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「奇跡を握りつぶすために」~2025.3.12 UEFAチャンピオンズリーグ Round 16 2nd leg アーセナル×PSVアイントホーフェン プレビュー

目次

Fixture

UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
2025.3.12
アーセナル
×
PSVアイントホーフェン
@PSVスタディオン

戦績

過去の対戦成績

 過去の対戦でアーセナルの5勝、PSVの2勝、引き分けが4つ。

Match facts from BBC sport

Match facts
  • アーセナルの1st legの7-1のPSV戦の勝利はノックアウトステージにおけるアウェイでの勝利として最大得点差。2レグ合計で10得点以上を挙げたイングランドのチームは18-19にRound 16でシャルケと対戦したシティのみ(AGG:10-2)
  • PSVは直近6試合のイングランド勢とのアウェイゲームで未勝利(D2,L4)、そのうち2試合はアーセナルに敗れている。直近20試合のイングランドでの勝利は4勝で、うち2勝はリーズ、残りはニューカッスルとトッテナム。
  • アーセナルはCL5連勝中。20得点を挙げており3失点。6連勝となれば2005年のアーセン・ヴェンゲル時代以来。
  • アーセナルは今季のCLでのホームゲームは4戦全てに勝利しており全試合無失点。5試合連続でホームで無失点を達成した最後のイングランド勢は21-22のトーマス・トゥヘルのチェルシーでこのチームはチャンピオンになっている。
  • PSVは2016年3月のアトレティコ戦以来CLのアウェイゲームでクリーンシートがない。15試合連続失点中でこの間33失点で1試合平均で2.2失点。
  • アーセナルの欧州カップ戦における最も多い得点差の勝利は93-94のカップウィナーズカップのスタンダール・リエージュ戦の10-0。これが最後のイングランド勢の欧州カップ戦の10得点以上の合計得点差の勝利。
  • PSVのアーセナル戦の7-1での敗戦は1979年11月のUEFAカップのサンテティエンヌ戦に並ぶ欧州における最大得点差の敗戦となる。欧州カップにおいて、6失点差以上で敗れた最後のチームは79-80シーズンにアヤックスと対戦したオモニア・ニコシアが最後。2nd legの日程はPSVがサンテティエンヌに敗れたのと同じ日。
  • この試合はミケル・アルテタの20試合目のCL(W12,D3,L4)。CLにおいて就任して初めの20試合で13勝を挙げた指揮官は過去に9人しかおらず、そのうち7人はトロフィーを獲得している(ファン・ハール、リッピ、ハインケス、デル・ボスケ、ルイス・エンリケ、ジダン、フリック)。
  • イーサン・ヌワネリは2試合連続でCLで得点を決めた最年少プレイヤー(17歳348日)。18歳になる前に3試合連続でCLで得点を決めた選手は過去におらず、この最年少記録を持っている選手は18歳113日のキリアン・エンバペ。
  • 今季のCLにおいて、ラインブレイクパスをダビド・ラヤ(48)より多く通しているアーセナルの選手は2人だけ。ラヤは相手のDFラインを破るパスを3つ出しており、これは今季のGKにおいてはマヌエル・ノイアーと並んで最も多い。

予習

プレーオフ 1st leg ユベントス戦

プレーオフ 2nd leg ユベントス戦

CL Round 16 1st leg アーセナル戦

予想スタメン

展望

遅れるマンツーの弊害

 Round 16のカードの中では最も得点差が開いた1st legのこのカード。勝ったアーセナルが6点のアドバンテージを持ってホームに帰ってくるという状況を考えても、突破はかなり濃厚。少なくともホームのアーセナルは次の試合も意識したメンバー構成になるだろうし、もしかするとアウェイのPSVも力を入れるのは週末のリーグ戦の方かもしれない。

 1st legのアーセナルの戦い方は非常に理に適ったものであったし、プレビューで書いた内容がここまでハマった!という観点で個人的にも嬉しいものではあった。マンツーに対して、流動性の高いフォーメーション、とりわけサイドの選手が内側に入ってくるアクションを増やすことで相手の基準を乱すというアーセナルのプランはPSVに見事に刺さっていた。

 マンツーの一番の弱点は迷いである。自分には他のマークがあるのだけども、自分の近くにフリーの選手が来た!という状況において、迷った結果出ていくという状況が一番最悪。優れた足元の選手を有しているチームにとって間に合わないタイミングで遅れて出てくるプレスというのは格好の材料になる。マンツーであれば、遅れて出てきた選手が捨てた相手にパスを出せば確実にフリーで繋ぐことができるからだ。かつ「遅れている」という前提なので、ボールホルダーにはプレッシャーがかからないことになる。個人的には遅れて出ていくくらいならそもそも出て行かない方がマシというシチュエーションは多々あると思う。

