MENU
カテゴリー

「スーパーミドルとトライアングル」~2019.11.5 J1 第32節 浦和レッズ×川崎フロンターレ レビュー

スタメンはこちら。

画像1

目次

【前半】
欠点の差し合いでスタート

 浦和が出した先発メンバー表を見て驚いた人は多いだろう。俺もプレビューが無駄になったことを悟ったし、先発メンバーを隠せるクラブはいいなと思ったりもした。

 というわけで浦和は多くのレギュラー選手を温存し川崎に臨む選択をした。森脇、岩武、宇賀神、山中、汰木、そしてマルティノスには久しぶりに先発の出場機会が与えられた形になる。浦和の基本の陣形は5-4-1。マルティノスが1トップでその脇を柏木と汰木が固める。5-4-1といっても、ベタ引きではなくミドルゾーンでコンパクトな陣形を維持することを浦和は選択。時にはマルティノスをスイッチに前プレを積極的に行っていた。

 川崎はレアンドロ・ダミアン先発時に前線の裏への動きが極端に減少するという難点がこの日も露呈。狭いブロックの中でキーパスを刺すチャレンジを続けていく羽目になる。

 浦和のシャドーの2人はSBをケアするよりも真ん中を固める意識が強い。したがって浦和の中盤の陣形はフラットというよりはお椀のような形になっていた。そのためサイドでは時間が与えられる川崎。間はつぶされる、裏への動きは少ないという中で、唯一自由に出せたのがSBである。特に川崎は自陣右側から攻めることが多かった。確かに相手の左のシャドーである汰木はポジション修正を怠ることが多く、そこから歪みは作り出せそうな感じはした。しかしながらCHのスライドが早いこともあり、狭いスペースに押し込まれる頻度は多く、そこから打開の一手を繰り出すことはできなかった。

図5

 川崎が狙いたかったのは最終ラインがスライドして受け渡すタイミングを狙ったパス。そういう意味では22分に車屋→ダミアンに通ったパスはかなり素晴らしいタイミングで出たものといえる。このパスは川崎の左サイドで起こったものだったが、最終ラインで立ち位置にもどったり、スライドが遅れやすいのは逆のサイドにいる山中。浦和の攻撃が終わったタイミング(そもそも高い位置まで彼が出ていくこともあるけども)などで立ち位置に戻るのが遅いのが散見された。そのため彼の裏は狙いどころだったものの、カウンターでは家長を中心に左を選択し、右の裏のスペースは使わないパターンが多かった。ちょっともったいなかったかなと。

 しかし、川崎も突かれるとまずいスペースはあった。前半で交代させられてしまったマギーニョのところである。裏を取られるとか、ボールロストをするというのは最悪チャレンジの結果としてポジティブにとらえられないこともないが、クロスが武器の山中との対面している時の距離感が遠く、フリーでクロスを上げられる場面が目立った。修正しようにもベンチとは逆側のサイドであったことも災いし指示も通らない。せめてもの抵抗として自分も心の中で「マギーニョ、その金髪には寄せて!」と必死に願ったものの、その願いは特に通じることはなかった。

 というわけで浦和は自陣左からの攻めを狙う。長い脚と懐の深さで意外とワントップでボール収めに奮闘していたマルティノスが流れてきたり、浦和の右の低い位置で起点になっていた柏木が手薄になっているマギーニョサイドに長いボールを送り込んだりなどしてチャンスを作っていた。柏木はまだ万全ではないのかもしれないが、時折光るプレーを見せるのでさすがである。川崎としては真っ先に寸断しておきたいコースだった。

 しかしながら、浦和もシャドーの柏木が低い位置に降りたり、トップのマルティノスがサイドに流れたりした時の前線中央に人がいない問題が発生。即席メンバーゆえにデザインしきれていないのだろうが、起点を作ろうと奮闘するマルティノスの努力がなかなか報われないのは見ていて辛いものがあった。

図6

 前半の中盤くらいまではなんとかミドルゾーンで粘っていた浦和だが、サイドに張ることが多い齋藤が徐々に中央の裏抜けを織り交ぜたり、山村が前線の動き出しに合わせたパスを織り交ぜたりなどして徐々に浦和を押し込んでいく。そんな中で飛び出したのが脇坂のスーパーミドル。柴戸をターンで剥がし、狙いすました低弾道のフィニッシュまでの一連は無駄がなく非常に美しい。相手を外す動きと豪快なフィニッシュという彼の持ち味を体現したプレーだった。今季台頭した脇坂のゴールで川崎が浦和をこじ開けて先手を取る。

 先手を取られた浦和。追いかける状況に陥る以前にもこの日の浦和はボール保持時に比較的時間をかけて攻めていくパターンが多かった。川崎の4-4-2のプレスに対して、ピッチを広く使う浦和のビルドアップは相性が悪くない。川崎の前線に無駄走りをさせる場面も決して少なくなかったものの、最後の部分でどうしてもPA内に人が足りなくなってしまう問題は解決せず。ボールは回せるけど、仕留める武器がない状態で前半は終わってしまった。

