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「広げた風呂敷の行方」~2019.4.28 J1 第9節 ヴィッセル神戸×川崎フロンターレ プレビュー

全文無料で読めます。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第9節
ヴィッセル神戸(11位/勝ち点10/3勝1分4敗/得点12 失点13)
×
川崎フロンターレ(7位/勝ち点13/3勝4分1敗/得点9 失点5)
@ノエビアスタジアム神戸

戦績

近年の対戦成績

直近5年間の11回の対戦で神戸が2勝、川崎が5勝、引き分けが4つ

神戸ホームでの戦績

直近10試合の対戦で神戸が4勝、川崎が3勝、引きわけが3つ。

Head-to-Head

Head-to-Head①
【公式戦での対戦成績】
・公式戦における両チームの対戦は過去31戦で川崎が16勝、神戸が8勝。ドローは7つ。

 全対戦において半分は川崎の勝利。正直、神戸には得意なイメージはなかったので意外だった。調べてみたら00年代前半に6連勝してました。それが効いているのかな。

Head-to-Head②
【内弁慶対決】
・ここ9試合の対戦でホームチームが敗れたのは一度だけ。

 共にホームゲームで好成績を残している対戦。直近9試合で唯一アウェイチームが勝利をしたのは昨年のノエスタでの試合。偶然にも今年と全く同じ4月28日開催のゲームだ。

Head-to-Head③
【神戸ホームでの対戦成績】
・ノエビアスタジアム神戸での試合に限れば過去17戦で川崎が7勝、神戸が6勝、ドローが4つ。

 すでに紹介したように共に内弁慶対決。というわけでノエスタに限れば星取は五分五分に近づく。近年はむしろ苦戦している話は後述。

Head-to-Head④
【川崎にとっての鬼門】
・ノエビアスタジアム神戸でのこのカードにおいて直近9試合で川崎が勝利したのは2回だけ。
・直近5試合の神戸ホームでのリーグ戦で川崎が得点したのは一度だけ。

 ノエスタは鬼門というイメージは川崎ファンの多くに印象づいているかもしれない。最近5試合では昨年を除いて4試合連続ノーゴール。勝利した2試合も1点差と川崎にとって毎回タフな試合になっている。

Head-to-Head⑤
【監督交代】
・前回の川崎×神戸の対戦も新監督就任後のリーグ戦2試合目だった。

 今の神戸を語る上でリージョ解任の話は避けられない。吉田監督の再登板後のリーグ戦2試合目となるこの試合だが、実はリージョの就任後のリーグ戦2試合目も川崎戦。雨で冷え込んだ等々力で華麗な撃ち合いを見せたのは記憶に新しいところだ。クッソ寒かった。半年後に再び監督交代後の2試合目で対戦することになった両チーム。次の対戦時には指揮官はどうなっているのだろうか。

【ヴィッセル神戸】

選手情報

・ポドルスキは欠場の見込み。
・イニエスタ、ビジャの出場は不透明→復帰濃厚(4/27更新)

Match Facts

神戸のMatch Facts①
【直近のリーグ戦】
・リーグ戦直近10試合で無失点試合は1回だけ。
・リーグ戦3連敗中。4連敗になれば昨年9月以来。

 漏れ聞こえてくる話を統合すると、現場とフロントの息が合わなくなったところに成績低下が相まって契約解除ということなのだろうか。確かに直近のリーグ戦の成績は芳しくない。特にまずいのが失点で、直近10試合で18失点。クリーンシートは1つだけ。吉田監督になって人により強くいく意識は高めたい感じはするが、直近2試合もクリーンシートは達成できていない。

神戸のMatch Facts②
【逆転勝ち】
・今季の公式戦において3回の逆転勝ちは鹿島と並んでリーグ最多タイ。

 神戸のデータで面白かったのは時間帯別の得失点。特に後半頭の15分は5得点、無失点という成績はピカイチ。おそらくこの時間帯はボールも相手も支配するようなサッカーができているのだろう。しかしながら、60分を過ぎてからは5得点、8失点と非常にオープンな展開になっているようだ。G大阪戦がその典型だろう。後半頭の「炎の15分間」をしのげば、その先の時間帯は撃ち合いに。前線での殴り合いになれば神戸相手に分がいいチームはあまりいないようにも思えるが。
 ちなみに川崎の失点は16-30分と75-90分に集中。ほかの時間帯はまだリーグ戦で失点していない。終盤の撃ち合いは要警戒だろう。

