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「苦手な局面への向き合い方」~2020.8.8 J1 第9節 川崎フロンターレ×大分トリニータ BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第9節
2020.8.8
川崎フロンターレ(1位/7勝1分0敗/勝ち点22/得点21 失点6)
×
大分トリニータ(14位/2勝1分5敗/勝ち点7/得点9 失点16)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

図1

直近10試合で川崎の6勝、大分の1勝、引き分けが3つ。

川崎ホームでの対戦成績

図2

直近10試合で川崎が7勝、引き分けが3つ。

Head-to-Head

<Head-to-Head①>
・直近10試合の公式戦での対戦で川崎が大分に敗れたのは一度だけ。
・直近9試合の公式戦で大分は川崎相手に複数得点を挙げたことがない。

 J2時代は大分が川崎相手に勝利することが多かったが、近年は川崎が優勢。一番近年での大分の勝利は2009年の大分のホームでの対戦。金崎のアシストをフェルナンジーニョが決めて、川崎を首位から叩き落したあの時以来だ。

 近年は大分はこのカードで複数得点を挙げていない。ただし、川崎も前回対戦を除けば直近5試合での複数得点はなし。比較的ロースコア決着の試合だ。

<Head-to-Head②>
・川崎ホームにおいては直近11試合大分の勝利はない。
・川崎ホームで大分がクリーンシートで終えたことは過去にない。

 川崎ホームになるとさらに川崎優位の傾向は強まる。川崎ホームでは大分はこれまでクリーンシートを達成したことはない。今季の大分はここまでクリーンシートは1回だけ。等々力で今季2回目のクリーンシートを達成することはできるだろうか。

<Head-to-Head③>
・直近18試合のこのカードでの逆転勝利はない。
・どちらかのチームが首位で迎えた状況は過去に7回あるが、いずれにおいても大分が川崎に敗れたことはない(W4D3)

 とにかく逆転勝利がないカード。先制点を挙げたチームに勝ち点が入らなかったのは2002年11月が唯一。大分がJ2優勝を決めたあの年以降は、堅い展開が多い。

 首位に絡んだ形でフォーカスをすると大分が有利。首位に立っているチームが川崎と大分のどちらでもその対戦で大分が勝ち点を逃したことはない。大分との相性が悪いわけではないが面倒くさいタイミングで立ちはだかるのがこのチームである。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・中村憲剛は全体練習に合流済み。
・長谷川竜也は離脱中。
・山村和也はルヴァンカップ終盤に負傷。

【大分トリニータ】

・知念慶は契約上の事由で出場不可。
・町田也真人は出場微妙。
・前田凌佑は右肘関節脱臼で出場不可。

予想スタメン

画像5

Match Facts

川崎フロンターレ】

<川崎のMatch Facts①>
・公式戦8連勝中。
・J1において開幕戦からの8試合無敗達成は過去に13例あるが、優勝したのは1チームだけ。

 連勝が止まらない川崎フロンターレ。ルヴァンカップも勝利して公式戦は8連勝中だ。リーグ戦に限れば開幕から8戦無敗。しかしながら、開幕からのリーグの無敗記録は実はリーグタイトルとの縁が遠い。開幕8戦無敗だったチームで過去にリーグタイトルを取ったのは過去に1チームだけ。2006年の浦和が唯一の存在だ。

<川崎のMatch Facts②>
・直近の公式戦6試合でクリーンシートは1つだけ。
・セットプレーからの得点が6でリーグ最多タイ

 直近の公式戦において無失点は1回だけ。前節のG大阪戦のみでどの試合もピリッとしない時間帯に失点までに至ってしまっている。それでも好調なのはたくさんの得点を稼いでいるから。特にセットプレーからの6得点は清水と並んでチーム最多。豊富なパターンのセットオフェンスで決定機を多く作り出す新たな武器となっている。

<川崎のMatch Facts③>
・MF登録の選手の得点が11点。リーグ最多。
・小林悠が得点を決めればエジミウソンに並んでJ1通算得点1

 得点力を支えているのはMF陣の好調さ。昨年はMF登録選手たちのフィニッシュにおける関与の少なさが得点力不足につながっていた。特にインサイドハーフの大島、脇坂、メンバーによってはアンカーから前に出てくる田中碧などはフィニッシュワークでも貢献。トップ下不在、WGは張るシステムではインサイドハーフの攻撃参加が重要だが、ここまでは期待に応えているといっていいだろう。

 得点に関して記録がかかっているのは小林悠も同じ。あと1点取ればリーグ戦通算得点10傑に名前を連ねることになる。仮にランクインすればシュート数はトップテンの中で最小になる見込み。10位で並ぶことになるエジミウソン(111)と比べると100近くシュートが少ない。さて、ジュニーニョ(114)までゴール数で追いつく日は来るだろうか。

【大分トリニータ】

<大分のMatch Facts①>
・リーグ戦は4連敗中
・直近4試合のリーグ戦はいずれも複数失点。

 昨年はリーグ戦で2連敗が2回だけ。非常に安定した成績だったが今年は4連敗と苦しんでいる。また、昨年は1年を通して8回だった複数失点も直近4試合連続。片野坂トリニータは正念場を迎えている。

<大分のMatch Facts②>
・75分以降の得点が5でそれ以外の時間帯の合計(4)よりも多い。
・セットプレーからの失点は6でリーグ最多。

 リーグ戦の全得点は9。うち、75分以降の得点が5ということで試合終盤の時間帯に集中している。失点の傾向としてはセットプレーからのものがリーグ最多。くしくも川崎の今季得意な得点パターンと重なっている部分である。

