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「アンティークでモダンを凌駕」~2019.12.7 プレミアリーグ 第16節 マンチェスター・シティ×マンチェスター・ユナイテッド レビュー

スタメンはこちら。

図1

目次

【前半】
攻守に気になるシティ

 ゲームのテンポは非保持のプレスのかけ方によるところが大きい。マンチェスター・シティは強気の前ハメでのプレッシングでのスタートになったが、マンチェスター・ユナイテッドはハイプレスで押し切った前節のトッテナム戦とは違い、控えめなプレスで立ち上がることになった。

 プレス隊であるリンガードとマルシャルは、まずはロドリを封鎖して外に迂回させるシティ対策としてはオーソドックスなやり口。トッテナム相手なら飛び込んでプレスで押し切れるけど、シティ相手にはそれは通用しないと判断したのだろう。

図4

 というわけでボールを持つことを許されたシティがユナイテッドを押し込む展開でスタートしたこの試合。とはいえ中央は2トップに加えてフレッジとマクトミネイが封鎖。シティはサイドからの迂回を余儀なくされる。このサイドからの崩しこそ、この日のシティにとっては試合を通して向き合わなくてはいけない難題だった。

 シティの右はベルナルドが張っているが、そもそもワイドに張って勝負するタイプではないので違いは作れず。デ・ブライネのサポートもあまりなかったのも気になるところ。数少ない共闘シーンだったデ・ブライネが右サイドに流れたシーンではマグワイアを引き付けたスペースにベルナルドが侵入。やはりこの斜めの動きこそベルナルド。シティとしてはこういうシーンがあまり見られなかったのが残念であった。

 普段なら右がだめでも、左のスターリングが何とかしているのだが、この日のスターリングの対面は対人モンスターであるワン=ビサカ。全く歯が立たないわけではないが連戦連勝というわけにはいかず。こちらのサイドでもユナイテッドにクリティカルな攻撃を与えることができない。左ではアンジェリーノが時間を得ることができていたものの、ここは精度がもうひとつ。シティは迂回させられたサイドで苦戦を強いられることになる。

 シティでもう1つ気になったのは非保持の局面。ブロック守備の精度がそこまで高くないのはもともと。アンジェリーノのサイドから裏を取られるのは仕方ない部分もあるかもしれないし、ウォーカーが不在のサイドのカバーにフェルナンジーニョが忙しそうにしているのもいつもの光景かもしれない。

 ただ、この試合では本来は得意なハイプレスが徐々にハマらなくなるのが気になった。特に右サイド。この日は積極的に出ていくベルナルドに対して、デ・ブライネは低いポジションを取ることが多かった。左サイドでロドリが前に出ていくこともあったため、バランスを取るためという可能性もあるが、出ていくベルナルドと引くデ・ブライネの間の選手に起点を作られるシーンが多かった。

図5

 前節のレビューでも紹介した通り、ユナイテッドの攻撃は左サイドを起点とすることが多い。

 こちらのサイドでのプレスが機能不全に陥るとシティとしては相手の進撃を許す展開になる。ハーフスペースにラッシュフォードやリンガードが流れて起点になると、ユナイテッドがシュートまでいく機会は徐々に増加。前節同様、左で作って右でジェームズがフィニッシャーのパターンもあるし、絶好調のラッシュフォードの特攻パターンもあった。そのラッシュフォードの特攻が成功したのが先制点のキッカケとなるPK獲得のシーンである。中央でロストしたウォーカーがお留守になったサイドから特攻された形。ベルナルドは少し間に合わなかった。

図6

 失点以降もプレスを外されたシティが最終局面まで侵入されて、シュートを撃たれるシーンは多かった。可動域が広いユナイテッドの前線に対して、出ていくべきか、裏を取られないようにするべきかの判断で後手に回り、なかなかボールを止められず、ずるずると下がってしまう。最たるシーンは追加点の場面。降りる動きと強引にエリアに入る動きを織り交ぜるマルシャルとは対照的に、シティのDF陣は誰も責任を取りたがらなかった印象である。

 シティもデ・ブライネが右サイドに顔を出すシーンを増やすことで反撃に転じる。徐々に決定機を作るようになるが、フレッジが流れることで対抗したユナイテッド。リンガードも低い位置までカバーリングにきて、シティの右サイドの侵攻を止める。

図7

 その分中央で持ち上がったロドリや、大外をスターリングに任せて絞るポジショニングを取ったアンジェリーノはボールを持つ時間を得ることができたのだが、決定的な仕事はできず。スタンドで満面の笑みを浮かべるサー・アレックス・ファーガソンと対照的にスタンドで貧乏ゆすりをしていたアグエロはこの試合の前半のシティを表していた。

 試合はハーフタイムへ。0-2とアウェイチームのリードで後半に向かう。

【後半】
それでも外側

 後半も試合の構図は変わらない。構えるユナイテッドに対して、シティがこじ開けられるかのチャレンジを続ける流れである。シティはロドリの横のサポートを手厚めにする。例えば、ウォーカーが絞ったりだとか、ストーンズが1列上がったりだとか。フレッジとマクトミネイはシティのインサイドハーフの対応に集中していたので、確かにロドリと並列に並ぶ選手は比較的フリーになりやすい状況だった。それだけに追いかける状況でのストーンズの負傷交代は非常に重たい。攻守どっちにおいても痛い。

