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「Catch up Premier League」~Match week 19~ 2023.1.2-1.5

目次

ブレントフォード【10位】×リバプール【6位】

実ったウィサの連打

 年末年始3連戦の旗頭を務め続けたブレントフォード。3連戦の最後はホームに再開後は連勝を飾っているリバプールを迎えての試合となる。

 ブレントフォードは高い位置からボールを追い回しにいく「当たり」の仕上がりっぽいブレントフォード。ビックゲームにきっちり当たりを持ってくるあたりは流石である。

 このブレントフォードの守り方に対してリバプールは手早く縦に急いでいく。ブレントフォードは高い位置でのマンツー気味の追い回しと自陣側での5-3-2のブロック守備を使い分ける形。リバプールのビルドアップにはエリオットが積極的に顔を出したこともあり、詰まる回数はいつもよりやや少なめ。ただし、長いパスの精度はあまり良くなかった。

 リバプールの理想はブレントフォードがマンツーからリトリートに切り替える前に攻撃を完結させること。自陣に戻り、陣形を整理されてしまう前にきっちりと敵陣を追い落とすことである。

 先制のチャンスを得たのはリバプール。サラーのシルクのように滑らかなトラップから抜け出したヌニェスがGKを交わして決定機。だが、これはミーに阻まれてしまいノーゴールに。

 以降はブレントフォードの5-3-2のブロックに対して、リバプールが解決策を探しにいく形になっていく。2トップの脇からチアゴ、アレクサンダー=アーノルドという塀の外から精度頼みで打ち込める選手たちが主役。早い段階でクロス勝負に打って出る。左の大外も比較的タイトではなかったので、クロスを上げるチャンスをもらえたが、こちらは精度の部分が足りずに決定的な働きができなかった。

 高い位置から捕まえにいくスタンスの時のブレントフォードはショートカウンターを軸にしていたが、リトリートしてブロックを組んでからはロングカウンターに移行。両サイドの裏のスペースから決定的な抜け出しのチャンスを作り出す。だが、これはアリソンのセーブに遭ってしまう。

 しかし、カウンターは止められてもブレントフォードのセットプレーは止めることができなかったリバプール。先制点を決めたブレントフォードのCKはコナテの足に当たりオウンゴールに。

 このセットプレーを止められないという課題はこの試合中リバプールにずっと付き纏うことになる。セットプレーの度に、ウィサにネットを揺らされ続けるリバプール。2回はオフサイドで許されたが、3回目はオープンプレーでオンサイド。ウィサは三度目の正直でゴールを決めて、前半の内に突き放すことに成功した。

 後半、リバプールは縦に速い攻撃でブレントフォードに襲いかかる。ヌニェスがようやくトンネルを抜け出すゴールを決めたかと思ったが、抜け出しのタイミングが早くオフサイド判定。

 それでもリバプールは早い時間に追撃弾をゲット。右サイドのアレクサンダー=アーノルドのクロスから合わせたのはオックスレイド=チェンバレン。ブロックの外からの攻撃を完結させたリバプールが反撃を開始する。

 ここから試合はオープンな展開に。互いに縦に急ぐ時間帯が続く中で、ゴールに向かう前の段階でつまづいてしまう。得点の匂いは後半の時間の経過とともに消えていき、ボールのロストが多い攻撃の応酬になってしまった。

 リバプールの同点の雰囲気がなかなか出てこない中で点を奪ったのはブレントフォード。コナテからボールを奪い取ったムベウモが試合を決める3点目を手にする。

 ゴールをとりに行こうとすると自らの守備が脆くなってしまう悪癖が再び顔を覗かせたリバプール。攻守の噛み合わなさが生み出す悪循環を断ち切ることができず、難所を前に黒星を喫することになってしまった。

ひとこと

 大物食いに定評があるブレントフォードは今日も結果を出して見せた。トニーがいなくてもスタイル自体の持続性を証明できたことは大きな収穫と言えるだろう。

試合結果

2023.1.2
プレミアリーグ 第19節
ブレントフォード 3-1 リバプール
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:19’ コナテ(OG), 42‘ ウィサ, 84’ ムベウモ
LIV:50‘ オックスレイド=チェンバレン
主審:スチュアート・アットウェル

レスター【13位】×フラム【7位】

対照的な年末年始

 盛り返してきたW杯前の勢いを、再開直後に結びつけられなかったレスター。リバプール、ニューカッスルと強敵が並ぶ日程とはいえ、連敗という苦しい年末年始になっている。今節の相手はフラム。こちらは連勝でトップハーフを維持。上位に食らいつき、中断前のコンディションをキープしている。

