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「最小であり安全である」~2026.5.18 プレミアリーグ 第37節 アーセナル×バーンリー レビュー

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レビュー

スペースレスな状況を流動性で解決しにいく

 ついにラスト2試合となったプレミアリーグ。まずは最終節を優位な立場で迎えることを確定させるために、アーセナルは最後のホームゲームに挑むこととなる。すでに降格が決まったバーンリーが、今季最後のエミレーツへの来客だ。

 序盤はバーンリーがセットプレーから攻め立てる入り。そのままの勢いでハイプレスを仕掛け、4-4-2をベースにアーセナルを高い位置から追い込んでいく。

 アーセナルはまず、この序盤のプレスラッシュを回避してバーンリーを押し下げることに成功。この日のアーセナルはとにかくポジションの自由度が高め。2-3-5のような陣形をキープさえできていれば、誰がどこに入るか、さらにはそこから形を崩すことも許容している様子だった。

 アンカーの位置に入るのはライスだが、ウーデゴールやエゼとポジション交換をすることもしばしば。ウーデゴールが入った際の中央での位置交換はすでにおなじみだが、WGがインサイドに絞ったり、あるいはSBが中盤から前へ突撃したりするケースも。この辺りはいかにもこのフォーメーションだからこそだなと感じる部分だった。

 トップのハヴァーツも中央に居座るのではなく、右へ流れる頻度が多め。ホワイト不在の中で、サカに奥行きの選択肢を与えていたことは非常に理想的だと言える。インサイドのフィニッシャー役もエゼやトロサールが絞るアクションを見せることで、ハヴァーツが横へ移動したスペースを活用していた。

 右サイドへの供給で役立っていたのはアンカーポジションのライス。背後を狙うパスや、相手の背中側のライン間へ差し込むパスをつけることで、DF側の逆を取ることができていた。

 しかしながら、バーンリーの守備ブロックもアーセナルにしっかり食いついていたことは確か。サカの対面のピレスは簡単にはやられなかったし、時間を稼ぐことができればウゴチュクのカバーも期待できる。右サイドへ流れる選手に対してはエステーヴもカバーし、簡単に前進を許さない。

 押し下がっている状況だけに、どのレーンを通すか、どこのスペースを狙うかはシビア。そうした中で、ウーデゴールのパス精度には細かなズレがあり、それが決定的なルート攻略にまでは結びついていない感もあった。

 左サイドのトロサールも好調。相手を1枚剥がせる駆け引きからチャンスメイクに成功する。右サイドもそうだが、WGに対してバーンリーのSBのマークがタイトな分、近くに落としを受けられるMFがいるかどうかは重要。エゼとウーデゴールの併用は、両サイドのWGを満遍なくフォローするという観点で大きな意味があった。

 落として受け直してを繰り返すことで、トロサールはクロスやシュートへ持ち込むことができる。同サイドのカラフィオーリのフォローも含めて、前半の主要な攻め筋となっていた。

ストレートな高さ勝負でこじ開ける

 一方のバーンリーはフレミングへのロングボールから攻撃をスタート。ただし、プレビューで触れた通り、フレミングはボールが収まったとしても、そこからボックス内に進む推進力を出せるタイプではない。そこから右サイドのチャウナのような推進力を出すことができる選手にいかにボールを預けることができるか?というところがある。

 どちらかといえば、アーセナルが遠慮なく攻撃に人数を割いてくる分、そのスペースをポジトラで狙えるかどうかの方がバーンリーにとっては重要だった。ハンニバルが左足でシュートを放った場面がその典型だろう。

 前進の機会があれば、そのチャンスを逃さない。これがこの試合のバーンリーだった。すかさずラインを押し上げ、背後を取られるリスクを厭わずにアーセナルのバックラインへプレッシャーをかける。この状況に持ち込めれば、自分たちの保持ターンを引っ張ってくることができる。

 ただし、総じてバーンリーの攻撃に手応えがあったかと言えば微妙なところだろう。先に挙げたハンニバルのシュートシーンはxGで言えば0.09。一見危険に見える場面かもしれないが、角度のないところからシュートを選ばせたという感覚で、アーセナルは守ることができていたと言える。押し込まれる場面も含めて、総じてバーンリーの攻撃には冷静に対処できていた。

 となると、あとはゴールを奪うことができるかどうか。サイドを破るという観点でいえば右サイドに注力してきたこの試合のアーセナルだが、前半の中盤以降は左サイドからの抜け出しがちらほら。逆サイドに比べると、バーンリーの守備ブロックのスライドが甘かったこともあり、徐々にクリーンに抜け出す選手が出てくる。サカがトリッピングされたように見えた場面ではPKを得ることができなかったが、逆サイドからの崩しに一定の手応えを得た場面だと言えるだろう。

