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「川崎的SDGsの話」〜川崎フロンターレ シーズンレビュー2022

 正直に言っていいですか。W杯にほだされて、シーズンレビューを忘れていました。ごめんなさい。まぁ、もう今更どれだけ読んでもらえるかはわからないし、みんな今季のことなんて!って思うかもしれないけども、昨日の夜考えて見たらそれなりに書けそうだったので殴り書きで書いていこうと思います。お付き合いいただける方はどうぞよろしく。

目次

良かったところ

苦しい試合でも勝ち点を取ることができた

 「え?例年のシーズンレビューってこんな感じだったっけ?」って思った人もいるかもしれない。そう思った人の感覚は正しい。今年だけ思いつきでこんな形にしている。

 ぶっちゃけ、2022年の川崎はなんかよく分かりにくいチームだったと思う。だから、とりあえずいいところと悪いところを羅列しながらどんなチームだったかを考えてみるところから始めたい。

 一番初めに挙げたこの良かった点が特に効いていたのは序盤戦である。先制点を奪われた相手に一瞬の隙をついて逆転まで持っていったり(浦和戦@等々力)、早々に奪った先制点を苦しみながら守り抜いたり(FC東京戦@等々力、名古屋戦@等々力)、セットプレーからノーチャンスっぽい試合を動かしたり(広島戦@Eスタ)、相手のGKの一瞬の隙をついて引き分けに持ち込んだり(磐田戦@ヤマハ、G大阪戦@パナスタ)。とにかくありとあらゆる手法で勝ち点を奪ってみせた。

 え?それ悪いことじゃないの?と思った人もいるかもしれない。けども、基本的には悪い内容で勝ち点を奪えないよりは悪い内容でも勝ち点を取れている方がいいように思う。なので、これはいい方に分類することにする。

大一番では軒並み勝利を挙げた

 シーズンには「ここは絶対に負けたらあかん!」と言える試合がいくつかある。2022年の川崎はこういった試合の勝率が高かった。代表的な例はもちろん等々力における横浜FM戦だろう。ジェジエウの決勝ゴールによって繋いだ勝ち点3がなければ、我々は最終節まで優勝の可能性を残して味スタに向かうことすら許されなかったのである。

 この横浜FM戦が頂点とはいえ、それ以外のターニングポイントと位置付けられる試合にも多く勝利している。ここで負けたら優勝の可能性がなくなるという状況で迎えた広島戦@等々力、シミッチ登用で首位のストップに成功した柏戦@等々力、横浜FMに大敗した後の鹿島戦@カシスタもここに分類してもいいかもしれない。

 こうした試合は軒並み、相手側が下馬評で優位に立っている試合だった。そうした前評判を覆し、ライバルの前に立ちはだかる存在になれたという点は川崎が2022年においてもそれなりに手強い相手だったことの証左になるだろう。

シーズンが進むにつれて得点数が伸びた

 「3点以上奪って勝つ」「3点を取ることはノルマ」

 鬼木政権の川崎においてこういったフレーズはお馴染みのものになりつつある。序盤戦はこのキャッチフレーズを守って勝つ試合は皆無だった。リーグ戦で3得点以上決めて勝利した試合は6月18日の等々力における札幌戦まで待たなければいけなかった。開幕してから17試合目のリーグ戦である。

 一方で後半戦は多くの得点を挙げる試合が増えた。サイドの崩しが安定し、従来のクロスからの得点の形が少しずつ増えてきたこと。それに伴いPKを獲得する場面が出てきたこと。そしてマルシーニョのスコアラーとして機能してきたことなどが要因としては挙げられるだろう。その結果、最後の12試合においては7試合で3得点以上というノルマを達成してみせた。

悪かったところ

相手よりも多くの決定機を生み出して勝つ試合が減った

 「苦しい試合でも勝ち点を取ることができた」というのをいい点に挙げたのに「相手よりも多くの決定機を生み出して勝つ試合が減った」を悪い点に挙げたのは何事!?と思う人もいるかもしれない。けども、別に矛盾はしていないだろう。どうせ悪い内容ならば、勝ち点くらいは欲しい。でも、悪い内容が続くこと自体は良くないから要改善。両立する案件である。

 勝ちに結びつく要素としてポゼッションは役に立たないことはわかって久しい。xGなどさまざまな指標はあるけども、多くの試合を見た経験としては枠内シュート数というのは試合の優劣をある程度忠実に反映してくれる数字だと思う。特にリーグ戦のようなサンプル数が多い試合だと尚更。

 開幕8試合において枠内シュートが相手を上回った試合は鹿島戦とG大阪戦の2試合だけ。これはここ2年と比べると明らかに傾向が異なる。この傾向の違いはファンも十分に体感した序盤戦になったはず。今年の前半の川崎は目に見えて苦労した試合が多かった。ちなみにACLのジョホール戦では枠内シュート0での敗戦も喫している。