 デューズバリー=ホールが欠場しているレスターはティーレマンスを前にスライドさせる形でフォーメーションを維持する。4-3-3からの4-4-2にシフトするという形でプレスにくるレスターに対して、フラムはパリーニャ、2CB、レノの菱形でプレスを回避する立ち上がりとなった。

 序盤はフラムのボール保持がメインで進んでいく。横断しながら手薄なサイドで勝負をしていくのがフラムの保持の形。中央でまず2トップをパスワークで外し、SBに展開すると中央をサイド経由して逆サイドまで大きく振っていく。中央で中継点になる動きとして抜群なのがウィリアン。引く動きで相手からフリーになる能力が高く、ミドルゾーンからアタッキングサードにボールを運んでいく形でフラムの攻撃を前に進めていく。

 サイドに展開すると、クロスでファーのミトロビッチをターゲットとして狙っていく。手薄なサイド構築、アタッキングサード侵入のコンボがフラムの攻撃の軸。手薄なサイドを作るという点ではCBのリームの対角パスも積極的に活用しながら進んでいく。

 保持で優位に立っているフラムはその勢いのまま先制。ミドルゾーンでボールを運ぶウィリアンがアシスト役。素直にサイドに展開するというレスター側の予測を裏切り、インサイドに進路を取ると直接ミトロビッチに向けたクロスを放つ。表ではなく裏側にボールを送る形で入れたクロスで相手と入れ替わったミトロビッチはこれを冷静に沈めてみせた。

 勝ち越されたレスターの反撃は直線的なルートでのカウンターが主体。左サイドから裏を取る形でヴァーディとバーンズが抜け出して、決定機を作っていく。ライン間でティーレマンスが受けてポイントを作る形もあるが、基本的には直線的に進むための手助け。フラムが広く広く攻めていくイメージならば、レスターは1本のパスコースを辿っていくイメージである。

 しかし、立ちはだかるのはレノ。決定機を阻止し、レスターの反撃を許さない。ただ、レスターの攻勢はフラムもだいぶ気にしていたのかケアニーの交代相手をH.リードではなくペレイラにしたあたりなどは、普段よりも守備的な振る舞いのように思えた。とりわけ、ティーレマンスに対しては警戒を強めていたように思う。

 後半、レスターはトーマスを下げてイヘアナチョを3バックにシフト。両サイドから押し込みながらのクロスという形も含めて敵陣に進んでいく。フラムはディオプを投入して5バックに変更しつつ、攻撃はミトロビッチに全てを託していくスタイルに。ウィルソンが抜け出しての決定機を決めることができていたら、終盤の試合運びは非常に楽だったはずだ。

 ティーレマンスを軸に攻撃ルートを決めながら敵陣でのプレータイムを増やしたレスターだったが、終盤までチャンスを決め切ることができず。ゴールを奪い返せなかったレスターは逃げ切りを許し再開後3連敗。対照的にフラムは3連勝で最高の年末年始を過ごすこととなった。

ひとこと

 ウィリアンはすっかり中心メンバーでミトロビッチに並ぶ攻撃の核。保持でやれてたリバプール戦に比べるとレスターのこの試合の出来は一歩後退感も。

試合結果

2023.1.3
プレミアリーグ 第19節
レスター 0-1 フラム
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
FUL:17′ ミトロビッチ
主審:ダレン・ボンド

アーセナル【1位】×ニューカッスル【3位】

今季初のリーグ戦スコアレス

 レビューはこちら。

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 上位対決となったこのカード。先にチャンスを見出したのはアーセナル。トーマス番をするギマランイスや食いつきの良いIHなど、ニューカッスルの中盤の特性を利用し、高い位置までニューカッスルの中盤をおびき寄せる。

 すると、そのMFの背後のスペースを利用して加速。特にアーセナルの右サイドのサカ、ウーデゴールはウィロックが飛び出していったスペースを使いながらスムーズに前進をしていった。

 この状況に待ったをかけたのはジョエリントン。WGがプレス位置を下げることでサカを封鎖し、ひとまずの応急処置を行う。これにより、アーセナルはスピードアップも出来なくなったが、ニューカッスルも重心が下がりすぎるため、保持での回復がしにくくなるという相討ち状態に。アーセナルは押し込みつつも打開のポイントを押さえられ、ニューカッスルは押し返せない状況が続く。

 どちらかといえば、打開策を提示できていたのはア―セナルの方だろう。右サイドはSBのホワイトが献身的にサカの周辺をうろちょろ。キックの精度がある選手なので、ニューカッスルとしても放っておきにくい。しかし、サカにダブルチームはつきたい!というジレンマにニューカッスルは悩まされる。サカとホワイト、どちらもケアしようすれば、当然インサイドにスペースはあく。37分のトーマスのミドルのシーンなどはそうした事象をアーセナルがうまく活用した代表例といえるだろう。