 しかしながら、決め手になったのはセットプレー。2回のショートコーナーを見せた後、3回目に初めてエリア内へダイレクトに入れたところから先制点。最初の2回とは異なり、ボックスへ入れる素振りはあまり見せていなかったため、完全な騙し討ちというわけではないだろうが、ストレートに高さ勝負へ持ち込む形でゴールをこじ開ける。防げたかどうかは別として、GKのヴァイスには無駄な動きでゴールマウスを空けてしまった感があった。

 リードを奪ったアーセナルはここから前半終了まで攻勢に。右サイドからのサカのミドルが決まっていればここからの試合の大きな流れは違ったのかもしれない。

引き分けOKのデュエルであれば

 後半、アーセナルは左サイドから攻め筋を探っていくが、敵陣でのファウルが多くバーンリーにポゼッションの機会を与える。バーンリーはロングボールを蹴っていくのだが、その前段としてバックラインでなるべく相手を引きつけるようにボールを動かす。アーセナルの中盤の腰が浮いたところでロングボール。そもそも前がかりな構成となっているアーセナルの中盤に対して、セカンドボール回収で優位に立つことで保持の機会を確保する。

 前半は序盤こそ主導権を握る姿勢を見せていたバーンリーだったが、途中からは一方的に押し込まれてしまった。しかし、後半はそう簡単には流れず、高い位置へプレスに出ていったところでウーデゴールやエゼの低い位置からのパスミスを誘発。バックラインが整っていない状況でのトランジッションを発動する。

 ただ、そうした状況すらコントロールできるのが今季のアーセナルの凄み。ライスを軸とした爆速のプレスバックから、一気にラインを下げてスペースを埋めることができる。

 バーンリーは中央の狭いパス交換へ網を張ってカウンターを狙っていた感があったため、アーセナルとしては外回しができれば加速できる状況。ナローな位置に立つSHの背中側から前進できれば、一気に加速して背後を取ることができる。トロサール、ハヴァーツ、カラフィオーリを中心に、アーセナルはバーンリーのハイラインをひっくり返しにいく。

 本来であれば、ここから再び敵陣へ押し込むモードに持っていきたいアーセナル。しかし、バーンリーも早めの中盤スライドで外側からの進撃も簡単には許さない。後半はしばらく、どちらのペースとも言い切れない展開が続く。

 その展開を決定づけそうだったプレーは紛れもなくハヴァーツのタックルだろう。この場面でレッドカードが出ていれば(個人的にはこの判定が妥当だと思う)、残り時間はよりアーセナルが殴られ続ける展開だったように思える。

 だが、難を逃れたアーセナルは11人でプレーを継続。小競り合いやインカピエのアクシデントなど、優勝争いというシチュエーションにそぐわない緊張と緩和が続きながら、どっちつかずの展開は60分台も続いていく。

 その中で異彩を放っていたのはギョケレシュだろう。GKへのプレスからあわやという場面を作ったシーンを皮切りに、左右へ流れながらロングボールのターゲットとして存在感を発揮する。

 強引に点をとりにいく必要がある場面であれば、サイドにボールを収めたところからの加速が求められるのだけども、リードをしている状態であれば、きっちりと陣地回復をすることが優先。デュエル自体が”引き分けOK”の状況であれば、ボトムハーフ相手のギョケレシュは相当頼りになる。多少守備の重心が下がったとしても、とりあえず蹴っておけばOKというターゲットがいたのは非常に大きかった。

 緊張感のあるシチュエーションとは裏腹に、バーンリーを可能性が低い攻撃のみに抑え込んだアーセナル。枠内シュート0のシャットアウトゲームを演じ、ホーム最終節に勝利。優勝までのマジックを1とした。

あとがき

 前半のうちにサカのシュートが決まっていれば、展開がほぐれてより支配的な状況を引き寄せられたかもしれない。結果的には最小得点差というスコア推移的にはタフな試合になった。

 しかしながら、内容を振り返れば、失点の可能性が高かったシーンはほとんど存在しなかった。いかにも今季のアーセナルらしい試合運びだったと言える。見ている側がファンであるから少ない点差にヒヤヒヤするのであって、側から見れば失点の可能性が低い状況で推移することができたというのは今季のアーセナルあるあるでもある。

 爆発力は足りないかもしれないが、一度得たリードは簡単には手放さない。シティ戦の敗戦以降、淡々と無失点を積み重ねてきたここ4試合のアーセナル。派手さこそないもののこうやって勝っていきたいという今季のロールモデルを体現している試合運びができている。

試合結果

2026.5.18
プレミアリーグ
第37節
アーセナル 1-0 バーンリー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:36′ ハヴァーツ
主審:ポール・ティアニー

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