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「ブロックを崩すための交代策を考える」~2018.8.15 J1 第22節 川崎フロンターレ×サガン鳥栖 レビュー

スコアレスドローでもやるよ!
スタメンはこれやで!

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目次

【前半】
高い強度の4-4-2×好調な川崎のトライアングル

 基本的にはこの試合は1試合を通して、
川崎:ボールを保持して攻める
鳥栖:ブロックを組んで守る
という流れで進んて行きました。

 実を言うと試合開始から嫌な予感はしていました。
鳥栖の4-4-2ブロックは前節に対戦した清水よりもラインの間の距離が狭く、川崎にとってスペースはあまりない状態でした。最終ラインはエリアよりもかなり前に設定。前線もハーフライン前後から当たっていくことが多く、縦にかなりコンパクトな印象を受けました。そのため序盤からミドルシュートを中心に鳥栖のDFを引っ張り出そうとする場面が川崎は目立ちました。

 川崎は清水戦よりもミドルゾーンでのプレー時間が増えており、鳥栖がミドルゾーンで上手くプレッシャーをかけれていました。

川崎がボールをサイドで保持しているときもスライドしてしっかりプレッシャーをかけることに成功していました。正直手を焼きそうだな。。というのがこの試合序盤数分を見ての僕の感想です。

川崎はおなじみのMFが1枚最終ラインに落ちる3枚でのビルドアップをこの試合でも敢行してます。ここにプレッシャーをかけるのは金崎とトーレスの2枚がメイン。川崎は数的有利なのでボールを鳥栖のFW-MF間に運ぶところまでは簡単にできました。しかし、そこから先にはなかなか有効なスペースがありません。次の一手を打つために川崎のMFが思案していると、トップにいるトーレスや金崎が中盤に降りてプレッシャーをかけてくるという形でした。内側に絞ることが多い川崎の選手に対して、福田と小野がしっかりついていっていたことは前半のトラッキングデータからも明らかです。

 ただそれでもチャンスが全くなかったわけではありません。今の川崎は本人たちのコメントにも垣間見えるように個々のコンディションが上がってきています。
特に大島、守田、中村の中盤の3人は状態がよく、この3人を中心にこの試合もチャンスを作れていました。中村は狭いスペースに入り込み、そこからチャンスを創出。15分の阿部のシュートに導いたヒールは見事。
前半終了間際の阿部のシュートは前回ご紹介した大島の前線への飛び出しからの流れで。彼の飛び出しを見逃さなかった守田も見事です。守田、視野がガンガン広がっている感じがします。

 しかしながら目立った決定機はこれくらい。
じゃあ鳥栖が清水より全方位で優れていたかというと微妙なところ。鳥栖のほうが清水と比べて全体的なラインが低いため、ボール奪取以後にカウンターまで時間がかかります。SHのポジトラも清水と比べると意識がそこまで高くなかったように感じます。
トップのトーレスも金崎も爆発的なスピードを持っているわけではなく、後ろから打ち込まれるロングボールは周辺に回収できる鳥栖の選手がいないことも多々ありました。それでもしっかりチャンスメイクしちゃうあたりさすがとは思いましたけども。

【後半】
エリア内の人口密度の問題

 後半も前半と同じ展開が続きます。ただ、さすがに少しずつ鳥栖のプレスがかからなくなっていきます。前半と比べて陣形がやや横に間延びしてきたように感じます。サイドでは比較的楽にボールを持てるようになりました。川崎のMFもややサイド寄りにポジションを取りパスコースを作る場面が増えたように感じます。

 これに伴って1トップの小林がサイドに流れる場面も増えてきます。ただトップの小林が流れると中で待ち受ける選手がいなくなってしまうという問題が発生します。ただでさえ、小林以外にストライカーがおらず、慢性的にエリア内にフィニッシャーが少ないうえに、鳥栖のラインの重心は前半より低く、エリア内の敵の人口密度が上がっていることが重なり苦しむことになります。

 それでも60分の決定機を作り出すあたりはクオリティの高さ。阿部のスーパーなスルーパスからエウシーニョのシュート。このシーンは権田がエウシーニョを駆け引きで上回っていたでしょうか。切り返した瞬間に詰めてコースを消したセーブは見事でした。切り返した瞬間に絶対小林に出すと思った。。

【後半】-(2)
復調した車屋の懸念

 試合の大まかな流れとは少し離れますが気になった場面があったので、一つだけ。この試合好調だった車屋について少し気になることが。
シーンは70分、鳥栖のカウンターを金崎のところでカットした部分。

 ボールは車屋が持っています。ここから車屋はマイナス方向にボールを運びながら、サイドライン側に反転します。この時点で内側の選手にパスを出すことは難しくなっています。この瞬間鳥栖の福田がダッシュ。車屋が蹴りだしたボールが守田に渡る段階ではもう福田がプレスがかけられる距離に詰められています。