逃げ切る試合が減った

 後半戦の川崎は非常に先制点を奪う試合が多かった。公式戦ラスト15試合はいずれも先制ゴールを奪っている。しかしながら、そのうち6試合は勝ちきれておらず、うち2試合は逆転負けを喫している。勝っている9試合においても、5試合は一度は追いつかれている。

 つまり、先制点は取れているにもかかわらず、リードを生かしながらきっちり逃げ切った試合は15試合のうち4試合だけ。30%にも満たない。ちなみにルヴァンカップで敗れたC大阪戦は1stレグ、2ndレグともに追いつかれてアウェイゴール差によって敗北している。

 2020年の公式戦において先制しながらも追いつかれた試合は28試合中3試合だけ。2021年においては38試合中6試合だけである。そしていずれの年も逆転負けはない。よって、ラスト15試合だけにおいてもこの2年間より勝ち点を落としているということになる。

交代選手によるペースチェンジができない

 昨季途中くらいから交代選手によってペースを引き寄せ直すことができていない。代わって入る選手、特に攻撃的なポジションの選手には物足りなさが残る。遠野、小林、宮城あたりは特にサポーター目線からはフラストレーションが溜まるシーズンになっただろう。

 「立ち上がりからペースを握る→ややトーンダウン→交代選手による巻き直し」は川崎のここ数年の鉄板の流れだったのだが、今年に関してはこの方程式はほぼ成り立たなかった。明確にオプションとして機能した交代プランは終盤戦の知念と小林を併用+山根のWG化による擬似2トップくらいだろう。知念は陣地回復も含めて交代選手として高い機能性を示した。

 だけども、この部分にどこまで求めるかは難しい。ジョーカー役が多かった2020年までこの部分を牽引していた三笘はW杯の決勝トーナメントで投入直後に即座に対策を打たれるレベルの選手だったのである。同じ幻影を追っていても仕方のない部分である。それでも物足りないけども。

結局どんなシーズンでした?

 ざっくり2022年の川崎をまとめると以下のようになるだろうか。

  • 前半戦は攻撃の形を作れずに相手に主導権を握られながらも勝ち点をなんとか稼ぐことができていた。
  • 後半戦は得点が増加し先制点を奪うことができていたが、攻撃の良化を勝ち点に繋げられなかった。

 クラブとしてはタイトル獲得を経て勝負強くなった部分も残してはいる。だが、守田英正、田中碧、三笘薫、旗手怜央などの退団により、これまでできていたはずのことが着実にできなくなっているように感じる。

 例えば、アウェイの札幌戦。試合は終盤にオープンな撃ち合いになった。こうした展開になればまず間違いなくこれまでの札幌には勝てていた。しかしながら、川崎は退場者を出して敗戦することになる。殴り合いにおけるアドバンテージというのは従来ほど有しておらず、攻撃力のあるチームと真正面から向き合うことに関しては今のチームはリスクがあるということだろう。

 こうした要素を挙げてみると苦しかったシーズンなのだなと思えるかもしれない。しかしながら、川崎は今季最終節まで優勝争いを繰り広げていたということである。川崎がこれまでのシーズンと同じように行かなくても、今年のJリーグは優勝争いができたのである。

 優勝できるかどうかは自分のチームの出来も重要であるが、周りの状況も重要であるということだ。18チーム全てがダメでも優勝するチームがありませんでした!ということはありえないし、歴代最強クラスのチームが2つ一気に出てきたとしても優勝するのは1チームだけである。自分たち次第でもあると同時に外的要因に拠るところも大きい。今年のJ1は明らかに苦しいチームが多かった。優勝した横浜FMでさえ苦しいシーズンだったと言えるだろう。

 部分的な話をするならば、川崎から高い位置でボールを奪うトライをしてくるチームはシーズンが進むと全滅した。序盤戦で見られたような2CB+アンカーに一斉にプレスをかけて、川崎からボールを奪い取ってくるチームは皆無。負けた湘南や札幌はハイプレスのイメージの強いチームかもしれないが、きっちり試合を紐解いてみれば彼らは川崎のCBにボールを持たせており、川崎のビルドアップの異なる問題点を引き出したチームと言えるだろう。

 川崎のバックラインのプレス耐性は特に改良したように思えないのだが、シーズンが進むにつれて問題にはならなくなった。他のチームが突っついてこないことで目立たなくなった弱みと言えるだろう。弱みが顕在化するかもまた外的要因次第である。

 よって、2022年の川崎をまとめるとここ1~2年に比べれば明らかにできることは減っているが、今のJリーグの環境であれば優勝争いができる水準にあるクオリティを有しているということになる。

来季どうしようか?