神戸のMatch Facts③
【リージョと吉田孝行】
・リージョ時代の神戸は16試合で1試合平均勝ち点は1試合で1.50。吉田監督の前政権下での54試合での平均勝ち点(1.40)より良好だった。
・吉田監督はノエビアスタジアムでのリーグ戦は初陣。前回就任時の初戦は横浜Fマリノス相手にスコアレスドローだった。

 第一次政権の吉田孝行とリージョで平均得点と平均失点を比較してみると以下のとおり。

吉田孝之: 54試合 平均得点:1.52 平均失点:1.37
リージョ: 16試合 平均得点:1.75 平均失点:1.63

 正直に言えばイニエスタやビジャの加入など、監督交代以外にもスタッツを左右する因子がめちゃくちゃ多い気もするので、どこまで比較になるかはわからない。吉田監督よりリージョの方が得点も失点も少ないというのはイメージ通りかもしれないけど。
    ちなみに吉田監督の川崎との対戦経験は2回。いずれもノエスタのゲーム。スコアは0-0と1-2で川崎に対する勝利は未経験だ。

神戸のMatch Facts④
【GKから考えるプレースタイル。】
・今季、前川黛也の出場した試合は7試合で平均勝ち点0.86に対して、キム・スンギュが出場した5試合の平均勝ち点は1.80。

 監督同士の比較以上に勝敗や得失点の大きな因子になっているという印象を受けたのはGK。「スンギュを使え!!!」と叫びだしたくなりそうなデータだが、2018年も含めて同じ比較をしてみると少し様子が変わる。

    2018年では大小関係がほぼ逆転。18年の開幕からトータルで見ても前川の方がやや優位といったところ。もちろん監督の項でも述べた外的要因の変化は大きいのだろうけど。この1年半くらいの神戸はめちゃめちゃ多くのことが変わっているので、どの要素が一番大きいのか、神戸ファンは調べてみると面白いかもしれない。話を戻すと、最近は事あるごとにたたかれている印象がある前川だが、勝ち点上で長いスパンでの比較をすると、そこまでスンギュと遜色はない。両GKの特徴の比較はまたしても平均得失点に出ている。

 神戸の失点はビルドアップ時のボールロストが起因になることが多い印象。浦和戦のPKもそこのミスが原因。前川がGKの時は、よりその意識が強く被カウンターの際に難しい局面を受けることが多くなっているのではないか。平均得点の高さは最終ラインの起点として、存在感を出していることを示唆している。一方で防げたミスからの失点も散見されるので、この部分はスンギュに軍配が上がるだろう。ちなみに前川の今季の1試合平均勝ち点はチーム最下位。この平均勝ち点に並ぶ選手がウェリントンであるということも興味深い。

【川崎フロンターレ】

選手情報

・守田英正、車屋紳太郎は欠場の見込み。
・阿部浩之は出場が不透明→中村憲剛と共に別メニュー調整(4/27更新)
・カイオ・セザールと奈良竜樹に欠場の可能性(4/27更新)
・脇坂泰斗に先発の可能性(4/27更新)

Match Facts

川崎のMatch Facts①
【直近のアウェイゲーム】
・アウェイのリーグ戦は直近8試合で1敗のみ(W4D3L1)
・日曜日開催のリーグでのアウェイゲームは直近12試合負けなし。

 前節なんとか等々力での初勝利を挙げた川崎。苦戦が続いていたホームとは違って、アウェイでは好調を維持している。直近8試合では昨年のC大阪戦以来負けはなし。日曜日に限れば、17年6月のマリノス戦以来ほぼ2年間負けていないことになる。懸念なのは関西方面の遠征は苦手にしているということ。ここ3年間の8回のリーグでの関西遠征で勝利を持ち帰れたのは2回だけだ。