 左サイドではジンチェンコが躍動。ぱっと見はDFの背中に隠されているコースに見事に縦パスを通す隙を作り、ボールを前進させることに貢献していた。

 押し込まれたニューカッスルは右サイドを軸に後半に反撃。ハイプレスからラムズデールを慌てさせる場面を作るなど、エミレーツに冷や汗をかかせる場面を演出する。

 しかし、CFのウィルソンがジンチェンコに気を取られたことでアーセナルはCBが高い位置から強気の配球ができるようになった。よって、後半はサイドに付けるボールをバックラインからスムーズに出すことで敵陣深くまで侵入する。

 だが、ニューカッスルの守備ブロックは人の山。中盤の守備意識も高く、全員守備を具現化したようなチームである。とりわけこの日のアーセナルは交代して違いを作り出せるアタッカーが見当たらない。ただし、放っておいても得点の可能性はあっただけに、アルテタとしては難しい判断を強いられることになったはずである。

 最後までゴールに鍵をかけたニューカッスル相手にアーセナルは沈黙。今季初のリーグ戦ノーゴールで連勝はストップすることとなった。

ひとこと

 ジョエリントンの前向きな守備と後ろのカバーを両立する感じは素晴らしい。ホワイトはサボらずに攻め上がって素晴らしい。攻撃的なポジションの守備での功労と守備的なポジションの攻撃での功労という違った献身性が見られた試合だった。

試合結果

2023.1.3
プレミアリーグ 第19節
アーセナル 0-0 ニューカッスル
エミレーツ・スタジアム
主審:アンディ・マドレー

エバートン【16位】×ブライトン【9位】

抜群のプレス耐性でハイプレス奇襲を一蹴

 セットプレーでのエバートンのチャンスから試合は勢いよく幕開け。サンチェスのファインセーブでブライトンファンが胸をなでおろすところから試合は始まった。

 相手の保持を阻害することにより積極的だったのはエバートンの方。ハイプレスで敵陣に釘付けにしながら、なるべく脱出させない方向性でブライトンの保持を阻害。バックラインも非常に高い位置まで上がっていきながら縦パスを咎めていた。

 特にプレスで重要な役割を担っていたのはイウォビ。後方支援組に自分のマーカーが受け渡せると判断したら、すぐさま高い位置に出て行くことでブライトンのバックラインから時間を奪いにいく。

 しかし、ブライトンのプレス耐性は伊達じゃない。時間の経過とともにエバートンのプレスに慣れてくると、徐々に両サイドのWGを軸とした陣地回復でエバートンを押し返すようになる。プレスのかかりが悪くなり、エバートンに迷いが出だすと、ブライトンはあっさりと敵陣を攻略。カイセドの長いボールを使ったサイドチェンジから、最後は三笘。左サイドからのストライドが大きな横ドリブルでパターソンとコーディをあっさりかわし、リーグ戦での連続ゴールを決めて見せる。

 この先制弾を受けて、ブライトンは撤退しながらエバートンにボールを持たせる方向にシフト。エバートンはこれに対して、右サイドのマクニールを軸に自由にボールを回し、サイドからクロスを上げられるように。マクニール、キャルバート=ルーウィンと出し手と受け手が揃っている状況でクロスを多少上げさせすぎてはしまったが、ロングカウンターという反撃の武器があるのでブライトンとしては問題はない範疇といえるだろう。

 前半をしのいだブライトンは後半にエバートンのプレスをひっくり返すことで反撃に打って出る。すると、ここからブライトンが徐々に得点を重ねていくように。2点目のゴールはサイドに流れたサルミエントから折り返しをファーガソンがゲット。売り出し中の若手がこちらも2試合連続でのゴールを決めて見せた。

 お次は右サイドのマーチ。カットインから3点目となるゴールを打ち込み、試合の行方を決定づける。ゲイェのミスに乗じて4点目のゴールを決めるなど、この日のブライトンは得点ラッシュの波に乗っていた。

 一方のエバートンはアタッカーを増員するも焼け石に水。終盤に奮闘していたイウォビが獲得したPKから、グレイが一矢報いるが反撃はここまで。三笘、ファーガソンなど新戦力の台頭著しいブライトンがエバートンを一蹴した。

ひとこと

 ブライトンのプレスを回避する能力は十分で、後半のエバートンの捨て身プレスはほぼボールを奪える可能性が見えなかった。保持する側としての貫禄が出てきた感がある。

試合結果

2023.1.3
プレミアリーグ 第19節
エバートン 1-4 ブライトン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:90+2′(PK) グレイ
BHA:14′ 三笘薫, 51′ ファーガソン, 54′ マーチ, 57′ グロス
主審:アンドレ・マリナー

