レスター【18位】×マンチェスター・シティ【7位】
らしさは拭えずもマカティーは輝く
力ない連敗が続いているシティ。そろそろ勝利が欲しいところで迎えるはレスター。相手的にもそろそろ勝利が欲しい一戦である。
シティは3-2-5でのスタート。ルイスが絞ってアンカーの脇に立つ。左に立ったサヴィーニョは今日も攻撃の切り込み隊長を担う序盤戦だった。シティは左サイドを押し込んでいくが、ハーフスペースを広げて、カバーに入れそうなウィンクスを連れ出すところまではできていたが、そのスペースを活用するところまでは進むことができなかった。
立ち上がりから決定機を作っていたシティだったが、順風満帆とはいいがたいスタート。ハイプレスに出ていく姿勢を見せるのだが、このプレスは前線が連動しきらず。レスターを追い込めているのに、1人のサボりや一歩の差で捕まえきれずにカウンターを許してしまう。
レスターは左のハーフスペースで付近を主戦場にするトップ下のエル・カンヌスを使いつつ、左右の裏抜けもしくはヴァーディの一発の裏取りからチャンスメイク。シティのがばがばのプレスの網目を抜けてクリーンなチャンスを作る。
危ういシーンを作られたシティだが、何とか先制点をゲット。ルイスの助けを借りて、ライン間に侵入したフォーデンのミドルから先制。こぼれをサヴィーニョが押し込んでリーグ戦初ゴールを決める。
シティは保持で落ち着く流れを作るが、ボールを奪われるといちいち自陣まで運ばれてしまう。時間の経過とともに存在感を増していたのはマヴィディディ。左サイドをポイントを作りつつ、ボックス内に。シティの怪しい守備対応は先制後も続き、なんとかリードを保ってハーフタイムを迎えることとなった。
後半も試合の展開は同じ。だらっと保持の時間が続くのではなく、ある程度のところで奪われてしまい、そこから攻め込まれる時間も。悪い意味で最近のシティっぽい試合運びという感じで細かいことは期待できないなという感じだった。
レスターは緩さから抜け出せないシティを尻目に前進。中盤を引き出してはその背後に進むことでもぎ取るという展開を作り、決定的なチャンスを作っていく。しかし、レスターはこの流れに乗れず追いつくための機会をふいにしてしまう。
すると、このだらっとした流れで輝いたのは途中交代で右サイドに入ったのはマカティー。大外から相手を剥がしてインサイドにボールをつけると、最後は左サイドからのクロスをハーランドが仕留めてゴール。あまりにも大きな追加点が入る。
以降も右サイドからクロスをあげるなどチャンスは作れていたレスター。だが、ゴールを破ることはできず。ついにシティはトンネルを脱出。プレミアリーグ5試合ぶりの勝利を挙げた。
ひとこと
ひとまず脱出はしたがシティは課題の残る勝利となった。
試合結果
2024.12.29
プレミアリーグ 第19節
レスター 0-2 マンチェスター・シティ
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
Man City:21′ サヴィーニョ, 74′ ハーランド
主審:マイケル・オリバー
エバートン【15位】×ノッティンガム・フォレスト【4位】
要塞での逃げ切り成功
12月に入って絶好調のフォレスト。シティと入れ替わるようにCL圏内に入り込み、さらなる上位を狙っていく。強固なブロック守備が持ち味のエバートンに対しては受けているだけでは難しいと思ったのだろう。高い位置からのチェイシングでスタートする。
CFの序列の1番手がブロヤに変わりつつあっても、エバートンの優先順位はロングボール。ただ、この日のフォレストはプレスに出て行く分、ライン間の間延びも発生していたので、エンジアイなどがライン間に入っていく動きもちょこちょこ見せていた。
フォレストが保持に回るとゆったりとしたポゼッションを披露。自在な保持で相手を自由に動かしまくる!というところまではいかなかったが、エバートンの得意な縦に速い攻撃への抵抗は十分にできていた。
