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「第一関門クリア」~2020.2.23 プレミアリーグ 第27節 アーセナル×エバートン レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
無抵抗なエバートン

 これだけ長くレビューを書くことをやっていれば、何かが起きる前に点が入ってしまうことも当然ある。この試合はまさしくそのケースで、それぞれの狙いやユニット、個々の調子などを見る前にスコアが動いてしまった。セットプレーから先手を取ったのはエバートン。アクロバットなシュートを決めたカルバート=ルーウィンとは対照的に、アーセナルの守備陣は非常に緩慢であった。当該シーン後にダビド・ルイスがムスタフィに激高するシーンが見られたのも無理はないだろう。

 というわけで、まずはアドバンテージを得たエバートン。しかしながら、開始直後のエバートンの守備を見ると「これでは90分守り切れないだろうな・・・・」という印象を受ける。2トップのカルバート=ルーウィンとリシャルリソンはCBにプレスをかけに行くも、後続が続かないプレスなので、アーセナルは簡単にMFにボールを渡せる。

    1stプレスラインを突破されるとエバートンの後方の8枚はリトリートを選択。ただ、リトリートした後もアーセナルのボールホルダーにはプレッシャーがかかっていない場面がほとんど。エバートンの選手はボールホルダーに多少寄せていても、自由を奪えていない距離感であることが多く、アーセナルは簡単に裏や間へのボールを通すことができた。5分のベジェリンのシュートのシーンが好例で、パスを受けるアーセナルの選手は軒並みフリーで次のアクションに移行することができていた。こうなると、非保持でアーセナルのやり方を阻害するのは難しい。

    アーセナルとしては最終ラインの手助けが1人あればよし。いつものように左サイドに落ちるジャカでも、中央に残るセバージョスでも、2CB+1さえあればエバートンの前プレスを外すことは難しくはなかった。特に左サイドにいることが多かったジャカとルイスの長いボールに対して、無力だったエバートン。

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    1点目は大外のサカへの長いボール、2点目は大外から斜めに内側に切り込んでくるオーバメヤンへの長いボールがゴールの立役者。サカやオーバメヤンは得点シーンにおいてほぼフリーでプレー。シディベとイウォビは彼らを前に全く歯が立たなかった。1点目のゴールを決めたエンケティアもDFこそ周りにいるものの、当人はフリー。プレッシャー少な目でプレーできたといえる。

    前半のアーセナルの攻撃はこの動きがほとんど。2トップのプレスを外す→左サイドの外から侵入→同サイドを攻略or中央経由のサイドチェンジで逆サイドのペペで勝負というシンプルなものだった。

    エバートンも時折アーセナルのロストからのカウンターが発動。カウンター部隊のリシャルリソンやカルバート=ルーウィン、そしてシグルズソンは厄介だったが、エバートンに比べればアーセナルの守備陣は、ボールホルダーやパスの出先に体を寄せているので、ピンチになる頻度は相対的に少なかった。

    アーセナルは非保持ではハイプレスとリトリートを使い分け。ジャカの位置が前かがりに取りに行くかどうかのバロメーターになりやすかった。FWに合わせて彼が前に出ていっているときはハイプレス、リトリートの時はエバートンにブロック攻略を強いているような形である。

    アーセナルにとっては多くの時間を相手陣に押し込んで過ごしただけに前半追いつかれたのが悔やまれる。エバートンはまたもわちゃわちゃから何とかタイスコアに持ち込み、試合は後半を迎える。

【後半】
アンドレ・ゴメスが流れを変える

 前半同様、試合はすぐ動く。開始早々に右に流れたエジルが受けるとそこからペペに展開。中央でクロスを待ち受けたオーバメヤンが勝ち越しゴールを決める。エバートンの緩さは前半と相変わらずで、ここからアーセナルが一気に攻勢出るように思えた。

 しかし、試合の流れは徐々にエバートンに傾いていく。まずは中盤が連動した前からのプレスでアーセナルのボール保持から自由を阻害していく。アーセナルはだんだんと低い位置でのロストが徐々に目立ちだす。たまらず長いボールを蹴ったボールを回収し、エバートンは波状攻撃を仕掛ける。

