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「『これなら』から『どこでも』へ」~2019.5.26 J1 第13節 大分トリニータ×川崎フロンターレ プレビュー

全文無料で読めます。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第13節
大分トリニータ(3位/勝ち点24/7勝3分2敗/得点15 失点7)
×
川崎フロンターレ(4位/勝ち点23/6勝5分1敗/得点19 失点8)
@昭和電工ドーム大分

戦績

近年の対戦成績

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直近9回の対戦で大分が2勝、川崎が4勝、引き分けが3つ

大分ホームでの戦績

画像2

直近10試合の対戦で大分が6勝、川崎が2勝、引きわけが2つ。

Head-to-Head

Head-to-Head①
【公式戦での対戦成績】
・公式戦における両チームの対戦は過去28戦で大分が11勝、川崎が11勝、ドローは6つ。
・直近8試合の対戦で大分の勝利は一度だけ(D3L4)

 久しぶりの対戦になった両チームだが、過去の対戦は全くの互角。この試合で勝った方が通算の対戦成績を上回ることになる。しかし、近年は川崎が優勢。なんとか盛り返して、通算成績をタイにした格好だ。

Head-to-Head②
【内弁慶対決・・・?】
・直近12試合のこの対戦においてホームゲームが敗れたのは一度だけ(W7D4)
・直近7回の対戦において、アウェイのチームが得点できたのは2回だけ。

 過去のこのカードの対戦成績を紐解くと、ホームゲームが圧倒的に有利。前回対戦となった13年11月においては大分ホームで川崎が勝利をしているが、それ以外の直近12試合はいずれもホームチームが勝利。直近7回に関してはアウェイチームが得点を記録したのは2試合だけでいずれも1得点どまり。極度の内弁慶対決である。
 しかし、今季の成績を見てみると、大分も川崎もホームよりもアウェイでの勝ち点の方が多くなっている。内弁慶じゃないのかよ・・・。

Head-to-Head③
【大分ホームでの対戦成績】
・大分ホームでの試合に限れば過去13戦で大分が8勝、川崎が3勝、ドローが2つ。
・直近5試合の大分ホームでの対戦で川崎が勝利したのは1回だけ(D2L2)
・過去に日曜に行われたこのカードでのリーグ戦はすべて大分開催。3試合とも大分の勝利。

 しかしながら大分のホームは川崎にとっては大の苦手。とりわけ当時のファン(僕は違いました)に色濃く残っているのは09年のV逸の原因になった敗戦だろう。直近5回の遠征で勝利したのは前回のみ。そもそも過去4回で得点ができたのも前回のみという乱打戦が多い川崎にしては珍しいスタッツ。過去に3試合あった日曜日での大分ホームでの対戦では、そもそも川崎は得点を挙げたことがないという嫌なデータもさらに上乗せ!

【大分トリニータ】

選手情報

・伊佐耕平、前田凌佑は欠場。ポープ・ウィリアムは契約条項で出場不可。
・三平和司はルヴァンカップで負傷交代。起用は不透明。

Match Facts

大分のMatch Facts①
【快調な2019シーズン】
・リーグ戦は7試合連続無敗。
・12節終了時点での勝ち点23はJ1でのクラブハイ。

 サンスポ様、がっつりデータ使わせていただきます。まんま載せているところもあるので、リンクも張らせていただきます。

【J試合情報】大分トリニータvs川崎フロンターレ 5月26日 ・大分は川崎戦直近7試合でわずか1勝(3分3敗)。この1勝は、2009年11月の対戦で挙げたもの(1−0)。www.sanspo.com

 リーグ戦の7試合無敗は09年12月以来。12節終了時点でのクラブハイの勝ち点を稼いでいる大分は絶好調だ。過去の12節終了時の勝ち点を見てみると大体10代後半が多かった。降格した2季はそれぞれ4と6という圧倒的な少なさ。03年を除けば、残留したシーズンはそもそも序盤から降格圏にいる機会が少ないのかもしれない。ちなみにこの時期に失点数が1桁なのもクラブ史上初である。

