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「リズムに合わせる?リズムを壊す?」~2019.7.27 J1 第20節 川崎フロンターレ×大分トリニータ プレビュー

全文無料で読めます。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第20節
川崎フロンターレ(3位/勝ち点35/9勝8分1敗/得点28 失点11)
×
大分トリニータ(5位/勝ち点32/9勝5分5敗/得点23 失点16)
@等々力陸上競技場
順位は第19節終了時点

戦績

近年の対戦成績

直近10回の対戦で川崎の5勝、大分が2勝、引き分けが3つ

川崎ホームでの戦績

直近10試合の対戦で川崎が6勝、引きわけが4つ。

Head-to-Head

Head-to-Head①
【公式戦での対戦成績】
・公式戦における両チームの対戦は過去29戦で川崎が12勝、大分が11勝、ドローは6つ。
・大分は直近8試合の川崎戦で2ゴールのみ。

 対戦成績は拮抗。11勝11敗で迎えた今年の一度目の対戦は川崎が勝利し、貯金を1つ作った。近年の対戦成績は川崎が優勢。直近8回の対戦で大分を6回無失点に抑えている。

Head-to-Head②
【牙城復活の足掛かり?】
・直近8回の対戦において、アウェイチームは5回無得点に終わっている。
・直近13試合のこの対戦においてホームチームが敗れたのは2度だけ(W7D4)

 今の川崎が苦しめられているのはホームでの戦績ということに疑いの余地はない。10試合でわずかに2勝とブレーキとなっている。しかし、このカードはホームチームに有利な戦績となっている。特に顕著なのは川崎ホームでの大分の戦績。直近13試合で2回のホームチームが敗れたケースはいずれも大分ホームで川崎が勝利を挙げたパターン。大分は長らく川崎ホームでの勝利から遠ざかっている。

Head-to-Head③
【川崎ホームでの対戦成績】
・川崎ホームでの試合では、過去15戦で川崎が8勝、大分が3勝、ドローが4つ。
・直近10試合の川崎ホームでの対戦で大分は勝利なし(D4L6)
・川崎ホームの大分戦で川崎は無得点で終わったことは過去に一度もない。

 というわけで苦手なホームだけどデータ的には何とかなるかもしれない川崎。大分が最後に川崎の地で勝利を挙げたのは01年8月のJ2時代。J2時代も含めて、いずれの試合も川崎が得点を記録しているというデータも残っている。ホームで得点が伸びない川崎だがこの試合はどうか。

Head-to-Head④
【懸念は夜にあり】
・ナイトゲームはこのカードで過去6回実現しているが、直近5回は川崎に勝利がない(D2L3)

 Head-to-Headにて今回取り上げたデータの中で唯一の川崎に不利なデータ。ナイトゲーム(18時以降のキックオフ)において言えば、大分の方が有利というのが過去の傾向だ。唯一の勝利は20年前。99年アウェイの大分で挙げたものが最後となっている。

【川崎フロンターレ】

選手情報

・馬渡和彰はチェルシー戦で復帰。
・車屋紳太郎、安藤駿介はチェルシー戦を欠場し、別メニュー調整。
・藤嶋栄介、奈良竜樹は長期離脱中。
・大島僚太の出場は不透明。

Match Facts

川崎のMatch Facts①
【堅調な出来】
・公式戦16試合無敗、リーグ戦14連続無敗。
・公式戦3試合連続クリーンシート。

 3月にG大阪相手に敗れた試合から続いている無敗記録は続いている。「なんだかんだリーグでは4カ月負けていないのだ」と胸を張ったり「とはいえ引き分けばかりだけどな・・・」とぼやいてみたり、サポーターの気持ちは揺れ動く乙女のようになっているかもしれない。

 引き分けがリーグ最多とはいえ、負けない川崎を支えているのは失点の少なさ。中でも直近の公式戦3試合は連続でクリーンシートを達成中。この試合でも無失点の場合は、鬼木政権下では17年5月以来の2回目となる4試合連続のクリーンシートになる。

