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「2つの強さを併せ持っているか」~2020.10.3 J1 第20節 セレッソ大阪×川崎フロンターレ BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第20節
2020.10.3
セレッソ大阪(2位/13勝3分4敗/勝ち点42/得点30 失点20)
×
川崎フロンターレ(1位/17勝2分1敗/勝ち点53/得点59 失点18)
@ヤンマースタジアム長居

戦績

近年の対戦成績

図1

直近11試合でC大阪の7勝、川崎の3勝、引き分けが1つ。

C大阪ホームでの成績

図2

直近10試合でC大阪の4勝、川崎の2勝、引き分けが4つ。

Head-to-head

<Head-to-Head①>
・川崎は直近7試合のC大阪戦で1勝のみ。
・川崎がC大阪相手にリーグ戦で連勝すればダブルを達成した2014年以来のこととなる。

 「34試合あるJ1の試合の中で最も嫌な試合はどれか?」と聞かれれば、「ヤンマーでのC大阪戦」と答える川崎ファンは多いだろう。C大阪戦は今の川崎にとって最も苦手なカードと断言してもいいレベル。前半戦の勝利は実に7試合ぶりのC大阪戦の勝利である。

 しかしながら等々力では苦しみながらも勝利を手にした川崎。連勝を決めればおよそ6年ぶりのシーズンダブル達成となる。

<Head-to-Head②>
・C大阪はホーム川崎戦で3連勝中。対川崎戦においても最も長い連勝を記録中。
・C大阪ホームにおいて、川崎は5試合連続で失点中。

 C大阪はホーム川崎戦での連勝を伸ばしている。3連勝はいずれも複数得点での勝利。2018年は優勝に水を差す勝利を果たしている。ちょっぴりバツが悪そうにヒーローインタビューを受けていた山村和也が懐かしい。

 C大阪ホームではそもそも失点回避が川崎にとって難しいミッションである。過去に無得点で抑えたのはたったの2回だけ。いずれもスコアレスドローであり、クリーンシートでの勝利は未だ記録したことがない。

<Head-to-Head③>
・C大阪ホームでの川崎戦において過去に観客が20000人を割ったのは10回。そのうちC大阪が勝利したのは2回だけ(D5,L3)
・直近5試合のリーグでの対戦は必ず先制したチームが追いつかれる展開になっている。

 一部観客制限の緩和が行われたといえ満員のスタジアムはまだ帰ってくるのに時間がかかりそうだ。C大阪ファンとしては万雷の声援でこの天王山を後押ししたかっただろう。データ的にも少ない観客数はC大阪に不利。20000人を割った試合では過去10試合で二度しか勝利をしていない。

 先制しても油断ならないのがこのカード。過去5試合では必ず先制したチームがいったん追いつかれる展開になっている。そこから先の展開はスタジアムごとにくっきり傾向が。等々力では追いついたチームが逆転勝ちまで持っていくかドロー決着なのに対して、C大阪ホームでは先制したチームが再度突き放す展開になっている。

スカッド情報

【セレッソ大阪】

・主だった欠場者はなし

【川崎フロンターレ】

・長谷川竜也は負傷後未だベンチ入りなし。
・浦和戦で負傷交代した大島亮太の出場は不透明。

予想スタメン

画像4

Match Facts

【セレッソ大阪】

<C大阪のMatch facts①>
・直近3試合はいずれも複数失点。
・2018年以降、同一相手に対するリーグ戦連敗は3例のみ。

 堅守といえばC大阪。そんな看板を背負っているリーグ屈指の鉄壁チームがここ数試合では失点を重ねている。リーグ戦における3試合連続複数失点はロティーナ政権下では初めて。なんと2016年のJ2時代までさかのぼらないといけない。ちなみに僕は大熊さんが水を吐いている画像のファンです。すごいスピード感。

画像3

 川崎が勝てばこのカードは川崎のシーズンダブル。2018年以降、C大阪がシーズンダブルを食らったのは3回だけ。2018年のG大阪と2018,19年の鹿島。のべ3カードの特徴は計6試合ともC大阪が無得点に終わったことである。川崎はシーズン初めの対戦でC大阪に失点を許してしまっているが・・・?

<C大阪のMatch facts②>
・3位以内との対戦相手のリーグ戦は4連敗中。
・フィールドプレイヤーでの出場時間が長い選手トップ4のうち2人はC大阪所属の選手。

 相性が悪い上位対決にはネガティブ材料を並べていいというマイルール。対戦時に3位以内だったチームとの対戦は3連敗中。今年の川崎に加えて、2019年のFC東京、鹿島に敗れている。全部関東のチームなのも川崎と一致している。

 過密日程の中で気になるのは選手のプレータイム。ヨニッチ、松田はフィールドプレイヤーの中でトップ4に入るプレータイムの長さを記録している(この項では9/30開催の試合は考慮しない)。ヨニッチは鈴木義宜と共にフルタイム出場継続中である。