大分のMatch Facts②
【得失点の特徴】
・今季リーグで唯一の複数失点がないチーム。
・後半開始時から15分間での得点がリーグ最多。総得点の53%。

 こちらもサンスポで取り上げられていたスタッツ。サンスポの記事を見ていない人のために捕捉すると、複数失点は川崎も1試合のみ(横浜FM戦)で少ない。そして大分が得点を挙げている後半開始から15分は川崎が未だ失点がない時間帯であるというデータも併記されていた。
 
 サンスポを転記するだけしか能がないのか!と言われしまいそうなので、ちゃんと調べたのも載せます。面白かったのは大分の失点時間帯。彼らが最も失点が少ない時間帯は75-90分。カップ戦で1回失点したのみで、リーグ戦ではこの時間帯には失点を喫していない。この時間帯はリーグ全体でみると24%の得点が生まれている最も得点が多い。リーグ全体の傾向としては当たり前だろう。その時間帯で失点が少なく、なおかつ勝利数が多いというのは、ゲームクローズがかなりうまいのだろう。

大分のMatch Facts③
【VS前年度J1王者】
・前年J1王者との対戦は9試合未勝利。

 そんな中でネガティブなデータである。前年度王者には分が悪いというデータ。ホームにおいては過去9回で一度も勝利をしていない(D3L6)。対する川崎は昇格組が大得意。直近10戦は負けなしで敵地での5試合でも4勝を挙げているのだ。

大分のMatch Facts④
【先制点マイスター】
・藤本憲明は今季リーグ戦で決めた7ゴールのうち、5ゴールが先制点。リーグ最多。

 今季の大分といえば何といっても藤本だろう。代表待望論が出るほど目下絶好調のストライカーは得点ランキングトップタイ。その藤本に特に多いのは先制点。試合の流れを作る大事な先制点が5つ。同じ7得点で得点ランク首位に並ぶディエゴ・オリベイラ(2点)とアンデルソン・ロペス(1点)に比べてもとても多い。ちなみに残りの2得点は先制点を決めた試合での2得点目。つまり先制点を取っていない試合では得点自体も記録していないことになる。先制点マイスターじゃん。

 もう1つ。シュート決定率25%という数字も得点ランキングトップの3人の中で最高。28本のシュートで7得点を生み出している。得点ランキング上位の選手の中ではマルコス・ジュニオール(27.2%)についで優秀な数字であり、少ないシュートチャンスを確実にゴールに結びつけるハンターぶりが如実に表れている。

【川崎フロンターレ】

選手情報

・家長昭博、小林悠が全体練習に復帰。
・宮代大聖はU-20W杯に帯同中。

Match Facts

川崎のMatch Facts①
【復調気味のリーグ戦】
・リーグ戦8試合連続無敗。

 この間、複数失点はない。リーグ戦では安定した戦いが戻ってきつつあるといえるだろう。

川崎のMatch Facts②
【この試合のシチュエーション】
・日曜日開催のリーグでのアウェイゲームは直近14試合負けなし。
・ACLでのアウェイゲーム直後のリーグ戦は直近6試合負けなし(W4D2)。

 日曜アウェイの戦績も相変わらず好調。17年6月の横浜FM戦以来負けなし。意外なのはACL遠征後の成績も好調ということ。ちなみに1stレグでアウェイゲームを戦った直後に2ndレグが行われた17年のムアントン・ユナイテッド戦はノーカウント。ACL遠征そのものの成績は聞いちゃいけないです。調べるのも禁止でお願します。

「突破はならなかったとはいえ、久しぶりにACLアウェイで勝ったから気分がいい!」と浮かれている川崎サポがいたら要注意。過去7回あるACLアウェイでの勝利の直後に勝利をしたのはわずかに一度だけ。直近4戦はすべて負け。ACLとリーグ、どっちかしか勝てない事案なんですかね・・・・。