川崎のMatch Facts②
【伸びない勝ち点の理由】
・ホームでのリーグ戦は4試合連続勝ちなし。
・今季、先制を許した試合は7試合でいずれも勝利がない。

 繰り返しになるが負けていないにも関わらず、順位表の一番上にいないのは引き分けが多いからに他ならない。ホームでこれだけ勝利を逃しているのはおよそ8年ぶりのこと。2011年に記録した7試合連続未勝利以来である。

 そしてもう1つは先制された試合をひっくり返せないこと。昨季は先制された20試合のうち6試合は逆転勝利を挙げているが、今季はここまで7試合で勝ちはなし。FC東京が先制された4割の試合で逆転勝ちを収めていることと比べても物足りなさは否めない。先制されないのが一番だけど、先制されても強くあってほしい。コントロールされた勝利を好む私でさえ、盛り上がる等々力劇場を久しぶりに見てみたい気持ちがあるのだ。

川崎のMatch Facts③
【苦しむホームゲーム】
・10試合終了時でのホームでの勝ち点は13で昨季を下回ることが確定。
・今季のリーグ戦28ゴールのうち、ホームでは10ゴールのみ。
・昇格組とのリーグ戦は11試合負けなし(W9D2)

 勝ち点が伸びない要因の一つとして挙げたホームゲームでの成績についてもう少し深堀り。なんと、鳥栖戦の引き分けをもってホームでの勝ち点が昨季を下回ることが確定したという悲しいお知らせでございます。昨季はホームで35の勝ち点を獲得しているが、今季は10試合で勝ち点13(W2D7L1)。残り7試合全勝でも34までしかいかない計算でございます。切ないね。
 
 特に伸び悩んでいるのは得点。今季川崎のリーグでの複数得点者は5人(小林、ダミアン、知念、阿部、脇坂)いるが、いずれもホームよりアウェイの方が多く得点をしているというのは悲しさがあるものだ。
 
 悲しい話ばかりで切なくなったので最後に少しは明るくなる話を。昇格組には強さを見せているというもの。11試合負けなしとあるが、最後に負けたのが17年のアウェイのC大阪戦である。特にホームゲームに限れば13年の湘南戦が最後の敗戦であり15試合負けなしである。どうでしょう。少しは明るくなったでしょうか。

川崎のMatch Facts④
【驚異の夏男】
・下田北斗は川崎加入後先発したリーグ戦では無敗。6戦5勝1分。
・小林悠は7月のリーグ戦直近14試合の出場で17ゴールに絡んでいる(14G3A)

 それでもまだ明るくならないあなたに追加情報。前節のクラシコで活躍を見せた下田は加入後の先発したリーグ戦では無敗。しかも、先発したホームゲーム3試合では全勝であるというのは勇気づけられる。少ない出場の中で1ゴール3アシストという目に見える結果を残しているのもポイントが高い。

 そしてもう1人、驚異の夏男が小林悠である。なんと直近4年間、14試合の7月の試合では17ゴールに絡む活躍。それも今年の鳥栖戦と17年の磐田戦以外の12試合ではすべて得点をあげるというコンスタントぶりである。夏男とか言われていたけど、ここまでとは思わなかったぜ。

【大分トリニータ】

選手情報

・岩田智輝は前節欠場。
・田中達也にデビューの可能性。

Match Facts

大分のMatch Facts①
【苦手な王者の敵地】
・公式戦のアウェイゲームは4試合勝ちなし。
・前年J1王者との対戦は10試合未勝利。

 前回大分と対戦した時のプレビューでは外弁慶対決という紹介の仕方をさせてもらったのだが、あれから時は流れていつの間にかアウェイでは停滞気味の大分。直近4試合の公式戦のアウェイゲームは1分3敗。リーグのアウェイゲーム序盤6試合を4勝2分で駆け抜けたころと比べると、やや寂しさは否めない。

 苦手な前年王者との闘いという厄介要素も乗っかってしまうが、大分はアウェイで久々の勝利を挙げられるだろうか。

大分のMatch Facts②
【特徴をスタッツから読み取る】
・リーグで最もシュートが少ないチーム。
・セットプレーからの得点がJ1で唯一ないチーム。

 今季は大健闘をしている大分。スタッツは非常に特殊なので結構眺めていると面白い。まず、リーグで最もシュートが少ないチームである。しかし、シュート決定率がリーグトップ。限られたチャンスを得点に結びつける力が高い。