図8

 中央に起点を作ることはできてきたシティ。2列目の選手の注意を中に向けることで、外では1対1を作るところまではいっていた。大外での対人を強化するためのマフレズ投入だろう。しかし、立ちはだかるのはワン=ビサカとルーク・ショウ。この日のこの2人のパフォーマンスは圧巻だった。器用なタイプではなく、モダンなサイドバックとはいいがたい2人かもしれないが、「サイドバックに一番大事なことってそれなんですか?」と問うてくるような出来であった。

 大外での1対1での分が悪いシティは、得意のハーフスペース裏への走り込みを織り交ぜながら、ユナイテッドのラインを下げにかかる。ここで踏ん張ったのはリンデロフとマグワイア。シティのクロスは彼らによってことごとく跳ね返されることになる。

 ボール保持をシティに許したユナイテッドはロングカウンターを狙うことになるが、ここでの狙い目はアンジェリーノ。ジェームズはここのマッチアップでは優位に立っており、ユナイテッドがシティを押し込むきっかけになっていた。対人に強いウォーカーがいなかったら、さらなるスコアがユナイテッドに入っていても不思議ではなかったと思う。

 外で優位に立てないシティ。そういう時は広げて中の選手がプレーできるスペースを作り出すのがあるあるだが、この日のシルバは中央ではあまり輝けず。フレッジ、マクトミネイのプレッシャーが強かったのももちろんあるだろうが、マークが甘い時も割とひっかけたり、出したパスがずれたりするシーンが多く、コンディションを落としているように見えたのは気がかりだった。

 中央の要人が不調となるとやっぱり外をかち割るしかないのかな。と考えていたところに飛び込んで来たオタメンディのゴール。そいつは予想外だったぜ。

 シティの最後の交代カードはロドリ→ギュンドアン。より高い位置でダイレクトなパスを刺せる選手をということだろう。オタメンディのゴールに沸くエティハドの後押しをそのままに攻め切ってやろうぜ!という交代カード。それに対してヤングとトゥアンゼベという2枚のDFを投入して逃げ切りを図るユナイテッド。1枚目のペレイラの交代の堅実さといい、この日のスールシャールは前指揮官の影が乗り移ったようであった。

 最後はユナイテッドも苦しんだ。追撃弾後のマフレズの惜しいシュートもあったし、直後にファウルをもらおうとして失敗していたジェームズを見れば、失点直後のユナイテッドの選手はエティハドの圧力を感じて若干アワアワしていたように映る。それでも最後までクロスを防ぎ続けたユナイテッドの守備陣。徐々に落ち着きを取り戻し、逃げ切りに成功。

 試合は1-2。マンチェスターダービーはユナイテッドに軍配が上がった。

あとがき

■「どこでも」ではなく「ここしか」

 リバプールの追手候補筆頭だったが、ここでシティはブレーキ。まずは試合のたびに増える怪我人が気がかりである。ピッチの上の話をすれば、この日はサイドから切り拓く頻度が非常に少なかったのがつらかったところ。スターリングとベルナルドは対面するSBに苦しめられたし、アンジェリーノはまだ途上。右に流れたデ・ブライネはフレッジにうまく封じられた。サイドが無理なら中央で起点を作りたいところだったが、ジェズスとシルバは振るわずだった。

 調子がいい時のシティならば、外を封じられたら隙のある中央で勝負できるはずだが、この日はちょっと中央からこじ開けるイメージはできなかったか。サイドからのチャレンジをひたすら続けるしかなかったように思われる。勝負ができる箇所が限られているように思えてしまうのは、シティの気がかりなところ。得意な前プレの精度もやや落ちているように思うのが心配だ。

 次節は同じく調子を落としているアーセナル。崖っぷちの両チームの対戦は敗れたほうが目標の下方修正を強いられそうな一戦になりそうだ。

■課題は継続的な理不尽さ

 またしてもビック6相手に相性の良さを見せたユナイテッド。殊勲は両サイドバック、特に本文中でも触れたようにワン=ビサカのパフォーマンスは素晴らしかった。リンガード、フレッジ、マクトミネイ、マグワイア、リンデロフなど中央を締めたこともシティが外での勝負を繰り返さざるを得なかった一因である。

 課題は当然下位チームとの対戦成績の改善になる。キーマンとなりそうなのはスパーズ戦に続いて決定的なパフォーマンスを見せたラッシュフォード。彼が昨季のアザールのように、理不尽なプレーをシーズン通してできるならば、おそらく引いた相手もこじ開けられるはず。このパフォーマンスをどこまで維持できるか注視したい。

 戦術的に目新しさはないものの中央の堅さ、対人や球際の強さでシティを上回ったユナイテッド。昨季、スールシャールが就任した時に「古き良きユナイテッドのサッカーをしている」と自分は感じた。今回のダービーは「最先端のシティ」を研ぎ澄まされた「古き良きユナイテッド」が飲み込んでしまった試合といえるだろう。

試合結果
プレミアリーグ 
第16節
マンチェスター・シティ 1-2 マンチェスター・ユナイテッド
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City: 85′ オタメンディ
Man Utd: 23′(PK) ラッシュフォード, 29′ マルシャル
主審: アンソニー・テイラー

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