アストンビラ、22-23シーズンの歩み。
第1節 ボーンマス戦(A)

内外分断でシャットアウト、3年ぶりの復帰を祝うクリーンシート
3シーズンぶりのプレミア復帰を果たしたボーンマス。ホームでの開幕戦の対戦相手となるのは途中就任のジェラードが2年目のシーズンを迎えるアストンビラである。
プレミア復帰に沸くヴァイタリティ・スタジアムの熱気に後押しされるように、両チームは高い位置からの積極的なプレッシングでスタート。互いにプレッシャーをかけられた側は前線に蹴り飛ばす形で試合は始まる。
その流れから生まれた1stチャンスを手にしたのはホームのボーンマスの方だった。セットプレーから先制したのは3バックの一角に入るレルマ。シーズン開幕からわずか2分でボーンマスはプレミア復帰を祝うゴールを奪うこととなった。
この先制点以降は両チームのプレスの高さや意欲には差が出るようになった。比較的ゆったりとした保持を許す位置にプレスを設定したのはリードしているボーンマス。ハーフウェイラインかやや後方をトップのプレス開始位置とする。
ボールを持てる格好になったビラはアンカーのカマラが最終ラインに降りるサリーの形を使いサイドを押し上げる。サイドの攻撃は全体がスライドするように人数をかけて行ってはいたが、フリーで抜け出す選手を作ったりや、PAに侵入するようなドリブルができる状況を作ることができず。ビラはアバウトなボールをひたすらPA内に放り込むことしかできない。
そもそもハイボールで優位に立てるスカッドではないし、ビラの良さは外でできたタメを早いクロスでマイナスで折り返し、それに逆サイドの選手が合わせる形。外と内が分断されたようなこの日のやり方ではタワー型のFWでもいない限りは優位を取るのは難しいだろう。
ビラは外切りのハイプレスから敵陣深くまでプレスをかけるが、ボーンマスのバックラインは安全第一でトップのムーアに放り込む。時には左のWBであるゼムラが中にカットインしながら逆サイドへの展開でチャンスメイクすることも。その辺りはビラのプレスの強烈さを見ながら調節しているように見えた。
アストンビラは有効打となる攻撃を打ちきれないまま試合は後半に。ブエンディアの投入で4-2-3-1にシフトチェンジを行うビラだが、状況は好転せず。外と中は分断されたまま無闇にハイクロスでボーンマスのブロックに挑んでは跳ね返されるシーンのオンパレードである。
ボーンマスはがっちりとビラの攻撃を受け止めながら左サイドに流れるムーアへのロングボールで陣地回復。接触プレーが多く、攻撃がぶつ切りになることも含めて、アストンビラはすっかりとリズムを崩されたように見えた。
いつまでもペースを引き戻せないアストンビラを横目にボーンマスはセットプレーから追加点。空中戦のターゲットになっていたムーアがネットを揺らし、試合を決定的なものにした。
セットプレーからの2発という強かさ以上に、アストンビラをうまくペースに嵌め込んだゲームコントロールが見事。ボーンマスの3年ぶりのプレミア挑戦は白星でのスタートとなった。
試合結果
2022.8.6
プレミアリーグ 第1節
ボーンマス 2-0 アストンビラ
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:2′ レルマ, 80′ ムーア
主審:ピーター・バンクス
第2節 エバートン戦(H)

乱戦に屈さず優位を勝利に結びつける
開幕戦はどちらも敗戦。内容的にも厳しいものがあり、早急な立て直しの兆しが欲しい両チーム。ベンチに座るのはジェラードとランパード。かつて同じユニフォームでイングランドのために戦った両雄がベンチに座る一戦になった。
どちらのチームも前線に無理にプレスに行くことはせずに中央を封鎖するのが共通点。CBにはボールを持たせることを許容しながら試合を進めることにする。
ビラはスタメンに復帰したミングスがいる分、左サイドから押し上げは効いていた。前節ではあまり見られなかったラムジーとディーニュでサイドから抜け出す得意な形が多少は見られるように。
けども、一度ボールを止められてしまうと打開策がなく、局面が停滞してしまう。エバートンはシャドーが中央に絞り、大外をWBに任せる形にしていたが、初動でボールをきっちり止めることができれば問題なく対応ができていたと言っていいだろう。
エバートンの保持はビラよりもさらに苦しいもの。外循環のボールはなかなか起点を見つけることができず。コーディなど蹴れるバックラインの選手はいるのだが、ボールを預けて収めるところが見つけられない状態が続いてしまう。
縦にグラウンダーのパスを付けられる時間帯はチェルシー戦もいいフィーリングだったエバートンだが、ビラの4-3-1-2は中央が強固。3センターも当然だが、トップ下のコウチーニョがイウォビを中心に中央の攻撃の起点を広範囲に抑えていたのが印象的だった。
そんな中で先手を取ったのはアストンビラ。どちらも中央への縦パスは効かず、縦パス刺したもん負けの様相を呈していた流れでカウンターを決めた。イングスのフィニッシュは見事。多くのDF相手にコースを作り、ゴールを打ち抜いて見せる。
一方のエバートンはセットプレーを軸にチャンスを作るものの、オフサイドなどで決定機を取り消し。前半に得点を決められずビハインドでハーフタイムを迎える。
後半もペースを握ったのはアストンビラ。得点シーンのような縦のカウンターから攻めあぐねるエバートン相手に一気に敵陣に迫る。ビラの速攻の精度がやや心もとない分、エバートンにも反撃の機会はあったが、ポジトラへの移行が遅くスローダウンしてしまう。
クロッサーのマクニールとターゲット役になりそうなロンドンの入れ替えなど、ランパードの采配も後押しとしては疑問が残る部分。左サイドから攻め立てるビラがいつ仕上げるかが試合の争点となっていく。
ここから大暴れだったのは81分に投入されたオナナ。ボールロストでショートカウンターを誘発してしまい、ブエンディアにリードを広げる追加点のきっかけを与えてしまう。だが、直後のプレーで即座にリベンジ。ロンドンへのロングボールを拾うとエリア内に猛進撃。オウンゴールを誘発して1点差に迫る。
オナナが起動した乱戦のスイッチは試合終盤までの殴り合いに発展することに。悪く言えば大味な、よく言えばプレミアらしいどちらにも点が入りそうなスリリングな展開は試合終了まで続くことになった。
結局試合はこれ以降得点は決まらずに終了。乱戦以前の展開を優位に進めたビラが順当に勝利を収めた。
試合結果
2022.8.13
プレミアリーグ 第2節
アストンビラ 2-1 エバートン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:31′ イングス, 86′ ブエンディア
EVE:87′ ディーニュ(OG)
主審:マイケル・オリバー
第3節 クリスタル・パレス戦(A)

後半に見られた出来の差がスコアに反映される
序盤、アストンビラはボールを持たされる展開に。パレスはアンカーのカマラに対してエドゥアールがついていく。両サイドのアイェウとザハは外切りからCBにプレッシャーをかけていくスタンス。中盤は噛み合わされつつ、バックラインにはプレス隊がいるというなかなか難しい展開に。
そんな中でビラはワンチャンスを先制点に結びつける。保持では2トップ気味だったワトキンスとベイリーの連携で一気にゴールまで。ベイリーの落としを最後はワトキンス。ミングスのロングフィードから一気に少ない手数で得点を手にしてみせた。
一方のパレスはロングカウンターから反撃。こちらもロングボールをエドゥアールが落としたところでザハが拾って一気にカウンターを完結させた。7分でタイスコアとなった試合だったが、ここからはパレスのワンサイド気味に流れていく。
ペースを握ったパレスはアンカー脇に顔を出すところからライン間で前を向き、攻撃を一気に加速させる。その中でもやはりザハのキレは別格。止まることになっても再加速で相手を置き去りにしていく形で、PA内に迫っていく。
左でタメを作れるのならば、エリアに入り込んでいくのは他の選手たちの仕事。特にシュラップは積極的にエリア内に入っていくムーブを異なっており、フィニッシャーとして鋭い狙いを見せていた。そのシュラップはセットプレーからネットを揺らすが、これはオフサイドで取り消し。ビラはなんとか助かった格好だ。
ビラは攻撃のきっかけが掴めない。どうしても前からプレスにいくことができず、カウンターから一気にカタをつけるきっかけを掴むことすらできない。
後半もペースはパレス。ポゼッションで安定している分、押し込むところで攻撃の機会を十分に確保。ビラはカウンターからベイリーが存在感を見せてはいたが、やはり個人技に頼るところが大きい。
攻めの機会で差をつけたパレスがやはり順当に勝ち越し点をゲット。セットプレーからディーニュのハンドを誘発してPKを得る。ザハのPKは一度はマルティネスに阻まれたものの、跳ね返りを押し込んでゴール。ザハ、PKを止められた人史上一番冷静だったように見えた。
ビラは反撃に出たいところではあるが、ビルドアップから相手のハイプレスを剥がすことができずに苦戦する。マルティネスのフィードに苛立つキャッシュの表情はこの試合のビラの不甲斐なさを表しているようだった。
そんなビラにとどめを刺したパレス。左サイドからのミッチェルのクロスをマテタが叩き込んで3点目を得てみせた。
1-1以降は実力差がくっきり。試合の支配を勝敗に結びつけたパレスがビラを下して今季初勝利を掴んだ。
試合結果
2022.8.20
プレミアリーグ 第3節
クリスタル・パレス 3-1 アストンビラ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:7′ 58′ ザハ,71′ マテタ
AVL:5′ ワトキンス
主審:アンディ・マドレー
第4節 ウェストハム戦(H)