 端的にいえば、PSVはこの遅れて出ていくマンツーを多用していた。そのために、アーセナルは安全に確実に相手の穴をついたパスを出し続けることができたと言える。PSVがマンツーで出ていく!ということは試合前からある程度決めていたのだと思うけども、例外的な事態に原則で対応し続けた結果、状況が悪化の一途を辿ってしまったというケースになると思う。

 この試合で勝つということを念頭におけば、PSVはマンツーで前からプレスをかけにいくしか切り口が存在しない。マンツーで剥がされることを恐れて自陣に引きこもればブロックの外でボールをただただ回されるだけだからだ。極端な話をすればアーセナルは点をとりにいく素振りを無理に見せる必要がない試合だという位置付けになってしまう。

 逆にプレスを極端に振ってくる可能性はある。1st legの記事にも書いた通り、PSVはCBのどちらかが必ず浮く仕組みになっており、後方同数を受け入れない形でのマンツーとなっていた。この点を変更し、この試合では後方を同数にしてよりハイリスクなプランでこの試合に臨む可能性がある。

 アーセナルはユナイテッド戦でもメリーノやヌワネリにロングボールを蹴っていたように、このように前からくるマンツーに対してそれなりに回答案を用意しつつある。ただ、前線は今最もローテーションがしにくいポジション。スターリング、ティアニー、もしかしたら出番が回ってくるかもしれないバトラー=オイテジに同じことができるかは怪しいところである。

 これ合わせで前からの守備にロングボールという逃げ場を作る必要はないと思うが、ハイプレスは飲まれてしまえば大量失点となる可能性も秘めている。後方のプレス回避性能でまずは奇跡の可能性をきっちり握りつぶす必要がある。

 仮にPSV側が引く時間帯に突入するのであれば、特にアーセナル側はやることはない。失い方に気をつけながらボールを動かし、時計の針を進めて週末に控える試合の負荷を下げることが求められることになる。

追い込まれるスターリング

 チームとしてやることはなくとも、個人としてはやることがある選手はいるだろう。おそらくレギュラー組には休養が与えられる試合がこのタイミングで与えられるのはラージグループにいるシニアメンバーにとって幸運。シーズン終盤に向けて固まりつつある序列を上げるまたとないチャンスとなる。来季、どのくらいの戦力を入れ替えるつもりなのかはわからないが、残るにしても出ていくにしてもシーズン終盤にプレータイムをきっちり積めた方がいいのはいうまでもないだろう。

 一番状況が切迫しているのはスターリングだ。まず、ドライローンという契約形態から考えると、アーセナルは特に彼にこだわる必要がない。というか、こだわらなくていい契約条件だからこそスターリングを獲得したと考えることができる。

 もし彼が5年契約であればチーム側には必ず彼を生かさないといけないという義務感も生まれるだろうが、今のアーセナルにはそうした義務感はない。ものになればラッキー、無理なら来季再び同ポジションの選手を補強するだけである。ユナイテッド戦でティアニーが先に入ったことを受けて「スターリングに忖度しなくてよかった」という意見もTLで見かけたが、獲得した時点で忖度する必要がない状況なのだから、当たり前の話である。

 ティアニーがスターリングよりも評価されているのはミスが少ないからだろう。ティアニーはできること以外はしない。静止しているような抜けない状況であれば、きっちりと自陣に戻す。そうでない抜け出すことができる構造においては精度の高いクロスを上げている。状況を限定しているからこそ上がってくるクロスの精度は高い、その一方でクロスを上げることができる状況を自分1人では増やせないのがティアニーのWGである。

 スターリングがティアニーよりも序列を上げるには同じことをしていても意味がない。WGは目の前の状況を切り拓くことに価値がある。ティアニーと異なりスターリングはアタッカーなのだから、目の前に相手がいる正対した状況(=ティアニーがクロスを上げられない状況)からチャンスを作ることが仕事である。

 スターリングの今の状況を考えると、トライしないと意味がない。自分が切り拓かなくても周りを活用できても良い。確かなのは、この試合で躊躇をしている余裕は彼にはないということ。7-1というチームの状況とは対照的に追い込まれたスターリングに与えられる最後のチャンスになる可能性がある試合だ。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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