このシーンでは結果的にボールはサイドラインを割らなかったです。ただ、ボールは鳥栖の一列後ろの高橋秀人まで転がったため致命傷にはならず。ただこの青丸のエリアすべてオンサイドですからね。福田がボールを奪ってトーレスに渡せば、逆サイドはぽっかり空いています。あわや大ピンチのシーンといえるでしょう。

車屋のプレーで気になったのは
・左足しか使えない方向にターンしたこと。
・そのプレーを早い段階で敵選手に見切られたこと。
・その状況でなおクリアを選択しなかったこと。

の3つ。

大きなピンチにはなりませんでしたが、気になったプレーなので取り上げておきます。

【後半】-(3)
交代選手の役割を考える

 この時間が過ぎるころには鳥栖はサイドとハーフスペースを川崎に明け渡すようになります。多い時には最終ラインに6枚、エリア内に8枚選手がいるときもありました。鳥栖の思惑としては1ポイントでもOKという割り切りもあったでしょう。豊田や田川という川崎から得点を取る武器を持っている選手は最後まで出てきませんでした。

 川崎の交代選手は齋藤学と鈴木雄斗。下がる選手は中村と阿部。リードしていた前節と全く同じ交代です。交代選手は同じでも求められるのは得点。

 結果として得点は決められなかったものの齋藤学には明るい兆しが見えたゲームだと僕は思います。サイドに張るだけでなく、時に中央に侵入しボールを受けて決定的なチャンスも創出できました。後方がポジションに気を配れる登里だったこともプラスだったでしょう。この後投入される知念との連携も期待できます。サイドからドリブルでパスコースを開けながら、斜め方向にPAに打ち込むパスは彼の武器になるのではないでしょうか。

 鈴木雄斗はどうだったでしょうか。ボールコントロール、ポジショニング、球離れの判断など少し均衡した局面を打開するにはクオリティが不足していたように感じました。鳥栖はこの時間に同サイドの安在を投入しているので、そこをケアする部分も意図としてあったかもしれませんが。
クローズの際のサイドハーフの交代カードとして定着した感のある鈴木ですが、点が欲しい時の序列は今後見直される可能性があると感じました。

 最終盤はかなり攻め込んだ川崎ですが、点を挙げることができるスコアレスドローにおわりました。

点を取るための交代カードを考える

 最終盤に自陣を固めた鳥栖。これを打開するには鬼木監督が実際に切った交代カード以外にどういう作戦があったでしょうか。実際には打開まであと一歩までいっているので、交代策が全く間違えだったとは思っていません。その前提で僕の考えを聞いていただけると嬉しいです。
本当は中村憲剛は残したかったはずです。エリア内に入り込む質の高さは折り紙付きで、最終盤の密度が高い状況でも相手のスキをつけた可能性はあります。
ただ彼も大ベテラン。夏の過密日程で毎試合フル出場は無理があるでしょう。
中村憲剛を抜きにした場合、交代カードとして提案したいのはトップ下に森谷賢太郎を置くことです。森谷はスペースに入る能力は高く、シュート技術も高い選手です。状況的にも積極的にエリアに入っていける彼のキャラクターは重宝できるし、セントラルハーフとしてもふるまえる彼が下がって、大島が前線への飛び出しも促すことができるはずです。万が一守勢に回ったも、後方にはカバーエリアの広い守田がいるので、一定のリスクは回避できるはず。
実際に行われた交代とは少し違いますが、似たようなシチュエーションがあった場合には見てみたい交代だなと思っています。

まとめ

 川崎が記録した25本のシュートと9本の枠内シュートは2015年にOptaがデータを取り始めてからいずれも無得点のチームとしては最多の数字。川崎はチャンスを作って攻め込むことができました。しかし、シュートの精度と相手GKの攻守によって得点を挙げることはできませんでした。
チームとしては浦和戦以降、一定のクオリティを維持しており選手個々のコンディションも上がってきたように感じます。次節は中盤でのプレスがきつい広島との天王山。スタメン選手の疲弊は懸念されますが、リーグタイトルに向けて大一番に臨むことになります。

 鳥栖は守備に集中すればクオリティが高いチームであることは証明できたと思います。吉田豊が不在の中でのクリーンシートは見事。あとは勝ち点3が必要なシックスポインターで得点を挙げることができるか。金崎とトーレスにいい形でボールを渡すにはどうしたらいいかという部分のクオリティ次第になると思います。

試合結果
2018/8/15
J1 第22節
川崎フロンターレ0-0サガン鳥栖
等々力陸上競技場
主審:佐藤隆治

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