オープンな後半に流れを引き戻し連続記録はここでストップ
ここまで唯一の全敗チーム。しかも今季ここまで無得点という苦しみを抱えているウェストハム。今節の相手はこちらも調子がなかなか上がらないアストンビラである。
ウェストハムはこの試合においては3-4-3を採用。シャドーの2人は非常にナローなポジションを取るのが特徴で、ポストプレーに長けたスカマッカのそばにシャドーをおきたい狙いが見えた並びである。
ウェストハムの守備は3-4-3~4-4-2~5-3-2の中間くらいのフォーメーションであり、結構陣形は流動的。しかしながら、プレスのスイッチが不明瞭なのが微妙なところ。WBが高い位置から捕まえにいくトライをしているものの、それに呼応して周りがパスコースを潰すなどの動きがない。そのため、アストンビラはホルダーがプレスには苦しむが、周りの選手がボールを受けるのに困ることはないという状況になった。
アストンビラの保持はアンカーのカマラ、IHのルイスとCB2枚でボールを前に進めていきたいところ。だが、保持が左サイドに偏っている感じは否めず。さらにはこちらのサイドで深さを作れるラムジーや長いフィードを蹴ることができるミングスが不在だったため決め手に欠ける事態に陥る。
ワトキンスやコウチーニョなどビラの左サイドは流れながらチャンスメイクを行なっていく。ただ、ワトキンスが流れる場合はエリア内に人が足りなくなる場合も多く、ビラは人員確保に苦戦した印象だ。それでもスカマッカとボーウェンのコンビネーションが数えるほどしかなく、WBの攻撃参加の有用性が見えてこないウェストハムよりは出来は悪くはなく、ペースは握っていたと言えるだろう。。
迎えた後半、ベンラーマを投入したウェストハムは4バックにシフトして勝負に出ていく。このシステムがむちゃくちゃハマったか?と言われると難しいところ。というのも後半はやたら互いに危険なロストをかまし合う展開に。プレッシャーがかかってミスをするというよりは相手がいるところにパスを出してカウンターを食らうというなんとも気の抜ける状況が多い試合となった。
そうした中で決定機を活かせないのがボーウェン。FKのカウンターから迎えた絶好期をはじめ、数多くのチャンスを得るがボールタッチとプレーの判断が遅く、ビラの守備陣が戻る時間を与えてしまう。
それでも前半のビラペースから試合はフラットまで引き戻された感がある。そうした均衡を破ったのはウェストハム。左のハーフスペース付近に侵入したフォルナルスが右足で振り抜いたシュートは相手に当たりそのままゴールポストに吸い込まれた。
なんとか8月ノーゴールを免れたウェストハムはここからビラの攻勢に耐えることに。特に右のベイリーのカットインからのクロスと左の大外で攻め上がるディーニュのコンボにはだいぶ手を焼いた。
それでもギリギリ逃げ切ったウェストハム。無得点と未勝利という悪き連続記録に歯止めを欠ける今季初勝利を迎えることになった。
試合結果
2022.8.28
プレミアリーグ 第4節
アストンビラ 0−1 ウェストハム
ビラ・パーク
【得点者】
WHU:74′ フォルナルス
主審:デビッド・クーテ
第5節 アーセナル戦(A)

戸惑いをあっという間に上書きしたマルティネッリ
レビューはこちら。
負傷者を抱えながらもチームは連戦連勝。上昇気流に乗るアーセナルが今季初のミッドウィークにエミレーツに迎えるのはなかなか浮上のきっかけを掴めずに苦しんでいるアストンビラである。
ボールを回すのは事前の予想通りアーセナル。アーセナルからすると今季初先発のアンカーのロコンガが気になるところではあるが、この試合では大きな問題にはならなかった。というのも彼をマークするビラの守備の基準が少し変わったものだったからである。
彼をマークするのは左のシャドーに入っていたブエンディアだった。彼はボールが自分の方にある場合はSBであるホワイトを、逆サイドにボールがある場合は便宜上は右のCHのロコンガを消す仕組みになっていた。しかしながら、実質中央に陣取るロコンガとSBであるホワイトは距離が遠く、ブエンディア1人で彼ら2人をボールの移動に合わせて監視するのは不可能。その上、ワトキンスのフォローもないので、ロコンガはホワイトにボールが渡った時点でフリーになった。
よって、アーセナルは右サイドにボールをつけた時点でホワイトとロコンガ2人とブエンディアの2対1が成立する格好。これを活かしたアーセナルは右サイドでフリーの選手を作り、左サイドに展開しつつ敵陣に迫るパターンを多用する。いつもよりもアタッキングサードからファイナルサードへの加速は重視しており、やり直しが少なめだったのはスカッドに合わせてのことだったのだろう。
保持での変幻自在感が減っているアーセナルはその分ネガトラを強化することでチャンスの数を確保。アストンビラが中盤でまごつくたびにジェズスやウーデゴールが前線から飛んでくる形はアストンビラをかなり苦しめることに。
中央でボールキープができず、サイドの押し上げが効かないアストンビラは前半はほとんどチャンスを作れない。ジェズスが31分に決めたゴール1つでは物足りないくらいのチャンスをアーセナルが作り、内容でもスコアでも上回った前半になった。
後半も引き続きアーセナルがペースを握るが、ロングボールとカウンターを増やした分、試合の展開は前半よりは流動的なものになった。それでも追加点の雰囲気があったのはアーセナルの方。しかし、次に点を決めたのはアストンビラ。CKを直接ドウグラス・ルイスが決めてゴール。カマラに抑えられたラムズデールは対応することができず、ファウルをとってもらうこともなかった。
判定に戸惑う間もなくアーセナルは勝ち越しゴールをゲット。ロングボールを収めたマルティネッリを起点として、逆サイドのサカまで展開。サカのクロスをファーに飛び込んだマルティネッリが決めて再びリードを得ることに。
最後は前にエンケティア、後ろにホールディングという盤石なフォーメーションで逃げ切りに成功したアーセナル。04-05シーズン以来、18年ぶりの開幕5連勝で首位キープに成功した。
試合結果
2022.8.31
プレミアリーグ 第5節
アーセナル 2-1 アストンビラ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:31′ ジェズス, 77′ マルティネッリ
AVL:74′ ルイス
主審:ロベルト・ジョーンズ
第6節 マンチェスター・シティ戦(H)

MF総動員作戦でファンの溜飲を下げることに成功
前節、アーセナルに敗れて4連敗。ジェラードに対する風当たりは日を追うにつれて厳しくなってくる。そんな最中に戦う羽目になるのはよりによって王者のマンチェスター・シティ。巡り合わせとは残酷なものである。
アストンビラがこの日用意してきたプランはなかなか面白かった。並びとしてはレギュラークラスとして目処が立っているCHを総動員するというもの。彼らはとにかくバイタルを空けないことを目指している。
それでもシティ相手に守ろうとすると中盤はどうしても動かされてしまうもの。なのでビラとしては動かされることは仕方ないとする。その代わり他の選手がカバーに入る。シティとしてはMFを釣り出してもその先にMFがいる状態。とにかく、バイタルだけは譲らない。序盤にバイタルを空けた一瞬をチャンスにされたことが逆説的に彼らのプランの正しさを証明している。後ろから追い越してくるウォーカーもアクセントになっていた。
立ち上がりのシティはロドリの周辺にSBを置くいつものやり方を棚上げ。SBは外に開く機会が多かった。ビラは外に追いやるような守り方をしているので、ブロックの外で持たれるのは許容。ただし、シティのWGが降りていく動きに対してはビラのSBがついていく。カバーに入るのはもちろんMF。この日のビラは動ける総量が多い。
ビラがそういうアプローチで来るならばブロックの外からの砲撃で解決できるのがシティの強み。しかしながら、外担当のデ・ブライネとカンセロがこの日は不発。なかなか大外からのピンポイントクロスを送ることができない。
プレスもビラのビルドアップに対して刺さっていないわけではないけども、高い位置から奪い切ってショートカウンターに移行する形はあまり見られず。そういう意味ではこの日のシティはゴールに迫る迫力がやや欠けていたと言えるかもしれない。
解決策を見出したのは後半のこと。やはり大外のデ・ブライネからピンポイントのクロスをハーランドの動き出しに合わせてこじ開けて見せた。
シティはビラの攻撃を単発的な抜け出しから限られた回数に抑えられていたし、このまま問題なくゲームは閉じられるかと思われた。だが、シティが2点目を取るのに手間取っていると、ビラが少ないチャンスを活かす。競り合いになったルイスからラムジーに展開すると、折り返しをダイレクトでベイリーが押し込んで同点にする。
追い込まれたシティはここから畳み掛けて攻撃に移行するが、シュートはことごとく枠外に。いつもに比べればシティの精度は割引だったと言わざるを得ない。
MF総動員作戦が今後どこまで有用かと言われると微妙なところだが、ひとまず首の皮を繋いだジェラード。シティ相手に勝ち点を奪い、ファンの溜飲を下げることに成功した。
試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
アストンビラ 1-1 マンチェスター・シティ
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:74′ ベイリー
Man City:50’ ハーランド
主審:シモン・フーパー
第8節 サウサンプトン戦(H)

今季ベストのコミットを見せた圧巻の逃げ切り
ホームのシティ戦では1-1のドロー。ジェラードのビラは前節になんとか踏みとどまった感がある。ここから2週間開くことを考えればインターナショナルブレイク前にどうしても結果を残したいところである。
序盤の主役はコウチーニョ。左サイドからタメを作り、味方の攻め上がりを促す。やや、ここにボールが集まりすぎな感があったが、左で作り右で仕留めるという傾向が強いビラにとっては、左のボールの置き所を定められたことは大きかった。
一方のビラはシンプルにサイドのスピード感で勝負。ウォーカー=ピータースとジェネポの2人が馬力を生かしてサイドを切り開いていく形で迫っていく。クロッサーとして優秀なウォード=プラウズも右サイドからクロスを上げることでチャンスを作っていた。中央ではアダムスも奮闘。体を張るポストでサイドを変える起点として機能しており、サウサンプトンが押し返す大きな原動力になっていた。
ややサウサンプトンの方がエリアに迫る頻度は多かったように思うが、アストンビラも後方からサイドを変えるまでの工程が今までよりもスムーズ。右サイドも使えるようになり押し込む頻度を増やしていく。
すると、先制点はセットプレーから。ポストに当たりピンボール気味になったところ押し込んでビラがゲット。ラムジーが背番号と同じ41分に試合を動かす。
後半はリードを奪ったビラがペースを掴む。とにかく、サウサンプトンに自陣側に攻め込ませない。ボールを持って敵陣に確実に押し込むし、何よりもネガトラが非常に早い。
特にブエンディアが入ってからの中盤の気合の入り方は異常。なんとしてでもここより前でボールを跳ね返してやろう!という気迫が伝わってきた。今季これまでのビラの中でも最もプランにコミットすることができていた45分だと思う。中盤が5枚のように守れるようになったことでルイス、マッギンなど運動量勝負ができるダイナモが広範囲に動いてもカバーできるようになったのもよかった。
サウサンプトンは4-3-3変形とアタッカー陣の投入など攻撃的な舵を切ったが効果は限定的。なにしろ、彼らにボールを届けるためにビラの中盤を超えるのがしんどいのである。
先制点を守って逃げ切るべく魂を見せたビラがホームで前節に続き勝ち点をゲット。何よりも後半の選手たちの気迫は巻き返しにおける明るい材料になり得るはずだ。
試合結果
2022.9.16
プレミアリーグ 第8節
アストンビラ 1-0 サウサンプトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:41′ ラムジー
主審:トニー・ハリントン
第9節 リーズ戦(A)