    特に展開がエバートンの方に寄っていったのはアンドレ・ゴメスが中盤に投入されてから。特に効果的だったのは高い位置を取るアーセナルのSBの裏を取るボール。特にリシャルリソンはベジェリンの裏を積極的に狙うことでムスタフィをエリアから引っ張り出していた。出てくるところに狙いを定めてつぶすという点ではパフォーマンスの向上が見られるムスタフィだが、広いスペースでドリブラーと対峙するというのはそもそも非常に苦手な分野である。加えてアーセナルとしては空いた中央のスペースのケアも難しい。エバートンはSBの裏にFWを流すことからカウンターのチャンスメイク。その下地を担ったのがアンドレ・ゴメスだった。

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    アンドレ・ゴメスは撤退守備でもほかの選手に比べて、アーセナルの持ち上がった選手をとらえるのが早め。特効薬とまではいかないけど、応急処置にはなっていたと思う。

 アーセナルは左右のハーフスペースでエジルが受けることで反撃に打って出る。エバートンの後方の4-4のゾーンは最後までハーフスペースで受けるエジルをどうするか?という問いには頭を悩ませていたように思う。とはいえ、後半の攻撃機会の頻度は両チーム間で逆転。エバートンが攻勢に出る時間も十分にあった。カルバート=ルーウィンが前半見せたような決定力を見せていれば、試合の様相がガラッと変わっただろう。アーセナルはエジルに代えてゲンドゥージを投入し、プレッシングを強化。高い位置で食い止めて主導権を握り返そうとする。

    終盤はあわや三度エバートンに押し切られてゴールを割られそうな場面もあったものの、アーセナルは何とか逃げ切りに成功。撃ち合いを制したアーセナルが久しぶりのリーグ戦の連勝を記録した。

あとがき

最悪な立ち上がりだったが

    幸先良い先制点を得たエバートンだったが、順風満帆な試合運びにはならなかった。とりわけ前半の守備はひどく、どこでボールを取るのかというチーム設計がまるでなされていないように見えた。たまたま運が悪かったで済まされるような失点はなく、全てきっちり崩されているのはつらい。ほぼ45分での3失点は偶然ではなく、必然のものだったといえる。それだけエバートンはアーセナルにチャンスを与えていた。

    光明があるとすればアンドレ・ゴメスの存在だろう。長期離脱から復帰した彼がここからプレータイムを伸ばせば攻守に改善が見られる可能性はある。優秀なアタッカー陣との相性も抜群で、チームが一気に軌道に乗る可能性も否定できない。忘れそうになるが、アンチェロッティは冬に就任したばかり。組織の構築はまだ道半ばである。戻ってきたアンドレ・ゴメスを組み込みながら、上位躍進に弾みをつけたいところだ。

■ミッションコンプリート

「アーセナルの攻撃面での課題は質×機会の総和が足りていないこと」と散々繰り返してきた。その観点でいえば、前半から数多くのチャンスメイクを行っていたことはポジティブ。これまでの試合で課題だったシュートチャンスに行けない事案はこの試合では気にならなかった部分である。実際に前半だけで2点取ったし。

    中央ではエジル、セバージョス、サイドではペペやサカが存在感を発揮。すでに公式戦で2桁アシストを記録しているサカのクロスへの期待は徐々に大きくなっていっている。

    ただし、前半のエバートンの出来はここまで述べてきた通り散々。リーグ戦でCL出場権にトライを継続する上では残りの試合数的にも、相手の完成度的にもここは第一関門だった。後半はエバートンのプレスに苦しんだようにまだたくさん課題はある。セットプレーからの失点や後半の試合運びなど90分をコントロールできた試合ではなかった。

    しかし、他のCL出場権を狙うチームが波に乗れない状況での連勝は大きい。まずは彼らが取りこぼしたら順位が入れ替わる射程圏内に入り込んで、終盤戦での一発逆転に望みをつなげたいところである。

試合結果
プレミアリーグ
第27節
アーセナル 3-2 エバートン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS: 27’ エンケティア, 33’ 46’ オーバメヤン
EVE: 1’カルバート=ルーウィン, 45+4’ リシャルリソン
主審:スチュワート・アットウィル

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