<大分のMatch Facts③>
・途中交代選手の得点が5点。
・髙澤優也はリーグ戦2試合連続得点中。

 終盤の得点が多い!と紹介したが、途中交代の選手の得点も多い。その中でも目を見張るのが髙澤優也。J1デビューからわずか130分で3ゴール。チームトップのスコアラーである。交代出場で2得点を決めると前節はスタメンも奪取。曽ヶ端をミドルで打ち抜いて見せた。苦しむチームを救うブレイクも予感も感じるが。

展望

■片野坂トリニータ2020verの特徴を考える

 鹿島、清水を筆頭に大きく舵を切ったチームが目立つ今季のJリーグ。しかし、監督が留任しても新しいことに取り組んでいるチームが多いのも一方で今季の特徴である。川崎、FC東京、鳥栖など成績は様々だが、新しい取り組みを行うチームは目立っている。

 大分の片野坂監督もその意気込みを見せた1人。再開直前のミーティングでこう述べている。

「今年は特別なシーズンで、これから夏場を経て、約半年で33試合をしなければいけません。短期決戦の中で、自分たちの戦術の幅を広げたいという考えがありました。そこにチャレンジし、ある程度の手応えを得ていますが、それを使うかどうかを含め、対戦相手、試合や私たちの状況を見て、使い分けられるようにしたいです。」

【大分】“大幅変更”の新戦術に挑戦。片野坂監督「戦いの幅を広げるため」 | サカノワ【大分】“大幅変更”の新戦術に挑戦。片野坂監督「戦いの幅を広げるため」コンセプトは変わらず、超短期決戦と5人交代枠を考えて——。  J1リーグ 大分トリニータの片野坂知宏監督と4選手が6月30sakanowa.jp

 というわけで実際に披露しているかはわからないが、大分も監督が留任しつつ新しいことに取り組んでいるチームといっていいだろう。

 鹿島戦を見た印象で言えばマイナーチェンジが行われていたが、抜本的な変化といえるかどうかは難しいところだった。ビルドアップはGKの高木からスタートする点は昨年と同じ。ただ、昨年はどちらかといえば一つ一つ相手をずらしながらパスをつないで前進していく形がメインだった。

 形としては昨年と同じ。3バックの片方がSBロールを務め、中央でCHが降りてきて菱形を作る形である。しかし、今年はGKも含めて長いボールを当てるパスを多用。昨年と比べると2,3テンポくらいアバウトになるタイミングが早くなるイメージであった。システム的には4-2-3-1で構える鹿島に対して中央でズレを作るのはそんな難しくないと思うので、単に大分のコンセプトが変わったと見るべきだろう。

画像5

 昨年の大分の強みは攻守の切り替えの少なさにあった。ボール保持をゆったりと行い、ロスト後は自陣に思いっきりリトリートしてスペースを埋める。こうして失点の危機にさらされる機会を減らしつつ、少ないシュートを確実に仕留めてくるという形で勝ち点を稼いでいた。

 しかしながら、今季は長いボールを使うタイミングが早い。知念は体は張れるが、全勝できるほどの強さはないし、シャドーの裏への勝負も同じ。結果的に相手に簡単にボールを渡してしまう場合も見受けられた。したがって、昨年よりも攻守の切り替えが多く発生する。失点が多くなっている要因の1つはまずは受ける機会そのものの増加ではないだろうか。

 非保持におけるふるまいも昨年と比べるとやや物足りなさを感じる。鹿島戦では5-4-1ブロックでミドルゾーンをキープする振舞いを見せていた。CHはコースを締めてDF-MF間で受ける縦パスのケアをしたのだろうが、ボールホルダーへのプレッシャーは遅く、角度を変えながら結局ボールを入れられてしまうシーンが目についた。最終ラインの押し上げも強烈ではないので、ボールホルダーに食いつかせれば最終ラインの前のスペースは空。

画像5

 鹿島戦では裏へのケアもやや甘く、DF-GK間のスペースは能力に対しては若干広いように思えた。2点目のPKはこのスペースのカバーが間に合わなかったことによるものだ。60分を過ぎると失点が重なったこともあり、人をとにかく追いかけまわすように。ラインコントロールも結構無視されていたりしたので、川崎がこのフェーズまで引き込めれば勝利の確率は結構上がりそうだ。

 大分のボール保持を受ける上で怖いのは前線で時間が作れた時。特に両WBがともに攻撃参加ができた時は4バックで守ると外側がとにかく空くので、PA内で左右に振られる状況が出てくる。こうなると攻撃に厚みが出てくるようになる。

 川崎はここ数試合は緩やかにコンディションを落としている。非保持のブロックの強度に難がある川崎はボールを持って押し込んでくる相手が苦手であろうことは見えてきている。前半で試合を決めることができたFC東京、柏戦はともかく、その後の試合では相手に主導権を明け渡す時間が必ず出てきている。大分はそこをつかみ取るのに苦労しているチーム。知念がいないのならばなおさらで、どう前進するかが大分の課題であることは明らかだ。川崎がミスから押し上げられなくなってしまえば、自らが進んで大分が欲しい「機会」を与えることになる。

 苦手な局面のクオリティを上げるか、そもそもそれを消すために他の局面の時間を増やすか。クラブの連勝記録を更新はしたがまだまだ改善の余地は見える。今節の鬼木監督の解決策には注目したいところだ。

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)

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