内を締めたリーズにビラの攻撃は届かず
序盤にボールを握ったのはホームのリーズ。強引にプレスでボールを奪い返してこないアストンビラに対して、ボールを回しながら攻略できるポイントを探っていく。
この日のリーズは普段と異なり、左右のSHが逆。リーズは左サイドに入ったシニステラのところから攻撃を狙っていく。バックラインからテンポ良くボールを動かしつつ、縦パスを入れて前を向ける位置を探っていく。アンカーのルイスの両脇を中心に縦パスを入れてターンで前を向くトライを行っていた。
アストンビラはそうしたスタイルとは真逆の前進方法。ボールを奪ったらとっととトップのワトキンスにボールを入れるロングボール主体のやり方で反撃に出る。リーズに比べると泥臭さが際立つが、ワトキンスのボールの収まり方が悪くないので、前進の手段としては十分だったと言えるだろう。セットプレーや空中戦など肉弾戦ではアストンビラに分があり、ボールを持たれても攻め手がないわけではなかった。
前を向く選手を作ることができれば十分に加速できるリーズは立ち上がりこそペースを握るものの、徐々にトーンダウン。形を作れなくても長いボールを蹴ることさえできれば前進ができるビラが敵陣に迫る機会が増えていくようになる。やはりワトキンスのようなターゲット型のCFは偉大。ロドリゴも悪くはないが、うまくいかない時間帯においてはやはりバンフォードがどうしても恋しくなってしまう。
後半、リーズは再びバックラインから粘り強いポゼッションを開始。なかなか超えることができないビラの2列目を動かすトライを行う。しかし、シニステラがリスタートを妨害したことで2枚目の警告を受けて退場。これで展開は一変する。
退場直後は4-4-1で構えていたリーズだが、フィルポの投入から5-3-1に移行。中を固めて撤退守備の色を強めてアストンビラを迎え撃つ。ビラはボールを持ち、攻める機会が増やしはしたがブロックの中に踏み込むことができない。
5-3-1の攻略はインサイドに入り込む手段と外から殴る手段を両方持っているとだいぶ楽なのだが、ビラは大外のクロスにこだわりすぎてしまった感がある。コウチーニョやブエンディアが細かいことをやる機会はもっと増やしてもよかったかもしれない。
後半は逆にリーズが長いボールからファウルを奪い、限られたチャンスを作っていく。日本戦では静かだったアーロンソンはクラブでは相変わらず好調そう。ファウルが取れる彼は10人で攻める際の貴重なカード。バンフォードが交代で入ったこともあり、アバウトさを許容できるようになる。
機会は十分に得ることができたビラだが、距離があるシュートは問題なくメリエに処理をされる時間が続いていく。10人のリーズに絡め取られたビラは最後までゴールを奪うことができず。試合はスコアレスドローで幕を閉じた。
試合結果
2022.10.2
プレミアリーグ 第9節
リーズ 0-0 アストンビラ
エランド・ロード
主審:スチュアート・アットウェル
第10節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

押し込んでも押し込めなくても決め手がない
前節、レスターとの逆天王山に敗れ最下位に転落してしまったノッティンガム・フォレスト。しかしながら、クラブはスティーブ・クーパー監督と2025年まで契約延長を発表。最下位でも信頼感を示してこのスカッドを託す形となった。今節の対戦相手は中盤での守備で防波堤を気づくことで徐々に波に乗ってきたアストンビラである。
4-3-3で組み合った両チームの一戦は非常に慎重なものになった。トップのプレス位置はアンカー。かなり低い位置でブロックを敷くことになった。
というわけでボールを持つことを許された両チームのバックライン。フォレストはCBがGKを挟む形でポジションをとり、低い位置からのパス交換を志向する。IHが降りる動きを見せることもあり、短いパスからの組み立てを行う。
ビラのプレスを徐々に手前に引き出すと、フォレストの前線は裏を狙う。ジョンソン、デニスは共に右サイドから裏を狙い、ビラの陣形を縦に引き伸ばしていく。先制点はデニスの裏抜けで得たFKからである。決めたのもデニス自身。今季ここまで途中交代で振るわないパフォーマンスが続いていたが、ようやくここでゴールを決めて貢献することができた。
だが、ボールを持つ局面がより多かったのはビラである。フォレストはSHの意識が後ろに入るなど、ビラよりもさらにプレスの重心が低い状態に。ビラは左サイドを軸にコンビネーションから崩しを狙っていく。
ビラが両サイドから押し込んだことでフォレストはエリア内などの低い位置で受ける時間が長くなってくる。同点ゴールを決めたのはヤング。自然な流れでバイタルに入ってきたヤングがヘンダーソンも反応することができないミドルを打ち込んで同点に追いつく。
以降も試合はトランジッションが少ない我慢比べのような展開に。どちらかといえば優勢なのはビラ。フォレストはライン間のギブス=ホワイトに縦パスを受けてターンして前を向くことができればチャンスにはなるが、サイドの崩しがSBとWGの2人の形になりやすく、ビラのサイドはそこまで守ることに苦労しなかった。
それに比べればIHがうまく攻撃に絡んできたビラは3人目の動き出しから奥行きを作ることができる。ボールを持つ時間は長く、後半の深い時間になるとビラが押し込む一方的な展開になる。
イングスの投入でFWを実質2枚体制にしたり、4-2-3-1に変更して前がかりになる人数を増やすなど人員で工夫を見せるビラ。だが、最後までアタッキングサードの破壊力が高まることはなかった。
押し込んでも決め手がないビラとそもそも押し込めないフォレスト。どちらもチャンスらしいチャンスがないまま後半は経過し、互いに勝ち点を分け合うドローとなった。フォレストはこのドローで最下位脱出に成功している。
試合結果
2022.10.10
プレミアリーグ 第10節
ノッティンガム・フォレスト 1-1 アストンビラ
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:15’ デニス
AVL:22‘ ヤング
主審:アンソニー・テイラー
第11節 チェルシー戦(H)

ミングスの憂鬱な一日
少々並びが読みにくかったチェルシーだが、蓋を開けてみると3-4-3。スタートで右のWBに入ったのがスターリングというのは少々驚きだろうか。
チェルシーの保持はかなり慎重なものだったといえるだろう。外循環を軸にボールを動かしながら、じっくりとアストンビラの4-3-3と対峙。無理に縦パスを入れてカウンターを食らうような真似を避けるかのようにボールを動かしていった。
アストンビラの守備はバックラインに3トップでプレスをかけつつ、背後を3センターでカバーしてもらうという昨シーズン後半に定番として見られた形だった。チェルシーのポゼッションのスピードはそこまで早いものではなかったので、ビラはワイドのカバーに間に合っている印象である。
チェルシーの本命は中盤の守備を広げた状態を作り、インサイドで呼吸ができるようになったタイミングでコバチッチやロフタス=チークにボールを渡すこと。しかし、ビラのスライドが間に合っている状態が多く、なかなかチェルシーは前進ができない。
我慢比べになるのか?という試合の展望をぶっ壊してしまったのがミングスだ。明後日の方向に決めてしまったクリアをマウントに拾われて失点。これで凌ぐというビラのゲームプランは壊れてしまった。
失点で前に出て行く必要が出たビラ。バックラインからの繋ぎで前に強気で出てくるチェルシーのプレスを外していく。狙い目としたのはお馴染みの左サイド。この日はワトキンスのスタート位置が開いていたこととSBがヤングであることからかなりこちらのサイドの攻撃は効く感じである。
大外からのヤングとスターリングの1on1も有望だし、ハーフスペースの走り込みに縦パスを使ってエリア内を空けるのもいい。左サイドを軸にビラは保持からチェルシーを攻め立てることが出来た。
しかし、そこに立ちはだかったのはケパ。ポッター就任と同時に正守護神の座と自身を取り戻したスペイン人GKは立て続けのセーブでチェルシーのピンチを救い続ける。
後半はクリバリ、アスピリクエタを投入し、後ろの手当てを図るチェルシー。ビラの攻勢を前半よりは抑えることに成功する。
逆にビラは中盤のコンパクトさを徐々に維持できなくなってくる。コバチッチをフリーにできるようなボール回しも前半よりは増加し、チェルシーが落ち着いてボール保持を進めることができる展開が増えていく。
試合を動かそうと攻撃的なカードを切るビラだが、前半のような一気呵成の攻めを再現するところまではなかなか至ることができない。そんなビラを尻目にコバチッチからボール運び続けるチェルシーはマウントのFKで試合を決める追加点をゲットする。
いい時間帯を作ることは出来たが、仕留めることが出来なかったビラ。ミングスにとっては先制点の扉を開けてしまった上に、終盤には負傷してしまう(最後までプレーはしていたが)など、散々な一日になってしまった。
試合結果
2022.10.16
プレミアリーグ 第11節
アストンビラ 0-2 チェルシー
ビラ・パーク
【得点者】
CHE:6‘ 65’ マウント
主審:ロベルト・ジョーンズ
第12節 フラム戦(A)

ジェラードに引導を渡すミトロビッチ
ともに3試合勝ちなしで迎える両者の対戦。結果もさることながら、内容も停滞感がありどちらのチームにとってもブレイクスルーが欲しい中での一戦になる。
立ち上がりからボールを持つのは一方的にフラムの方だった。アストンビラの守備は前節から昨年使用の3センターがど根性スライドを敢行し続けるスタイルにカムバック。3トップは守備での貢献は最低限の前残りを見せる姿勢になった。
フラムのポゼッションはそうしたビラの守備の特徴をしっかり掴んでいたように思える。バックラインは横幅を使いながら広くボールを回す。時折、2列目からウィリアンが降りてきて逆サイドに大きな展開を行う。インサイドが開けばパリーニャにボールを入れて、縦方向に攻撃を加速させるという使い分けができていたのも、この日のフラムの保持が良かったポイントだろう。
フラムがとりあえず横幅を使うだけでビラの3センターはいちいち横への移動を余儀なくされる。一般的にピッチの横幅を3枚で対応するのは基本的に難しいこと。この日のように自由にサイドを変えられてしまっては実質不可能と言っていいだろう。
こうしてビラの中盤を突破することに成功したフラム。サイドから攻め込みクロスを上げることでチャンスを作っていく。この日はセットプレーも手応えあり。ビラのDF陣に競り勝ち、あわやという場面を作り出していく。
中盤をポゼッションで突破されると苦しくなるのはフラムも一緒なのだが、ビラはボール回しでフラムの中盤と駆け引きすることは諦めてしまっていたように思える。長いボールをワトキンスやイングスめがけて放り込み、一気に陣地回復を行っていく形を狙っていく。しかし、全体の押し上げが効かないため、セカンドボールを拾えずすぐにフラムにボールを回収される。
そうなると両チームの前進の機会に差が出るのは必然だ。より多く敵陣に攻め込むことができたフラムはサイドからの押し込み+セットプレーというこの試合の頻出パターンで先制。ハリソン・リードのミドルは非常に見事であった。
後半、反撃に出たいビラは割り切って強度をアップ。放り込みに後方から走る選手を増やすことで半ば強引にペースを引き戻そうとする。リズムとしては五分五分といえるところまで押しもどせた感があったのだが、それを台無しにしたのがドウグラス・ルイス。ミトロビッチの挑発に乗ってしまい、頭突きの反撃で一発退場。ミトロビッチ、相変わらずスレスレのプレーで罠に嵌めるのがうまい。
数的優位を享受したフラムはここから一方的なポゼッションでアストンビラを押し込む。決定的な追加点を奪ったのはまたしてもミトロビッチ。キャッシュのハンドをエリア内で誘い、自ら得たPKを沈めてこの試合の勝利を決定的なものにする。
フラムは仕上げの3点目も獲得。ミングスのオウンゴールというのはいろんな意味で切ない。ルイスの退場で流れを取り戻すチャレンジをフイにしたビラ。ジェラードにとってはアストンビラの監督としての最後の試合になってしまった。
試合結果
2022.10.20
プレミアリーグ 第12節
フラム 3-0 アストンビラ
クレイヴン・コテージ
【得点者】
FUL:36′ ハリソン・リード, 68′(PK) ミトロビッチ, 84′ ミングス(OG)
主審:マイケル・オリバー
第13節 ブレントフォード戦(H)