そうした中で先制点を生み出したのはフォレストのロングボール。ウッドがキレイに抜け出すことに成功し、そのまま先制点をもたらす。ほかに気にする要素もなかったので、ターコウスキはウッドにフォーカスできる状況ではあったと思うのだが、それにしては簡単に抜け出しを許してしまった感があった。
先制をしたのでフォレストはリトリート成分を強めてブロックを組む。この辺りはヌーノのチームのしたたかさ。ロングボールは全く収まらないことはないがクリティカルではないので、エバートンは工夫を見せる必要がある。
ブランスウェイトの持ち上がりはその工夫の一環にはなっていたが、彼の持ち上がりに呼応する選手はあまり見られなかった。ミレンコビッチが最後に出てきてしばき合いになっていたのは非常に見ごたえがあった。
一方のフォレストもロングボールで反撃。ウッドを囮にその背後を使う形のロングボールで、ソーサが決定機を迎える。保持は手放しても主導権はフォレストのままである。
後半の頭はロングキックの応酬。エバートンは左右の押し下げをしながらクロスを入れていく。フォレストはライン間に2列目が侵入することによってドリブルでの攻勢をかけていく。エバートンは警告が目立つ展開になった。
エバートンは後半も拙いロングボール対応から更なる失点を招く。3人で得点を獲り切ったフォレストはリードを広げた直後にはまだまだプレスに行こうとする素振りを見せるが、5-4-1へのシフトからの逃げ切り体制を狙っていく。エバートンがキャルバート=ルーウィンを入れて2トップ体制に移行したタイミングとほぼ同じである。
スタンスのクロスオーバーが起きた終盤戦だったが、思い通りに進めたのはフォレスト。2点のリードを盾に強豪も跳ね返されたグディソン・パークから勝ち点3を持ち帰った。
ひとこと
ターコウスキの怠慢な1失点目の対応はまったくもってエバートンらしくない。
試合結果
2024.12.29
プレミアリーグ 第19節
エバートン 0-2 ノッティンガム・フォレスト
グディソン・パーク
【得点者】
NFO:15‘ ウッド, 61‘ ギブス=ホワイト
主審:トニー・ハリントン
クリスタル・パレス【16位】×サウサンプトン【20位】
初ゴールは達成、初勝ち点はお預け
就任初陣はウェストハムにホームで敗れてしまったユリッチ新監督。ロンドンで迎える2戦目こそなんとか初勝利をあげたいところである。
リトリートベースの慎重派といういつも通りのスタンスを崩さないパレスに対して、序盤からサウサンプトンはオヌアチュへのロングボールで勝負するスタート。
もちろん、それ一辺倒ではなくサイドからの押し下げにもトライ。左サイドのウォーカー=ピータースの仕掛けからのクロスでディブリングは先制ゴールをゲット。ユリッチに就任後初ゴールをプレゼントする。
パレスの攻め筋はひとまずはカウンター。強引に中央にパスを刺してくるところを咎めて一気に3トップに当てての加速でサウサンプトンの保持ベースの流れを変えにいく。自陣に押し込まれるとやたらとバタバタしたのは失点シーンも含めて気になるところではあったが、サウサンプトンのプレスが弱まったこともあり、徐々に保持から時間を作っていく。
中盤を超えられるケースが出てきたサウサンプトン。押し込むようになってきたパレスはCKから同点ゴールをゲット。GKの周辺にわらわらと人をかけてほぼブロックするというアーセナル初号機仕様のセットプレーから同点に追いつく。
パレスは押しこむフェーズだけでなくロングボールも有効活用。マテタやサールに向かっていくロングボールから陣地回復をすることでサウサンプトンを苦しめる。特にマテタは無双状態。サウサンプトンは苦労してサイドから押し込んでも一撃でひっくり返すフィジカルですべてを台無しにしていた。