川崎のMatch Facts②
【韓国勢と対戦後の試合】
・ACLで韓国勢との対戦後のリーグ戦は直近5戦で4勝。

 蔚山現代と引き分けに終わり、なんとかGL突破の望みをつないだ川崎。そんな韓国勢との対戦の後に迎えるリーグ戦は直近5戦で4勝。勝っている4回はいずれも蔚山現代との対戦の直後であり、蔚山現代後のリーグ戦は4連勝中という謎ジンクスを継続中。喜んでいる川崎ファンにお知らせですが、蔚山現代との対戦そのものは今回も含めた直近5回でいずれも勝てておりません。直近5回のうち、唯一蔚山現代ではない相手(=水原三星)と直近で対戦した時はACLでは勝ったけど、そのあとのリーグ戦では負けている。どっちかしか勝てないのかよ!!!!!

川崎のMatch Facts③
【先制点という盾】
・今季の公式戦での勝利した5試合はいずれもクリーンシート。

 無失点での勝利ばかり!というわけで当然逆転負けがないチームというポジティブな要素!あえてネガティブにとれば、点を取られればジエンド。当然逆転勝利も未経験ということになる。逆転勝ちが多い神戸相手にも先制点をとって逃げ切ることができるだろうか?

川崎のMatch Facts④
【ストライカーたち】
・知念慶はリーグ戦4試合連続得点を記録。
・直近4試合の神戸戦で小林悠は4ゴール。

 小林にACLで今季初ゴールが出たものの、リーグ戦においては明暗が分かれる両エース。絶好調の知念がリーグ戦5で試合連続ゴールを決めることになれば、3年前に小林悠が記録した7試合連続ゴールにまた一歩近づくことになる。リーグ戦ではなかなか初日が出ない小林だが、神戸戦は非常に得意。通算6得点はこの対戦カードにおいて両チームの現所属選手で最多のゴール数だ。

川崎のMatch Facts⑤
【ノエスタ苦手な人】
・中村憲剛が先発したノエビアスタジアム神戸の試合は直近5試合勝ちなし。

 神戸が得意な人もいれば苦手な人もいる。中村憲剛は直近2回のノエスタでの川崎の勝利には不在。昨年の勝利もベンチスタートから。得点には貢献してたけど。最後に勝ったのは2010年の0-4での勝利だが、実はこの試合も途中でベンチに下がっている。フル出場で神戸のアウェイゲームに勝利したのは、自身が初めて神戸と対戦した2005年が唯一のものだ。

予想スタメン

展望

神戸はどこへ向かうのか

    浦和戦を見たけど、あんまり参考にならなさそうだなと。まずは浦和側の事情として撤退型5-4-1がメインだったこと。川崎はこのスタイルは99%やらないだろう。ボールを握りに来るはず。神戸側の事情としては主力がいないというのが大きなファクター。ビジャとイニエスタの不在はチームのスタイルそのものに影響する部分。なので、路線を変えるのか、単純に人がいないからなのか判断がつかない。ビジャとウェリントンが入れ替わっても同じサッカーをする!というのは現状ではかなりエッジが効いている気がするので、それをやらないのはきわめて合理的だと思う。ただ、小川や増山をリーグ戦で起用するのはリージョ路線からのシフトを示唆している感じもした。

    浦和戦での神戸の前進の手段は大きく分けて3つ。サンペールが前のレイヤーに入れる楔、降りてきたポドルスキのサイドチェンジ、そしてウェリントンへの長いボール。ポドルスキのサイドチェンジは、この試合のサイド攻撃の質があまり高くなかったため、効果的だったかは微妙。というか厳密には前進はしてない。SBとSHの2人で何とかしてね!って感じだったけど、サイドを手厚くケアしてた浦和を破る機会はそこまで多くなかった。さらにポドルスキ自身も一番脅威になるエリアからは離れてしまっているので微妙。。

   サンペールの縦パスもそうだが、ポドルスキとイニエスタにより高い位置で触ってもらってナンボってところがあるので、相手の急所にポドルスキもイニエスタもいないぜ!ってなった時にサンペール自身の持ち味も出にくい方向に行っているのは残念だった。