就任初陣としてはパーフェクトな大勝
ついに職を解かれてしまったスティーブン・ジェラード。プレミアのレジェンドとお別れしたビラはこの試合の後になったがウナイ・エメリという11月以降の後任人事が発表された。ひとまず暫定監督となったのはトップチームのコーチだったアーロン・ダンクスである。
ダンクスが採用した4-2-3-1はなかなか面白かった。3センター時代には絶対的なレギュラーだったマッギンとラムジーをベンチに下げて、ルイス(あのレッド、許されたんですね)の相棒にデンドンケルを起用した。WGは左右を入れ替え、ワトキンスを右、ベイリーを左に置いて順足の形になる布陣に。
初陣において先制点が早めに入ったことは非常に心強かったはず。セットプレーからのベイリーのミドルで試合は早々に動き出す。
新布陣においてはいくつかの改善点が見られる。アンカーだと動きすぎるドウグラス・ルイスのケアとして2センターの採用というのも面白いが、最も印象的だったのは左サイドの縦関係。ヤングとベイリーという左右のドリブラーを並べた左サイドの破壊力は魅力的だった。
2点目はこの2人の関係性を生かした斜め方向の崩しで数的には有利だったブレントフォードの守備網をあっさり破壊。最後に決めたイングスはもはや仕上げるだけだったといえるだろう。ワトキンスも右サイドでキープ力を発揮しており、前線の役割としては十分だったといえるだろう。
ブレントフォードとしては2列目の手前の時点で止めたかったが、そこの関門を突破されてしまうことが多かったのが痛恨だった。後列からの人数をかけたビルドアップは大きなサイドへの展開という形で一定の効果を見せてはいたが、いい流れを作る前にアイエルがPA内で相手を引っ張りまくってPK献上。反撃に転じる前に3点のビハインドを背負ってしまう。
流れを取り戻すべくハイプレスに転じたり、1つ奥を狙った縦パスからのレイオフで前進を狙ったりなどブレントフォードは抵抗を見せる。だが、この日はアタッキングサードにおけるサイドからのクロスでなかなからしい破壊力を見せることができない。
後半も勢いよく巻き返しに出てくるブレントフォードだが、アストンビラはポゼッションで一回展開を落ち着けるという大人の対応。2枚交代による巻き返しによる効果は限定的なものだった。
後半も先に得点をしたのはビラ。カウンターから4点目を奪い、後半の反撃の芽を摘む。直後のカウンターでのブレントフォードの決定機が刺さらなかったことで試合は完全決着したといえるだろう。
終盤はワイドを使いながら徐々に保持を増やしたブレントフォードがペースを取り返すが、ボール回しが増えるばかりで中を打開する策がどうしても出てこず苦戦。最後までマルティネスからゴールを奪うことはできなかった。
監督交代後の初陣としては完璧な働きをしたダンクス。いい流れを絶やさずにエメリへのバトンをつなげるか、次節のニューカッスル戦にひときわ注目が集まる結果になった。
試合結果
2022.10.23
プレミアリーグ 第13節
アストンビラ 4-0 ブレントフォード
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:2′ ベイリー, 7′ 14′(PK) イングス, 58′ ワトキンス
主審:ダレン・イングランド
第14節 ニューカッスル戦(A)

2点目を皮切りに一気に畳み掛けてゴールショーに
立ち上がり、ボールを持つことができたのはニューカッスル。アストンビラがトップのプレスをイングス1枚にしていたため、余っているバックラインからニューカッスルはボールを運ぶことができた。大きな展開でビラの中盤を突破し、安定した前進した披露。ニューカッスルのCBの展開力はこの日も健在だ。
敵陣にボールを運んだ後、ロストしてしまった流れで見せる即時奪回もなかなかの迫力。特に、すっかりレギュラーに定着したロングスタッフはボール奪取から右サイドに展開してのショートカウンターで威力を発揮していた。ニューカッスルの右サイドはこの日もイケイケ。アルミロン、トリッピアーのコンビは凶悪で、アタッキングサードでの攻撃の大半を担っていた。
ニューカッスルはアストンビラより積極的なプレスを敢行。WGの外切りプレスやSBの高い位置のプレッシングからなるべく敵陣に近いところでボールを奪う狙いを見せていた。
これに対してアストンビラはイングスにロングボールをぶち当てての前進を狙っていく。2列目はロングボールを追いかけるようにプッシュアップ。セカンドボールを拾いに出ていく。サイド攻撃で狙い目にしたのは左側。ベイリーが大外を回すように裏を取る形からPA内に入っていく。
どちらのチームも前進の手段は持っていたが、安定してボールを持つことができたのはニューカッスル。アストンビラは時間の経過とともに、中盤を超えることができず、一方的にニューカッスルに押し込まれる展開になっていく。
すると、前半終了間際に押し込んでいたニューカッスルにご褒美。ヤングが遠目で見ても明らかなハンドを犯し、ニューカッスルにPKが与えられる。これをウィルソンが決めて先制する。
後半もニューカッスルの勢いが止まらない。立ち上がりからアストンビラがポゼッションから主導権を握り返すトライを行ったが、ニューカッスルがすぐに反撃。セットプレーからウィルソンが2得点目を決める。
さらに畳み掛けるようにロングカウンターを仕掛けるニューカッスル。英スク覚悟で前に出てきたアストンビラをひっくり返すようにギマランイス、ウィロック、ウィルソン、ジョエリントンと繋いで3点目をゲット。
仕上げとなったのは今日も絶好調が止まらないアルミロン。前節に引き続き芸術的なゴールを決めてゴールショーのトリを飾って見せる。
4点を奪われてしまったアストンビラ。途中で中盤のフィルターを強化する変更などをテストしたものの、なかなか主導権を取り戻すことができずに苦戦。最後までニューカッスルの壁にぶち当たったアストンビラにとっては苦い完敗となってしまった。
試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
ニューカッスル 4-0 アストンビラ
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:45+6′(PK) 56′ ウィルソン, 59′ ジョエリントン, 67′ アルミロン
主審:ポール・ティアニー
第15節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

保持と非保持の両面でみせた華麗なスタートダッシュ
ロンドン発、ビジャレアル経由、アストンビラ行きという形でプレミアリーグに帰還を果たしたウナイ・エメリ。ワールドカップまで残りのリーグ戦は2節というタイミングで迎えたホームに迎える相手はマンチェスター・ユナイテッドである。
立ち上がりからアストンビラはモデルチェンジの風情を見せつける。陣形こそ大幅な変化はないものの、ひたすらボールを持ちながら相手の出方を待つということをやっていた。マンチェスター・ユナイテッドは高い位置から積極的にプレスを仕掛けていくタイプではない。
なので、ビラはひたすら待つ。ユナイテッドが出てくるのを待つ。双方睨み合いの状況から痺れを切らしたのはユナイテッド。仕方なくビラに付き合うように前に出ていく。
すると、アストンビラの攻撃は一気に加速する。ユナイテッドが前出てくる瞬間を狙って縦パスを一本入れる。ユナイテッドのプレスはカゼミーロを後方に残し前後分断気味になる。狙い目になるのはカゼミーロ周辺のスペース。ここのスペースにラムジー、ベイリーが顔を出して縦パスを受ける。
結果が出たのはあっという間。縦パス一つで加速した攻撃を左サイドから完結させたベイリー。7分でアストンビラは先制点を生み出す。
続く、11分には追加点。ユナイテッドのパスミスを掻っ攫う形でファウルを奪うと、ディーニュが素晴らしいFKを決めてあっという間に引き離す。ビラは保持、非保持(デンドンケルが前に出ていくのがハイプレスのトリガーだ)の両面からユナイテッド相手にそれぞれ得点を奪ってみせた。
2点差をリードしたビラがプレスを緩めたため、ユナイテッドはボール保持の時間を得ることができた。しかし、前4人のユニットは即席感満載。大外のサイドでガルナチョとダロトがそれぞれ奮闘していたが、流石に個人のデュエルで破壊できるほどの精度はない。前半終了間際にオウンゴールで追撃するが、手応えがどこまであったかは微妙なところである。
後半、追撃弾を足がかりに攻勢を強めたかったユナイテッド。だが、カウンターからアストンビラが追い打ちをかけていく。ラムジーの3点目はユナイテッドの反撃の意欲を削ぐのに十分なものだった。
以降もアストンビラは試合をコントロール。コンパクトなブロックと割り切った形から繰り出されるロングカウンターでユナイテッドを苦しめる。3枚替えで流れを引き寄せたかったユナイテッドだが、マルティネスの好守もありさらなる得点を奪うことができなかった。
ユナイテッド相手の勝利という幸先のいいスタートをみせた二度目のエメリのプレミア挑戦。まずは上々の滑り出しに成功した。
試合結果
2022.11.6
プレミアリーグ 第15節
アストンビラ 3-1 マンチェスター・ユナイテッド
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:7′ ベイリー, 11′ ディーニュ, 49′ ラムジー
Man Utd:45’ ラムジー(OG)
主審:アンソニー・テイラー
第16節 ブライトン戦(A)

