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「っぽくない!」~2020.6.6 ブンデスリーガ 第30節 ドルトムント×ヘルタベルリン レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
工夫もありつつ、安全運転もしつつ

 「オープンで攻撃的、たくさんが得点が入る。」それがこの1か月間見てきたブンデスリーガの印象である。それで言えば、この試合はあまりブンデスリーガらしくはない試合だった。

 ヘルタは4-2-3-1、ドルトムントは5-4-1と形は違うが、ともにこの試合ではプレスの意識は強くなく、リトリートで相手の最終ラインにボールを持たせる機会が多かった。

 ヘルタのビルドアップはCBがPA幅まで大きく開く形。間にはCHが落ちるわけではなく、GKが入りビルドアップを手伝う。SBは幅取り係、その分SHは絞る。2列目の3人はだれか1人が中盤に降りてボールを引き出す係。残りは前線に張って最終ラインと駆け引きをする。トップ下のダリダが中盤に降りてボールを運ぶパターンが最もオーソドックスだろうか。

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 やや前線と後方が分離しており、SBを上げて中盤に降りてくる前線の選手にボールを入れる形がスイッチ!と言えば若干ミシャ式っぽいけど、実際はそうでもない。SBが高い位置で1対1を挑むわけではないし、攻撃がくさびから急加速するわけでもない。ビルドアップは安全第一で困ったら割とシンプルに蹴りこむ。失い方には気を付ける安全運転であった。初手では形が決まっているけど、アバウトで進む過程は不定形。失いやすくはあるが、相手に変な形でボールを取られにくくもあるというのはおもしろかった。

前半ー(2)
デアクラシカーの課題アゲイン

 序盤こそヘルタが持つ場面もあったが、徐々にドルトムントがボールを持ってヘルタのブロックを崩すチャレンジに挑む時間帯になっていく。

 ヘルタの守備ブロックは4-4-1-1と評するのが正しいだろう。トップ下のダリダは最前線でプレスに参加するのではなく、一歩引いた位置で中盤のブロックを固める意識が強かった。ヘルタは全体のプレス位置も高くなく、ミドルゾーンでコンパクトな陣形を維持しながらドルトムントを迎え撃つ形である。

 というわけでバックスにボールを持つ時間は与えられたドルトムント。ただし、この日の最終ラインにはフィードの魔術師であるフンメルスは不在。なので立ち上がりは地道にブロックを動かしてこじ開ける意識が高かった。

 ここ数試合を見る限り、ドルトムントの攻めの主な手段は2つ。1つは間で受ける前線の選手への楔をスイッチとして、一気に最終ラインを攻め落とす手法。もう1つは広いスペースでスピードのあるWBを軸に、サイド突破を図ることで最終ラインを押し下げるやり方である。

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 はっきり言えばこの試合のドルトムントはかなりヘルタのブロック崩しに手を焼いた。まずくさびに関しては狭くなった2ライン間で前線の選手が閉じ込められてしまう。降りてくる主担当だったブラントが受けられるのは中盤より前。肝要なスペースでは背中に相手を背負った状態でしか受けられなかった。ちなみにこの試合一番の個人的な発見はヘルタの25番のトルナリガ。身体能力の高さと潰しに行くタイミングの見極めが抜群だった。いい選手ですね。

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 サイドからの押し下げの方はどうだったか。ヘルタの守備ブロックは4-4-1-1である。ドルトムントの十八番である、高速サイドチェンジからの広いスペースのハキミやゲレーロの1対1を狙っていきたいところだが、ここでもフンメルス不在はやや足かせになった感。各駅停車で最終ラインを経由するサイドチェンジをすると、あまり時間を作った状態で1対1の局面は多くならなかった。

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 ドルトムントの中盤で横に揺さぶる意識を強く持っていたのはディレイニー。サイドの突破もWB単体ではなく、ワンタッチでハーフスペースのWGに折り返すパターンを織り交ぜることで徐々にPA付近までの押し下げに成功するようになる。ディレイニー起点にWBとWGのコンビネーションで打開していくイメージである。

 前線への楔の方の崩し方で努力の跡が見えたのはアカンジ。与えられた時間の分、持ち上がりながらブラントに強引に突き刺す楔からシュートを演出したりなど、最終ラインから相手の陣形を動かすために奮闘していた。