 さらにSHの坂元達裕もプレータイムは上位。彼より長くプレーしているMF登録の選手は菅、山口、稲垣の3人だけである。いずれもポジションは坂元より後ろの人ばかり。主力のプレータイムの多さは懸念材料だ。

<C大阪のMatch facts③>
・清武弘嗣が得点かアシストを決めたリーグ戦は今季全勝。
・丸橋祐介は直近3年間の川崎戦で1ゴール、2アシスト。

 仙台戦でスーパーゴールを決めた清武はラッキーボーイ的存在。今季得点に絡んだ働きをすれば、必ず勝利に結びつく。もっとも活躍の幅の広さをみれば、「ラッキー」なんて言葉で片づけるのは失礼に当たるかもしれないが。そんな清武は川崎戦にめっぽう強い。過去先発11試合で7勝。敗れたのは今年の対戦が初めてである。

 丸橋も川崎戦は11勝とキャリアでもっとも勝利をしている相手。いいイメージはあるだろう。過去3年間の川崎戦で1ゴール2アシストに絡んでいる。ただ、彼が川崎戦で決めた1ゴール4アシストはいずれも等々力開催の試合で記録したもの。ホームゲームではアシストもゴールも決めたことはないという偏ったデータもある。

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts①>
・公式戦8連勝中。
・天王山(首位×2位)のシチュエーションにおいて3連勝中。

 苦戦が続きながらも公式戦はなんだかんだ連勝。公式戦の連勝記録が9になれば今季のベストランに並ぶことになる。

 後押しになるのは天王山の強さ。ここ一番の勝負強さで言えば近年はC大阪よりも川崎の方が優れているといえそうだ。

<川崎のMatch facts②>
・アウェイでの公式戦は直近4試合で1失点のみ。
・国内アウェイでの公式戦で敗れた直近6試合のうち、3試合は関西地方での開催のもの。

 アウェイでの公式戦も好調。特筆すべきは失点の少なさであり、わずか4試合で1失点だけである。アウェイでの3試合連続クリーンシートを達成すれば2019年5月以来のことになる。

 しかし、国内のアウェイ戦で敗れた直近の試合は関西の試合(神戸、G大阪、C大阪)ばかり。残りの3試合も名古屋×2と広島なので川崎はやたらと西に弱いのだ。

<川崎のMatch facts③>
・2012年以降、C大阪ホームにおいて川崎でプロデビューを果たした選手が得点を決めたことはない。
・家長昭博はC大阪戦2試合連続得点中。

 新旧問わず新卒採用が多い川崎。今季目立つ三笘、旗手だけでなく今日の川崎を長らく支えてきた大島、中村も川崎でプロデビューした選手だ。脇坂や田中そして水戸での特指の経験がある小林も含めれば、今季は「川崎産」が毎試合のように得点を決めている。しかしながらC大阪ホームでは「川崎産」のゴールは2012年以降見られていない。

 代わりに得点を決めているのが「タイトル請負人」である家長昭博。苦手なC大阪からは2試合連続で得点を決めている。決めたのはどちらもPK。ちなみに今季C大阪よりもPKでの失点が多いチームは神戸だけである。

展望

■鹿島から学ぶソリューション

 両チームの勝ち点差は11。C大阪は食らいつくために勝利が欲しいし、川崎は優位を決定的なものにするために突き放すチャンスを活かしたいところ。首位決戦を迎える両チームは踏ん張りどころを迎えている印象だ。

 仙台戦のC大阪はどこか重さが目立つ内容だった。失点シーンがその象徴だろう。パラのアシストを許した1失点目はC大阪の特徴であるサイドの圧縮が機能しておらず、中央への危険なラストパスを封鎖することができなかった。失点シーンに限らず、この試合ではサイドへの圧は下がっている印象を受けた。

 2失点目は中央を割られた縦パスがきっかけに。2列目の4枚が横に広がってしまい一番通されたくない中央を空けているのがらしくない。1列目がアンカーに下がって対応すべきだったのか、2列目がもっと狭く守るべきだったのかはわからないが、結果的に一番危険な中央が空くという現象はC大阪にとっては珍しいことだ。川崎相手に同様の形を作ってしまうと、C大阪が得意な静的な展開を維持し続けるのは難しくなる。

 一方で川崎が気になるのは後半に見せる最大出力。横浜FC戦では後半の狙った時間に得点こそ取ったものの、試合の展開としては横浜FCが盛り返す場面も多く冷や汗をかかされた。その後の湘南戦では久しぶりに後半の得点はなし。雨もあったし、川崎が不調というよりはこれまでのように楽にはいかないな!というニュアンスかもしれないし、何より連勝を続けているのだから懸念というには贅沢な話だが気になる点ではある。

 C大阪も川崎もここで1週間休みが空くので状態は一変する可能性はあるが、現状では上り調子の両チームの対戦ではないだろう。

 この試合においても共に基本的には狙いたい展開は前半戦と同じ。C大阪はボール保持、非保持共に試合のテンポが上がりすぎないように制御しながら進めたいはず。ボールが行きかう展開になれば川崎の方が有利だろう。