川崎のMatch Facts③
【懸念点】
・今季トップハーフと戦った5試合で勝利したのは一度だけ。
・今季、先制を許した試合は6試合でいずれも勝利がない。

 リーグ戦では復調気味の川崎の懸念点がこの2つ。トップハーフで勝利したのは9位の湘南相手だけ。ほかの5勝はすべてボトムハーフから挙げている。8位より上の相手には勝っていない。しかし、負けてもいない。8位以上との4試合はすべてドローで終わっている。どうなんだそれは。笑
 ちなみに大分はトップハーフとの5試合の対戦で4勝。ボトムハーフよりトップハーフとの対戦が得意な「上位食い」だ。

 もう1つは逆転勝利がないこと。そもそも逆転は難しい事案なのだが、昨季は20回先制を許した試合で6回逆転していることを考えると、そろそろここでの勝負強さは欲しいところだろう。

川崎のMatch Facts④
【アシストの人、ゴールの人】
・長谷川竜也はアシスト数が3でチーム最多。
・レアンドロ・ダミアンはリーグ戦95分の出場につき1得点を挙げている計算で、4得点以上決めている選手の中で最も得点にかかるプレータイムが少ない。

 長谷川竜也は2017年と2018年の36試合のリーグ戦出場で記録したアシストは3つ。つまり今季のリーグ8試合でその前の2年間と同じ数のアシストを記録したことになる。サイドからのチャンスメイクも徐々に板についてきたようだ。

 アシストが長谷川ならば、ゴールはダミアン。先ほど藤本の項で紹介したゴール決定率はダミアンも藤本と同じく25%。ゴール数では劣っているものの、コンスタントさではダミアンも負けていない。

予想スタメン

画像3

展望

他のポゼッションチームに対する強み

 快進撃を続ける大分。上でスタッツをつらつら並べるまでもなく、今季J1を見ている人ならば、大分のサッカーが質も高く、結果も伴っていることは周知の事実なはず。と偉そうに言ってみたものの、なかなかしっかり見る機会は個人的には少なかった。というわけで清水戦を見てみた。ビルドアップは3CBと2CHの3-2型で行うのがメインか。

 特に右のユニットは強力。高い位置を取る岩田智輝(代表おめでとう!)と松本怜で相手を自陣に押し下げてボールを前進させる。清水戦は大外の松本からの展開はFWの裏へのボールが主で、中盤との細かいパスのコンビネーションは比較的少なかった。北川が大分の中盤を比較的低い位置で下がってマークしていた影響もある可能性がある。相手を敵陣に釘付けにしたときは岩田のハーフスペースの裏抜けも要警戒。

画像4

 この試合では左サイドのビルドアップは右サイドほどの安定感はなかった。ユース出身の高畑奎汰は今季からトップチームに昇格。ルヴァンカップでの出場機会を経て、10節目の鳥栖戦からスタメンデビューを飾っているが、この日は不安定な出来だった。ただ、先制点を与えたシーンは彼のエラーでもあるが、そもそも彼にボールが渡る前のパスも不用意。この日の左サイドはどこかぎこちない感じがした。三竿雄斗が入ってからはだいぶスムーズになったけど。

 それ以外にもこの日の最終ラインのボール回しはどこかスローリー。もっともこの清水戦後のコメントで「お見せするに値しないゲーム」とか「このままだとJ2に落ちる」とか片野坂監督が述べていたので、本来の出来とは程遠いものだったかもしれない。

 というわけで川崎のプレスに対する耐性は未知数。ただ、ほかのポゼッションチームと異なるのはGKの高木駿の存在。後方から飛び出すフィードの正確性はリーグでもおそらくトップクラス。ほかのボール保持重視型のチームに比べてもGKのキックの多彩さは秀でているし、ボールの落ち着かせどころとしての存在感もワンランク上だ。C大阪戦のように噛み合わないフォーメーションをベースに、配置でボール保持を支配してくる相手に対する撤退守備はもともと苦手な川崎。逆に川崎をハイプレスにおびき出せれば、むしろお得意の擬似カウンターの格好のトリガーになるかもしれない。