マンチェスター・ユナイテッド【4位】×ボーンマス【15位】

相手の動力を利用して返り討ち

 年末年始は連勝。不調のトッテナムと入れ替わり、マンチェスター・ユナイテッドは4位に浮上。テン・ハーグ政権は徐々に軌道に乗りつつある。対するボーンマスは4-4-2に回帰。マンチェスター・ユナイテッドに対して真っ向から迎え撃つスタイルである。

 試合は序盤からユナイテッドがペースを握る。ボーンマスの4-4-2はミドルゾーンで我慢しながら踏ん張っていきたいスタンスなのだろうが、ユナイテッドが2トップの脇からボールを持ちながら侵入。徐々に押し下げることで敵陣深くまで潜っていく。

 特に上下動しながらポジションを変えながらボールを受ける選手への対処法をボーンマスが身につけていかなったのがユナイテッドにとっては大きかった。マークの受け渡しが中途半端、完全に無視できるならばいいのだけど、そういうわけでもなかったボーンマス。上がっていく選手を逃してしまったりなど守る側のルール設定が甘かったように思える。

 アタッキングサードにおける振る舞いも充実していたユナイテッド。ファン・デ・ベークがボールサイドに流れながら顔を出すスタンスはややアヤックス時代の振る舞いを思い出したかのようで少しずつフィットしていたのが印象的だった。先制点を決めたのはセットプレーから。ラッシュフォードが得たFKからカゼミーロが合わせることで先制ゴールを奪う。

 守備で思い通りに過ごせなかったボーンマスだが、保持でもなかなかペースを握ることができない。ポゼッションを大事にするいつもの振る舞いに比べると、非常に直線的。この動きに対してはユナイテッドは簡単に止めることができていた。

 その分、機を見たハイプレス発動はユナイテッドに効果があった。リサンドロ・マルティネスがいないユナイテッドのバックラインはいつもよりも落ち着きがなく、プレス耐性に難があったと言えるだろう。敵陣までたどり着くことができさえすれば、この日のボーンマスの足を引っ張っていた過度な直線性は抑えられる。なので、どこまで高い位置でボールを奪えるかがボーンマスのポイントになっていた。

 ということで高い位置からプレスに行こう!となるのはボーンマスにとっては当然の帰結である。ミドルゾーンからのプレスを強化したボーンマスだが、後半のユナイテッドは前半ほどハイプレスに慌てなかった。むしろ、ボーンマスのプレスを逆手にとった印象でスムーズに前進を披露。ポジションを取り直すルーク・ショウから追加点を奪ったユナイテッドはボーンマスの反撃を受け止めて返り討ちにしたと言っていいだろう。

 2点差になってもボーンマスは高い位置からのプレスを辞めることはなかった。展開としてはユナイテッドのチャンスが続き、いつ3点目が入るのか?という状況になっていく。ガルナチョには何回かダメ押しのチャンスがあったが、トラヴァースの守るゴールを破ることができない。

 決定的な3点目を決めたのは絶好調のラッシュフォード。自陣からのルーク・ショウのロングフィードを起点に抜け出したブルーノからのラストパスを無人のゴールに押し込んで決めた。

 フラムと同じく年末年始の3連戦を全勝で締めたユナイテッド。上位陣を追撃するために勢いをつけたリスタートとなった。

ひとこと

 ロナウドがいなくなり、PAの脅威は誰が担保するの?というところをラッシュフォードが覇権を握りつつあるというのは好循環。ビッグマッチにおける存在感を出せればここ数年の鬱憤を晴らせる充実のシーズンになる。

試合結果

2023.1.3
プレミアリーグ 第19節
マンチェスター・ユナイテッド 3-0 ボーンマス
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:23′ カゼミーロ, 49′ ショウ, 86′ ラッシュフォード
主審:マイケル・サイスベリー

サウサンプトン【20位】×ノッティンガム・フォレスト【18位】

ついに降格圏脱出に成功

 監督交代後も連敗が止まらず不振に歯止めがかからないサウサンプトン。そんな彼らの相手はノッティンガム・フォレスト。監督を交代せずにチームが復調しかけているチームというある意味サウサンプトンとは対極にいるチームである。

 両チームともプレス隊に対して、ビルドアップする側のチームの方が数的優位を確保できていた。サウサンプトンはアダムスとマーラの2トップに対して、CBがより広い横幅をとることで簡単に1stプレスラインを超えることができていた。