後半のスタートは互いにロングボールから。マテタ、オヌアチュというそれぞれのターゲットからチャンスをうかがう展開に。じりじりとしたパレスのプレスに徐々に逃げ場を失ったサウサンプトン。優勢だったパレスは左右のサイドから自在に押し込むとエゼのミドルで勝ち越しゴールを奪う。
リードを奪ったパレスは試合終了まで主導権を離さなかった。サイドの突破からの素早いクロスでサウサンプトンを追い詰めていく。サウサンプトンはブロックが間延びしてしまうことで受け手に回るとボールを奪う手段がないまま苦しみ続けることとなった。
終盤にようやくサイドの突破からのグラウンダーのクロスからボールを入れていくが、パレスに跳ね返されてしまいジエンド。今節もユリッチ就任後初の勝ち点奪取はならなかった。
ひとこと
地力の差を覆すのはなかなかにしんどい。
試合結果
2024.12.29
プレミアリーグ 第19節
クリスタル・パレス 2-1 サウサンプトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:31′ チャロバー, 52′ エゼ
SOU:15′ ディブリング
主審:マイケル・サリスベリー
トッテナム【12位】×ウォルバーハンプトン【17位】
止まらない負傷交代の連鎖
12月に入って負傷者が続出。勝ち点を積み上げるペースが落ちているトッテナム。ここに来て対戦するのが監督解任以降、少しずつ調子が上がっているウルブスというのも嫌なところだろう。
ウルブスはメリハリのあるプレスでトッテナムを苦しめるスタート。リトリートでの5バック構築とGKのみを放置するマンツー気味のプレスの両刀はハマった感がある。シャドーが外を切りつつコースを狭めて、中央でボールを刈り取るというスタイルからウルブスはファストブレイクを狙っていく。
前が出ていくならば後ろも出ていくということできっちりと覚悟をそろえることができていたウルブス。高い位置からでの跳ね返しに成功すると、カウンターからファウルをゲット。このFKを横にずらす形からヒチャンが先制ゴールを決める。
ハイプレスに出ていきながらボールを奪い返すということを狙っていきたいトッテナムだが、プレスがハマらず苦戦。特にサイドの縦の関係性のチェーンが切れやすくこの間に入ってくる選手を捕まえるのに苦労する。
だが、セットプレーで同点に追いつくと少しずつ巻き返しに成功。前線の降りるアクションを見せることでプレスを外しつつ、ボールを敵陣まで運べることが増える。特にベンタンクールは相手との離れ方と味方が作ったスペースの使い方を時間経過とともに掴んでいったように見えた。
敵陣に入ると右サイドからのコンビネーションが光る。細かいパスワークからの抜け出しで押し込んでからの一手を見せることができていた。
右サイドのポケット侵入から得たPKはソンが止められてしまうが、右サイドの攻略は前半終了間際に実る展開。クルゼフスキとジョンソンのコンビネーションから勝ち越しゴールを決める。この右サイドにボールを運んだのは相手のプレスとの距離感を見つけたベンタンクールだった。
迎えた後半もハイラインをめぐる攻防が目につく展開に。マンツーを外しに行くトッテナムに臆することなく、高い位置からボールを奪いにいく。
そんな中でウドジェが負傷交代と嫌な流れを感じるトッテナム。徐々にウルブスがボール奪取からテンポを掴んでいくように。トッテナムはハイラインブレイクからチャンスを作りたいが、なかなかウルブスのプレスの背後を取ることができない。
終盤は4バックにシフトしたウルブス。押し込むところから前線のメンバーを増員してなんとか追いつきにいく。このスタンスが実ったのは87分。左サイドから珍しく右足を使ったアイト=ヌーリからラーセンへのアシストが通り、角度のないところから仕留める。
終盤はどちらのチームもチャンスがあるオープンな展開に。右サイドの抜け出しにサールが合わせる形でチャンスを作るトッテナムだったが、サールの抜け出しのタイミングが微妙に合わないのが痛恨だった。
