■ルカクの日ではなかった
立ち上がり数十秒のペリシッチのシュートからの幕開けはこの試合の激闘を予感させるものだと言えるだろう。序盤にテンポを握ったのはクロアチア。中盤からの鋭い縦パスと高い位置からのプレスでプレーエリアを高く維持することに成功するスタートとなった。
15分過ぎにはPKを獲得したクロアチア。内容良好!あとはリードを奪うだけ!という状況まで漕ぎ着けることに成功するが、VAR側からのサポートはこれはオフサイド判定に。飛び出し方の際どさを見ればクロアチア側がテクノロジーの存在を恨んでも仕方がないくらい厳密な判定であった。
このPK以降は落ち着きを持って試合を進めることに成功したベルギー。ボール保持においてはムニエを一列前にあげる3バックを採用する。これまでのグループステージにおけるベルギーはどこか前後分断感が否めなかったが、この試合では比較的バックラインとDFラインから全体を押し上げる意識を持ってボールを進める一体感があったと言えるだろう。
特に右サイドの崩しはなかなか。大外をとるムニエにインサイドのサポート役にデ・ブライネ、トロサール、メルテンスが代わる代わる出たり入ったりするローテーションにはクロアチアはやや混乱気味。CBの能力の割に、出足を思い切りよくいけないというクロアチアの今大会のウィークポイントをうまくつくことができていた。
逆サイドではカラスコが躍動。カットインと縦への進撃を使い分けながら1人でエリアまでボールを運んでいく。ただし、この日のベルギーのインサイドには高さがない。よって、入れるクロスの質にはこだわる必要がある。鋭いグラウンダーのクロスを入れることができれば、クロアチアがブロックを組んでいてもベルギーには十分なチャンスがあった。
一方のクロアチアにも保持からの前進のルートは存在していた。ベルギーは非保持では4バック気味だが、4-3-2-1なのか4-4-2なのか判然とし難い。デ・ブライネの守備のタスクが甘い分、やや全体の陣形の維持は甘くなっているようにも見える。
中盤の守備のタスク管理が甘い分、ベルギーはクロアチアの中盤を捕まえきれず。フリーでボールを持つことができれば、大きなサイドの展開ができるクロアチアの中盤。ピッチを綺麗に横切り、WGにボールを届けることができればチャンスになる。
どちらもエリアに迫る手段はあったが、プレスがうまくハマらなかったり、そもそも控えめだったりなどで機会の差が生まれず。このあとどちらに試合が転ぶかが読みにくい前半だった。
後半、ベルギーはルカクを投入。ターゲットマンを入れることで、前半は許容することができなかったハイクロスを入れることができるようになった。メルテンスがいなくなった分、右サイドの流動性の減少が気になるところではあったが、早々にクロスを上げて見せたことでその部分も問題ないことはすぐにわかった。
だが、後半のクロアチアの左サイドの守備ブロックは強力。グバルディオルはクロスをニアで跳ね返しまくるマシーンとなっていたし、ソサも粘り強い対応を見せていた。
この両者は保持面でも素晴らしいパフォーマンス。特にグバルディオルは最終ラインからのボールの運び出しでも別格な出来を見せていた。クロアチアの後半の攻め手は左サイドに集約。左のハーフスペース付近でフリーでもった選手がエリア内のクロスと大外のソサの2択で揺さぶりながらベルギーの陣内に迫っていく。サイドチェンジも自由自在。大きな展開に振り回されるベルギーにとってはヴィツェルのカバーリングとクルトワの安定したキャッチングが命綱になっていた。
しかし、ベルギーも攻撃的なタレントを投入し総攻撃を仕掛ける。ドク、アザール兄弟、ティーレマンスなど中盤よりも前の選手を入れて決勝進出に必要な1点を取りに行く。
だが、ことごとく訪れるチャンスをルカクが決めることができない。明らかにフリーな決定機が2,3回ほどあったが、いずれのシュートもミートできず。明らかに彼の日ではなかった。
ビックチャンスを作りつつ、最後まで仕留めることができなかったベルギー。前回3位に入ったグループFの本命は最終節で勝利をあげることができず、早すぎる敗退を喫することとなった。
試合結果
2022.12.1
FIFA World Cup QATAR 2022
Group F 第3節
クロアチア 0-0 ベルギー
アフメド・ビン=アリー・スタジアム
主審:アンソニー・テイラー