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「魔法使いの一振り」~2019.11.26 UEFAチャンピオンズリーグ グループステージ 第5節 ユベントス×アトレティコ・マドリー レビュー

スタメンはこちら。

図14

目次

【前半】
それぞれのアイデンティティ

 アトレティコ・マドリーをしっかり見るのは久しぶりな気がする。サッカーに興味を持ち始めたころの主な自分の情報源の1つが超ワールドサッカーというwebサイト。そのサイト内の原ゆみこさんのアトレティコ・マドリーのコラムをやたら読んでいたので、実はアトレティコに触れた時期は結構早かったりする。第一次トーレス時代。シモンやマキシ・ロドリゲスが両サイドハーフ。なので、実はアトレティコには多少思い入れはある。17-18のELでは邪魔だったけど。

 その時代からアトレティコは4-4-2が多かった。同じ4-4-2でも今のイメージとはかけ離れていて最終ラインはペラペラ。FWとGKだけは安定して高いレベルを誇っていたチーム。そのアトレティコのイメージを一変させたのがシメオネだった。やっぱりすげぇ。

 前置きが長くなった。この日のアトレティコの最終ラインにはヒメネスとサビッチが負傷で不在。サイドバックも含めて、かなりここ数年のアトレティコとは違うイメージの最終ラインのメンバーである。しかし、やりたいことは大まかには近年のアトレティコとは似たような印象だ。

 ベースとしてはコンパクトな4-4-2でのブロック。プレス隊はユベントスの最終ラインにはボールを持つことを許し、2トップは中盤中央にボールが入ることを塞ぐ。中盤も高い位置を保ち、2トップとの距離を維持。ユベントスの4-3-1-2で起点を作りたいであろう中央を封鎖する。

図23

 中央がだめならば、サイドからの侵入を狙うユベントス。こちらもボールを持つことを許されたSBのオーバーラップや、2トップがサイドに流れる動きでボールを引き出そうとする。ユベントスのインサイドハーフも運動量が豊富なので、サイドに顔を出せる。ラムジーも同様。サイドで多角形を作る形でボールを持つ。

図24

 しかし、アトレティコも同サイドの封鎖はお手の物。中盤のプレスバックも速く、ハーフスペースやバイタルエリアなど使われたくないスペースをばっちり埋める動きはさすがである。というわけでユベントスの攻撃がうまくいったのはこのサイドのオーバーロードをフリに使えた場合。ピアニッチから逆サイドに一気に展開をして、アトレティコの守備ブロックより先に横スライドをできた局面である。9分のシーンはうまくいったシーン。ユベントスがやりたい崩しがこれなのかはわからないが、アトレティコと対峙するにおいてはベターな崩しはこのようなやり方だと思う。

図25

 逆にアトレティコのやりたかった攻撃は高い位置から嵌めたカウンター。スイッチを入れて後方も連動してプレスから人数をかけた状況が理想である。12分のトリッピアーのボール奪取からカウンターに移行したシーンがアトレティコが序盤に描けたいいシーンであった。ボール出る前にここは塞いでいこう!っていうのが新加入のトリッピアーにもしみついているのは、さすがのシメオネである。

   SBが今季の幅取り役であるアトレティコの攻撃。シンプルだが、ロディとトリッピアーが大外を担当してエリア内を狙い撃ちするのが今季よく見られる形である。ユベントスの4-3-1-2という形もSBからクロスを上げる展開を促進。クロスを受ける側として複数人をエリア内に送り込むのは決まりごとになってるよう。SHのサウールやコケはもちろん、CHのエレーラもエリア内に侵入してクロスを待ち受ける。2トップ以外最低1人加えた3人以上でエリア内で待ち受ける形は用意されていた。

   ショートカウンターとクロスで活路を見出したいアトレティコ。しかし、そこはユベントス 。一工夫が足りないアトレティコの攻撃を跳ね返して行く。堅いブロックの4-4-2がアトレティコのアイデンティティならば、対人の対応でミスらないのはユベントスのアイデンティティである。

   前半も半分を過ぎたあたりでプレスラインを下げてきたアトレティコ。ユベントスがボールを回しつつ、大事なところに侵入できない状況が続く。なべはだをなぞるようなユベントスのパス回しからは、攻めあぐねている感じが出ている。必死に打開を試みるべく持ち上がるデ・シリオを見ると海外の選手はこうやってあまりやらない部分も伸ばして行くんだろうなぁとか思ったり。