試合はドロー決着。トッテナムはリードを守り切れず、前節に続いて勝ち点を落とすこととなった。
ひとこと
負傷交代がここまで増えると、なんとかどうにもならない部分もある気がする。
試合結果
2024.12.29
プレミアリーグ 第19節
トッテナム 2-2 ウォルバーハンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:12’ ベンタンクール, 45+3‘ ジョンソン
WOL:7‘ ヒチャン, 87’ ラーセン
主審:クリス・カヴァナー
フラム【8位】×ボーンマス【6位】
ヒーロー対決はドロー決着
強きを挫き、弱きに止められという印象の両チーム同士の一戦。共に4-2-3-1のようなフォーメーションが基本になるが、この日のフラムは文脈を踏襲するかのような5バック採用。もはや、ファーストチョイスもしくはそれに準ずるオプションとしてこの仕組みにトライしている感がある。
そんなフラムをよそにボーンマスは平常運転。強度の高い縦への攻撃からチャンスを作りに行く。エヴァニウソンのバックパスに対する強襲などは開始早々の得点につながってもおかしくない形であった。
15分も過ぎると押し込むのはボーンマス。後ろに重たい布陣を組むフラムに対して、一方的に敵陣でのプレーを増やしていく。ただ、フラムも押し込まれる状況ながらもロングキックからお手軽に前進できる状況だった。
先制点を手にしたのは押しこまれている状況のフラム。セットプレーからあっさりとヒメネスがケルケズを振り切ってフリーでヘディングを仕留めてみせる。
対するボーンマスは巧みなレーン移動から対抗。エヴァニウソンのサイドフローからセメンヨが侵入するというレーン交換による揺さぶりからチャンスを迎える。
逆に言えば押し込まれる状態を作られるだけで揺さぶりをかけられることがなければ、特段フラムは失点の危険性が少ない前半だった。試合はフラムの1点リードでハーフタイムに入る。
後半もボーンマスはきっちりと押し込むスタート。きっちりと自陣を固める意識があるフラムだったが、後半早々に失点。エヴァニウソンが外すアクションをすることでアンデルセンを動かし切ることに成功。完全にマークを外して同点ゴールを叩き込む。
フラムも他店速い攻撃から展開を徐々にフラットに戻していく。押し込むフェーズが出てくるようになったことでフラムはシンプルなイウォビのタメ→ロビンソンから前を開けてヒメネスに向かってクロスを上げていく。
フラムは左右に振る形から勝ち越し。フリーになったウィルソンが2点目となるゴールを決める。フラム目線で言えば、クックからハイゼンにマークを渡し損ねたところが致命傷となった。
追いかけるボーンマスはセメンヨを軸としたカウンターからチャンスメイク。フラムは何とか跳ね返しを聞かせていたが、自陣でのディオプのパスミスから失点。ロビンソンが戻り切れないところから侵入を許し、土壇場で同点に追いつかれてしまう。
何とか追いつくことが出来たボーンマス。弱きを助けるヒーロー対決はドローでの決着となった。
ひとこと
弱きを助けるヒーロー対決が引き分けに終わるのはちょっとそれっぽいなと思ったりした。
試合結果
2024.12.29
プレミアリーグ 第19節
フラム 2-2 ボーンマス
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:40‘ ヒメネス, 72’ ウィルソン
BOU:51‘ エヴァニウソン, 89’ ワッタラ
主審:ロベルト・ジョーンズ
ウェストハム【13位】×リバプール【1位】
悠々自適の首位ターン
前節はレスター相手に逆転勝利を挙げたリバプール。すでに2024年を首位ターンすることは確定しているが、勝利で締めたいところだろう。