 そういうチームはえてしてセットプレーが強かったりするのだが、大分はなんと今季はセットプレーからはノーゴール。固く守ってズドンと一発というチームではない。しかし、セットプレーが弱いのか!というとそういうわけでもない。PK1つを除けば、セットプレーからの失点は1つだけと非常に少ない。セットプレーからの得点も失点も少ないチーム。それが大分である。

大分のMatch Facts③
【強さの理由?】
・今季先制した試合では敗れていない(W9D2)
・試合終盤15分での失点が最も少ないチーム。

 決定力以外に彼らの強みを考えると試合運びのうまさが挙げられる。先制した試合に対しての強さ、そして試合終盤の失点の少なさは際立つ。試合終盤15分での失点はわずかに3つ。これは自陣を固める以外にも、ボールを保持することで自らのゴールを守るという方策が使えるからだろう。今季逆転勝利のない川崎にとっては先制されるといばらの道が待っていることになる。さっきは逆転勝ちが見たい!とかドラマチックに勝ちたい!とか言ったけど、普通に先制してほしい。

大分のMatch Facts④
【好不調対照的な両ストライカー】
・オナイウ阿道は直近5試合のリーグ戦で5ゴール。
・藤本憲明は直近のリーグ戦13試合で2ゴール。

 前回対戦時には藤本憲明がノリにのっていたが、今ノッていうのはオナイウ阿道である。5試合で5ゴールはJ1においてはキャリアハイのペース。J2で昨季開花した才能はJ1でも躍動を見せつつある。

 それに対して藤本は直近のリーグ戦ではややしぼみ気味。開幕6試合で6ゴールのスタートダッシュは落ち着き、札幌戦ではスタメンを外れた。横浜FM戦で2トップがそこまでハマらなかったこと、5-4-1にするとオナイウをトップではなくゴールから遠いサイドで起用さぜるを得ないことなど、様々な事情が折り重なってのものだろう。しかし、前回のプレビューでも紹介したように、藤本は今季、数多くの先制点を挙げている。8ゴール中6ゴールが先制点において記録されたもの。今のところ大分にとっての「負け回避確定」である、先制点を生み出す職人技は等々力で飛び出すだろうか。

予想スタメン

展望

■大分のリズムをどう崩すか

 はっきり言って嫌なタイミングで嫌な相手と当たる、というのが今回の大分戦についての率直な感想である。多摩川クラシコで首位相手に完勝、力試しのチェルシー相手にも勝利をつかみ、チームの士気は今季でもトップクラスに。特に多摩川クラシコでの出来は今季随一で、前からのプレスでFC東京を自陣に張り付けさせたのは、今季はもやもやした内容が多かった川崎サポにとって痛快だっただろう。

 しかし、FC東京相手の強気な走り切りプレッシングはどこの相手でも通用するわけではない。その典型的な相手が今回の対戦相手の大分である。

 FC東京が川崎相手にできなかった、自陣深い位置まで幅を使ったビルドアップは彼らの得意技。川崎のプレス隊が前に出てきて空けたスペースは格好の攻略のもとになる。上のレビューでも触れたように、サイドに素早くボールを届けられるGKの高木を軸に、低い位置でのビルドアップはお手の物。相手の選手が近くまで詰めていようが慌てることはない。

 その特殊なスタイルはスタッツにも表れている。Match Factsでも紹介したように彼らのシュート回数はリーグ最下位。それに加えて特徴的なのは攻撃回数がリーグで最も少ない上に、被攻撃回数が最も少ないこと。

【攻撃回数の定義】
ある特定の状況において例外はあるものの、ボールを保持してから相手チームに渡る、もしくはファウルやボールアウトで試合が止まるまでの間を1回の攻撃とする
『Football Lab』より引用

