左サイドの突破からイプスウィッチはあわやPKというシーンを迎える。だが、これは左サイドを抜け出した際のデイビスのオフサイドで検証されることはなかった。
この場面のようにハイライン破りにおけるオフサイドはこの試合の命運を分けたように思える。サイドから抜け出したと思っても、ラインを上げられてオフサイドに引っかかり続けたイプスウィッチと、ラインの駆け引きに関してはほぼノーミスで出し入れができたリバプールでハイラインの攻略の精度には差が出ていた。
というわけでファストブレイクの精度で上回ったリバプールが先制。サラーのラインブレイクからジョッタがゴール。スロット政権での初ゴールを仕留める。さらにリバプールはまたしてもサラーの裏抜けから今度は自身がゴールを決めて追加点を奪いきる。
ゴールを奪われるのであれば出て行きたいところではあるが、裏の駆け引きが完敗という事情もあり、イプスウィッチは出て行けば行くほど苦しむというジレンマに悩まされていた感があった。3失点目に至らなかったのはGKのウォルトンの奮闘によるものであり、いつ更なる失点を喫してもおかしくはなかった。
スロットの初陣を制したリバプール。23年ぶりのプレミア帰還を果たしたイプスウィッチを下してリーグ戦好発進だ。
ひとこと
本文で述べた通り、前線とバックスの駆け引き勝ち。
試合結果
2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
イプスウィッチ 0-2 リバプール
ポートマン・ロード
【得点者】
LIV:60‘ ジョッタ, 65’ サラー
主審:ティム・ロビンソン
第2節 マンチェスター・シティ戦(A)
いつもの「凪」で安定の逆転勝利
開幕戦で勝利を決めたシティ。ホームに戻っての今季初戦は昇格組のイプスウィッチ。リバプールに続いて、シティと戦うという修羅の道でプレミアをスタートさせている。
いつも通り、ルイスをアンカー脇に上げる形で3-2-5を組むシティ。ここから大外のフォローにアカンジとグバルディオルがそれぞれ出ていく形となっている。左の大外に関してはグバルディオルが突撃するパターンもしばしばであった。
イプスウィッチは前節のリバプール戦ではマンツーマンハイプレスを敢行していたが、シティ相手に同じことをする気はない様子だった。ジョンソンが低い位置まで下がるアクションを見せるなど5バック気味に守る。しかしながら、大外をジョンソンとトゥアンゼベがかぶって守るシーンが多く、CBのウールフェンデンが迎撃にいくシーンもしばしばだった。一応決まりと言えば決まりにも見えるが、スライドが遅く間に合っていなかった。シティ相手にポケット対応が曖昧なのは致命傷である。
イプスウィッチはハッチンソンのキープにスモディクスが合わせる形で奇襲を成功させるが、それ以降は一方的に殴られる展開に。サヴィーニョがあっさりPKを奪取して早々に振り出しに戻すと、ハイプレスからムリッチのミスを誘って追加点。さらにはハイライン破りからこれまたムリッチの安易な飛び出しを誘発し、あっという間に2点リードを確保。以降もセーフティに大外の優位をとりながら試合を進める。
イプスウィッチは押し返すことができてWBの攻撃参加を促せれば可能性もないことはなかったが、なかなかその機会を掴むことはできず。先制点以降は苦しい展開が続く状態でハーフタイムを迎えることとなった。
迎えた後半も展開は同じ。一方的にシティがボールを持ちながら相手を動かしていくスタート。イプスウィッチは後半頭はやや高い位置から捕まえにいく意識をしていたものの、最終的には3-2-5から大外を起点に押し下げるシティに屈して自陣に撤退する。
一向に打開策が見つからないイプスウィッチに対して、シティは大外からハーフスペースに突撃を繰り返しながらボックス内に侵入していく。シティは後半終了間際にハーランドが4点目を確保。ハットトリックを達成し、多くの拍手を浴びながらひと足先に交代でピッチを退く。
終了間際まで波風を立たせることなく淡々と白星を手にしたシティ。アウェイに続きホームでも勝ち点3を確保し、開幕連勝を決めた。
ひとこと
後半は凪。いつものようにずっとシティペースで制圧していた試合だった。
試合結果
2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
マンチェスター・シティ 4-1 イプスウィッチ
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:12′ 16′(PK) 88′ ハーランド, 14′ デ・ブライネ
IPS:7′ スモディクス
主審:サム・アリソン
第3節 フラム戦(H)
初勝利の光が見えた1ポイント
開幕2試合はいずれも敗戦したイプスウィッチ。プレミアリーグの洗礼と言えばそうなのかもしれないが、シティとリバプールという日程に単に恵まれなかった感もある。そういう意味では本番はここからとも言えるだろう。
結論から言えば、この試合のイプスウィッチは相当健闘した。フラムの攻撃を引っ掛けたら素早く縦に進んでいったし、スローダウンした際もSBのオーバーラップを使いながら広く攻め手を見せていく。押し込む中でセットプレーからゴールに迫るシーンも。レノのファインセーブがなければ、あっさりと立ち上がりに先制点を奪っていたことだろう。
プレミアでも通用しそうな強度を見せたイプスウィッチは先制ゴールをゲット。カウンターから右サイドを抜け出したデラップがネットを揺らしてリードを奪う。
フラムは前から積極的にプレスにくるイプスウィッチに対して、対角パスから対抗。右の大外に立つトラオレで勝負を仕掛けていく。10分くらいから少しずつゆったりとした保持が増えたフラム。だが、遅攻になったとしてもトラオレ以外の攻めるポイントがなかなか見えて来ずに苦戦。逆に言えばブロック守備と特攻プレスの両面でイプスウィッチはそれなりの手応えを感じていたとも言える。
悪くない流れだったイプスウィッチだったが、フラムは前半のうちに試合を振り出しに戻すことに成功。左サイドから抜け出したロビンソンのクロスに合わせたのはトラオレ。
後半は互いにゆったりとした保持からスタート。前半よりは保持の局面が増えたイプスウィッチだが、フィーリングは悪くない。フラムの方がやや旗色が悪い立ち上がりとなった。
フラムはベルゲとルキッチを並べたところから少しずつリズムを上げていく。イプスウィッチもこれに組み合っていく。目立っていたのはオグベネ。保持では抜け出し、非保持では自陣まで下がっての5バックの形成と喰らいついていく。
終盤はカウンターの応酬となった両軍。だが、守備側の貢献が光り、これ以上のゴールが生まれることはなかった。イプスウィッチは手応えのある内容とともに今季初めての勝ち点1を手にした。
ひとこと
イプスウィッチ。この水準の内容ならば3ポイントもそう遠くないのではないか。
試合結果
2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
イプスウィッチ 1-1 フラム
ポートマン・ロード
【得点者】
IPS:15‘ デラップ
FUL:32’ トラオレ
主審:ルイス・スミス