序盤からペースを握ったのはリバプール。基準点を作り、その選手を追い越しながら裏を取ることでウェストハムの最終ラインの背後を突くアクションが効いていた。
特に左サイドのガクポの絞る動きが秀逸。パケタ、クドゥスを低い位置に釣るようにビルドアップ隊がポジションを取ることでガクボが入り込むスペースを作り出していたのも設計通りだろう。このガクポから追い越すロバートソンや対角のサラーで裏を狙うリバプール。キルマンやアレオラの水際の対応がなければ早々に失点していたはずだろう。
ウェストハムが苦しかったのは保持に回ってからも同じ。自陣付近でのショートパスのパスミスやこのパスが通れば!という長いレンジのパスをことごとく引っ掛けてしまう。特にパケタはこの点で悪い部分がとても目立っていた。
唯一気を吐いていたのはクドゥス。カウンターからミドルでリバプールのゴールを強襲するなど見せ場を作った。
リバプールの先制点は30分過ぎ。背後を狙うパスを引っ掛けた結果、ディアスがゴールを沈める。前半を通してリバプールが狙っていた形の副作用のような得点でリバプールがスコアを動かす。
このゴールを皮切りにリバプールはゴールラッシュ。サラーがギリギリでオフサイドを回避した右サイドのラインブレイクからウェストハムを押し下げると、サラーの華麗な身のこなしから最後はガクポが追加点を決める。
さらに前半終了間際にはソレールのロストから3点目。この試合で見られたウェストハムの保持の拙さからリバプールがゴールを重ねる。総じて、ハイライトの要素がそれぞれの得点に散りばめられた前半だったと言えるだろう。
後半、ウェストハムはハイプレスに出ていくことで勝負に出ていく。しかしながら、リバプールはハイラインに出ていくウェストハムをサラーの抜け出しからこわしていく。前半は幅取り役だったサラーは後半は最終局面に関わるように。
ウェストハムはアレオラのパスミスから自作自演のファインセーブをするなど不安定な戦いに終始。そんなウェストハムを尻目にブロックの外からアレクサンダー=アーノルドのミドルで4点目を決める。
悠々自適のリバプール。ミドルゾーンからのスピードアップとスローダウンの使い分けでウェストハムを翻弄。交代選手のプレータイムのマネジメントも含めて、完璧な試合だったと言えるだろう。最後はジョタが締めて5点目。試合はリバプールの完勝で幕を閉じた。
ひとこと
ウェストハムは無抵抗にやられるだけだった。
試合結果
2024.12.29
プレミアリーグ 第19節
ウェストハム 0-5 リバプール
ロンドン・スタジアム
【得点者】
LIV:30′ ディアス, 40′ ガクポ, 44′ サラー, 54′ アレクサンダー=アーノルド, 84′ ジョッタ
主審:アンソニー・テイラー
イプスウィッチ【19位】×チェルシー【3位】
冷や汗いらずの上位崩し
ボールを持つのは当然チェルシー。3-1という後方の陣形をベースにSBの片側を上げる形でポゼッション。アンカーへのサポートが薄いのはプレスに強気で来ないチームに対してはもはやチェルシーの常套句となっている。
大外に立つのはククレジャとマドゥエケ。ライン間に入るような人を多く用意する形も今のチェルシーのお馴染み。イプスウィッチはシャドーを絞る形で守り、大外はWBが列を上げての迎撃。中央を固めにしつつ、サイドには強気のプレスで出て行く。
チェルシーはこのイプスウィッチの陣容に対抗するようにコルウィルがシャドーの外側で受けるなどポゼッションを微調整。この日は高い位置でもカイセドの積極的な顔出しやパーマーとマドゥエケの位置交換など、レーンの配置は通常よりも柔軟だったように思える。
イプスウィッチはボールを奪うアクションから一気にフィニッシュまでを狙っていくのが攻撃の手段。ショートパスで相手のプレスを自陣側に引き寄せることが出来たらそこから一気に加速していく。
