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「外のジャブで中央に自由を」~2019.10.27 プレミアリーグ 第10節 リバプール×トッテナム レビュー

スタメンはこちら。

画像1

目次

【前半】
狙いはソンフンミン

 CL決勝のリマッチ!リーグで負けてないリバプールとあっさり負けるとそろそろやばいトッテナムの一戦である。前節、連勝が止まったとはいえチーム状況で言えばリバプールが優位。劣勢を強いられるであろうトッテナムは、ジリジリ立ち上がるのか?と思ったら、全然違いました。開始早々、電光石火のトッテナムのゴールシーンは、まずはドリブルでファビーニョとワイナルドゥムを引きちぎったシソコが優秀。ソンフンミンの得意な位置からのカットインを演出した。もちろん、待ち構えていたケインやボール奪取したウィンクスも優秀。シュートがリフレクションしてポストに跳ね返ったところは運もあったが、トッテナムの選手のいいところが層状に重なったゴールだった。

 面食らった形のリバプールだが、そこまで浮足立った様子は見られず、いつも通り粛々と試合を進めているように見えた。いつもと違う部分があるとすれば、SBからの配球が目立ったこと。確かにそもそもリバプールはSB起点の組み立てが多いチームだが、この日のリバプールはいつも以上にSBからの配球の比重が高かった気がする。逆に少なかったのは中央からの前進。フィルミーノが降りてくる動きをトリガーとした中央のオーバーロードはいつもより控えめだった。

 ただ、噛み合わせで考えれば互いに4-5-1でばっちり。順当にいけばリバプールのSBにはトッテナムのSHが監視役として立ちはだかることになる。というわけでリバプールとしては、いかにSHをSBから引きはがすかがビルドアップの下ごしらえとなる。

 リバプールの右サイドを例にとってみる。リバプールとしてはアレクサンダー=アーノルドをソンからフリーにしたい。リバプールのインサイドハーフが縦横無尽に動くのはいつも通り。トッテナムは中盤の3枚がそれにお付き合いする形で動き回る。リバプールのインサイドハーフがハーフスペースに抜けていく動きは根性でついていくことで解決する形。

図4

 トッテナムに悩ましいのは裏に抜ける動きよりも引いてくる動き。インサイドハーフがアンカーを並ぶ高さでサイドに落ちることでソンに判断を強いる。

図5

 もう1つパターンとして見られたのはサラーが大外に張りながら低い位置に降りる形。こちらもソンの基準点を乱す動きで、アレクサンダー=アーノルドからソンを引き離すように誘導する。

図6

 どちらも降りてくるリバプールの選手に対して、中盤や最終ラインから人が出てくるには少しリスキー。ということで、ソンがそちらのマークに行くことも多く、フリーになる機会はたびたび得ることができたアレクサンダー=アーノルド。この位置から中央にクロス狙い撃ちという作戦が今日のリバプールの激推しパターン。特にトッテナムのDFラインの対応がめちゃめちゃ悪いとか、リバプールが高さで支配的!というわけじゃないんだけど、クロス1つで割と惜しい形まで持って行けるのは、ひとえにSBの球筋と狙いどころが素晴らしいからに他ならないだろう。トッテナムとしては苦しい体勢で跳ね返すシーンも多く、クリアのセカンドボールを狙ってリバプールの中盤が前進。相手陣に押し込む形で二次攻撃を開始するパターンもあった。

 というわけでトッテナムのボール保持の時間はそんなに多くはなかった。ボール保持の局面になると、トッテナムは今季頑張ってトライしている自陣深い位置からのビルドアップを行う。ただ、GKがガッサニーガになっても、自陣深い位置からのショートパス主体の前進はなかなかスムーズにいかず。なんならむしろこのショートパスは囮で、リバプールが前に出てこさせるためかもしれないなとも思った。苦し紛れに蹴った風の長いボールは、単発ではあるもののリバプールのバックスは手を焼いていたようだった。エリクセンも前がかりになるリバプールの中盤の後方で、起点になることができていた。

 しかしながら、リバプールを押し込む状況はなかなか作れず。むしろ中盤で簡単にファウルを犯してしまい、ここでもアレクサンダー=アーノルドに冷や汗をかかされる展開になった。

 先手を取ったものの、徐々に苦しめられたトッテナム。なんとかリードを保ちつつ前半は終了。1-0でハーフタイムを迎える。

【後半】
自由を得たファビーニョが支配力を発揮

 トッテナムはリバプールのSBにはSHがついていくことをもう一度徹底。サイドに流れる相手のインサイドハーフにもマンマークでついていくことで対応する形になった。ライン設定としてはPA前という比較的低い位置で迎え撃つことを選択したトッテナム。

 すぐさま対応するリバプールもなかなか。まずはジャブ代わりにアレクサンダー=アーノルド→ロバートソンのサイドチェンジで危険なクロスをエリアに送り込む。サイドに流れるリバプールのインサイドハーフにトッテナムのインサイドハーフがついていくということは、比較的ファビーニョへのプレッシャーが弱まることを意味する。中央を任されたウィンクスからしたら、ファビーニョ相手に出ていくリスクは大きい。出ていかないリスクも大きいんだけどね。