 ただ、いくらかの決定機をドルトムントがフイにしたとはいえ、枠内シュートがないまま試合が進んだのは事実。同様に間を締められ、サイドは対人強度で封じられたバイエルン戦に比べれば、改善策を提示できているドルトムントだが、ヘルタのブロックもそれに屈しないという前半だった。

 ただ、非保持では良かったヘルタもボールを持った時はどうだったか。終盤は複数人数をかけた左サイドを起点に相手を押し込む時間帯もあったが、フィニッシュまでどう持って行くか?という絵は見えてこなかった。

 互いにジリジリするブンデスリーガらしからぬ試合は前半をスコアレスで折り返す。

【後半】
詰めの一手

 後半から一段攻撃のギアを入れた感じのあるドルトムント。具体的にはサイドから押し込んだ時の中央に飛び込む枚数がやや増えた感じ。ディレイニーもヴィツェルも重心を上げて得点機会を虎視眈々と狙っている様子である。行動範囲を広げたのはエムレ・ジャン。プレッシャーが少ない分、サイドのフォローに顔を出したり、時間が経つにつれてボール保持に高い位置で参加するようになった。

 選手を高い位置に増やすことは当然リスクでもあるが、パスの距離が縮まることにより、短い時間でボールの向きを変えることができるのは大きなメリットである。例えば、50分過ぎにサンチョが迎えた決定機。これはヘルタの中盤が1枚剥がされたことが起点。先ほど絶賛したトルナリガもこのシーンでは前に出るも空いた穴をふさぎきれず、ドルトムントはショートパスで前進。ハキミのエリアアタックからなるシュートチャンスを未然に防ぐことができなかった。

 ドルトムントが取ったリスクが報われたのは後半13分。最終ラインにズレを作ったのは、動きながらポストを決めたブラント。こういう選手ホント好き。彼が相手を動かしたスペースに入り込んできたエムレ・ジャンが先制点を決める。元々中盤とはいえ、流れの中でこの位置まで上がってくるとは驚いたぜ。

 後手を踏んだヘルタ。前に出ないといけなくなったのだが、ハイプレスに出ていく感じはそこまでなく。ピョンテク投入で4-4-2に移行し、中盤を押し上げるどまりだった。ハイプレスはフィジカル面でもまだ不安があるというところなのか、それとも戦術的に未整備なのだろうか。プレッシングは前からつぶせるわけでもなく、とはいえ前半のように引いてしまえばボール回しを見ているだけになってしまうので、前半よりは強めのプレスに出ていく形が多かった。穴は空けちゃうかもだけど、試合を寝かされるよりはまし!みたいな。

 ヘルタはボール保持の局面でももう1つ足らない感じ。トルナリガの攻め上がりの頻度はあがり、相手を片側に寄せてサイドチェンジ!くらいまではいくのだが、そこから最後の詰めの一手が足りないというか。ドルトムントのDFラインを揺さぶれる状態までは持っていけなかったように感じた。最後の詰めの一手の有無がこの試合の勝敗を分けたといえそうである。

 試合は1-0でホームのドルトムントが勝利した。

あとがき

■個人でもチームでも課題克服

 バイエルン戦と似た課題にぶち当たりながらも、順応して解決策を見いだせたのはドルトムントにとってはポジティブにとらえていいだろう。WBのデュエルに早めに手を打ったり、アカンジやエムレ・ジャンの奮闘が見れたりなど個人でもチームでも向上が見られたと思う。チャラいってらいかーるとさんは表現していたけど、真面目さもある。って書くとEXITっぽいね。

■どこに伸びしろが見える?

 快進撃のラバディア・ヘルタだったが、ドルトムントの前に屈してしまった。本文でも触れた通り面白いチームである。ビルドアップは広くピッチを使う意識が高いこともあってか、低い位置では変に慌てない。ブロック守備も無難にこなす。ただ、ダリダに渡した後にどう攻めたいの?という部分が見えてこなかったり、思い切ったハイプレスはあまり見れなかったり。どういうチームかと一言でいうのは結構難しいけども、どっちに進んでどこが完成系になるの?という部分が気になるチームであった。

試合結果
2020/6/6
ブンデスリーガ 第30節
ドルトムント 1-0 ヘルタ・ベルリン
ジグナル・イドゥナ・パルク
【得点者】
BVB: 58’ エムレ・ジャン
主審:ハーム・オスマー

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