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「川崎の新シーズン、占ってみた」~2020.2.22 J1 第1節 川崎フロンターレ×サガン鳥栖 プレビュー

全文無料で読めます。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第1節
川崎フロンターレ(前年度4位/勝ち点60/16勝12分6敗/得点57 失点36)
×
サガン鳥栖(前年度15位/勝ち点36/10勝6分18敗/得点32 失点46)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

図2

直近5年間の11回の対戦で川崎が5勝、鳥栖が1勝、引き分けが5つ

川崎ホームでの戦績

図3

直近10試合の対戦で川崎が5勝、鳥栖が2勝、引き分けが3つ。

Head-to-Head

・直近13回の公式戦での対戦で鳥栖が川崎に勝利したのは一度だけ。
・開幕戦での対戦はJ2時代の04年が唯一。
・直近3試合の対戦でわずか1ゴール。
・等々力での同カードは3試合連続ドロー中。

 直近の対戦成績を見れば相性的には川崎が有利だと言えるだろう。鳥栖が川崎に勝利するのは非常に稀になっている。等々力での試合に限れば最後の勝利は2013年。およそ7年間勝利から遠ざかっていることになる。

 開幕戦での対戦はJ2時代の04年が唯一。この等々力での対戦は川崎が勝利をものにしている。

 このカードの特徴としてはとにかく得点が少ないこと。川崎戦4試合ノーゴール中の鳥栖はもちろん、川崎もホームではここ4年で2得点のみ。非常にゴールが生まれにくい試合といえる。

【川崎フロンターレ】

選手情報

・旗手怜央に先発デビューの可能性。
・中村憲剛は長期離脱中。

Match Facts

・開幕戦直近6年間無敗(W4D2)
・ただし、引き分けた2試合はいずれもホームゲーム
・リーグでのホーム開幕戦は7回連続ドロー中。
・鬼木監督就任後、開幕戦で失点したことはない。

 リーグ開幕戦にはパッと見て相性がよさそうなデータが並ぶ。鬼木監督就任以降、そもそも失点をしたことがないというデータは非常に心強い。気になるのは開幕戦で勝利を決めているのはほぼアウェイゲームであること。ホームゲームで開幕戦を勝利したのは2012年の新潟戦が最後である。

 「その年の初めて等々力でのリーグ戦」まで範囲を拡大すれば7年連続ドロー中。「ホームでの」開幕戦には非常に相性が悪い。去年は1年を通してフラストレーションをためる場だったホームスタジアムで勝利からシーズンをスタートできるだろうか。

Pick up player

〈小林 悠〉

 夏男のイメージが強い小林悠だが、直近6年で4回の開幕戦でゴールと意外と開幕戦でも強さを見せている。15年の横浜FM戦と17年の大宮戦ではゴールと共にアシストも決めている。しかし、そんな小林も直近2年間の開幕戦はノーゴール中。特に昨年は初ゴールが9節とエンジンがかかるまでに非常に時間がかかった。開幕戦で弾みをつけたいところだ。

 2017年から18年にかけて3試合連続でゴールを決めるなど、鳥栖との決して悪くはない。去年の二の轍を踏まないためにも、まずは1ゴールを早めに決めて、新たな道を歩むチームを勢いづけたいところだ。

【サガン鳥栖】

選手情報

・本田風智にリーグ戦デビューの可能性。

Match Facts

・J1昇格後、アウェイでの開幕戦はチーム史上初。
・シーズン初めのアウェイでのゲームは直近5年間勝利なし(D2L3)
・直近3年間、開幕戦での勝利はなし。
・昨季終盤の3連戦はいずれも無得点。

 なんでJ1で今までアウェイでの開幕戦がなかったのか?は謎。というわけでアウェイでの開幕戦のデータはない!強いて言えばアウェイでの開幕戦は直近5年で勝ちなしという苦しいデータを発見してしまった。開幕戦全体に拡大しても、直近3年は勝利なしということであまり相性はよくなさそう。

 チームは新しいスタイルを模索中。おそらく改革の動機は得点力の向上である。昨年終盤の無得点のランに加えて、川崎戦という得点から長らく遠ざかっている相手。無得点のジンクスから抜け出すことができるだろうか。

