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「天秤はどちらに振れるか」~2024.8.31 プレミアリーグ 第3節 アーセナル×ブライトン プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第3節
2024.8.31
アーセナル(3位/2勝0分0敗/勝ち点6/得点4 失点0)
×
ブライトン(2位/2勝0分0敗/勝ち点6/得点5 失点1)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去5年間の対戦でアーセナルの5勝、ブライトンの5勝、引き分けが1つ。

アーセナルホームでの戦績

 過去10試合の対戦でアーセナルの4勝、ブライトンの4勝、引き分けが2つ。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • アーセナルは直近4試合のブライトン戦で3勝。
  • ブライトンはアーセナルでのアウェイゲーム7戦で3勝(D1,L3)

スカッド情報

Arsenal
  • 新しい負傷者はなし。ガブリエル・ジェズスが起用可能かを確認している。
Brighton
  • デビュー戦となったカラバオカップのクロウリー・タウン戦でマット・オライリーは足首を負傷。
  • フェルディ・カディオールにはデビューの可能性。イヴァン・ファーガソンとマッツ・ウィーファーは微妙。

Match facts from BBC sport

Arsenal
  • インビンシブルズとしてタイトルをとった2004年以来初めてのリーグ戦9連勝を狙う。
  • 2024年のプレミア20戦で18勝。勝てなかったのはエティハドの0-0とホームで0-2で敗れたビラ戦。
  • 04-05のティエリ・アンリ以来、ブカヨ・サカには開幕3戦連続でアシストを決める可能性。
  • 2024年においてカイ・ハヴァーツ(10G,7A)以上にダイレクトにゴールに関与したのはコール・パルマー(15G,10A)とエーリング・ハーランド(17G,1A)だけ。直近3試合のブライトン戦でゴールを決めている。
Brighton
  • 勝てばプレミア初の開幕3試合連勝。
  • 昨季、ロンドンアウェイ7試合で未勝利(D3,L4)。最後の勝利は2023年5月のエミレーツでの3-0。
  • ダニー・ウェルベックは2014年以来初めてのリーグ戦3試合連続得点を狙う。
  • 1999年のミッキー・アダムス以来、ファビアン・ヒュルツェラーは就任後のリーグ戦2試合をいずれも勝利した監督。

予習

第1節 エバートン戦

第2節 マンチェスター・ユナイテッド戦

今季ここまでの道のり

予想スタメン

展望

明確な変化を与えた若き新指揮官

 第2節に続き、アーセナルの今節も勝ちっぱなしのチーム同士の一戦。ブライトンとの試合は4つしかない開幕連勝に成功したチームとの潰しあいとなる。

 シティ、リバプール、アーセナルなどがおとなしい夏を過ごす中で中堅勢のチームの強化への積極的な投資が目立つ今季のプレミアリーグ。ブライトンもまた、昨夏に得た多額の移籍金を元手に今夏もかなり積極的なリクルーティングに動いた印象だ。そのため、試合のメンバーは日に日に変化を遂げており、アーセナル戦のメンバーはやや読みにくい状況にはなっている。

 その一方でエバートン戦、ユナイテッド戦とブライトンの戦い方はあまり変化が見られなかった。少なくとも序盤戦はこの方向で行くのだろうというヒュルツェラーのプランが良く見えた2試合だった。

 リバプールのスロットなど、段階的に変化を加えていきそうな風情の新指揮官もいる中でヒュルツェラーは開幕からかなりブライトンを様変わりさせたといっていいだろう。最も大きく変化をしたのはビルドアップの方向性に伴う各ポジションの役割である。

 前政権のデ・ゼルビの下ではGK、CBもしくはCHなどパスの出し手となる選手が縦に差し込みながらボールを前に進めていた。縦パスを前後に往復させながら相手を動かし、本命のルートを探りながら大きく前に進める。それが彼らのやり方であった。

 狭く、縦に奥行きを作るイメージがデ・ゼルビなのだとしたら、ヒュルツェラーの攻め方は広く、幅を取りながらといえるだろうか。GKからのパスの供給先は強引な縦パスではなく、SBになるパターンが増えた。大きく開くCBの前に立つSBに正確なフィードを送ることが今季のブライトンのGKに求められることである。

 SBが低い位置でボールを持つタスクが増えたのは今季の大きな変化といえるだろう。どちらかといえばこれまでのブライトンのSBはエストゥピニャンのように馬力で前線をフォローしながらアタッキングサードで攻撃を完結させることを求められていた。それが今季は低い位置でボールを渡されて、ここから攻撃のルートを決めるための司令塔役を担うことになる。そういう意味で個人的にはカディオールの獲得は非常に合点がいくものであった。

 広がったSBには大きく分けて2つの選択肢がある。1つはWG、もう1つはIHである。ブライトンは4-2-3-1と表記されることが多いが、保持においてミルナーは相棒(ここまではウェーファーかギルモアが務めている)に対してやや前の位置を取って、トップ下のジョアン・ペドロと左右対称のポジションを取る。