少ない決定機をハンターで仕留める

 もう1つ、述べておきたいのは藤本憲明。彼の決定力の高さは一級品。組み立てへの関与は控えめなワンタッチゴーラー系の職人という印象を持った。実は大分はここまでのリーグでのシュート数は17位。彼らよりシュートが少ないのは、ゴールが極端に少なかったサガン鳥栖だけである。その代わりに際立つのがチームでのシュート決定率。大分の数字は18.52%。次点のFC東京が15.93%で、得点数トップ3の名古屋、川崎、鹿島はいずれも15%にも満たないといえば、この数字が際立つだろうか。

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 相手を自陣に引き込みつつ焦らす。機会自体は少なくとも、相手が前に出てきたら一気に強襲する。今季一度も逆転勝ちのない川崎に、大分が先制点を奪えば、川崎の焦りに拍車がかかることは間違いないだろう。そうなれば試合は大分のペース。鬼門の大分ホームが川崎の前に立ちはだかることになる。

殴りあうか、受け流すか

 大分のブロック守備は5-4-1。圧縮よりはピッチ全体をカバーする意識は強い。川崎のパスワークなら間を縫うことは可能な気はするように見受けられた。問題は今節も戦い方選びである。かつては得意だったはずのボール保持型チームとの殴り合い。確かに神戸相手にはボールを捨てて勝利をしたが、そのあとの神戸の成績を見るとあの勝利をストレートに評価するのは難しい。横浜FMや名古屋との決闘も負けこそしなかったものの、ボール保持であがいていた昨季との差は縮まっているように見受けられた2試合だった。

 大分相手にはどうなるか。想像するのはC大阪戦と同じ展開。ボール保持の元で互いの時間を作りつつ、時間帯によって主導権が入れ替わる流れになると予想。とはいえ、川崎はtoto oneで先発予想されていたダミアンや長谷川がピッチに立てば、相手にボールを明け渡す戦い方も可能。

 その場合に気になるのはプレスラインの設定。ハイプレスに舵を切りすぎれば、相手の擬似カウンターの餌食になる可能性が高い。ある程度ラインを高めに設定すると松本から裏を狙うボールが飛んでくる。前に強いジェジエウもラインを下げながらの駆け引きはまだ未知数な部分がある。かといってローラインで組んでも、マークを受け渡しながらのブロック守備には不安がある。というわけでどの戦い方も一長一短である。

 比較的高い位置からプレスに行って大分と殴りあってボール保持合戦に持ち込むか、はたまた構えてダークホースの勢いを受け流すようなサッカーを志向するのか。個人的には前者の展開を予想する。

 いろいろプレビューを書いたけど「ボール保持に関してならば川崎は勝てる!」と言い切るわけにもいかなくなった時代に突入しているなぁと。それはそれでいいと思う。多彩な色を出すための選手補強もしているし、今までの色はかねてから川崎でのプレー経験のある脇坂や田中が継承しつつある。クラブとしても「川崎カラーで勝つ!」から「川崎カラーの幅を広げる」という方向に色の変化を感じる部分は大きい。立ち返る部分を残しつつ、あらゆる方向に進む道を模索するのはクラブがさらに大きくなるには必要なことかもしれない。なので、展開の予想としては殴り合いだけど、受け流してどこまでできるのかっていうのも気になる。

 川崎が今季掲げた目標は「4冠」。今季は失敗に終わったこの目標をいつか現実にするためには「これなら勝てる」という長所よりも「どこが相手でも簡単に負けない」という変幻自在さが必要。リーグではできるようになった。カップ戦ではまだできていない。今はまだ模索中。そう考えてもいいのかもしれない。

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)

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