Pick up player

〈本田 風智〉

 札幌戦を見る限り、今年の鳥栖のインサイドハーフは大忙し。前プレ、裏抜けなどダイナミズムな働きが求められる。

 そんなインサイドハーフに颯爽と現れたのがユース出身の本田。松岡大起と共に、U-21コンビでインサイドハーフを埋めて豊富な運動量でピッチを駆け回っていた。ただし、このシステムではインサイドハーフはPA内に顔を出すだけでなく、スコアに結び付く結果が求められる。若武者2人がこのポジションを任されるのだとしたら、彼らの責任は重たそうだ。

予想スタメン

画像3

展望

 さて、開幕ということで鳥栖相手にどうこう!というよりは素直に川崎のやり方について話した方がいいだろう。ルヴァンカップの清水戦を見て感じたこと、思ったことを話していきたい。

    基本の並びは4-3-3。目立ったのはビルドアップにおける左右の非対称性だ。左のインサイドハーフに入った大島は、ビルドアップの手助けへの意識が高め。アンカーの位置に入った田中と中央やや左の位置で並ぶようにして、ビルドアップのアシスタントを務めていた。

    その分、左サイドの高い位置押し上げられる機会が多かったのが登里。相手のSHの裏に回りボールを受けて、攻撃のスイッチを入れる。内側へのカットインも大外を回していく動きも使い分けられるのが彼の強み。こうした位置取りのうまさは一昨年くらいからの突然変異なので、どこで習ったのかは知らないが、今の川崎のやり方は彼の長所が出やすい。長谷川との連携は昨季から引き続き良好。長谷川に大外から仕掛けるチャンスを提供したり、ダミアンや大島も絡めて狭いエリアでのパス交換からの打開が行われたりなど、今季も左サイドはストロングポイントになりそうな予感がした。

画像4

 左の大島が低い位置で組み立てに関与する役割ならば、右の脇坂はより高い位置でアクセントになる役割。昨季より大きく開くことが多くなったCB(ジェジエウ)からの楔をハーフスペース付近で脇坂や宮代が受けることから攻撃が始まる。右サイドの高い位置でのプレー経験もある脇坂はストライカータイプである右WGの宮代が内側に絞っても、外側に開いてポジションバランスをとることができる選手。後方の山根との連携も悪くなかった。この試合がデビュー戦になった山根個人の動きにフォーカスしてみると、後半の終盤に大外から裏に走りこんでくる動きは彼の強みと感じた。後述するが、長いボールを蹴る機会が増えそうな川崎の中盤にとって、彼のこと走り込みは非常に重要なオプションになりうる。

■前線の話

 清水戦を基に各ポジションに求められる役割をもう少し考えていく。

 今年のやり方においてもサイドからの打開は、川崎の完成度を決める重要な要素である。時には狭い場面でもパス交換が求められることもあり、そこは従来のトメルケールといった技術だったり、阿吽の呼吸が求められる場合もあるだろう。しかし、誰がサイドの多角形形成に参加するのか?という部分については昨季よりもある程度制御されているように見える。サイドに人をかけすぎて中央にクロスを受ける選手がいなくなったという去年の問題点は清水戦ではあまりみられることはなかった。ダミアンがやや下がり目の位置で降りているときは、右サイドの選手(この試合では宮代)がエリア内で仕事をするなどの役割分担も可能。右サイドの攻撃的な位置には旗手や小林などストライカー的にふるまえる選手が入る機会は多いはずで、そうなった場面ではWGはよりフィニッシュに絡む役割が求められる。CFは当然PA内の動きが最優先。その他の動きはもちろんできるに越したことはないが、最終局面での存在感を薄めてまでは降りてくる動きはやる必要はない。

画像7

 というわけで前線の組み合わせはPA内で仕事ができるストライカー+ワイドとPA内での性能を兼備した右サイド+幅取りとカウンターの仕掛け役になれるドリブラー型左サイドの組み合わせがメインになる予感。ドリブラー型の選手が右サイドでの適性を見いだせれば、両サイドに仕掛けられる選手を置くこともあり得るだろうが、ひとまずはこのやり方が基本線になるように思えた。

中盤の話

川崎FのMF田中碧、[4-3-3]移行での新任務は「アンカーというより…」《Jリーグキックオフカンファレンス》【超ワールドサッカー】川崎フロンターレの日本代表MF田中碧が、更なる成長を期待させた。web.ultra-soccer.jp

