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「サイドにゴールはないけれど」~2019.11.10 プレミアリーグ 第12節 リバプール×マンチェスター・シティ レビュー

スタメンはこちら。

画像1

目次

【前半】
選択肢を絞られるシティ

 超高速の展開でスタートした試合の中で、どこまでが両チームの狙いかを推察するのは非常に難しい。最も確からしかった事象は何か?と聞かれたら、シティがなるべく多く相手陣でプレーする時間を作り出したそうだったことだろうか。開始直後のウォーカーをロバートソンに競り合わせた長いボールも、リバプールのスローインに対して血眼で味方に指示を送るデ・ブライネもすべてはなるべく高い位置にてボールを奪い取りたいからだろう。

 リバプールのボール保持に対して、シティはボールサイドにウイング、インサイドハーフを筆頭に圧縮。逆サイドのWGが絞りながらインサイドハーフにつく。大きなキックはフェイスガードで蹴らせない!というスタンスは見て取れた。まぁそんなにリバプールが落ち着いてボールを持つ立ち上がりではなかったけども。

図2

 そういう意味ではシティの狙い通りの立ち上がりだったかもしれない。負けじと前線とインサイドハーフがハイプレスを敢行するリバプールに対して、シティは長いボールを駆使しつつ前に進む。右はフェルナンジーニョから、ベルナルトとデ・ブライネに楔を打ち込む。左はおなじみサラーの裏への浮き球を受けたアンジェリーノがスターリングの1on1を演出していた。

 シティのイメージからすると縦に速い感じもするが、狙っているのかリバプールのプレスに促されて縦に出さざるを得ないのかは判断がつかなかった。ただ、両チームとも非保持のプレスは素早く強くだったので、試合のテンポは非常に早くなった。試合のテンポはボール持ってない側が決めるって誰かが言っていた気がするが、まさにその通り。その中でもシティの即時奪還が序盤はややうまく回っている印象を受けた。

 しかし、1回目のプレス突破で得点を決めるのだから今のリバプールは強い。アレクサンダー=アーノルドのハンドアピールで一瞬即時奪回が遅れたウォーカー。マネへのロングボールを阻止できず、リバプールに押し下げの機会を与える。ギュンドアンのプレゼントパスは確かに痛恨だったが、これは素直にファビーニョのフィニッシュを褒めたいところ。いくらフリーとはいえ、素晴らしいミドルであった。

 シティのプレスがそんなに悪いものとは思わないが、リバプールのCBの2人も取りどころになるほど足元の技術が低いわけではないし、最後尾には足元もピカイチなアリソンがいる。最終ラインが深さを作るボール保持をするならば、前線へのパスの供給源になるリバプールの両SBをいっぺんにマークするのは難しい。1つ目のチャンスがSBからの縦パスが起点ならば、2つ目のチャンスはSB→SBの高速サイドチェンジが起点。シティのスライドは間に合わず、フリーになったロバートソンがサラーにアシストを決める。

 シティのプレスが少しほころんだ2チャンスを共に完璧に仕留めたリバプールが早い時間に2点をリードする。2点差がついたところでやっと両チームともボール保持で一息つけるようなテンポになってきた。シティのボール保持はCBが開いてアンカーがその間のスペースを使う。SBは両サイドとも高い位置を取る役割。テンポは落ち着いたが、リバプールは高い位置から追いかけることをやめたわけではない。フィルミーノがアンカー番をするのはおなじみ。サラーとマネがCBにチェックをかける役割。SBにはインサイドハーフがスライドで対応。逆側のインサイドハーフとアンカーでシティの中盤を監視する役割である。

図3

 この試合でいえばヘンダーソンのSBへのチェックはかなり早かった。スライドというよりはボールがそのサイドに寄った時点でもう出て行っちゃうみたいな。シティの最終ラインにラポルトとエデルソンという高速フィードを飛ばせる2枚がいないのも影響しているのかもしれないけども。ブラーボも頑張ってはいたけど、山なりのフィードではリバプールのインサイドハーフがシティのSBを捕まるのを許してしまっている。

 高い位置からのプレスを回避するにはとっとと蹴っ飛ばすのが一番いいのだが、相手のCBはファン・ダイクとロブレン。アグエロとスターリングでロングボールを競り合うには分が悪い。しかし、中央ではロドリもタクトを振るう余裕はなく、SBにも時間的な余裕がないとなれば、分が悪くても蹴っ飛ばすほかない。スターリングが一生懸命競り合いながらマイボールにするという場面がちらほら出てくる。グアルディオラのシティの主な前進手段がスターリングへのロングボールの競り合いになる日が来るとは思わなかったぜ。それでも細かいパス交換から相手の中盤を突破できた時はチャンスを作れていたのはさすが。ラインブレイク後の攻撃はスピーディーでリバプールの最終ラインにラインを揃える時間を与えることはなかった。

 一方でリバプールはシティの4-4-2プレスに対して引き続きSBを起点とした展開で対抗。すでに述べたようにシティのサイドの選手は逆サイドにボールがあるときに中央に絞って対応する。しかし、リバプールのSBは特殊技能者なので、SB→SBの低弾道でのサイドチェンジでシティのスライドを上回る展開が可能。

図4

 外→外に振られながら徐々にラインブレイクされる機会が増えるシティの中盤。思惑とは裏腹に自陣に押し込まれる時間が徐々に増えていく。SB→SBへの展開の速さはこの試合の主導権を握るのに大きな役割を果たしていた。つまりは、SB→SBへの素早い展開が可能なリバプールが先制点後もペースを握ったということである。

