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「Catch up UEFA Champions League」~2022.5.4 UEFAチャンピオンズリーグ Semi-final 2nd leg レアル・マドリー×マンチェスター・シティ

■わずかな難に漬け込んだ2分間による必然の結末

1st leg

 マンチェスターでは圧倒的に決定機を浴びながらも終わってみれば1点差で90分をやり過ごすことができたマドリー。今季何回も奇跡を起こしてきたベルナベウの地に戻ってくることができたのは彼らにとっては何事にも代え難いアドバンテージになる。

 立ち上がりは両チームとも慎重な立ち上がりに見えた。特にリードをしているシティはマドリーの力量をもう一度確かめている感じ。過度にプレスにいかない4-4-2気味の変形でマドリーの攻撃を受け止める。WGの優先度は前へのプレッシングよりもきっちりヴィニシウスを挟むことであった。

 それでも保持で押し込んだ後の即時奪回には色気があったシティ。ロスト後にはマドリーのバックラインはプレスをかける。マドリーはモドリッチに無事に届けられるかどうかがクリーンにプレスを回避できるかどうかの分水嶺。彼にボールを届けられれば、片側サイドにプレスによるシティのプレスと逆側のベクトルでボールを動かすことができた。

 保持においてはクロースとカゼミーロの前後関係を入れ替えている部分から見ても、ショートパスである程度シティのプレスに対抗しようという意識はマドリーの中にはあったように思う。後方からの大きな展開を受けるのは右サイド。右の大外に張るカルバハルをニアで動き回るバルベルデがサポートすることで早い展開を完結させることができていた。

 本来であればモドリッチには左の大外にもヴィニシウスという選択肢がある。しかしながら、ここはウォーカーの復帰が大きく前半はそこまで明確な有効打にはならなかった。万全の状態ではない中でヴィニシウスを止め続けるウォーカーの対人守備はやはり圧巻と言わざるを得ない。

 シティもマドリー同様に後方からのショートパスで繋ぎながら。マークがきついロドリとデ・ブライネを無理に経由せずに、動き回るベルナルドを軸にボールを動かすのもいつも通りである。

 ただ、仕上げの部分に関してはどこまでいつも通りだったかは微妙なところ。なんとなく、リーグのリバプール戦あたりからアタッキングサードでのシティの攻め方には違和感がある。攻撃の出口がアバウトなボールになるケースが増えており、同サイドの旋回やハーフスペースの裏抜けなどスペースを作ってからそこに飛び込む形は減った。その不確実性がこの日のアタッキングサードでも見られたように思う。

 もう一つ、シティの保持で勝手が違ったのはカゼミーロの存在だろう。中央の守備ブロックの強固さが段違いとなっており、降りて受けるCFを経由した攻撃が機能しなくなったのは1stレグとの大きな違いである。

 スコアレスで迎えた後半。ハイプレスに出ていったのはマドリー。テンポを上げて攻守の切り替えを増やし、敵陣に迫る頻度も増やすようになっていく。前半の静的要素が強い中で時折スイッチが入る展開はリードしているという状況も含めてややシティ寄りかな?と思ったのだが、後半になり、展開は比較的両チームにフラットになったように思う。

 1stレグと比べてパフォーマンスが上がったと感じたのはナチョ。途中交代でうまく試合に入れずに苦しんだマンチェスターとは明らかに別人で、不確実性を伴う直線的なシティの攻撃をほとんど封殺していた。

 早い展開においてはどちらが優位に立てるマッチアップを作れるかが重要。その意味でウォーカーの負傷交代は展開に大きな影響を及ぼすものと思えた。マドリーに試合が優位に傾かないことの理由の一つは左サイドのヴィニシウスに突破の見込みが立たないからである。

 厳しい戦いが予感されたシティだったが、直後に先制点をゲット。プレス回避からの攻撃の加速の仕方はこの試合で一番シティらしさが詰まった崩しと言っていいだろう。交代で入ったギュンドアンと右に移ったカンセロを軸にマドリーのプレスをいなすとそこからマフレズがゴール。これでリードを2点に広げる。

 得点を決めた73分以降、88分近くまでは完全にシティのペースと言ってよかっただろう。相手のプレスをポゼッションでいなすのは得意分野であり、ベルナベウのマドリーもその沼に飲み込まれかけていた。グリーリッシュやカンセロのシュートが決まっていれば試合の流れは全く違うものになっていたはず。クルトワの奮闘はマドリーの戦いをギリギリで繋ぎ止めた。

 しかし、カルバハルの右サイドの裏抜けを号砲に試合の流れは変わる。サイドの深い位置までの侵入がこの攻撃以降増えたマドリーは波状攻撃を仕掛ける。すると、ファーに待ち構えたベンゼマが長いパスを受けてエリア内にラストパス。これをロドリゴが決めて1点差に追い縋る。ベンゼマを見るべきだったのはカンセロ。だが、この場面ではカンセロは流れてきたベンゼマになんの対応もできず。試合終盤にようやくSBの守備の軽さというシティの懸念を突っつくことができたマドリーであった。

 そして、その1分後。再びロドリゴがネットを揺らしてマドリーがトータルスコアでの同点弾を奪う。シティ側の目線で言えば、クロス対応のゆるさは気になってはいた。開始数分でカルバハルのクロスからベンゼマが頭で合わせた場面で感じたシティのDFラインへの違和感が後半追加タイムに失点につながってしまったということだろう。それにしてもニアでアセンシオが触ることを知っていたかのようなロドリゴのヘッドは恐ろしいものだった。

 延長に突入した試合は明らかにマドリーペース。動きながらゲームメイクができるカマヴィンガ、強度面でチームを助けることができるバルベルデやヴィニシウスを残す采配などアンチェロッティにもまた延長戦になることを知っていたかのような用兵だった。

 後ろに重たいフォーメーションに変更したシティに比べると、明らかに並びが延長戦向きだったマドリー。延長前半早々にPKを獲得する。カマヴィンガのパスの引き出し方とボールの運び方は天下一品。CLしかチェックしていないが、ラウンドを追うごとにプレーに凄みが増している。

 そして、ベルナベウといえばこの男。PKを得たベンゼマは自ら沈めてマドリーはこの2試合の中で初めてリードを奪う。

 ベルナベウという舞台装置があれば、ここから先はマドリーにとってはお手の物だ。グリーリッシュやスターリングは圧倒的なアウェイで主役にはなれないし、頼みのベルナルドも流石の延長戦では運ぶ動きや長いレンジのパスに乱れが生じている。

 交代選手のクオリティの違い、そして主役になれる選手の有無が延長戦の優劣を大きく分けた印象。90分に差し掛かってからシティのわずかな難を立て続けに得点に結びつけるというウルトラCを達成したマドリーにとっては、ベルナベウの力を借りた延長戦での仕上げはもはや必然の結末と言ってもいいだろう。

試合結果
2022.5.4
UEFAチャンピオンズリーグ
Semi-final 2nd leg
レアル・マドリー 3-1 マンチェスター・シティ
エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ
【得点者】
RMA:90′ 90+1′ ロドリゴ, 95′(PK) ベンゼマ
Man City:73′ マフレズ
主審:ダニエレ・オルサト

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