2022年の問題点の話

 2022年の終盤に得点が増えた理由は、スタメンを固定化して2022年における最強の11人の形を作ることができたからである。終盤にスタメンを固定化した理由は大きく分けて2つあるように思う。1つはリーグ戦の優勝の可能性を終盤戦まで残していたこと。もう1つはカップ戦がいずれも早期敗退したことにより、リソースをリーグ戦だけに集約することができたこと。

 以上の2つの理由を踏まえれば、11人をある程度固定したメンバーで終盤戦を乗り切ろう!となってもおかしくはない。が、実際はこの目論見は甘く、ミッドウィークの試合においては大きくクオリティが落ちてしまい、中2~4日を同じメンバーで戦い続ける難しさを実感した。

 その一方で、選手が入れ替わったら入れ替わったで一気にクオリティが落ちるという問題点があるということも同時に証明された1年でもある。入れ替えて起用されたメンバーのパフォーマンスはことごとく安定せず、鬼木監督が提示している基準の確かさもまた同時に正しいと実感したシーズンである。谷口、ジェジエウ、山根、脇坂、シミッチ、橘田、家長、マルシーニョの8人のFPはスタメンから動かすのが難しく、入れ替えには大きなクオリティの低下が伴うことになる。

 よって「鬼木監督の基準は正しいが、その基準を満たすことができる選手が少ない」ことが今の川崎の問題点である。ただし、基準まで引き上げられないコーチスタッフが悪いのか、基準まで達しない選手たちの普段の鍛錬が足りないのか、基準に達さない選手をとってくる強化部が悪いのかはわからない。全部かもしれない。

 だが、どの要素が原因だとしても、リーグの優勝にはより基準を満たす人数が必要なことだけは確かである。したがって来季は層を拡充し、スタメンと遜色なくプレーできる選手を増やさなければならない。

来季の話

 来季のスカッドの特徴は新加入として多くの若手選手が加わるということだ。新卒採用の名願、山田に加え、昨シーズンまでに2種登録が済んでいる大関、松長根といったユース組。昨年すでに加わってはいるが、高井と永長にも大きな期待がかかる。

 特に進境著しいユース組に期待する人は多いだろう。もちろん、自分も期待している。しかしながら、それに先立って気になる点がある。まず、今の川崎のスカッドにおいて懸念があるポジションはバックラインに多いことである。谷口が抜けたDFに入ったのは大南だが、彼はそもそもどちらかと言えばピッチの中央より右側が主戦場の選手。WB起用も多く、CBとしての起用にはやや気になる部分がある選手でもある。

 左のCBとしての現有戦力の1番手は車屋だろうが、稼働率に不安がある上に出場した時のパフォーマンスが安定していない。2022年の出来では仮に怪我がなくともフルシーズン信頼してレギュラーを任せるのは難しい。よって高井の出番が早い段階であることは十分に考えられる。怪我がちな登里とまだ途上感がある佐々木が競うLSBにおいても松長根が早々にポジションを掴む可能性もある。

 だが、バックラインの若い選手のチャレンジ起用はミスを許容しにくいという点で難しさがある。どんどんトライしてOK!という前の選手とは訳が違う。今の川崎の前線は少なくともレギュラー格は実績は十分。レンタルバックの宮代も含めれば、すぐには若い選手に頼らなくてはいけない事態に陥る可能性は低い。一方でバックラインは一歩間違えれば即戦力化を期待する状況になる可能性は十分にある。

 仮に高井や松長根の登用がうまくいき、レギュラーを掴んだとしよう。特にサイズのある高井に関しては早い段階でステップアップの話が飛び込んでも不思議ではない。若い選手をレギュラーに定着させたら10年は安泰!とはならないのが今のJリーグである。

 つまり、若い選手の登用を軸とするスタイルにはうまくいく、いかないのどちらのケースにおいても懸念があるということである。若い選手の流出のハードルが低く、海外に移籍したとて十分な移籍金がもらえない状況が2,3年ごときで改善するのは考えにくい。

 となれば、川崎の課題解決には他のルートも開拓する必要がある。無論、外部から獲得した選手の戦力化である。以前は外国籍選手+生え抜き+大卒若手を軸としたスカッドで十分に戦えていた川崎だが、海外への引き抜きのサイクルの早さによってこのスカッド構成は持続不可能になっている。

 川崎に加入する選手も瀬古のように25歳未満の選手を移籍金を払って獲得する選手が出てきている。今季も瀬川、大南、上福元はいずれも移籍金を払って獲得している様子。チーム事情的にも獲得にかかっている金銭(どの程度かはわからないが)的にも、以前のようにベンチからある程度のプレータイムをこなしてくれればOKという状況とは異なると考えるのが自然だ。

 夢を見せてくれるのはユース選手が活躍し、輝く姿かもしれない。しかし、中期的に川崎が強さを維持するにはこれまで目を背けてきた外部の戦力化は不可欠。チームとして、これまで苦手だった部分に着手することができるかどうかが、川崎が今後持続的な強さを身につける分かれ目になるはずだ。

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