違いを作ったのはやはりデラップ。12分に抜け出しからPKを獲得。これを見宇zからが仕留めて先行する。リードを奪って以降もイプスウィッチはリードを守りに行くのではなく、強気にプレスに行くことで勢いに乗っていこうというスタンスを見せる展開となった。
追いかけるチェルシーは崩しの局面は悪くないもののフィニッシュの精度が悪い。右から作り、左で仕留めるというスタンスを成立させられなかったのはフェリックス。大外位置でのクロスの待ち受けでオフサイドにかかるという痛恨のミスで得点機を逃してしまう。虚を突いたパーマーのFKも含めて、チェルシーはいつ得点をしてもおかしくない状況だった。一方のイプスウィッチは徐々にカウンターが単発に。苦しい状況のままハーフタイムを迎える。
後半も保持から勝負するチェルシー。エンクンクが上下動するなど前半はあまり崩しでも機能しなかった左サイドに変化をつけていく。
しかし、そんなチェルシーをあざ笑うかのようにイプスウィッチはカウンターで一発回答。ディザシのパスミスからハッチンソンとデラップでカウンターを完結する。ディザシはパスミスとそこからの守備対応で二度まずいことになってしまった感があった。
主力を投入して巻き返しを図るチェルシーだが、なかなか主導権を取り戻せず。イプスウィッチの前線は60~70分くらいはやや疲労が見えていたが、ここから先の時間帯は勢いを取り戻し、むしろ終盤は逆にチェルシー陣内に攻め込むことが出来ていた。
試合はそのままイプスウィッチが逃げ切り勝利。冷や汗もいらないセーフティリードで上位相手に勝ち点3を手にした。
ひとこと
ちょっと噛み合わないなという保持の状況とカウンターで大きな下手を打ってしまった非保持の状況が噛み合わなかったこの日のチェルシーだった。
試合結果
2024.12.30
プレミアリーグ 第19節
イプスウィッチ 2-0 チェルシー
ポートマン・ロード
【得点者】
IPS:12‘(PK) デラップ, 53’ ハッチンソン
主審:ジョン・ブルックス
アストンビラ【9位】×ブライトン【10位】
終盤のエネルギーでブライトンが勝ち点1をもぎ取る
やや停滞気味の順位から欧州カップ戦争いに少しでも近づきたい両チームの一戦である。ジョアン・ペドロの出血という不穏なスタートで始まったこの試合。互いに保持からの解決策を探るスタートとなった。
アストンビラは左サイドのライン間のスペースを狙う。この場所を得意とするロジャーズから切り拓いてもらおうという考え方だろう。
アストンビラがいつもと違ったのは3バックへの可変を保持においてしなかったこと。これは非保持のブライトンのプレスが5バック気味だったことも関係がありそう。
アストンビラが変形すると噛み合ってしまうのでファジーな形の4-4-2のままにした方がライン間のスペースは生まれるというイメージがあったかもしれない。そのおかげでロジャーズに対してブライトンのDFは前に出ていくかの迷いが見えた。ちなみにブライトンの5バックへの変形はアストンビラ対策もあるだろうが、単純にSBのエストゥピニャンが病気でいない影響もありそうだ。
しかし、先制点を奪ったのはブライトン。構えて受けるビラの4-4-2ブロックに対して、自由にボールを持つことができたダンクから左の奥にフィードを落とすと、そのままダイアゴナルに内側に入り込んでゴール。後手に回るビラのバックラインに対してあっさりと先制ゴールを奪う。
ライン間のロジャーズに対しては徐々にファン・ヘッケが出ていくことで対応は整理しつつあったが、インサイドに強引にパスをつっかけることでカウンターを受けるなど、得点が一方的にブライトンのペースを呼び込んだというわけではなかった。
ともに相手をミドルゾーンで外しさえすれば加速することができる両軍。マンツーのリアクション遅れが目立つブライトンに対して、アストンビラが徐々に押し返すと36分にはPKで追いつくことに成功する。