 5-3-2で前プレスをかけたサウサンプトンがそもそもの設計としてどこでボールを止めたかったかはよくわからないが、結果的にストッパーになっていたのはワイドのCBのところ。ベラ=コチャプとサリスがジョンソンとアウォニイの抜け出しというフォレストの攻撃のポイントをなんとか食い止めることができていた。

 一方のフォレストの非保持はアンカーを1トップのギブス=ホワイトが消す形。その分、ワイドのCBにアウォニイとジョンソンがプレスをかける形で対抗する。ギブス=ホワイトをトップ下に置くような4-3-1-2のようにも見える形であり、WGの2人がサウサンプトンの最終ラインにプレスをかける形だった。

 その分、サウサンプトンのビルドアップで空いていたのは真ん中のリャンコ。だが、リャンコはこの時間の空きをうまく活用することができなかった。むしろ、サウサンプトンはリャンコの下手なロストでピンチを招く。ドリブルで中央に突っ込んでロストすると、フォレストが素早くサイドから裏を抜けながらアウォニイが先制ゴール仕留める。

 サウサンプトンはこの場面に限らず、中央につっかけてロストをするというビルドアップの方針がよくわからない場面が多かった。詰まると結局はロングボールで2トップにボールを当てるが、別にロングボールを納めることに長けている2トップではないので、フォレストのバックラインの跳ね返しに遭っている。

 サイドからの前進もフォレストのIHがスライドしながら対応されてしまったので、サウサンプトンとしてはこちらも前進のルートとしては活用できない。フォレストが時折、不要なファウルを犯したセットプレーからチャンスを迎える以外は流れの中からの攻撃の構築は難しかった。

 後半にサウサンプトンは前後分断する形で割り切った前進を披露。前線のターゲットを増やし、バックラインからボールを当てられる場所を作りながら反撃に打って出る。しかしながら、最後までヘンダーソンの守るゴールを破ることはできず、同点ゴールを奪い取れない。

 中盤からの跳ね返しからミドルカウンターを狙っていくフォレストも勝負を決める2点目を入れることができなかったが、逃げ切りには成功。最下位で連敗が続くことになったサウサンプトンとは対照的に、降格圏から逃れて久しぶりにボトム3を脱出することとなった。

ひとこと

 ジリジリと調子を上げているフォレストがようやく降格圏脱出。決意のクーパーとの契約更新が徐々に好転する形になっている。

試合結果

2023.1.4
プレミアリーグ 第19節
サウサンプトン 0-1 ノッティンガム・フォレスト
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
NFO:27′ アウォニイ
主審:トーマス・ブラモール

リーズ【14位】×ウェストハム【17位】

3センターでもライン間はコンパクトにならない

 迫り来る降格圏の足音。一向に調子の上がらないウェストハムは毎節のように試行錯誤を繰り返している。前節でいえばパケタのCH起用がそれに当たる。今節はパケタとソーチェクをIHに配置し、ライスをアンカーに置く形をテストすることとなった。

 ウェストハムはリーズのバックラインに対してそこまでプレッシャーをかけず、ミドルゾーンにおいてのプロテクトを優先する方針だったのだろう。だが、ラインを少しでも上げたいという色気も見え隠れしていたように思う。それにより、2列目の連携がバラバラに。どこにどのように相手を追い込むかに明らかに迷いがあった。

 さらにウェストハムを苦しめたのは動き回るリーズのCHのコンビ。行動範囲が広いアダムスとロカに対して、捕まえるのに苦労した上に遅れたタイミングで不用意に出ていくため、ライン間をコンパクトに保つのが苦しくなった。

 このライン間を狙っていたのがリーズの2列目。ライン間で前を向くサマーフィル、ニョントが加速装置となり、リーズはここから攻撃を一気に仕上げていく。ウェストハムが中央をコンパクトに保つことができてる時は、右サイドを軸にデュエルを行うリーズ。特にエイリングの攻め上がりはリーズの攻撃のアクセントとなっていた。

 リーズの先制点は右サイドからの侵入。ライン間に入り込んだニョントがワンツーから抜け出すと、そのまま冷静にシュートを沈めてみせた。ニョントにとっては嬉しい初ゴールである。ウェストハムはボールにわらわら集まってしまい、ボールをどこに追い込むかが共有できてなかった感がある。

 ウェストハムの攻撃はソーチェクへのロングボールが軸となっていた。IH起用という押し上げやすい状況を作っただけに、いつもよりも積極的にエリア内や高い位置に顔を出すことができていた。

 一方でタイトなリーズの中盤に対してはプレッシャーをうまく逃すことができず。安定した前進からチャンスを作るのは難しかった。それだけにピンボール気味に前を向く機会を得たスカマッカから前半終了間際にチャンスメイクができたのは幸運。左サイドを縦に進んだスカマッカからエリア内に入り込んだボーウェンがPKをゲット。これをパケタが沈めて前半の内に同点に追いつく。