ルイスのリベンジ達成が逆転ゴールの足がかりに
1分に達する前に試合は動く。先制したのはブライトン。ドウグラス・ルイスへの縦パスを咎めたマック=アリスターがそのままシュートを蹴り込み先制する。
ビラの失点の仕方はユナイテッド戦を見る限り、いかにもこういう形からのミスはありそうだなという類のもの。相手を引きつけて擬似カウンターの「引きつけて」の部分で決定的なミスが起こってしまうというやつである。
先制はされたビラだが、引きつけての擬似カウンターというプランがうまくいっていないわけではなかった。GK-CBの3人でフラットに並んでのビルドアップはマルティネスに正確なフィードがあることもあり、前線への長いボールは普通に機能。降りてくるCHにボールを入れるタイミングも失点直後のララーナの負傷のタイミングで整理した感があった。
アストンビラの前線にボールが入れば、ブライトンとのバックラインとのスピード勝負になる。ビラの擬似カウンターは選択肢を突きつけながら前に進んでいくというよりは、少ない人数で広いスペースの状態を前線に作り出し、わかっていても止められない形を作り出すことに重きが置かれているように思う。
同点ゴールとなったPKのシーンはまさにその形。ブエンディアの選択肢は実質マッギンへのパスしかなかったが、ダンクとのスピードのミスマッチを活用し、マッギンは見事にファウルをもぎ取ってみせた。
ブライトンは試合のテンションに引っ張られるようにやや落ち着きのないボール保持になった。高い位置からプレスにくるビラのバックラインにCBがあたふたすることもしばしばで、いつものように相手を見て穴があるところにボールを送るような形は鳴りを顰めるように。
CBに抜擢されたコルウィルはチャレンジングなパスを好み、攻め筋はいつもよりも直線的。やり直しの少なさはいつもと少し異なるテイストを感じたし、そうした中で前線に顔を出せるマック=アリスターや、左サイドを駆け上がれるエストゥピニャンなどは頼りになる存在だったと言える。
展開としては互角に近いものだったが、完成度の違いが出にくい予想のつきにくい流れに持っていったのは、監督就任間もないビラの方が好都合な前半だったと言えるかもしれない。
後半は前半よりは保持で落ち着きを見せるようになったブライトン。このまま、押し切るモードになるかと思いきや、まさかの落とし穴。なんと、自陣でのボールロストをカウンターで仕留められてしまう。ルイスがマック=アリスターを咎めてのショートカウンターという構図はブライトンの1点目と全く逆の形。ルイスはリベンジ達成した格好になった。
3バックに移行してWBの攻撃参加を促すブライトン。右はマーチ、左はトロサールが幅をとり両翼から攻撃を仕掛けていく。対するビラは即座にバックラインの人数を増やす。5バックかと思いきやまさかの6バック。人余ってるし、ライン揃えにくくなるだけでは?と思ったし、あまり実効的ではない気もしたが逃げ切れたのできっと正義なのだろう。
終盤はビラが交互に無限にカードを貰い続ける展開に。ブライトンにとっては非常にストレスの溜まる状況だったはず。ファウルに塹壕戦と何もかも投げ打って守りに入ったビラが逆転勝利に成功。エメリはこれで就任後2連勝を飾ることとなった。
試合結果
2022.11.13
プレミアリーグ 第16節
ブライトン 1-2 アストンビラ
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:1′ マック=アリスター
AVL:20′(PK) 54′ イングス
主審:クリス・カバナフ
第17節 リバプール戦(H)

乱戦に終止符を打った若武者
ここからCL出場圏内にジャンプアップをしていきたい反撃のリバプール。まず、初戦で乗り込むのはビラ・パーク。エメリ就任間もないアストンビラがリバプールの前に立ちはだかる。
試合は序盤にいきなリアストンビラの選手同士が交錯。バタバタとした立ち上がりとなった。今思えば、そんな立ち上がりはこの試合の落ち着きのなさを象徴していたのだろう。
バタバタが落ち着かないままセットプレーからリバプールに先制点を許してしまったアストンビラ。とはいえ、これはリバプールを褒めるべきシーンだろう。アレクサンダー=アーノルドが最終ラインから素晴らしいフィードを送り、抜け出したロバートソンの折り返しをサラーが押し込んで先制点を奪う。ダイレクトなパスワークから生み出した華麗なフィニッシュだった。
以降の展開も非常にダイナミックそのもの。ビラは左サイドから深さを作り、左右への大きな展開で1on1を作っている。サイドからのクロスは比較的効果があり、ビラは立ち上がりからリバプールに追いつくチャンスを作り続けていた。早い時間に先制したことで、リバプールがやや撤退気味の守備を敷く場面が増えたが、相手に持たせても意外と危険な場面を作られている。そうした部分を鑑みても、アバウトでも前進していこう!という流れから撃ち合いに持ってくるこの日のプランは彼らに合っているのだろう。
リバプールの本命はサイドからの裏抜け。ヌニェス、サラーが無限に抜け出す動きを繰り返すことでチャンスメイクを行っていく。抜け出すところまでは完璧なのだが、ヌニェスはカップ戦に続き今日も決め切ることができない。幾度か回ってきたチャンスを全てフイにしてしまう。
全体的に大味な流れではあるが、そうした流れに抗うこともなくスムーズに乗ったのはリバプール。アストンビラは前半途中からゴールに迫るシーンはやや減ってきた。そうした中でセットプレーから再びリバプールがゴール。混戦の中からファン・ダイクが決めて、前半の内に大きな2点目を奪い取ることに成功する。
後半、攻勢に出たのはビハインドのアストンビラ。中央のワトキンスに積極的に縦パスを入れていくことで陣地回復を図っていく。ワトキンスのオフサイド、マッギンの決定機のチョンボなど追撃弾を挙げるチャンスをことごとく逃していたアストンビラ。だが、後半の時間がある程度過ぎても攻勢がなかなか終わらなかったのは救いである。
もちろん、アストンビラが攻勢に出れたのには訳がある。リバプールは前線のうち、サラーとヌニェスが前残りしていたし、オックスレイド=チェンバレンは守備面でやや迷子になっていた感があったので、実質後方は7枚守っていた感があった。よって、手薄になるのはサイドの守備。アストンビラは左右の大外から無限にクロスを入れ込み、シュートまで持っていく状況をコンスタントに作れていた。。
ただ、前残りの意味もある。サラーとヌニェスの抜け出しからロングカウンターにチャンスメイクができる状況は作れていた。いや、2人とも後半はゴールは決められなかったのだけども。
アストンビラがようやく得点を手にしたのは59分のこと。右サイドからのクロスをファーで待ち構えていたワトキンスが叩き込み、ようやく1点差まで迫る。リバプールはエリオットを投入し、サイドできっちりクロスを咎める役割をさせるなど手当を行うことに。
リバプールファンの脳裏によぎった不安をかき消してくれたのが交代で入ったバイチェティッチ。左サイドに流れたヌニェスの抜け出しからの折り返しの流れで、ミングスの股を抜くシュートで3点目を奪って見せた。
乱戦に終止符を打ったのはカラバオカップでも存在感があった若武者。年末年始で上位陣を追いかけたいリバプールにとっては若手が押し上げに加わるのは頼もしい限りだろう。
ひとこと
ヌニェスとかベイリーとかシュートの精度がアレな感じの選手がやたらとチャンスメイクで効いていた。ヌニェスは抜け出しの頻度はいつも以上な気がするけど、シュートは呪われている。シュートが呪われてしまうと、前残りの収支がどれだけ合うかは不透明。ベン・ドークくんもなかなか面白かった。
試合結果
2022.12.26
プレミアリーグ 第17節
アストンビラ 1-3 リバプール
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:59′ ワトキンス
LIV:5′ サラー, 37′ ファン・ダイク, 81′ バイチェティッチ
主審:ポール・ティアニー
第18節 トッテナム戦(A)

ジリジリした展開を動かしたミス
前節、上位陣で唯一引き分けになってしまったトッテナム。暫定では4位をユナイテッドにとって変わられており、この試合で勝ち点を落とせばCL出場圏外に転落してしまうことになってしまう。普段以上に勝ち点を落とせない一戦である。
立ち上がりは互いに隙あらばプレスにいくが、あまりハマりは良かったとは言えない。トッテナムはケインが同サイドに追いやりながらプレスのスイッチを模索するが、オルセンを活用するビラのビルドアップに対してなかなか同サイドに攻撃を制限しきることができない。どちらのチームも互いのフォーメーションの噛み合わせの悪さのところから前進していった。
ただし、中盤より後方のプレッシングの出足は前節よりも良好。特にタンガンガに代わってスタメンに名を連ねたロメロの潰しは効いていた。よって、前節よりは前線のプレスはハマらないながらも、相手に主導権を持っていかれずに済んだと言えるだろう。
だからこそ、トッテナムのバックラインの警告を次々にもらった振る舞いは余計。前半のうちにCB3人が全員イエローカード持ちというスペイン戦の日本みたいな状態になっていた。
アストンビラもプレスに行っていたが、こちらは中盤のケアを放置したためほとんど実効性がないものに。よって、すぐさま撤退に切り替え。アストンビラはトッテナムと比べてもより低い位置でブロックを組むことを優先する形になった。
したがって、試合はトッテナムのボール保持を主体として進むことになる。非保持では撤退上等のアストンビラはトッテナムのWBについていく形でSHが下がる形で対応する。下がってOKという判断をしたアストンビラはカウンターの厚みがなかなか出ない状況に苦しむ。彼らのチャンスはワトキンスの一発の抜け出しなど、フィニッシュまでが見える裏抜けになることが多かった。
アストンビラの撤退守備のフェーズで目立っていたのはカマラ。サイドからの攻め込みに対してのカバーリングが見事。保持においてもボールの落ち付け所として機能しておりとてもよく効いていた。逆にトッテナムは保持で打開の策を見出すことができない。ソンの降りる動きとケインの出所がバレてしまうワンツーの2つはどちらも十分な武器とはならず、クルゼフスキ不在が重くのしかかる展開に。
スコアレスで迎えた後半、いい入りをしたのはホームのトッテナムの方だ。CBがワイドから持ち上がり攻撃参加。プレッシングが機能しての即時奪回とアストンビラのゴールに迫っていく。
しかし、それを台無しにしてしまったのが悪い流れからの失点だ。ビラはミドルシュートから先制点をゲット。このミドルの処理をロリスがミスし、こぼれ球に真っ先に詰めたワトキンスが根性で繋ぎ、最後はブエンディアが仕留める。トッテナムは前節と同じく、後半の頭の不要なミスから失点をするという展開に。これで公式戦は10試合連続で先制点を献上していることになるようだ。
前節のトッテナムはここから取り返したが、この日はジリ貧。ロングカウンターからのチャンスがないこともなかったが、つなぎの精度が悪く、ビラのDFラインの裏をかくことができない。バックラインを5バックに増員し、安定感を増したビラを打開するのに十分な攻撃を見せることができなかった。
すると、アストンビラは追加点を決める。ケインの降りる動きを咎めたところからカウンターで反撃。マッギンのラストパスを抜け出して合わせたルイスが仕留める。試合を決める2点目を許したトッテナムはこれで終戦。5枚の交代枠こそ使い切ったものの、ここまでほぼ使わなかった選手だらけでは望みをつなぐのは難しい。逆転勝利が多いトッテナムだが、この日の彼らにはビラを跳ね返す力は残っていなかった。
ひとこと
これだけジリジリした展開において先制点は超重要。それだけに後半の早い時間にミスで失点したトッテナムは自分の首を締めるような試合運びだった。
試合結果
2023.1.1
プレミアリーグ 第18節
トッテナム 0-2 アストンビラ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
AVL:50′ ブエンディア, 73′ ルイス
主審:ジョン・ブルックス
第19節 ウォルバーハンプトン戦(H)