図3

 そのファビーニョからの展開で追いついたのが52分のこと。前半は味方をフリーにするために縦横無尽に動いていたヘンダーソンが、今度は使われる側として、ファビーニョからの浮き球を受けてゴール。大外でフリーになるヘンダーソンの位置をばっちり確認して、ローズに競りかけるようにボールを要求するフィルミーノは凄腕。助演男優賞である。

図2

 実はこのシーンの直前、フィルミーノからフリーのアレクサンダー=アーノルドにパスが渡り、サイドからフリーでクロスを上げられるシーンがあった。それもあってかこのシーンではソンは最終ラインのフォローではなく、アレクサンダー=アーノルドを離さないことを選択。その直前のアレクサンダー=アーノルドがクロスを上げたシーンが、トッテナム相手にフリとして効いた格好になったのではないだろうか。

 自由を得たファビーニョ。そしてSB→SBの高速サイドチェンジに対するスライドが間に合わず、徐々に危険な形で受けることが増えるトッテナム。中央に君臨するファビーニョに好きな選択肢を選ばれまくる展開になっていく。

 トッテナムはウィンクス→エンドンベレの交代以降、ケインが重心を下げてファビーニョを監視する。エンドンベレの投入は重心が下がる中での推進力を担保するということだろう。とりあえずファビーニョを封じられたため、再びSBを軸にしたクロス攻撃を開始。めちゃめちゃリターンが大きいわけではないものの、リスクが少ない状態で決定機一歩手前の状況をコンスタントに作り出せる両SBはエグい。アレクサンダー=アーノルドは左足で相手のラインを下げる方向に巻く浮き球を送るパターンも出てくるようになり、リバプールの前線は斜め方向のフリーランでトッテナムのDF陣を押し下げる。最終ラインをそろえるのが苦手なトッテナムの最終ラインの難点をうまくついていた。

 そうした中で発生したPK。オーリエがマネを倒してPKが与えられる。オーリエからすれば、急に死角からマネが飛び出してきた形。蹴る前にマネに素早く体を入れられてガッツリ蹴飛ばしてしまった。かなり事故っぽいけど、確かにどう見てもPKである。

 サラーがPKを沈め逆転したリバプール。トッテナムは前に出なくてはいけない。というわけで多少アバウトでも縦パスを強気で通すチャレンジを始めるトッテナム。サラーの負傷に伴い、ゴメスを投入したリバプールが逃げ切り体制に入ったこともあり、ボールを持てる時間は増えてきた。ローズがカットインのドリブルしたり、パス交換で中に入ってくる動きを織り交ぜたりなど頑張っていた。リバプールのSBと比べるとスマートじゃないけど、スマートじゃないなりに工夫を見せるのは大事だ。

 エリアの外からシュートを打つチャンスや、セットプレーの好機はあったトッテナムだったが、決定的なシーンは作ることができず。試合はそのまま終了。2-1でホームのリバプールが勝ち点3を積み重ねた。

あとがき

■「リバプールに通用しなかった」をどう判断?

 試合開始直後の先制点は幸運もあったものの、トッテナムの選手のいいところが積み重なったゴールであると紹介した。しかし、なかなかそれ以降、特に攻撃面ではいいところが見られなかった。ガッサニーガから発動したソンフンミンのワンマン速攻くらいである。先制点を開始早々食らってもケロッとしていたリバプールが図太すぎる。

 非保持ではソンのところから狂わされたところがあるトッテナム。中盤CHの献身的な頑張りはシティとの対戦から変わらず高い貢献度だったけど、試合を通じてリバプールの動かし方には屈した印象。

 是が非でも結果が欲しかったタイミングでのリバプールでの対戦となったが、結果を得ることはできず。ただ、リバプール相手にあらわになる難点はほかの対戦相手でも表に出てくるかはわからない。前線の選手のコンディションは少し良くなっているようにも見えたが、チーム全体として内容が向上しているかどうかは、もう少し観察が必要そうだ。

■内と外のトリプル起点で相手を広げる

 先制したものの動じなかったリバプール。それどころか、SBからジャブのようなクロスを打ち込みつつ、トッテナムの中盤を動かしながら相手の穴を見逃さない。中央ではファビーニョ、サイドにはロバートソンとアレクサンダー=アーノルドが中長距離のパスでガンガン相手の穴をついていくのはエグい。チーム全体としては、ファビーニョが自由を得た時間帯はかなり支配力が高かったが、なんでもないところからチャンスを作り出すアレクサンダー=アーノルドの存在感も異常。ほっといたら決定的な仕事をする選手が両サイドにいるというのは何事だろう。

 リバプールと対戦する相手は低い位置で内と外の両方の起点を抑えなきゃいけない。インサイドハーフは動き回るし、前線は言わずもがな。仮に中盤を封じたとて、普通にCBも上手に蹴れるというどこからでもなんとかなる状態のチームである。強いて言えばクリーンシートがやや少ない気もするが、攻撃力で十分多い隠される程度の難点。一体どういったチームがリバプールを止めるのか、それとも止まらないのか。とても興味深いところである。

試合結果
プレミアリーグ 
第10節
リバプール 2-1 トッテナム
アンフィールド
【得点者】
LIV: 52′ ヘンダーソン 75′ サラー(PK)
TOT: 1′ ケイン
主審: アンソニー・テイラー

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