    人員も不透明な川崎戦に関しては全く予測が立たないのが正直なところだが、どうやらポドルスキはいない模様。吉田監督のスタイルを考えると古橋や小川といった快足アタッカーをウェリントンの左右で並べる割り切り方をやりそうだけど、イニエスタとビジャがいればリージョの遺産で得点の湿りがちな川崎に撃ち合いを望んでも勝機を見いだせないわけではない。

    もちろん川崎戦も大事なんだけど、神戸にとってはもっと先の部分をどうするのかという。昨年、先のステップに行くために辞めてもらった指揮官をもう一度呼び戻しているわけだから、いくら三浦淳寛SDが問題ない感を出してもうまくいっていないのは事実。ビジャやイニエスタの選手獲得はもちろん、スタッフやアカデミーを含めてもろもろに手を付け始めたところでの頓挫ということで、だいぶ風呂敷は広げてしまったのだけど。この広がった風呂敷がどうなるのかは、非常に興味深い。広げた風呂敷からなにが出てくるのだろう。

活路も対人、不安要素も対人

    神戸が広げた風呂敷の行方より3ポイントの方が大事なフロンターレ。神戸に勝つことを考えた時に直近の川崎の得点パターンは非常に有効だと思う。神戸の前線に誰が出てこようと、湘南ほど勇猛果敢にCBにはプレッシャーをかけないだろうし、奈良にはタッチダウンパスを狙う時間がある。低い位置の大島へのプレッシャーもそこまで仕組みが整備されている可能性は高くないのではないだろうか。2トップで裏を狙う直近の2,3試合の戦い方の踏襲は個人的にはうまくいくと踏んでいる。スペースはもちろん人にも強い知念の大崎やダンクレーとのマッチアップはこの試合で両軍が押さえておきたい部分だ。

   湘南戦のレビューの使いまわしの図だが、このように2トップで裏を狙うと、第3レイヤーが広がって、阿部や長谷川の使いたいスペースができてくる。そうなれば、彼らの躍動も期待できそうだ。ただし、この試合では蔚山戦で復帰した中村憲剛がスタメンの可能性もある。個人的には中村が蔚山戦に出たことと、うまくいきそうなシステム(4-4-2)はいじりたくないこと、あとはうまくいかなかった奥の手に中村憲剛というのも悪くないのかなと思っているのだが。単純にコンディションが上がってないと感じる部分もあるので。でも、2試合連続クリーンシートを達成した舞行龍もあっさり外したし、すんなり戻してくる可能性もあるのかな。小林も蔚山戦フル出場だったし、頭から出したくないかも。

    懸念はサイドの守備だろう。連戦の疲労が徐々に見えてきた登里とサイドの対人は綱渡りな感じが否めない馬渡はどちらも一抹の不安がある。浦和戦では得点につながらなかった神戸のサイドアタックがこの試合では効いてくる!なんて話もあり得る。復帰後は行動範囲に限りがありそうな大島をCHで起用するならなおさらだ。得点が出てくれば神戸がイケイケになる可能性も否定できない。風呂敷の下に隠れている虎の尾を踏みぬくようなマネは避けなければいけない。もちろん、虎がいればの話だけども。

あとがき

拝啓、リージョ様

    最後にリージョに関して少し。スタイルどうこう以前に、サッカーを通して何かを表現する指揮官がとても個人的には好きなのである。そして、それについて試合後にメディアを通して話してくれる指揮官が好きなのである。

 現場の経験もない、趣味でサッカーのことをあれこれ考えているような自分のような人間にとって、そういう第一線で活躍している指揮官がピッチで起こったことについて話したり、教えてくれたりすることはとても貴重なことなのである。全部話してくれてるとは思わないけど。

 それでもそういう試合後に集まった記者やファンにそういう話を共有してくれる指揮官はJリーグでは非常に少ない。そういう指揮官がとても好きなのである。前節の湘南戦のレビューでもやたら触れた曺監督もそう、そしてハリルホジッチもそういう指揮官だと思っている。

 彼らは時に偏屈のように映ることもあるけど、テレビの画面を通してでも情熱が伝わってくるほどのエネルギーがある。神戸の発展云々はよくわからないけど、サッカーファンの1人としてあなたが日本を離れたことはとても寂しい。どうかあなたが新しい国でまた僕たちにサッカーについて語りかけてくれる日を心待ちにしています。お元気で。

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)

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