 試合は川崎がリード。1-0でハーフタイムを迎える。

【後半】
トライアングル+1

 リードされたのは浦和だが、後半に変化を加えてきたのは川崎の方だった。再三攻め込まれていたマギーニョを交代。守田をSBにスライドさせて大島を投入する。これによって右サイドの守備は修正。例えば、50分の山村が前に出ながらパスミスをしたシーンでは守田がカバーリングに入るなど、前半の弱みだった右サイドの守備はむしろ強みになった。右サイドの攻撃も板についてきて、ここ数試合お馴染みの家長がワイドに張って、脇坂が裏に流れる動きはスムーズに行われるようになった。

 攻撃における意識もわずかに変化。後半立ち上がりに3回ほど、シンプルに中央を取る攻撃で前がかりになる浦和のバックスを強襲。ダミアンがいつも通りの冷静さを見せていれば試合はもう少し早く決まっていたかもしれない。前半こうやってほしい!と個人的に思っていた攻撃が見られるようになった。

 浦和はマルティノスが孤軍奮闘。個人で裏に抜けてポスト強襲まで行く頑張りは見せた。しかしながらチームとしては、GKまで使いながら自陣まで広く使う川崎のビルドアップに対して、有効なプレスの手を見出すことができず、前述のように裏をシンプルに使われるシーンが目立つようになった。

 カウンターのたびに陣地回復を着実にやってくる家長は浦和からするとめんどくさかったに違いない。体が強く一度ボールが渡ると簡単には奪えない。本人の状態も良くなってきたのか、カウンターで駆け上がる元気の良さはシーズン前半とは比べ物にならないほどである。

 60分過ぎからは徐々に汰木がオフザボールで走り始め、山中が高い位置を取る機会が増える。川崎は前線のプレスが弱まり、徐々に浦和が押し込む場面が出てくる。そこで鬼木監督は小林悠を投入。ちょっとしけた感じになってしまったダミアンに代わり、前線のプレスのスイッチ役を投入。再度前からのプレスを復活させることで流れを引き戻しにかかる。それに呼応するように浦和は関根を投入。1枚目の交代が青木→阿部というものだっただけに、このタイミングでの主力投入は意外だった。

 交代で主力を投入した両チームだったが、結果を得たのはリードしている川崎。右サイドの守田からのクロスに小林悠が頭で合わせて追加点を獲得。ニアの裏を抜けようとする脇坂に引っ張られて、内側に入った守田をケアできる選手がいなくなってしまった。大外家長+脇坂のニアの裏抜けで空いたスペースを守田が使うという素晴らしい右サイドの連携だった。もちろん一発回答の小林もナイスゴール。森脇を出し抜いて右のトライアングルに「+1」の付加価値を乗せたシュート。これでルヴァンカップに続き、途中出場の埼スタで仕事をやってのけたことに。

図7

 失点後、浦和は0-1の段階で用意していた興梠を投入する。しかし、投入後のポジションについてピッチ上の多くの選手が戸惑うことに。ビハインドにおける興梠投入は割と素直なプランのような気もするが、選手は混乱をしていたよう。この試合の浦和のちぐはぐさを象徴していたシーンだった。

 試合は0-2で川崎が勝利。上位チームになんとか食らいつく勝利を川崎が挙げた。

あとがき

■シーズン通しての課題

 連戦に次ぐ連戦の難しい試合であったことは確か。大幅なターンオーバーの敢行は致し方無いとはいえ、浦和サポーターにとってはACL決勝が控えているという緩衝材がなかったら受け入れがたい試合だっただろう。マルティノスの奮闘は見られたものの、チャンスをふいにしてしまいインパクトを残せない選手が大半。多くの選手を抱えながらシーズンを通してチームを作りこんでいくことの難しさを感じた試合だった。ACLは頑張ってね!!

■流れを引き寄せた交代策と連携深まる右サイド

 中2日の厳しい日程だが、なんとか乗り切った川崎。前半は攻めあぐねる場面もあったが、難しい局面を打開した脇坂。そして的確だった鬼木監督の交代策で流れを掴んで離さなかった。本文でも述べたように守田、家長、脇坂の右サイドの連携は試合ごとに向上が見られ、この試合では得点も生み出すことができたのは今後に向けて収穫になるはず。新井の細かいミスが2試合連続で見られたのは気になった。

 中3日で鹿島に乗り込むのはハードだが、残り試合全勝で優勝争いを荒らしたいところである。

試合結果
2019/11/5
J1 第32節
浦和レッズ 0-2 川崎フロンターレ
埼玉スタジアム2002
【得点者】
川崎: 35′ 脇坂泰斗, 78′ 小林悠
主審: 笠原寛貴

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次