    膠着を打開しないまま、得点が降りかかってきたユベントス。なべはだパスワークから、ベンタンクールがファウルを獲得。角度はなかったが、ディバラが杖を一振りしてゴールが生まれる。彼もまた魔法使いなのですね。

   静的な展開を魔法使いの一振りでこじ開けたユベントス。試合は1-0でハーフタイムを迎える。

【後半】
フレッシュにはなったけど

    非常にじりじりした後半になった。得点が欲しいアトレティコ。前半と同じくサイドからの打開を試みるが、ユベントスはインサイドハーフがサイドに出ていく意識を高めることによってアトレティコのサイドバックを封殺しにかかる。

    サイドに蓋をされたアトレティコは中央から打開したいところだが、2トップが中央で起点になりきれず。ボールを持つことは許されたアトレティコだったが中央でもサイドでもこれだ!っていう攻撃を作れない後半の立ち上がりになった。というわけで登場したのが怪我明けのジョアン・フェリックスである。

    ユベントスもユベントスでカウンターに出たときの迫力に欠ける。ロナウド、ディバラ、ラムジーのトリオは連携が不十分でアトレティコに致命傷を負わせる追加点をとることができなかった。というわけでこちらもラムジーに代えてベルナルデスキが登場する。

   どちらかといえばこの交代で活性化したのはユベントスの方か。単騎突破頼みだったカウンターはディバラとベルナルデスキのコンビでやや流動性が出てくるように。

    ジョアン・フェリックスも時折突破を見せるものの、個人として存在感はあったものの、チームとして彼の良さを生かせる場面は少なかった。ルマルにコレアと早々に3枚のカードを切ったアトレティコ。選手のフレッシュさは増したものの、配置的になかなか優位に立てる一手を打つことができない。

   しばらくはまったりユベントスのペースが続いていたが、ディバラ→イグアインの交代が行われたタイミングでアトレティコがハイプレスを再起動。ユベントスは安全策でクリアを選択したため、セカンドボールを拾いながらアトレティコが押し込む展開に。

    最終盤に再びサイドからのクロス攻勢になったアトレティコ。跳ね返され続けた中で最後の最後にPAの崩しで一味つけたジョアン・フェリックスの縦パス。モラタ、決めていれば…。

    試合は直後に終了。ユベントスが虎の子の1点を守り切った。

あとがき

■前線の組み合わせの最適解

   前節取り上げたチェルシー×アヤックスと比べて明らかにエンタメ性では劣る展開になった。どちらのチームにも懸念はあると思う。

   勝利を収めたユベントス。リーグ戦を見ていないため、チームの現在地に対して出来がどうだったかは判断が難しいが、後方のブロック守備や3センターのミスの少なさはさすがユベントスといった感じ。一方で、前線のユニットを固めるにはまだ時間がかかりそう。特にクリスティアーノ・ロナウドをどう活かすか?という命題はサッリの頭を悩ませ続けることになりそうである。ベルナルデスキ、ディバラ、イグアイン、ラムジーをはじめ、多士済々のアタッカー陣をどう組み合わせるか。ドリブラーからアタッカーに変貌を遂げたクリスティアーノ2.0とサッリボールのコラボレーションはどのような結末を迎えるのか。

■ちょっと元気がない?

    結末が気になるといえばシメオネとアトレティコの関係である。従来は比較的堅めの選手を置いていたSBに今季は大外の攻めを委任したものの、ユベントス相手に効果的な攻め手を見せることはできなかった。ジョアン・フェリックスの存在はもちろん大きなインパクトを残す可能性はあるが、中盤の選手たちがやや元気がないのが気になる。

   例えば、SHに入ったレマルは絞ってプレーする状況が多かった。SBがユーティリティのサウールであることを考えれば、彼は開いてプレーしても良さそうなものだけども。ボールにタッチする機会は多かったけど、そこでいいのかな?とは。そもそもSBとしてサウールがプレーしているのも気になるけどね。

試合結果
UEFA Champions League グループステージ 
第5節
ユベントス 4-4 アトレティコ・マドリー
ユベントス・スタジアム
【得点者】
JUV: 4′
主審: アンソニー・テイラー

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