追いつかれてもルーティンは守る
4-4-2をベースとする両チームの対戦だが、序盤から優位に立ったのは下位に沈むウルブスの方。アストンビラの2トップがバックラインのケアを担当しつつ、中盤のパスコースを消す意識が高かったため、バックラインは比較的簡単に配給をすることはできていた。
プレッシャーが軽かったのは最終ラインに落ちるネベスも同じ。展開力のある彼から大きく左右にボールを振ることで、ビラの縦横にコンパクトな陣形の外側からガンガン侵入することができていた。ネベスが良かったのは大外へのフィードだけでなく、ライン間を使う配球ができていた点。ビラのライン感がルーズと見ると、縦パスから一気に攻撃を加速させることもできていた。
先制点を決めたのはウルブス。コーナーのキッカーを務めていたポデンスがモウチーニョの助けを借りながら右サイドから侵入。何人かのアストンビラのDFを交わしながらエリア内に入り込み左足を一閃。GKのマルティネスはこれに全く反応できなかった。
アストンビラはボール運びでもなかなか反撃に出ることができずに苦戦。バックラインに時間を与えられたのはこちらも同じだったが、ミドルゾーンへの縦パスはことごとくウルブスにカットされてしまう。むしろ、カウンターの加速装置にさせられてしまった感のあるビラの縦パスはウルブスのパスカットの狙い所になってしまった。ビラはトップのコスタがサイドに流れたり、空いたライン間をヌネスが蹂躙したりなど先制後も優位に試合を運んでいく。
後半、ウルブスはトラオレを投入。前半よりも重心を下げながらのカウンターを狙う形にシフトする。保持におけるプレッシャーが前半よりも緩くなったビラはCB+CHを軸にサイドに大きな展開を増やしながら敵陣深くまで進む機会を確保。前半のウルブスのように高い位置まで入り込み、ウルブス陣内でのプレータイムを増やしていく。
トラオレのカウンターも有効ではあったが、ラストパスとシュートの両面で精度が伴わないのが厳しい。ロペテギはアイト=ヌーりを投入し、カウンター要員を増やすが更なるゴールがウルブスに入ることはなかった。
選手交代でより効果を発揮したのはアストンビラの3枚替えのほう。アウグスティンソンのシュートがポストを叩くなど、投入直後から攻撃のアクセントとして効いていた。そして、決め手になったのはイングス。バックラインからミングスのフィードで抜け出すとジョゼ・サとの1on1を冷静に沈めて同点に追いついてみせる。
同点に追いつかれてもなおいつものルーティンのように5バックに移行するウルブス。これによってゲームのオープンさはやや低下。どちらのチームもチャンスが少ない展開に。それだけに終盤のベイリーのチャンスは決定的。決めていれば3ポイントのゴールは枠外に流れてしまい、ビラは勝利のチャンスを最後に逃してしまった。
ひとこと
就任直後ということである程度は長い目で見たいけど、時間経過とともに毎節のように行われるロペテギのフォーメーション変更はずっとよくわからない。
試合結果
2023.1.4
プレミアリーグ 第19節
アストンビラ 1-1 ウォルバーハンプトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:78′ イングス
WOL:12′ ポデンス
主審:ジャレット・ジレット
第20節 リーズ戦(H)

近づけない境界線
現在のプレミアリーグのテーブルを眺めてみると、残留争いのボーダーになりそうなのは12位と13位の間かなという感じ。5ポイントのギャップがあるこの境界線が残留争いに巻き込まれているか否かを分けている印象だ。
この境界線の少し上にいるのがアストンビラ。戦績は安定こそしないが、要所できっちり勝っているためポイントは順調に重ねている。逆に直近の成績の低迷でこの境界線に届いていないのが今節の相手であるリーズ。直近の4試合で未勝利とブレーキがかかっている印象だ。
両チームとも先発では配置を微妙に変更。ラムジーをSHに入れたビラはベイリーとブエンディアの中央とサイドを入れ替える。リーズはアーロンソンを中央に置き、右サイドにハリソンを入れる形で2列目をアレンジした。
試合は早々に動く。セットプレーからのロングカウンターを決めたのは右に配置変更されたベイリー。カットインからのシュートというレバークーゼン時代を彷彿とさせるようなシュートを決めて先制。前節のウルブス戦でマッチウィナーとなれなかった雪辱を早々に晴らして見せる。
先制はされたもののリーズの戦い方は悪くなかった。前節であまり見られなかったプレッシングの力強さも復活しているし、ボールを奪った後のカウンター移行もスムーズ。中盤でボールを奪い、カウンターからニョントを軸にサイドから攻勢をかける形は効いていた。
ビラは非保持においてはマンツー気味に追い回す形ではあったが、特に中盤を捕まえきれない場面が目立つように。アダムスとロカを抑えきれない状況により、押し込まれる展開に追いやられてしまう。
一方のビラの前進はロングボールでの競り合いを軸としたもの。先制したからということもあるかもしれないが、相手を引き込みつつ早めに前に蹴るスタイルを採用。この形のせいであまり保持が安定しなかった上に、かなり体のぶつかり合いが多くなってしまう。展開の影響を受けたのはビラ。ディーニュ、ワトキンスと続々と負傷者が出てしまい、前半から2回の交代を使う羽目になってしまう。
不安定な保持と中盤でのボールハントで優位に立ったリーズは得点を目指してゴールを脅かすが、体を投げ出すビラのDF陣とゴールマウスに君臨するマルティネスが立ちはだかりネットを揺らすことができない。劣勢の中、ビラはなんとかリーズの攻撃を凌ぎ切った。
後半、ビラは左右に大きな展開を使いながらポゼッションを行い、試合の流れをより落ち着かせようとする。しかし、ボールコントロールの不安定さからリーズのプレスに捕まり出す場面が徐々に増えていくと、流れは前半と同じような展開に収束していく。ミングスのミスが決定的なピンチを招くなど、後半も不安定さが目につく。余談だけど、このシーンのミングスのように、この試合はやたらと足を滑らせる選手が多かったように思う。特にビラの選手は。
リーズは前半同様にチャンスを迎える展開になったが、ここでも立ちはだかるのはマルティネス。コースを狙ったニョントの決定機を阻止するなど、後半も充実した仕事ぶりでリードを死守する。
すると、カウンターからビラは反撃に。1点目と同じように右の大外でボールを持ったベイリーからインサイドに抜け出したブエンディアにラストパス。これを沈めて劣勢の中で追加点を得ることに成功する。
リーズは交代選手を軸に攻撃の活性化を狙うが、なんとか83分にバンフォードが奪った1点止まり。リーズが追いつくことはできないまま試合は終了し、今節も境界線に近づくことができなかった。
ひとこと
前節のウェストハム戦もそうだが、リーズは内容の充実を結果に繋げられない展開が続いている。強豪が続いているわけではないので、もう少し勝ち点を積み重ねておきたいところだが。
試合結果
2023.1.13
プレミアリーグ 第20節
アストンビラ 2-1 リーズ
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:3′ ベイリー, 64′ ブエンディア
LEE:83′ バンフォード
主審:マイケル・オリバー
第21節 サウサンプトン戦(A)

取り消しのダメージは甚大
前節、エバートンとのシックスポインターを制したサウサンプトン。依然として順位は最下位だが、14位までの勝ち点は詰まっておりあと1つの勝利で降格圏を脱出できる可能性は十分にある。今節は欧州カップも降格圏も無縁の無風地帯で過ごしているアストンビラとの一戦である。
序盤は比較的テンポが速い試合だった。このテンポを牽引していたのはサウサンプトン。4-2-3-1から4-4-2にシフトし、ビラのバックラインにプレスをかけていくと、中盤もこれに連動するように前がかりに圧力をかけて行く。
サウサンプトンのここ数試合で見られた5-3-2にはどこか後方が連動しきらず、いたずらにラインが高くなっている状況が続いてしまった感があったが、この試合では中盤の連動した押し上げが効いていた。よって、時間を奪われたビラのバックラインは蹴りながらエスケープするシーンが目立った。
サウサンプトンは保持においても比較的縦に速く動くアクションが多く、保持においてもスピード感は失われなかった。前線だけでなく、SBのウォーカー=ピータースも積極的に抜け出す動きを見せており攻撃のアクセントに。ちなみにだが、ビラの方もモレノのオーバーラップからのラインブレイクは攻撃参加の有効打になっていた。
試合は10分もするとだいぶ落ち着くように。それでも両チームの攻略の手段はラインブレイク。裏抜けからゴールに一気に迫る部分で両チームは勝負を仕掛けていく。
この部分で優位に立ったのはアストンビラ。裏抜けという出口は両チームとも変わらないのだが、違いがあるのはその手前の段階である。裏抜けの選手にパスを出す選手がどれだけ余裕を持ってプレーできるかである。
この試合のサウサンプトンのプレスは確かに中盤までは連動していた。だが、DFラインの押し上げは不十分であり、ライン間が空いてしまうこともしばしば。断っておくが、単に押し上げないDFラインが悪いと断罪しているわけではない。中盤や前線が追い回し過ぎてしまっている可能性もあり、そこはチームの約束事に帰属する部分。どこでエラーが出ているのかはチームの内部でなければわからない。
ただ、ライン間が空いてしまっているのは事実ではある。ラムジー、ブエンディアとビラのSHは比較的インサイドでのプレーを好む面々であり、彼らがライン間に侵入する役割を担っていた。カマラが相棒に定着してからよりフリーダムな攻め上がりが目立っているルイスも高い位置に顔を出すことが増えるように。
ライン間に侵入する選手を作ることで前半の途中からビラのワンサイドの展開になっていく。危険な位置でのセットプレーのチャンスもちらほら見られ、サウサンプトンは防戦一方。ドローンが侵入したせいで試合が一時中断してもこの流れは継続し、ビラは攻め続けた。
ドローンで変わらなかった流れはハーフタイムを挟んでも変わらない。ワトキンスに向けて裏に蹴るビラに対して、処理を誤ってピンチを迎えるサウサンプトンという後半頭のプレーは構図が変わらないこと見ている側に突きつけているかのようだった。
しかしながら、サウサンプトンも徐々に反撃。きっかけになったのは右サイド。孤軍奮闘を続けるエドジーに加えて、ウォーカー=ピータースのオーバーラップにより、右の大外から起点ができるように。前節もゴールに結びついているウォーカー=ピータースの攻撃参加とウォード=プラウズの抜け出しを軸にサウサンプトンが60分を目安に巻き返す。
そのウォーカー=ピータースの攻撃参加からネットを揺らすことに成功したサウサンプトン。右サイドの侵入から深さを作り、空いたバイタルからウォード=プラウズがミドルを放ってネットを揺らす。しかし、これは直前のプレーでエルユヌシがファウルを犯しており、得点は取り消されることに。
この取り消し以降は再びペースを握ったアストンビラ。ルーズになっているライン間から起点を作る形を再開すると、セットプレーからワトキンスがゴール。オフサイドが怪しいシーンではあったが、こちらはゴール認定。ピンチの後に迎えたチャンスをきっちりとものにする。
以降はキャッシュを入れて5バックに移行するビラが守備固め。攻めあぐねたサウサンプトンにとっては、後半追加タイムに迎えたジェネポのシュートが貴重な同点のチャンスだったが、これもマルティネスに防がれて終戦。サウサンプトンは前節の勢いを活かしての連勝を成し遂げることはできなかった。
ひとこと
サウサンプトンからすればゴール取り消しは一言物申したくなるだろう。ビラの押し込みに耐えながらの展開の中での得点だったこと、それ以降の主導権の失い方を見るとガックリとしてしまう影響の大きい判定だったように思える。
試合結果
2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
サウサンプトン 0-1 アストンビラ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
AVL:77′ ワトキンス
主審:マイケル・サリスベリー
第22節 レスター戦(H)