 まず注目すべきはC大阪のボール保持においての川崎の振舞いである。等々力では4-3-3のWG-SBの間を使われる状態から失点している。

画像8

 外を使わせてしまうという意味では4-4-2の採用が1つ解決策になりうるだろう。C大阪のボールを出した先を気にするというやり方だ。ただ、これではC大阪の後方には自由を与えることになる。タクトを振るう藤田にプレッシャーをかけに行こうとすれば、近くが空きやすくなる。

画像5

 4-3-3のような形で後方も含めて最終ラインにプレッシャーをかける作戦も考えられる。C大阪に対する鹿島のやり方は参考になるだろう。トップ3枚でサイド誘導を行い、ボールが出ていった先を閉じ込めるやり方だ。この試合ではC大阪の右側に鹿島のプレス隊が誘導するシーンが多かったようだ。

 このやり方の魅力的な点は坂元を低い位置に追いやりやすい点である。この試合の坂元は低い位置でのボールタッチが多く、ファイナルサードまでの距離が遠かった。そうなれば幾分かは脅威を抑えることができる。トップがボール回しの方向を規定し、狙いどころを共有することで鹿島はプレスから得点や決定機を生むことができていた。高い位置からC大阪を抑えに行く形の好例といっていいだろう。

 しかし、一歩間違えればこのやり方は失点にもつながる。C大阪の同点弾は鹿島がボールサイドの封鎖が不十分になり、ワンタッチパスを連続でつなぐC大阪に対して完全に後手を踏んでしまった。1つ対応を誤ればC大阪にはこの局面を打開する力もあるのだ。

 しかも、鹿島は後方のカバーでレオ・シルバや三竿健斗が最終ラインのヘルプに走り回る場面が目立つのに対して、川崎は谷口やジェジエウなどの後方のカバーに積極的にCBが出てくるケースが多い。鹿島よりも背負うリスクは大きいはずだ。

 このリスクを取ってC大阪にかみつきに行くか、それともある程度は低い位置でのボール保持には静観するのか。非保持の川崎はまずそこから選ばなくてはいけない。

■ギャップから薄いサイドへ

 ボール保持の局面で最も避けたいのは、C大阪のローラインブロックを何とかしてこじ開ける展開が延々と続くことである。特にボールサイドに過剰に多くの人を集めて打開するスペースが狭くなってしまうのは事を難しくしてしまう。

 なるべくC大阪のプレスは前に引き出したい。そのためにはCBを軸に深さを取る必要がある。C大阪が前に出てきたときに狙いたいのはSHの後方のスペース。スペース管理が厳重なC大阪だが、前に出てきたときのSH-CHにギャップがややできやすいような気がする。ちょうど仙台戦でパラがアシストを決めた時に受けたスペースである。

画像6

 このスペースでボールを受けることで、ボールサイドにCHをスライドさせたいところ。そうなれば中央や逆サイドは手薄になるだろう。C大阪側はボールを取るためにここをあえて開けている可能性はあるが、仙台戦のようにリアクションが遅れれば決定機創出のチャンスはある。相手の狙いどころを逆手にとって、引き寄せてから脱出することで手薄なサイドを作りたい。

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 川崎にとって有利な点があるとすれば、同点の状況が続いた場合に前に出ていかなければいけないのはC大阪の方ということだ。そうすれば得意のスローなテンポを許容するわけにはいかない。逆転優勝を狙うためには勝利しかないC大阪はこの試合を決めに行く必要がある。試合がじりじり進めば先に動くべきなのは向こうの方だ。

 彼らが前に出てきてくれればより薄いサイドも作りやすくなるし、川崎が得意な早い展開にも持ち込みやすい。何度も言うが最も嫌なのはC大阪が先制点を盾にとっとと店じまいをしてしまうことである。

 川崎はこの試合で取る作戦は多くのパターンが考えられる。特にプレスに関しては大きな方針を立ち上がりから示す必要があるだろう。前から行くのか、控えて焦れさせるのかの選択には注目。とはいえ90分間控えるという選択肢は考えづらいはずだ。これまでの川崎の戦い方を踏まえると前に出ていき相手のビルドアップを出しどころから封じるよう試みる時間は必ず作ってくると思う。

 今季の川崎の強みはこの戦況に応じた使い分けのうまさである。パフォーマンスが振るわない試合で勝ち点を得る助けになっているのは間違いなく鬼木監督のかじ取りによるところが大きい。そして、もう1つの川崎の強みは状況がよくなるまで我慢して待てること。90分間前に出ていって潰しきれるほどC大阪はヤワな相手ではない。ボール回しにおいても等々力での試合で粘り強くピッチを広く使いながら、突破口を探し続けたからこそ前半での逆転につながったのだ。

 襲い掛かって噛みつく強さと待つ我慢ができる強さ。最大の難所を突破するには2つの強さを併せ持つことが求められるはずだ。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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