 試合は2-0。ホームゲーム優勢でハーフタイムを迎える。

【後半】
速いクロスが決まらない

 システムを変えたのはリードしているリバプール。サラーを頂点に、フィルミーノをトップ下に置く4-2-3-1にシフトした。これにより、リバプールはボール奪取の位置を下げる方向に。というわけでシティは比較的ボールを持てるようになった。

 しかしながら、試合がシティペースで進んでいったかというと微妙なところ。打開はスターリング頼みの側面が強かった。左サイドの攻撃がブロック守備攻略のメインの方法だったが、スターリングとアンジェリーノのコンビネーションはまだ未完成の感じ。4-2-3-1にした分、サイドにヘンダーソンとアレクサンダー=アーノルドをはっきりぶつけてきたリバプール相手に、スターリングが孤軍奮闘する場面が目立っていた。

 リバプールはボール保持の局面でも前半と比べれば、ゆったりと進む場面が見られた。テンションは落としてもピッチを幅広く使う志向は変わらないので、シティのスライドもなかなかハマらず、高い位置での奪回ができない。これもリードしている方の余裕かと思いきや、後半早々にマネのヘッドで3点目をゲット。サイドでトライアングルを旋回させながら、ギュンドアンとアンジェリーノのマーク受け渡しの隙をついたヘンダーソンが見事にファーにクロスを上げた。

 シティがボールを持つが、リバプールがペースを落としつつうまく丸め込んでいるような展開が続く。シティとしてはサイドからのクロスが決まらないのが痛い。緩いクロスは簡単にニアで跳ね返される。かといって山なりのクロスに競り勝てるFWはいない。ということでグラウンダーの速いクロスから決定機を狙うが、わずかなところでタイミングが合わずにシュートまで行けない。

 シティが少しペースを引き戻したのは左サイドにデ・ブライネが流れるようになってから。アンジェリーノ、スターリングと三角形を形成できるようになり選択肢が増える。デ・ブライネが左サイドの助っ人に入ることで、押し込んだリバプールのサイドを徐々に突破できる場面が出てくる。1点を返したシーンのように左で作って、右で仕留める形が後半のシティの主な攻撃パターン。スターリングはこの試合(とそのあとの代表でも)は喧嘩で悪目立ちするシーンはあったものの、奮闘は目立った。

 しかし、反撃もここまで。1点を返したシティをリバプールがいなして、2点のリードをがっちりキープ。3-1で試合を締めた。

あとがき

■「リバプールだからこそ」とそうでない部分

 12試合で勝ち点差は9。今のリバプールの力を考えるとそもそも残りのシーズンで9も勝ち点を落とすかは怪しいところではある。そう考えると非常に重くのしかかる敗戦である。この試合の内容が特別悪かったとは思わない。しかし、ボール保持に特化した部分で勝負したいシティにとって、ラポルトやエデルソンなど数人のキーマンの欠場は痛かった。後方のパススピードが上がらないというところから、一苦手なロングボールでも陣形回復に出なきゃいけなくなるのはハードである。

 非保持では4-4-2ブロックの強度不足が露呈。SB→SBで一気に中盤を超えるというのはリバプールにしかできないかもしれないが、3失点目のような旋回を伴ったサイドの多角形に対してのもろさは今季他のチーム相手にちらほらみられる弱点である。多くのチームに対しては、ブロックがさらされる時間を最小化することで弱点を覆い隠してきたが、リバプールのような全方位型のチームと戦うとなると弱点が白日の下にさらされてしまう感じである。

 悲願であるCL制覇を成し遂げるにはとがった部分を維持しつつ、弱点を露呈させないか克服するかのいずれかは必要だろう。ただ、繰り返しになるけどシティはかなり強かったけどね。負傷者が戻れば、この試合よりも低い位置でのプレス回避の完成度は上がる余地があるはず。エティハドでの再戦は今から楽しみである。

■決定機を約束できるサイドバック

 リバプールは強かった。シティの強烈なプレスでのスタートを受け切り、2回のシュートチャンスから2発。特に前半は圧巻の立ち上がりである。前回のリバプール戦のレビューでも述べた気がするけど、この試合でも改めてリバプールのSBは異常であることを再認識した。「サッカーはサイドにはゴールがない」的な格言はたまに聞くけれども、リバプールのSBはサイドにいながらピンポイントの低弾道クロスという中央をこじ開けるカギを持っているようなもの。確かにサイドにはゴールはないんだけど、今のリバプールにはそれは当てはまらないというか。彼らがサイドにてフリーでボールを持つことで、中央での決定機が約束されているような気さえした。もちろん中央の動き出しも素晴らしいのだけど。

彼らを抑えるには、両サイドを同時に抑えつつ、中央に降りてくるフィルミーノを何とかしないといけないという難解な命題に取り組む必要がある。多くの人を唖然とさせたハイテンポの試合で違いを見せつけたリバプールを止めるチームはどこになるのだろうか。

試合結果
プレミアリーグ 
第12節
リバプール 3-1 マンチェスター・シティ
アンフィールド
【得点者】
LIV: 6′ ファビーニョ, 13′ サラー, 51′ マネ
Man City: 78′ ベルナルト・シウバ
主審: マイケル・オリバー

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