後半もその流れに乗って押し込むのはアストンビラ。セットプレーの流れからの二次攻撃をロジャーズが仕留めて逆転に成功する。
ビハインドを背負ったブライトンは5バックでの迎撃を棚上げして前からのプレスを解禁。高い位置からビラにスピーディなリアクションを迫る。これにビラが慌てたことで主導権はブライトンに。前線を入れ替えて三笘、ラター、ミンテを入れたことで完全に押し込み流れの攻略を狙っていく。
オープンな展開を生み出したことも甲斐もあり、ブライトンはランプティが81分に同点ゴールをゲット。ビルドアップからフィニッシュまで他局面に関与する見事な一連のプレーだった。
アストンビラにも再び勝ち越しのチャンスはあったが、これ以上ゴールは生まれず。試合は勝ち点1を分ける結果となった。
ひとこと
終盤に出せたエネルギーはややブライトンの方が上。デュランの出場停止が悔やまれるところだろう。
試合結果
2024.12.30
プレミアリーグ 第19節
アストンビラ 2-2 ブライトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:36’(PK) ワトキンス, 47′ ロジャーズ
BHA:12‘ アディングラ, 81′ ランプティ
主審:クレイグ・ポーソン
マンチェスター・ユナイテッド【14位】×ニューカッスル【5位】
見えなかった逆境への抵抗
ダービーの勝利を勢いに繋げられないマンチェスター・ユナイテッド。連敗でキャプテンを欠く今節はニューカッスルをホームに迎えての一戦だ。
だが、この逆境に対して抵抗する意志は全く感じられない立ち上がりとなった。5分のイサクの先制点はユナイテッド目線で言えば何もかもが酷いものだった。クロスがややディフレクトしたとはいえ、最重要人物のイサクを2人のCBで監視しながらフリーで飛ばせるのはどうかと思うし、そもそも左に展開される前の右サイドでのニューカッスルのパス交換はあまりにもブロックの外と中を自由に出し入れさせすぎだ。
以降も試合はニューカッスルの独壇場。先制点で見せた強みはそのまま前半のニューカッスルの優位となっていた。アンカーのトナーリが右に流れることによるブロックに対する出し入れ、主に左サイドでの1on1、そしてボックス内の空中戦。後ろ2つの要素はそのまま2点目のジョエリントンのゴールに色濃く反映されている。
マンチェスター・ユナイテッドとしてはまずはできることをきっちりやりたいところだろう。CHの可動域が狭いのは仕方ないのだから、前線がもう少しパスを通されるゲートを制限したりとか、DFが後方から潰しに行くとかそうしたフォローが欲しいところ。
リサマルの潰しとか、ザークツィーの交代に伴うエリクセンのシャドーへの移動など細かいところで言えば、失点以降に改善は見られたと言えるだろう。時に後者は保持においてはホイルンドの裏抜けを使った決定機の創出のフリになったり、あるいは中盤での組み合いでの劣勢の解消になったりなど効果があったように見えた。反撃の機運を可視化するためにも終盤のカゼミーロの決定機は決めておきたかったところだ。
後半、マンチェスター・ユナイテッドはボール保持の成分を増やすスタート。前半同様にニューカッスルはWGのマーフィーにサイドの低い位置を埋めてもらうが、ライン間の管理は前半の方がタイトだった印象。ライン間で押し込むマンチェスター・ユナイテッドは左サイドからのクロスでマグワイアが決定機を迎えるが、これはネットを揺らすことができない。
64分のマンチェスター・ユナイテッドの交代策は前線のエネルギーを注入するのと引き換えに、エリクセンを中盤に戻して中盤の守備の負荷を上げる交代。前へのプレスの勢いは担保できたが、中盤の守備の負荷は戻った印象。この時間帯はニューカッスルの保持の時間が再び増えたが、2点差を追いかける上では仕方ないということなのだろう。
