MENU
カテゴリー

「貫禄の一発回答」~2020.8.19 UEFAチャンピオンズリーグ Semi-Final リヨン×バイエルン レビュー

スタメンはこちら。

画像1

目次

【前半】
上がらないキミッヒ+カットインで解決

 単純明快、互いの狙いは明白の準決勝であった。ボール保持はバイエルン、ロングカウンターで一刺しを狙うのがリヨンという構図はずっと同じ。前線のアスレチック能力を活かしたリヨンのロングカウンターは準々決勝のシティ戦を見た人ならばもうすでにばっちり脳裏に焼き付いているだろう。

 バイエルンもシティと同じく後方のスペースは空けることを受け入れながら戦うチーム。CLの決勝ラウンドではリヨンの代名詞となった長いカウンターで勝負するのは当然と言ったところだろう。立ち上がりのデパイの決定機、そして15分過ぎのトコエカンビの決定機は共にカウンターでバイエルンのDF陣とスピード勝負した結果。本当にどちらかを掴んでいれば、勝利の可能性の扉を開くことができたと思う。

 特にボアテングのサイドならばバイエルンのバックスはスピードに難がある。まずはそこを狙ったリヨンの攻撃からこの試合は始まった。

 とはいえほとんどの時間はバイエルンのボール保持ばかりであるこの試合。バイエルンのポゼッションはCHが縦関係になる。ゴレツカは時には前線まで上がることを許されているが、チアゴは低い位置でゲームメーカーの役割。ちなみに、デパイの決定機はチアゴが中央方向に出したパスミスが起点だった。

 後方が4バック+チアゴ、前方がそれ以外っぽくざっくりとした役割分担があるバイエルン。ただし、縦方向の移動を繰り返す選手はいる。先述のゴレツカもそうだし、ミュラーもそう。時にはレヴァンドフスキもやる。そして大外ではアルフォンソ・デイビスが豪快なオーバーラップで最終ラインから最前線に移動する。

 さて、準々決勝でシティが苦しんだのはリヨンの5-3ブロックが固く、中央のエリアにボールを入れられずに起点を作れないという所である。

 当然この日のバイエルンも同じ命題に挑むことになる。ミュラーのようにDF-MF間の位置に落ちる選手もいれば、デイビスのように大外を駆け上がって最終ラインをサイドから切り崩しにかかる選手もいる。まずは前後のリンクマンの役割ができる選手を作ってリヨンの中盤と最終ラインを脅かすことから始めたバイエルン。

画像2

 つなぎ目の位置に入る選手を入れ代わり立ち代わりさせることでリヨンの3センターの狙いを絞らせないようにしているんだろうなぁと思っていたのだが、先制点はちょっと違うニュアンスだった。最終ラインのキミッヒから裏をとったグナブリーが内側ややマイナス方向に進路を取るとそのまま強烈ミドルでリヨンのゴールを破る。

 キミッヒはこの試合では相手陣に押し込んだときにはコルネが監視役を務める役割が多かったように思うけど、この先制点のシーンではキミッヒはめっちゃ引いていた。それでも一応対面のコルネは遠くから気にしていて、リヨンの最終ラインの大外にいたグナブリーを離してしまった。それが失点の原因な気がする。リヨンの基準で言えばこの位置ならホルダーは捨てて、スペース埋める勝負に走っても良かった気が。リヨンの中盤が最終ラインの保持を気にするあまり、DF-MFが広がったことはグナブリーのカットインを助けてしまったように思う。

画像3

 前と後ろをつなぐ人を次々と変えながら崩していくんだろうなと思っていたら、分断されて縦方向に間延びしている攻撃陣の仕組みを利用して、間延びしたDF-MF間をグナブリーに攻略してもらうというやり方で解決したバイエルンであった。

    だったらリヨンは5-4-1で構えればいいじゃん!となるのだが、リヨン側も相手の裏を取る戦力をなるべく低い位置に置きたくないというのが正直なところ。2トップとしてプレス隊を務めるのとデイビスの監視で揺れていたトコエカンビも、先ほどの失点の場面でキミッヒとグナブリーの狭間で迷ったコルネも共に貴重な裏取り部隊。なるべく下がって受けたくないからこそ迷いが出るのだと思う。