 後半、勢いに乗るウェストハムは一気に逆転ゴールを手にする。パスミスを掻っ攫ったスカマッカがそのままゴールにミドルを叩き込み、リーズの後半の出鼻をくじく。W杯前の勢いがどこかにいってしまったアーロンソンがここでもパスミス。なかなか序盤戦のような勢いに乗ることができない。

 勝ち越したウェストハムは2列目が相手を捕まえる精度が向上。前半よりも高い位置からのプレスが効くようになっており、リーズの攻撃に蓋をする機会が増えた。

 しかし、名誉挽回を狙うアーロンソンを軸に右サイドから陣地回復を行うと、段々とリーズもリズムを取り戻していく。すると、70分には同点ゴールを奪い取る。ライン間に入り込んだハリソンへの縦パスが通ると、悠々と抜けたロドリゴが冷静に決めて追いつく。ウェストハムはまたしてもコンパクトに保てなかったライン間から失点を許してしまうこととなった。

 アントニオを軸にカウンターで反撃に出るウェストハムだが、最後まで勝ち越しゴールを決めることはできず。結果はともかく、ライン間に侵入を許しまくったウェストハムの4-5-1でのテストはうまくいったとは言い難い内容に終始した。

ひとこと

 地味にリーズのプレッシングの持続時間が短くなっている。中盤でのタイトさは失われていないけど、前線でのタレントが入れ替わったことによる機能低下なのだとしたらちょっと気になる部分。

試合結果

2023.1.4
プレミアリーグ 第19節
リーズ 2-2 ウェストハム
エランド・ロード
【得点者】
LEE:27′ ニョント, 70′ ロドリゴ
WHU:45+1′(PK) パケタ, 46′ スカマッカ
主審:デビッド・クーテ

アストンビラ【12位】×ウォルバーハンプトン【19位】

追いつかれてもルーティンは守る

 4-4-2をベースとする両チームの対戦だが、序盤から優位に立ったのは下位に沈むウルブスの方。アストンビラの2トップがバックラインのケアを担当しつつ、中盤のパスコースを消す意識が高かったため、バックラインは比較的簡単に配給をすることはできていた。

 プレッシャーが軽かったのは最終ラインに落ちるネベスも同じ。展開力のある彼から大きく左右にボールを振ることで、ビラの縦横にコンパクトな陣形の外側からガンガン侵入することができていた。ネベスが良かったのは大外へのフィードだけでなく、ライン間を使う配球ができていた点。ビラのライン感がルーズと見ると、縦パスから一気に攻撃を加速させることもできていた。

 先制点を決めたのはウルブス。コーナーのキッカーを務めていたポデンスがモウチーニョの助けを借りながら右サイドから侵入。何人かのアストンビラのDFを交わしながらエリア内に入り込み左足を一閃。GKのマルティネスはこれに全く反応できなかった。

 アストンビラはボール運びでもなかなか反撃に出ることができずに苦戦。バックラインに時間を与えられたのはこちらも同じだったが、ミドルゾーンへの縦パスはことごとくウルブスにカットされてしまう。むしろ、カウンターの加速装置にさせられてしまった感のあるビラの縦パスはウルブスのパスカットの狙い所になってしまった。ビラはトップのコスタがサイドに流れたり、空いたライン間をヌネスが蹂躙したりなど先制後も優位に試合を運んでいく。

 後半、ウルブスはトラオレを投入。前半よりも重心を下げながらのカウンターを狙う形にシフトする。保持におけるプレッシャーが前半よりも緩くなったビラはCB+CHを軸にサイドに大きな展開を増やしながら敵陣深くまで進む機会を確保。前半のウルブスのように高い位置まで入り込み、ウルブス陣内でのプレータイムを増やしていく。

 トラオレのカウンターも有効ではあったが、ラストパスとシュートの両面で精度が伴わないのが厳しい。ロペテギはアイト=ヌーりを投入し、カウンター要員を増やすが更なるゴールがウルブスに入ることはなかった。

 選手交代でより効果を発揮したのはアストンビラの3枚替えのほう。アウグスティンソンのシュートがポストを叩くなど、投入直後から攻撃のアクセントとして効いていた。そして、決め手になったのはイングス。バックラインからミングスのフィードで抜け出すとジョゼ・サとの1on1を冷静に沈めて同点に追いついてみせる。

 同点に追いつかれてもなおいつものルーティンのように5バックに移行するウルブス。これによってゲームのオープンさはやや低下。どちらのチームもチャンスが少ない展開に。それだけに終盤のベイリーのチャンスは決定的。決めていれば3ポイントのゴールは枠外に流れてしまい、ビラは勝利のチャンスを最後に逃してしまった。