 つまり、大分の試合は攻守の切り替えがリーグで最も少ないということである。川崎がクラシコで制したのはまさしくトランジッションの部分だ。クラシコの勢いをそのままに勢いよくプレスに出ると、大分が仕掛けた「少ないトランジッションゲームの沼」にはまり、空回りさせられる可能性は高い。無理にボールを前に進めずに相手の空いたところを利用し、無理にボールを取りにいかずにスペースを埋めつつ相手のミスを誘う。この大分のリズムをどのように崩すかが、川崎にとってのこの試合の最も重要なポイントに思える。

■作戦1は我慢比べ

 自分が思い付いた方策は2つ。1つは我慢比べを大分にも強いることだ。大分の自陣深い位置までを使ったポゼッションの狙いは、相手が出てきた中盤の後方に広いスペースを作り、FWが相手と勝負できる陣地を作ること。基本は空いたところを使うのが大分のスタンスだが、前が空くのならばそこを使うというのはごく自然な流れだろう。

 なので、DFとGKへのプレスは放棄。川崎のFW陣は中盤へのパスコースを切るように立つことを優先し、強引にボールを入れてきたら中盤とサンドしてショートカウンターを狙う。とにかくFWからDFまでの距離をコンパクトにして、大分のFWが引いて受けるスペースを消す。裏への抜け出しはCB2人が完勝する前提が必要になるが、1対1への強さを見せるDF陣と多摩川クラシコで見せた中盤の出足の良さを生かした作戦である。

 この作戦でキーになりそうなのが大分のWBへの対応。中央のスペースを川崎が消したことを前提とすると、大分は活路をサイドに見出すはず。WBがボールを持った時に対面するSHがドリブルのコースを消すだけでなく、ボールサイドのFWとCHが内側へのパスを切りつつ、やり直しをさせることが肝要である。川崎としては前半戦に活躍した松本怜に加えて、新加入の田中達也にも警戒が必要だ。

 おそらくこの展開を選ぶなら川崎のボールポゼッションの時間は少なくなるはず。両チームとも我慢比べの展開に持ち込みながら、無理に中にパスを入れようとしてきたところをショートカウンターで仕留めるのが俺的プランその1である。

■作戦2はハイテンションで

 1つ目の作戦が相手のテンポに付き合う前提のものならば、もう1つの作戦はそこの前提を壊してしまおう!というもの。すなわち、ハイテンポなサッカーを大分にも強いましょうということである。FWからDFまでコンパクトな陣形を維持しようというのは先ほどの作戦と同じ。しかし、こっちの作戦はより敵陣でボールを持つ時間を増やしながら波状攻撃を仕掛けていくというもの。先ほどの作戦が間を閉じることによって陣形のコンパクトさを維持するというコンセプトなのに対して、こちらは前に押し上げることによって陣形をコンパクトに保つというもの。簡単にいえばずっと俺のターン!っていうことである。

 こちらの作戦は大分からボールを取り上げることがメインになる。ボール奪取からの波状攻撃である。そもそも相手の陣地に多くの選手を送り込んでしまえば、自陣側に深さなんて作れませんよね?みたいな。

 注意したいのはこの作戦はあまり成功したチームがいないこと。そもそも大分からボールを取り上げられたチームは少ないし、成功したとしても勝利をしたチームは少ない。18節の横浜FMくらいだろうか。前回の川崎との対戦はボール保持率がほぼ五分五分。勝てたのはこの2チームくらいで札幌、名古屋、それと一度目の横浜FMは6割近いボール保持率を記録しながら、大分相手に勝利できていない。大分相手にワンサイドで攻め立てて勝利を奪うのは2段階で難しいミッションだといえる。

 ただ、鬼木監督はどちらかというと2つ目のハイテンポで押し込み作戦を狙うのではないだろうか。捨て身で挑んだクラシコの火を消さないためにも、久しぶりのホームの勝利をつかむためにチームを前向きにするためにも、難しいミッションに挑むのではないかと予想。

 いずれのプランを選んだとしても、重要なのは以下の3点。

・川崎が非保持においてFW-DFまで縦のコンパクトさを保てているか。
・大分のFWに呼吸をするスペースを与えていないか
・川崎はどの位置で大分からのボール奪還を狙っているか。

   この3点に注目すると、試合がどちらの制御下にあるか、よりわかりやすいものになるのではないか。

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)

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