ロジャーズが示した新たなバランス
なかなか結果が出ずに降格圏が近づいているレスター。アストンビラ戦に向けてロジャーズが選んだメンバーは非常に目新しいものだった。まず1つは明確に4-2-3-1型を採用したこと。これまでは4-1-4-1からデューズバリー=ホールがトップの守備に加わる4-4-2への変形でプレスを行っていたが、この試合では明確に前に残る2人が素直にプレスをかけていった。
また、いくつかのポジションで序列の変化が起きて居そうな予感もある。CHは方針転換の色が強いかもしれないが、RSH、LSB、CBに新戦力が組み込まれた興味深い。そして見逃せないのがCF。ヴァーディではなく先発はイヘアナチョである。
レスターのプランは4-4-2ブロックを構えつつ、機を見て後方が列を押し上げながらハイプレスを仕掛けることだった。これに対してはビラはショートパスを中心に打開を試みる。彼らは4-4-2から3-2-5気味に変形。左のSBのディーニュが大外を駆け上がり、SHのブエンディアはエリアに突撃していく。相棒にカマラが入ってからバランスが前よりのドウグラス・ルイスも積極的にエリアに入り込む動きを見せていた。
試合は基本的にはビラの保持と跳ね返すレスターという構図で進んでいく。レスターの保持は縦に早いものが中心だったが、序盤のロングボールはカマラとビラのCB陣において跳ね返されており、お手軽な陣地回復は望めない状況だった。
よって、試合はレスターのハイプレスに対するビラのプレス回避の結果によって大勢が決まることとなる。ビラの先制点はティーレマンスが出て行ったところをビラが同サイドからの脱出に成功し、ガラガラになったバイタルから放たれたブエンディアのミドルがきっかけになっていた。
一方ですぐにレスターはプレスに出て行く際の成功例も示すことになる。無論、同点ゴールのシーンの話である。1列前に顏を出したデューズバリー=ホールのボール奪取にカマラが捕まり、そのままショートカウンターが発動。最後はマディソンが仕留めてあっという間に同点に追いつく。この試合の構図は試合終了まで保持で崩すアストンビラと、プレスからのカウンターを発動させるレスターの関係性で進んでいった。
レスターがこの日見せたバランスはなかなかに興味深かった。中盤より前にフィルター役といえる、対人守備の強みがある選手はいないのに、ボール保持で時間を作ることはできない。そして、撤退守備での我慢も特に得意なわけではなさそうで、オーソドックスなアストンビラの3-2-5変形には完全に後手を踏んでいる。
攻撃はとにかく愚直に走り回っており、前線は裏抜けに特化しているといっていいだろう。レスターの2点目はその賜物である。アシストとなるクロスもとにかくスペースに放たれていた。そして、極端にカウンターに注力しているけども、そこにヴァーディはいない。目立っていたのはボール奪取後に瞬間的にスルーパスを刺しまくるマシンになっていたティーレマンスと、軽いドリブルでカウンターの旗手となっていたテテの2人だった。
先述通り、レスターのブロック守備はアストンビラの3-2-5型の変形に特に対応できていた感じはしなかったため、ビラも押し込むことができれば、2点目のようにご褒美をもらうことができる。だが、この日のビラのボール保持はやたらと不安定だった。特に怪しかったのがCHやCBのパスの判断である。
中央に簡単にパスを刺そうとしたり、あるいはボールを悠々と持とうとするとあっという間にレスターの列を上げたプレスに飲み込まれてしまう。カマラはまさに厄日といっても良く、3失点目でのシーンでも自らのボールロストからレスターにゴールを許してしまうことになる。
ビラのビルドアップはサイドをきっちり迂回すれば特に問題なく前進ができるように見えた。かつ、押し込むことができればレスターの守備陣には崩れるような兆しも見えてくる。それだけにこの日のビラのバックラインとCHの配球は悪い意味で目につく。後半開始直後のコンサの強引なパスは前半から引き続きレスターにショートカウンターの契機を与えてしまう流れが継続することを示していたかのようだった。
互いにスタンスを変えない中で試合終盤に攻撃が実ったのはレスター。裏抜けへの対応をミスったビラが処理きれなかったこぼれ球をプラートが拾いダメ押しゴール。裏抜けだけは実直にというこの日のレスターの前線の信条を体現したゴールだった。
ビラは2点差を付けられはしたものの、敵陣に入り込めればゴールが見えてくるという手ごたえがあったのだろう。SBを両方交代しつつ、サイドからボールを運ぶ機会を増やしたのもレスターのこの日の不具合をきちんとついている感があった。
しかし、最終的には2点のリードは縮まらずに終了。アウェイのレスターがビラ・パークの攻略に成功した。
ひとこと
革新的な新戦術の発明というわけではないけども、この日レスターが見せたプランはロジャーズが発見した新しいバランスという感じがして興味深かった。苦手な局面の多さや、嵩むであろう失点を考えれば劇的な上昇となるかは微妙なところだが、この試合でうまくいったことで後半戦のベースラインになってもおかしくはないなと思った。
試合結果
2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
アストンビラ 2-4 レスター
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:9‘ ワトキンス, 32’ サウター(OG)
LEI:12‘ マディソン, 41’ イヘアナチョ, 45+2‘ テテ, 79’ プラート
主審:ダレン・イングランド
第23節 マンチェスター・シティ戦(A)

際立つのはシティのメンバー構成よりも・・・
正直にいうと流れがモノトーンすぎて、あまり記事に書くことがない試合だったように思う。シティのバックラインのメンバー構成は確かに珍しいものではあった。だが、3人のCBの前に2人のCHを置くという座組は特に保持においては通常のシティ通りといっていいだろう。リコ・ルイスやウォーカーがやっている役割をベルナルドがCHに固定しながら行っているだけである。ベルナルドが流れの中でロドリの横に並び立つこともこれまでの試合の中であったのでこちらも目新しいことではない。
それだけにアストンビラが何も工夫がないまま4-4-2でのミドルプレスを組んだのはとても残念であった。前線と中盤はボールを捕まえるきっかけを見つけることが出来ず、ラインがズルズル下がっていく。4バックを採用したアストンビラはマンチェスター・シティの5トップ型の動きに対しても後手を踏み、効果的な対策を打つことが出来なかった。
シティはサイドからは問題なくボールを運ぶことができるし、ビルドアップとアタッキングサードの両面で数的優位を確保できる状況である。セットプレーからの先制点がなくとも、シティが先制するのは時間の問題だったといえるだろう。3失点目のPKのように縦パスの2つでPA内に侵入されるような守備ではシティ相手に守るのは厳しい。
先制したこともあり、シティのポゼッションはゆっくりと。ビラがしびれを切らして前に出てくるタイミングで縦パスや裏へのボールで加速することができれば、シティはハーランドを軸に攻撃を一気に進めることができる。シティの追加点は裏への素早いボールが起点となっていた。
アストンビラは保持でも時間を作ることが出来なかった。長いボール一本でのカウンターが中心ではあるが、縦方向に一辺倒だったのでボールが読みやすく時間を作るのは難しい。いつもに比べればシティのプレスが積極的でビラのバックラインは苦しかったかもしれないが、ショートパスでも長いボールでも起点がろくに作れないのは非常に苦しい。
保持を無限に続けるシティに対して、後半に見せたビラの守備の整理は理に適っていたもののように見える。前半は無秩序にラインを下げていたSHの役割を整理。ボールサイドは最終ラインに加わって5バック化し、逆サイドのSHは絞りながら中盤に加わり3センター化。ボールサイドのCHがよりスライドしやすいようにシフトする。
正直に言えば、この手打ちは遅くとも20分には見たかったし、できれば失点前に見たかったところ。ハーランドを下げた直後のワトキンスの追撃弾は可能性を感じさせないものではなかったが、焼け石に水感が否めない。
試合は3-1でシティの勝利。安全運転による勝利と主力の休息の両方を手にしたシティがアーセナルとの天王山に弾みをつけた。
ひとこと
事前に予見できるトラブルの放置、遅い対応策、そして対策持っていたやん!というところまで、エメリ期のアーセナルに自分が感じていたストレスの詰め合わせのような試合だった。
試合結果
2023.2.12
プレミアリーグ 第23節
マンチェスター・シティ 3-1 アストンビラ
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:4’ ロドリ, 39‘ ギュンドアン, 45+1’(PK) マフレズ
AVL:61‘ ワトキンス
主審:ロベルト・ジョーンズ
第24節 アーセナル戦(H)

ラインブレイクの司令塔が決勝点を演出
レビューはこちら。

8月以来の首位陥落となったアーセナル。チームは開幕以降最も大きな壁に阻まれているといっていいだろう。ここで彼らに立ちはだかるのはかつての指揮官と守護神がいるアストンビラである。
ブレントフォードやエバートンなどここ数試合アーセナルには後ろを重くする仕組みを組んで戦うチームが多かった。それに比べれば、アストンビラの4-4-2は比較的オーソドックスな形でアーセナルに立ち向かったといっていいだろう。
アーセナルは4-4-2で対峙してくるアストンビラに対して3-2-5という形を遵守しながら攻略に挑んでいくように見えた。なお、この配置の有効性が見える前に、ビラはワトキンスのロングカウンターから力業での先制に成功している。
アーセナルの5レーン気味の攻撃はやや硬直しているようにみえた。特に左サイドはこの傾向が強い。大外のトロサール→ハーフレーンのジャカというボールの流れはアストンビラに完全に見切られているように見えた。アーセナルはむしろ、サイドに固執するのではなく、中央に鎮座するジョルジーニョにフリーでボールを持たせることができればチャンスが広がっているように見えた。
ジョルジーニョはこうしたブロックを崩すための駆け引きは抜群。横パスを引き取った後に縦パスでスイッチを入れるのがベラボーにうまい。右サイドにおけるジョルジーニョの働きは大きく、アーセナルの同点ゴールもジョルジーニョの起点の深さを取るパスからだった。
保持では徐々に解決策が定まりつつあるアーセナルだが、非保持においてはなかなか出足が鈍くビラの攻撃を食い止められない。ビラの2点目はアーセナルのプレスの連携ミスと縦パスにサリバが迎撃が出来なかったことがトリガー。その2つの仕様上の不具合にホワイトやラムズデールといった個人個人の対応ミスが重なった形だろう。
リードを奪われたアーセナルは後半大きな展開を増やしながらビラのバックラインの高さを操るトライをする。しかしながら、ロングキックが精度も伴わなかったこともあり、後半も絶大な存在感を放っていたのは右サイドのジョルジーニョ。右大外のラインブレイクの司令塔と化していた彼からは引き続き多くのチャンスが舞い込む形となっていた。
押し込む状況から同点ゴールを決めたアーセナルはマルティネッリでさらに左の大外に起点をつくる。同じくビラも交代で投入されたベイリーにヒーローになるチャンスが訪れるが、これはラムズデールのセービングにより惜しくも枠をとらえられない。
オープンになった終盤、ついにこの試合初めてのリードを奪ったアーセナル。左の大外からのマイナス方向にバイタルでパスを受けたジョルジーニョがミドルを放つとポストの跳ね返りがマルティネスの背中に当たりオウンゴールを誘発。これが貴重な決勝ゴールとなった。
ラストプレーでは「100回に1回しか入らない」GKの攻め上がりから、マルティネッリが追加点を決めて結果的には4得点での勝利を決めたアーセナル。立派な出来とは言えなかったが、未勝利に歯止めをかけてタイトルへのチャレンジにしていく姿勢を見せることに成功した。
ひとこと
ビラは大量失点の試合の連続である。4失点目はおまけのようなものだから仕方ないとしても、アーセナルがばてるまでの70分付近までの後半の一方的な押し込まれ方は、コンディションに差があった状況を考えると足りないものを感じてしまう。
試合結果
2023.2.18
プレミアリーグ 第24節
アストンビラ 2-4 アーセナル
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:5‘ ワトキンス, 31’ コウチーニョ
ARS:16‘ サカ, 61’ ジンチェンコ, 90+3‘ マルティネス(OG), 90+8’ マルティネッリ
主審:シモン・フーパー
第25節 エバートン戦(A)