ひとこと

 就任直後ということである程度は長い目で見たいけど、時間経過とともに毎節のように行われるロペテギのフォーメーション変更はずっとよくわからない。

試合結果

2023.1.4
プレミアリーグ 第19節
アストンビラ 1-1 ウォルバーハンプトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:78′ イングス
WOL:12′ ポデンス
主審:ジャレット・ジレット

クリスタル・パレス【11位】×トッテナム【5位】

目覚めた右サイドが大量得点を呼び込む

 プレミア再開から2試合。ここまでまだ勝ち星がないトッテナム。セルハースト・パークは難所ではあるが、CL出場権争いでの主導権を取り戻すためにも必ず勝ち点3が欲しい状況である。

 立ち上がりにボールを持ったのはホームのパレス。いつもであればトッテナムは序盤にとりあえず様子を見ながらハイプレスをかけ見るのだけども、この試合ではそれはなし。パレスのバックラインにはボールを持たせることにしていた。

 バックラインはボールを持てたパレスだったが撤退気味のトッテナムに対して、なかなか狙いを定めることができない。中途半端な刺すパスは逆にトッテナムの格好の餌食。カウンターの温床となる。クラインが危険な形でロストするなど、パレスはボール保持から危ない場面を迎えることが多かった。

 一方のトッテナムの保持に対してもパレスは持たせるスタンスを徹底。基本的にはボール保持を許し合う切り替えの少ない展開になった。パレスが攻撃の狙い目にしていたのはトッテナムを引き込んでのロングカウンター。ボール奪取から素早いロングボールで抜け出す状況を作り出すことが出来ていた。パレスとしては保持よりもこちらの方が有望だろう。

 トッテナムは中央への楔からケインのポストを利用してのサイドへの展開が前節よりもスムーズ。クルゼフスキがいない苦しい状況に徐々に適応していっている様子も垣間見られた。

 余り状況が良くないと踏んだパレスは30分すぎからじりじりとプレッシングを開始。敵陣でのプレータイムを増やし、セットプレーを軸に攻め立てるがネットを揺らすまでは至らない。

 迎えた後半、ペースを握ったのはトッテナム。WBを早い段階で積極活用した攻撃で敵陣深い位置まで迫っていくように。特にきいていたのは右サイド。ドハーティは幅取役とロングボールのターゲットマンとして躍動。相棒のブライアン・ヒルもアタッキングサードという得意分野でようやく本領を発揮し始める。

 そして左サイドのクロスからケインのゴールでトッテナムが先制。このゴールからトッテナムの得点ラッシュが開幕する。

 2点目の起点になったのは右サイド。ロングボールをインサイドで受けたドハーティを外からヒルがサポート。これをケインが再び決めて2点目をゲット。パレスを一気に突き放す。すると、今度はケインはエスコート役に。左サイドから起点になり、逆サイドに振ったところからドハーティが決めて3点目を決める。

 パレスは中盤で捕まってしまい、前半以上に厳しい前進に。4-1-2-3にシフトチェンジしても大勢に影響はなく、点差がついた状態ではソリッドには守れない状況に。

 どうしても得点が欲しかったソンが仕上げの4点目を決めて勝負あり。久しぶりの先制ゴールと得点ラッシュで難所を乗り越えたトッテナムが2023年初勝利を挙げた。

ひとこと

 低い位置からのキャリーを免除できればブライアン・ヒルは面白い存在になりそう。

試合結果

2023.1.4
プレミアリーグ 第19節
クリスタル・パレス 0-4 トッテナム
セルハースト・パーク
【得点者】
TOT:48‘ 53’ ケイン, 68’ ドハーティ, 72‘ ソン
主審:マイケル・オリバー

チェルシー【8位】×マンチェスター・シティ【2位】

後半頭の猛チャージでトラブル続きのチェルシーを下す

 年末年始の連戦の最後。中断明けから継続してきたメンバーを入れ替えて臨んだのはアウェイのマンチェスター・シティの方だった。後方のビルドアップを支えてきたリコ・ルイスとアカンジに代えてカンセロとウォーカーを起用するという変更を行った。

 変更したのはメンバーだけではない。フォーメーションにもグアルディオラはメスを入れた。カイセドをWBとみるかSHとみるかは微妙なところではあるが、右サイドにはカイセドとウォーカーを縦に並べる形。フォーメーションとしては4-4-2か3-4-2-1のどちらかといった形だろうか。