ニューカッスルの反撃を掻い潜りながらゴールに向かうマンチェスター・ユナイテッド。しかしながらゴールをこじ開けるほどの勢いを見せることはできず。試合はニューカッスルが前半のリードを守り切って勝利した。
ひとこと
交代で持ち直した感があったのは救いだが、マンチェスター・ユナイテッドのタイムリミットは刻一刻と迫っている。
試合結果
2024.12.30
プレミアリーグ 第19節
マンチェスター・ユナイテッド 0-2 ニューカッスル
オールド・トラフォード
【得点者】
NEW:5′ イサク, 19′ ジョエリントン
主審:サイモン・フーパー
ブレントフォード【11位】×アーセナル【2位】
新年初勝利を確保したアーセナル
レビューはこちら。
なぜか1日あけて2025年一発目の対戦カードに指定された第19節最後の試合。ホームにアーセナルを迎えたブレントフォードはまずは非保持から。4-4-2のコンパクトなブロックに加えて、CHがハーフスペースを埋める形で自陣をプロテクト。
CHが自陣を埋めるアクションと連動するようにCFも1列を下げてバイタルをケアする。アーセナルのサイド封鎖への対応はかなり念入り。その分、出ていくのがハードではあるが、そこは決定力のブレントフォード。アーセナルがウーデゴールのパスミスから押し込みきれない状態でカウンターを発動すると、ムベウモがカラフィオーリとの1on1を制して一発回答の先制点を手にする。
しかしながら、さすがにブレントフォードは上記のメカニズムの守備ばかりでは反撃の目はないと踏んだのだろう。先制点をとった後もなお、ハイプレスに出て機会を狙うことをサボらなかったのはさすがであった。
アーセナルはブレントフォードのメカニズムを利用する形で攻勢に。CHがハーフスペースを埋めに外に流れる動きの背中を取ることで中央にパスを差し込んでいく。ジェズスの同点弾のきっかけとなる動きはまさにこの動きの隙をついたガブリエウの縦パスからだった。
ブレントフォードの失点のもう1つのきっかけは低すぎるボールの預けどころ。この場面でもCFの2人は自陣バイタルまで下がっており、ここでのロストが完全に失点に繋がってしまった。
以降もペースはアーセナル。ブレントフォードに押し返しを許さず、クリティカルではないながらも一方的にチャンスを作ってハーフタイムを迎える。
後半早々にアーセナルは勝ち越しゴールをゲット。セットプレーからの混戦をメリーノが制してリードを奪う。ブレントフォードとしてはGKの処理ミスが高くついてしまった印象だ。
このゴールで勢いに乗ったアーセナルは右サイドからのさらなる攻勢から追加点をゲット。ヌワネリのクロスのセカンドボールからマルティネッリがゴールを決めてリードを広げる。
ビハインドを背負ったブレントフォードはポゼッションが増加。リードを広げたことでまずは撤退を優先するアーセナルに対して左右にボールをつけて押し下げていく。
しかしながら、アタッキングサードにおいての仕上げの武器がないブレントフォード。唯一サイドで違いをつくれそうなルイス-ポッターもティンバーに封じられてしまう。マルティネッリのロングカウンターという明確な跳ね返し方を提示したアーセナルの方が得点の匂いが濃い展開となった。
終盤は選手交代も含めてプレータイムのマネジメントを行いながら試合のテンポを落としたアーセナル。ブレントフォードに勝利し、新年初勝利一番乗りを果たした。
ひとこと
ブレントフォードは引いて受けるだけでは苦しい展開。おしこんだままアーセナルに解決策を突き付けられるのは痛かっただろう。
試合結果
2025.1.1
プレミアリーグ 第19節
ブレントフォード 1-3 アーセナル
G-techコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:13′ ムベウモ
ARS:29′ ジェズス, 50′ メリーノ, 53′ マルティネッリ
主審:ピーター・バンクス