PAから先の精度で違いを見せたビラがエバートンを下す
立ち上がりはアストンビラのボール保持に対して、エバートンがボールを奪いに行くという構図で試合がスタートする。アストンビラのバックラインは初めはCBがボールを保持することに余裕があるが、インサイドのオナナのチェイスからエバートンはプレッシングを開始。アストンビラの陣内にどんどんとボールを押し込んでいく。
このプレスを押し切れるかどうかが序盤の分かれ目だったといってもいいだろう。ビラのバックラインがショートパスを軸にこのプレスをしのぐことができれば、エバートンの中盤の後方にはかなりのスペースがある。このスペースに縦パスを刺しての前進がアストンビラの狙いである。
あるいはエバートンがプレスのスイッチをいれる前に解決してしまうという手段もビラにはあった。先述の通り、オナナがプレスのスイッチを入れる前まではビラの最終ラインは比較的自由にボールを持つことができる。この段階で背後を狙うケースもあり。フリーのバックラインから低くないエバートンの最終ラインの裏を狙うパターンもアストンビラは織り交ぜていた。
エバートンはプレスからのショートカウンター以外でいえば、モペイを使ったロングボールをもレパートリーに。キャルバート=ルーウィンと異なり、素直な長いボールではサイズ的な難があるため、上下左右に動きながらフリーになる手段を模索していた。
キープが出来ないモペイでは前線にパスが通っても時間を作ることができないので、自陣からの陣地回復に関しては明らかにキャルバート=ルーウィンよりも質は据え置きである。バックラインからの繋ぎではなかなかおしあげられないエバートン。だからこそ、前からのプレッシングは重要。ショートカウンターであれば重心が高い状態で前に人数をかけながら攻撃ができる。
エバートンはコールマンの出足の良いカウンターから同サイドのイウォビにつなぐパターンが効いていた。逆サイドのマイコレンコとマクニールのクロスも含めて、順足の選手からのクロスが主体となる。
アストンビラは徐々に中盤でのボールロストからエバートンに理想の形でカウンターを運ばれるシーンが増えるようになる。こうなると、エバートンにとってはおいしい。彼らの望むオープンな形を増やしつつ前半はスコアレスで折り返す
迎えた後半、エバートンは外でのクロスを主体として攻勢をかけていく。アストンビラは後半頭は少しボールを保持しながら試合をコントロールする意思を見せるが、すぐにもっさりとしたエバートンが望む展開に持ち込まれてしまう。アストンビラはあわやというピンチが出てくるが、ミングスが体を張ったブロックでなんとか事なきを得る。
エバートンに押し込まれる劣勢を跳ね返したのがアストンビラのアタッカー陣だった。交代で入ったブエンディアがおそらく1stプレーでポストを決めて、インサイドに侵入したマッギンがPKを獲得。これをワトキンスが決めて先制する。
このマッギンとブエンディアのコンビは追加点でも大暴れ。ワトキンスのポストから斜めに入ってくるマッギンがボールを前に進め、仕上げとなったのはブエンディア。1人をかわしてエリアに接近し、豪快なフィニッシュで試合を決めた。
試合はこの2ゴールでビラが逃げ切りに成功。エバートンは優勢に進めながらも勝ち点を逃す結果となった。
ひとこと
頻度でいえばエバートンの方がより相手のPAに迫るタイミングはあったが、ビラの方が迫った後の動きに十分な精度があったといえるだろう。マッギンの斜めのランやブエンディアのフィニッシュなどはこの日のエバートンにはないものだった。
試合結果
2023.2.25
プレミアリーグ 第25節
エバートン 0-2 アストンビラ
グディソン・パーク
【得点者】
AVL:63’(PK) ワトキンス, 81‘ ブエンディア
主審:アンソニー・テイラー
第26節 クリスタル・パレス戦(H)

エメリのやりたいことを完全体現
エンジと白×青ベースのユニフォームが対戦した試合はこの節では2試合あった。もう一つのブライトン×ウェストハムは明らかにブライトンがボールを持って支配していたのだが、この試合はエンジ色のアストンビラが保持でクリスタル・パレスを圧倒した試合だった。
バックラインはマルティネスを挟むようにCBがボールを持ち、前プレに人数をさかないクリスタル・パレスに対してプレスを誘い込むような振る舞いを見せる。パレスの中盤を食いつかせたらビラは攻撃を一気に加速させる。ラインの裏に走り込むキャッシュを活かせるくらいにはアストンビラはクリスタル・パレスの守備の陣形を翻弄することができていた。
この日のアストンビラの振る舞いはエメリがやりたいポゼッションを体現している感じがした。相手が食いつくまではねちっこくバックラインがボールを持ち続ける。2列目はインサイドでプレーし、最終ラインの矢印を前に向ける。SBが大外から一気にラインの裏側を強襲。一気にラインを押し下げる。
ミングスの長いキックやカマラの縦へのパスはこうした展開にうって付け。キャッシュの抜け出しは再現性を持って行うことができていたし、これがアンデルセンのオウンゴールにつながっていた。オウンゴールとはいえ、パレスは構造で殴られ続けての失点と受け止めるべきである。
パレスはトランジッションからザハがネットを揺らし、早々に得点かと思われたが、これはオフサイド。このシーン以降はパレスはボールの取り所に困り、ポゼッションの機会を得ることができない。それでも先制点以降は、右サイドからボールを運ぶオリーズから徐々に攻めの機会を得るようになる。
後半もスタンスを変えなかったアストンビラだったが、中盤の舵取り役として君臨していたカマラの負傷交代は一大事である。代わりに入ったのが本職でないチェンバースとなったこともあり、ビラの中盤は混乱気味。パレスにとっては強襲をかける大きなチャンスを迎える。
だが、ここでドゥクレが退場。ファウルした相手がそのチェンバースというのもなかなかに切ない。これで混乱に陥るのはパレスの方になってしまった。
終盤にセットプレーから決定機を迎えることはできたパレスであったが、これを掴むことはできず。10人になったタイミングが悔やまれる痛い敗戦となった。
ひとこと
カマラが負傷した後はややトーンダウンしたとはいえ、ビラのボール保持は会心の出来。それだけにカマラの離脱がどのくらい長引くかは気になるところだ。
試合結果
2023.3.4
プレミアリーグ 第26節
アストンビラ 1–0 クリスタル・パレス
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:27‘ アンデルセン(OG)
主審:クレイグ・ポーソン
第27節 ウェストハム戦(A)

後半は攻め手を見つけたハマーズだが・・・
ともにエンジ色と水色を1stユニフォームとする両チームの対戦。イングスはどちらのユニフォームを着ているのかよくわからない。バーンリーにもいたのでエンジ色3兄弟完全制覇である。
4-1-4-1で臨んだウェストハムはそこまで積極的にプレッシングにはいかず。アストンビラのバックラインにボールを持たせる選択を行う。その分、インサイドは非常に強固。中盤での縦パスは阻害し、インサイドで受けたがるアストンビラの2列目には自由を許すことはなかった。
一方で、外側の守備には脆さが見えたウェストハム。アストンビラの左サイドはこのウェストハムの守備の習性をよく理解していたと言えるだろう。外に開くミングスや左サイドに落ちてくるルイスなどでボーウェンを釣ると、その背後に走り込んだモレノにボールを渡す。モレノは左サイドからドリブルでキャリー。この流れでアストンビラはかなり自由に相手を押し下げることができていた。
先制点もこの形から。左サイドで自由になったモレノからのクロスをワトキンスが沈めてビラが先制。正直、まぁそうなるだろうなという感想を抱いてしまうくらいにはビラは左サイドから押し込むことができていた。
ビラの非保持のスタンスもウェストハムと少し似ており、バックラインには強固なプレスをかけるわけではなかった。ウェストハムと少し違ったのはビラはサイドに対しても早い段階で圧縮をかけて自由を与えないこと。つまり、モレノが攻め上がるようなスペースはなかったということである。
よってウェストハムのボール運びは非常に泥臭いものになった。スペースがない中でドリブラーがゴリゴリと陣地を回復。セットプレーから地道にチャンスを積んでいく形で挽回を狙う。
ウェストハムの攻撃が実ったのはCKからの流れだった。シュートを押し込みきれなかったパケタが跳ね返りを追いかけ回したところをベイリーが倒してウェストハムはPKをゲット。これをベンラーマが決めてウェストハムは同点に追いつく。試合は振り出しに戻った状態でハーフタイムを迎える。
後半、いい立ち上がりの入りをしたのはウェストハム。いきなりサイドに流れたパケタのクロスからベンラーマが決定機を迎えるなどマルティネスを脅かしてみせる。エリア内に入り込むタスクを担ったベンラーマは後半多くのシュートチャンスを迎えることとなる。
保持においてはシンプルなクロスを入れる形と大外からラインの裏に抜ける選手へのボールを入れる形を使い分けながら前進。前半よりも明白に押し込む機会は増えることになった。
プレッシングも4-1-4-1から4-4-2のシンプルな形に変更。よりバックラインに積極的にプレスをかけるように。ただ、こちらに関してはビラはそこまで苦にしている印象はなく、ボールを持てば前進をしつつウェストハムをズルズルと後退させることができていた。
終盤になるとより勝ち点3が必要なウェストハムの必死さが際立つように。コルネの抜け出しはオフサイドになったが、ナチュラルにラインを上げがちなエメリのチームの裏をかく形としては悪くはなかった。
だが、ウェストハムの攻勢も実らず試合はドローで決着。互いに得点は前半の1点のみで勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
ウェストハムは終盤に気迫を感じたのは良かったが、攻め上がるモレノに関しては前触れがあっただけに早めに危険な芽を摘んでおきたかったなと思った。
試合結果
2023.3.12
プレミアリーグ 第27節
ウェストハム 1-1 アストンビラ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:26′(PK) ベンラーマ
AVL:17′ ワトキンス
主審:クリス・カバナフ