 ブライトンのWGといえば基本は大外でボールを受けて2枚を引き付けながら結果を出すというのがこれまでのスタイルであるが、今年はこの部分にも変化がある。IHとの立ち位置はシームレスで、レーンも固定されていない。外にIHが流れることもあれば、内側に旋回しながら攻撃を進めることもある。特に右サイドのミンテはレーンを変えながら瞬間的に浮いて縦パスを受けるのがとてもうまい。

 三笘も降りてきて旋回するなどブライトンのWGは仕上げにフォーカスするカラーが強かったこれまでとは少し異なるテイストの仕事を任されている。CFの背中を取るように内側の背後を取ることはデ・ゼルビ政権でもあったが、今はより流れの中からインサイドに入り込むことが求められている。個人的にはSBとWGが最もデ・ゼルビ→ヒュルツェラーでタスクが変化したポジションなのではないかとにらんでいる。

 おそらく、今は型をチームに浸透させている段階なのだろう。選手の入れ替えに関わらず、まずはここまで述べてきた仕組みをベースに勝負をしている感がある。

 非保持においてもかなりハードワークを求めている感がある。特にハードなのは中盤、またしてもWGである。4-4-2をベースにしつつ、サイドの選手には逆サイドにボールがあるときの絞りのハードワークを徹底。逆サイドにボールがあるときはCHを監視することもしばしばだ。

 そのため、ボールサイドの圧力はなかなか高いものになる。ただし、逆サイドに展開された時はWGが自陣まで下がってSBについていくことを求められているのでかなり高負荷。欧州カップ戦がないのであれば耐えられるかもしれないが、三笘やミンテはシーズンのどこかでオーバーワークになるのでは?という点は少し気になる。

 それでも早い段階でチームのひな形を示し、そのうえで結果も引っ張ってくるのだからヒュルツェラーは優秀である。彼らにとってもアーセナル戦は自分たちの力がどこまで通用するかのチャレンジになるだろう。

 正面衝突ではなくしたたかに

 個人的には非常に楽しみな一戦である。昨年以上にエネルギッシュなブライトンは間違いなくアーセナルにとっては手ごわい敵になるだろう。アストンビラ戦に続き、タフな一戦になることが予想される。 

 要素だけとらえるのであれば、後方からサイドにボールをつけるビルドアップにおけるブライトンの変化はアーセナルにとっては歓迎である。サイドにボールを追い込むところからボールを奪うというアクションにおいてはおそらくアーセナルはリーグでもっとも優れているチームと位置付けていいだろう。

 しかしながら、IHとWGのオフザボール、そして少ないタッチでのパス交換から相手のプレスを外してくるブライトン相手にその追い込みが通用するのかは気になるところである。先に述べたように今季のブライトンのWGはレーン入れ替えを多用する。そのため、対面するSBがストッパーとして機能するかだけが論点にはならない。例えば低い位置で降りて反転し、スピードに乗った三笘に対してトーマスがクリーンに止めることができるのか?なども問われる可能性がある。

 ユナイテッド戦ではジョアン・ペドロが右サイドに流れることで同サイドにアウトナンバーを作りだすなど、マイナーチェンジも披露。2列目の3人はボールを持っていない時も持っている時も厄介。大きく動くので、受け渡しに注意しながらチェックをかけたい。

 ブライトンの2列目のうち、誰か一人でも前を向くことができれば、攻撃は一気に加速することとなる。そうなれば、無理せずいったん撤退にシフトすべきだ。無論、その前にボールを奪うことができればアーセナルがペースを握ることになるだろう。

 ブライトンの非保持はこれまでのチームと同じく4-4-2だが、横スライドの圧力はおそらくもっとも高い。WGが前に出て行き2列目がサイドにスライドする形でその穴を埋めるのが先に述べたようにブライトンの非保持の特徴だ。

 アーセナルのアプローチのポイントは2つ。1つはサイドへのスライドを多用することでブライトンのWGの走行距離をかさませて、後半に足を残さないこと。アディングラなど後から出てくる選手も強力なことには変わりないが、自陣まできっちり押し下げる機会を増やせば、それだけダメージは残るし、カウンターでいい形にもなりにくいのは間違いない。これはブライトンの横スライドの意識の強さを利用するパターンだ。

 もう1つは縦方向の連動を試すパターン。今季のアーセナルがビルドアップで力を入れているのはIHが現れたり消えたり、あるいはアンカー役が中盤にとどまったりサリーしたりなど、相手のFW-MF間の幅を広げてここで前を向く選手を作ることである。ブライトンの縦方向の連動は横方向の連動に比べると未知数。ひょっとすると、ややギャップを作りやすい可能性もある。変幻自在なバックスの陣形とポジションチェンジでこうした部分を引き出すことができればアーセナルは前進のためのルートを見つけることができるはずだ。

 ビルドアップとプレス。両方の局面でブライトンはどちらのチームに天秤が振れるかが未知数な相手。正面衝突で力試しをするのも面白いが、王者を狙うシーズンとしては勝てるポイントを見つけて、勝てる土俵に持ち込んで攻略するしたたかさも見たいところである。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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