 ボール保持においては3-2でのビルドはキープ。ウォーカー、ストーンズ、アケの3枚の前方にロドリとベルナルドが並ぶ形になった。チェルシーのプレスはそこまできっちりかかることはなかったけども、攻撃はやや直線的で淡白なものに終始。細かいやり直し等は少なく、ダイレクトな裏抜けか、あるい右の大外のカンセロからの侵入のどちらか。ツィエクとチュクエメカが中央を締めていたこともあるが、あまりシティらしくない単調さであまりチェルシーのゴールを脅かせてはなかった。

 一方のチェルシーは序盤から誤算が連発。開始早々にスターリングが負傷し、トップ下起用の全容が不明なまま交代。左サイドのプリシッチも前半の内にいなくなり、オーバメヤンとチュクエメカが前半から交代で出て行くことになった。

 ただ、それでもチェルシーはクリーンな前進が可能ではあった。シティのハイプレスはここ数試合と同じく省エネモードのまま。バックラインからショートパスでボールをつなぐことはチェルシーにとっては難しくなかった。プレス回避の主役はコバチッチとザカリアの両CH。相手の逆を取るドリブルで中盤に風穴を開けてボールを前に進めることが出来ていた。

 DF-MF間でパスを受けてそのまま前を向いていたハフェルツも悪くはなかった。シティは中盤の守備もルーズであり、いくら何でも前を向かせすぎな場面が目立った。

 しかし、そこから先がうまくハマらないのがこの日のチェルシー。サイドの攻撃はWGとSBのタンデムであり、中央のメンバーでのサポートは皆無。このあたりは気が利くマウントの存在が恋しい。WGとSBのコンビでは右サイドではできることは限定的。ツィエクの右からのカットインクロスもバレているケースが多く、精度もそこまで高くはなかった。

 チェルシーはアタッキングサードで不満を抱えていたし、シティはボールの動かし方に難があった。どちらのチームも思い通りにいかない状況の中で試合はハーフタイムを迎える。

 後半、シティは勝負に出る。リコ・ルイスとアカンジを投入し、普段の装いにチェンジしたシティは後半早々にプレスで畳みかけていく。前半とは別人のようなプレッシャーからチェルシーのバックラインから時間を奪い、ボールを即時回収。ハーフコートゲームにもちこみ、一方的に攻撃を続けていく。

 サイド攻撃にもリコ・ルイスが加わったことで流動性がアップ。グリーリッシュ、マフレズの両WGのフレッシュさもアクセントとなり、アタッキングサードでもチェルシーに脅威を与えていた。前半は役割がふわふわしていたデ・ブライネもサイドに流れてのクロスを主体とすることでようやく役割が定まった感がある。

 そして、後半にチェルシーの守備は決壊。シティは右サイドから横断するようにサイドを変えて、最終ラインの前でデブライネが前を向くと、サイドに待ち受けていたグリーリッシュがエリア内にラストパス。ファーのマフレズがこれを沈めて先制する。

 ゴールエリアまで持ってこられる形はチェルシー目線からすればすでに悪かった。だが、それでもケパが飛び出していればマフレズがパスを受けるのを防げたようなボールだっただけに、がっくりきたチェルシーファンは多かったのではないだろうか。

 さて、リードを奪われたチェルシー。前半よりも激しいシティのプレスに苦しんでおり、なかなかに攻略の糸口をつかむことができない。幸い両CHのプレス耐性は生きていたため、チェルシーはここから相手を剥がしての脱出が出来ていた。

 だが、問題になったのはやはり攻撃の仕上げのところ。中央で相手を剥がしてもそのままスピードに乗ってゴールに向かうエネルギーが完全に欠如している。ギャラガー投入はそういった部分を補う意図だろう。とりあえず前に向けるエネルギーがなければ、ゴールまでボールは届かない。配置よりもガソリン的な意味でギャラガーはチェルシーの原動力になっていた。

 しかし、馬力は何とかなってもシティのバックラインを越えてゴールに迫るのにはやや無理があった。終盤に再びシティがペースを落としたことでチェルシーに保持の機会は回ってきたが、若手主体のメンバーは得点を得ることが出来ず。後半頭の猛チャージでもぎ取った先制点を守り切ったシティがアウェイで勝利を手にした。

ひとこと

 2回の交代機会と手薄なアタッカーを失ったチェルシーが敗れてしまうのは仕方ない。が、連戦はまだまだ続くという地獄は待ってくれない。両軍ともスカッド事情はあまり良くなさそうではあるが、1月に置いていかれるわけにはいかない。勝負の一カ月になるだろう。あと、ザカリアは怪我しなければ相当いい感じ。

試合結果

2023.1.5
プレミアリーグ 第19節
チェルシー 0-1 マンチェスター・シティ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
Man City:63‘ マフレズ
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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