 アンカーに田中碧というと、動きすぎるのでは?という心配が真っ先にやってくる。しかし、「アンカーではなくスリーセンター」という田中碧本人の言葉通り、流動性を逆手に取ったように見えた。出足の良い田中が出ていった際は大島や脇坂が低い位置に入って埋める。左右のスライドやリトリートに関しては大島はもともと資質的にも問題ないが、脇坂もこの試合では非常に献身的な動きを見せていたように思う。

    ただし、先述の通り、脇坂には攻撃時には高い位置での役割もある選手。やや上下動がきついように思える。年間を通してハイパフォーマンスが維持できるかは難しいところである。

    川崎の今季のサッカーは幅を使うやり方であるが、今季の最終ラインのセットの現状での1stチョイス(ソンリョン、谷口、ジェジエウ)はロングキックにおける精度はまだ改善の余地が残る。局面を変える展開力やサイドチェンジ等の長いレンジのキックは中盤におもねる部分が大きい。現段階ではこの長いキックも中盤に求められる要素になる。

   そう考えると運動量と長いレンジでのキックを兼備する下田は、このやり方では出番が出てくるように思う。守田は縦に速い流れを発動するときにスムーズにテンポに乗れるかが課題になりそう。昨季序盤のように急ぎたい場面で判断に迷ってしまい、局面が落ち着いてしまうような状況だとやや厳しいだろうか。フィルター性能では一日の長があることは間違いないので、守備における比重を増やしたいときは起用が大きく増える可能性はある。

■CBとGKの話

 なによりも広い範囲のカバーが求められることである。そういう意味では昨年と大きく求められることが変わっていないポジションともいえる。欲を言えばボール保持において、長いレンジのパスが欲しいところ。山村は遠方のフリーの選手を見つける能力が高く、ミドルパスの精度も高い。

 しかし、後方に控えるのは守備範囲が広いとは言えないクラシカルなGKであるソンリョンであることを考えれば、まずは広大なスペースをカバーする能力はCBに求めたいところである。そういう点ではジェジエウと谷口のコンビが1stチョイスになる。彼らのフィードの質がシーズン中に上がっていくことを期待したい。蛇足だけど、確かにこのやり方だと奈良が残留していたらどうなっていたのかは気になる。

■SBの話

 内側も外側のレーンもこなせるのが最重要課題だ。前の選手に勝負する舞台を与えつつ、自らも突破していく資質が理想。そういう意味で登里が第一人者になる可能性はかなり高いと思う。山根もその部分では高い適応力を見せていた。もう1つ。これはSBに限らないのだがクロスの精度である。今季の川崎のクロスは従来のグラウンダーのものに加えて、ファーのフリーな選手を狙ってシュート、もしくは折り返して中央でフィニッシュというパターンが多い。

画像5

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 ということでサイドプレイヤー全般には、フリーな状況でファーサイドの選手目掛けて正確なクロスが蹴れることが非常に重要な課題。頻度の高さを考えれば必須項目といってもよさそう。ロングキック力の前評判が高いマテウスが割って入るのはこの部分になるかもしれない。

    清水戦で気になったのは守備時に内側を優先にするあまり、SHとの距離感を空けていたことだ。西澤と金子には致命的なダメージを食らうことはなかったが、例えば名古屋のような両サイドに個人で勝負できるアタッカーがいるチームにはこのやり方でいいかは微妙なところである。対人守備でいえば車屋は負けたくない分野になる。ボール保持の部分も磨きつつ、競争に割って入りたい。

■全体的な課題

   清水戦でも見られたが、非常に速いテンポで入るあまりチーム全体として作り上げた流れについていききれないのではないか?というのは気になるところである。90分を清水戦の前半のようなアップテンポで進めるのは不可能。清水の反撃を受ける場面での点差が2点ではなかったとしたら、試合はまた違った顔を見せていた可能性はある。前方でタメを作ることができる家長や試合展開によってさまざまなプレースタイルを体現することができる山村などを起用しながら、ややスローな展開を意図的に制御することも今後求められる部分ではないだろうか。

 筆の向くままにガーっと書いてみたが、こんなところだろうか。さてさて皆さま、今年もよろしゅう!

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)

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