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「次の勝利の予感」~2026.5.6 J1百年構想リーグ 第15節 川崎フロンターレ×東京ヴェルディ レビュー

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レビュー

隙が課題を浮き彫りに

 GWはここまで連敗。ホームに帰って来て連敗ストップを狙いたい川崎の今節の相手は東京V。連勝中の相手に今季初めてのシーズンダブルを賭けての一戦に挑む。

 序盤はロングボールにフォーカスした落ち着かない展開。試合が落ち着くと、少しずつ試合は川崎の保持に流れていく。

 東京Vは3-4-2-1をベースに前からプレスをかける。しかしながら、この前からのプレスは端的に言えば連動不足。大幅に入れ替えたメンバーであることを感じさせる内容だった。CFの寺沼からルートを誘導しようとするが、川崎としてはいとも簡単にこの誘導を外すことは可能。シャドーの外切りのプレスも甘くSBが浮く場面もあった。

 東京Vは遅れてプレスに出てくるスタート。制限がかかっていないDFにあわててスライドする形になっていた。この状態の恩恵を受けていたのは松長根。鋭い縦パスを刺すことはできるが、ボールをリリースする前にパスコースを作る動作はできない彼にとって、勝手に相手が遅れて出て来てくれるというのはボーナスステージのようなもの。序盤から松長根は脇坂に積極的なパスを刺していた。

 しかしながら、川崎が優勢だったか?と言われるとそれは別問題。むしろ、東京Vのプレスの拙さが逆に今の川崎の課題を浮き彫りにしているかのような前半となった。

 3分手前の三浦は明らかにビルドアップで相手の背中を取ることができている状況。縦へのキャリーのコースが空いているが、止まってしまって相手の陣形を整える時間を与えた。

 この場面は三浦にパスが出ている時点で明らかに相手にズレが生じている状況。三浦は明らかにズレを享受するべき場面だった。百歩譲って前に出せないと判断するのであれば、自分でボールを握らずにとっとと近くの山本に渡すことができれば、ここからのキャリーや縦パスができたはず。少なくとも自分が持ち続ける意義は薄かった。

 4分過ぎの橘田も同じ。川崎の左サイドにボールを閉じ込めたいという思惑をせっかく外したのに、そこから逆サイドを使わずにスローダウン。この場面も橘田に入っている時点でズレているので、シンプルに右に叩けば、そこから縦に進むルートは見える。その先で詰まったら初めてスローダウンすればいい。

 どちらのシーンも相手のミスでズレているのに、そこからシュートどころか敵陣に入ることすらできていない。自分たちが守備でこのようなミスをすれば、危険なシュートを打たれるのに、攻撃で同じ様な形を作っても前進ができないのはアンバランス。構造ができてないならばまだしも、三浦と橘田のシーンは構造ができている。なので、運んで欲しいとしか言いようがない。

 こういうプレーを許容すると相手に勇気を持ってプレスする機会を与えることになる。例えズレて抜けられたとしてもスピードアップをされないのであれば守備側は特にダメージがない。プレスをかけた時に相手が失敗してくれれば得をする。いわば、「かけ得」の様な状態を呼び込んでしまう。

 5分の山原のサイドチェンジのように見えていて正しい判断ができたとしても、パスを繋ぐスキルがないという場面も多い。東京VのDFラインの乱れを考えれば、マルシーニョに出すパス次第では1on1の決定機も作れた場面である。こういう場面を減らしていかないと、なかなか継続して結果を出すのは難しい。

仕上げかけた場面のポイント

 時間の経過とともに東京Vはプレスの強度を上げていく。CHのプレスをスイッチとしてマイナスのパスを出させて、前線がそれに呼応する様に深追いする形に変更。立ち上がりは前線が無闇にプレスに行った結果、中盤が繋がらなかったという仕組み。だが、修正後は中盤がまず人を捕まえるところから始まっているので、前線がマーカーを捕まえれば後方にギャップはできにくい。

 徐々に蹴らせて回収するメカニズムが成り立つ様になる東京V。プレスが強くなった後は川崎の前進のルートは左サイドが多め。ハーフスペース付近に降りてくるマルシーニョが上下動しながら受けるスペースを作り、縦に進む三浦や山本と連携して前に進むきっかけを掴む。

 敵陣に進む場面もなくはなかった川崎。だが、左の大外のマルシーニョはマイナスのパスが味方に合わないなどなかなか攻撃を仕上げることができなかった。

 右サイドに入った長は他のWG陣に比べれば体が軽そうという印象。あとは直近の右WG組と比べると、スタート位置が外に開くことが多い。この日の両サイドはどちらも幅をとりがちなので、ロマニッチはややサイドに流れながらボールを落とす場面が多かった。

 長は順足サイドに放り込まれた割にはインサイドへのカットインが多め。ただ、合わせる動きができる味方がいなかったのは辛いところ。どちらかといえば縦に進んで手早くクロスを上げるシーンの方がプレーをやりきれていた。若手高卒ドリブラーできっちりと球離れがいいのはとても珍しい。