 ボール保持で起点が作りにくいのもリヨン側の悩み。ビルドアップのスタートを見ると形を準備していないわけでは全くないのだが、強烈なプレスで奪回に来るバイエルン相手につなぐメリットがあるかといわれてしまうと微妙なところである。

 そうこうしているうちにバイエルンに追加点。またしてもコルネとグナブリーのところが起点というのはちょっと切ない。コルネのトラップミスをグナブリーがかっさらうと、先制点と同じく内側に進路をとったドリブルを開始する。サイドに流れたペリシッチで奥行きを作り、エリア内にボールが送られる。ごちゃっとした中で再び詰めたのはグナブリー。組み立てからフィニッシュまでストライカーとして完璧な流れであった。

 形が同じわけではないけど、5バックと3センターの間にグナブリーが入り込みフィニッシュまで持っていったという概要は同じ。リヨンとしては5バックと3センターの間を粘り強く開けないようして守ってきたチームなのでここを割られての2失点というのは堪えるものがあると思う。

 試合は2-0でバイエルンのリード。リヨンにとっては厳しい状況でHTを迎えることになった。

【後半】
天秤は動かず

 バイエルンはボアテングに代えてズーレを投入。前半の立ち上がりに狙われかけたスピードに難ありのボアテングをズーレに代えることで手当てした形だろう。あぁ、なんかエグいなって思った。

 バイエルンは気持ち前半よりも深めにポゼッションする機会が増えたような気がする。前半とは事情が違って、リヨンはこれを追いかけまわさないといけないのがつらい。アタッカー陣のスピードが豊かだぜ!っていうのはリヨンだけでなくバイエルンも一緒。深さを作って、アタッカーを裏に逃がすアプローチで開始早々からグナブリーとペリシッチでチャンスを作り出す。

 というわけでリヨンとしてはなるべく前で引っ掛けるしかない。若干ボール扱いの怪しいズーレのところからひっかけてショートカウンターというのが後半のリヨンのわずかな糸口であった。
 
 実際、ムサ・シソコ投入後はここからボール奪取したアウアーから決定機を演出することができたが、トコエカンビのシュートにはノイアーが立ちはだかる。

 リヨンが攻撃において何もできなかったというわけではないものの、天秤でいえばずっとリヨンが不利な状況でずっと時計の針は進んでいたように思う。アウアーはめっちゃ頑張っていたし、この劣勢の後半ですら彼の価値を知らしめる機会になったと思う。

 ただし、健闘もむなしく仕上げの追加点を決めるバイエルン。とどめのレヴァンドフスキでリヨンは万事休す。試合は0-3で終了。PSGの待つファイナルへコマを進めたのはバイエルンだった。

あとがき

■シティがつまずいた課題に一発回答

 機会の面でも質の面でも上回ったバイエルンがリヨン相手に完勝した試合だった。5-3で中央を塞いでくるリヨンに対して引いたSBとWGのカットインという一発回答を出したバイエルン。ここの解決にかかった時間の短さがシティとの勝敗を分けたようにも思う。強かった。

 リヨンも素晴らしいチームだったし、保持においては機会を作れさえすればあるいは・・・!と思わされるシーンもあった。普段からこういうことやるチームなのかな。国内ではもう少し保持に寄っているチームなのだろうか。国内と欧州における立ち位置の違いなどでスカッドとの相性がばっちりだった欧州仕様の方がうまくハマったとか言うことなのだろうか。国内と欧州のギャップについての疑問を解決する見解はまだ見かけていない。今季の欧州での躍進の理由はほんとに誰か書いてほしい。

試合結果
2020.8.19
UEFA Champions League
Semi-Final
リヨン0-3バイエルン
エスタディオ・ジョゼ・アルヴァラーデ
【得点者】
BAY: 18’ 33’ グナブリー,88’ レヴァンドフスキ
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次