 前半で最も得点の可能性があったのは終盤の橘田→マルシーニョへのクロスだろう。手前に飛び込んだ山本が陽動役となったおかげで完全に空いた場面だった。

 東京Vは川崎以上に苦しい前半だった。ナチュラルな立ち位置で後方からズレが出る3バックであるものの、川崎が軽く前にスライドすれば簡単に前線に蹴る形をとる。プレビューではズレを創られる形を危惧していたが、どうやらこの試合の彼らにはその様子がない様だった。

 前線の寺沼はパワーでもスピードでも川崎のCBに対して明らかに上回っていたのだが、その優位をうまく抜け出すところに使えなかった印象。サイドからであれば抜けることはできていたが、コースのないところで強引にシュートをとりあえず打ってみるシーンが多かった。

 それ以外の場面ではトランジッションから森田が浮くシーンがチャンスになったが、やや狙いが直線的に奥になってしまった感。こちらも得点の匂いとしては薄めだった。

 どちらもチャンスが少ないままハーフタイムに。試合は0-0で後半を迎える。

3枚交代によって苦戦するが・・・

 後半もロングボールの応酬で試合はスタート。ただし、東京Vにはやや前半の立ち上がりの様な隙が残されれいた。徐々に川崎はポゼッションから穴を開けにいく。

 1stプレス隊の背後をとる山本や、降りてボールを引き出す長などから川崎は前進のきっかけを掴む。しかしながら、ミドルゾーンから敵陣にスピードアップしていく様なスムーズさがないのは後半の川崎も同じ。最終的には雑に前に蹴ってくれるので東京Vとしては特に困ることはなかった。

 ボールを持つ状況においては東京Vが直線性を抑えながら調整。サイドから押し込みながら手数をかけていく。ブロック守備を崩すのは手数がかかるが、森田がインサイドでCHやCBをどかしてシュートまで持って行ったシーンのように個人技からインサイドをこじ開けるシーンも。

 先に動いたのは東京V。3枚交代で前線をレギュラー組を中心に総入れ替え。この交代で東京Vは前線の機能性をアップ。特に守備においては後方のクローズからの二度追いが効果的に散りばめられ、川崎はギャップに入れ込む機会さえ見つけられず、とりあえず横パスを出しているだけの時間に追い込まれる。

 もちろん、攻撃においても東京Vの前線は躍動。左右に流れる染野がロングボールを引き出し、滑らかに起点を作っていく。ボックス内での駆け引きも巧みで、決定的なチャンスを生み出すシーンも。川崎はCB陣が体の投げ出しての対応に追われることとなった。

 だが、ワンチャンスを活かしてゴールを決めたのは川崎。ようやくライン間に入り込むことができた脇坂が見事なミドルシュートで打開。73分に先制点を決める。長のマーカーを右サイドに持っていくようなアクションをしたのももちろん効果的ではあるが、対面の井上はひとまず脇坂に集中!という様子ではあったので、その状況で打ち切った脇坂にあっぱれである。

 得点直後には相手を追いかけるアクションを継続した脇坂。しかしながら、なかなか思う様に押し上げ切ることはできず。相手に後退をさせられてブロック守備に追われる場面もあったし、前線にボールを逃すことも保持で時間を潰すこともスマートにはできない川崎だった。

 それでも一番欲しいものは手にした川崎。連敗を2で止めてホームで東京V戦のシーズンダブルを達成した。

あとがき

 結果的に勝ちはしたし、脇坂のゴールは素晴らしいものだったことに疑いの余地はない。しかしながら、この試合の出来は一言で言えば悔しいものだった。本来であればシュートや得点まで行きたい場面において、シュートの一歩手前どころか自陣からの脱出もできない。そういうところにあるチームなのだなという現在地を痛感させられた試合だった。

 構造を作るところも今回はメンバーを入れ替えた故の相手の拙さに助けられたところが否めない。そもそも、構造作りすら安定していないのに浮いた選手を作れた時に前に出ていくことができない場面が続けば先を見据えることは難しい。そういう意味ではこの勝利の内容面の評価は2連敗の時とそう変わらないということになる。

 クリーンシートを達成した守備に関してはこれ以上はできることはないというのはわかるけども、こちらも相手がやって来たことを考えれば評価は据え置きとするのが妥当か。1つ無失点の試合を掴めた以上でも以下でもないだろう。

 勝った試合で辛気臭いレビューになって申し訳ないのだけども、あまりにももっとできるだろうという思いが先に来てしまう内容だったのは否定できない。リーグの特性や今の順位上、百年構想リーグで勝った負けたばかりに目を向けるのは得策ではない。勝つことは大事だけども、勝ったからよしとなるタイプの大会でも順位でもないだろう。勝ちはしたが、次の勝ちがすぐにやってくる予感がしなかった勝利だったという点は重く受け止めるべきだ。

試合結果

2026.5.6
J1百年構想リーグ
第16節
川崎フロンターレ 1-0 東京ヴェルディ
U-vanceとどろきスタジアム by Fujitsu
【得点者】
川崎:73′ 脇坂泰斗
主審:ダミアン・コス

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