Fixture
天皇杯 4回戦
2023.8.2
川崎フロンターレ
×
高知ユナイテッドSC
@春野運動公園陸上競技場
予想スタメン
予習
第15節 新宿戦
第17節 青森戦
第18節 マルヤス岡崎戦
展望
高知のスタイルの特徴は?
中断期間を経てJリーグは後半戦がリスタート。リーグ戦に先立って行われる天皇杯が一足先に再開するスケジュールとなっている。というわけで川崎の後半戦はまさかの高知から始まることとなった。自分としてもJFLの予習という未知の体験からプレビューがスタートすることに。
天皇杯ではG大阪、横浜FCといったJ1勢を続々撃破している高知。今季J1勢と天皇杯で対戦するのは川崎で3チーム目である。JFLにおいては15チーム中11位。現状の順位表はあまり芳しくはないが、直近の3試合は新宿、青森、マルヤス岡崎という3-5位のチームに2勝1敗と悪くない戦績である。ちなみに勝利した2試合はいずれもホーム開催。連勝で川崎をホームで迎え撃つ格好になる。
フォーメーションは5-4-1が基本。低い位置からポゼッションをしながら攻撃を構築する。組み立てに際してフォーメーションはそこまで大きくいじったりはしてはいないものの、プレッシャーの少ない相手に対してはCBの1枚が中盤に列を上げるなど、それなりに保持における心得はあるチームと推察することができる。
中盤中央に人が入ってくるケースが多く、シャドーの樋口や佐々木は中央に降りていく動きを頻発する。シャドーがもたらす中央の密集は高知の攻撃パターンの1つ。樋口と佐々木の反転から前を向き、1トップ(小林心、新谷、西村など多くの選手が試されているポジションだ)が裏を抜けるアクションに合わせて出すスルーパスがフィニッシュに向かう形となっている。シャドーが降りる動きが多い分、1トップはロングボールに体を張りつつ、裏に抜けるアクションを行うことに注力している。
中央密集の攻撃においてはCHとシャドーの前後関係が入れ替わるなど、ショートパスに特化したところが要所に見られる。逆に青森戦のように中央を閉じられてしまうと、一気に沈黙。この前進のパターンが使えずに苦しんだりもする。
一般的に中央を閉じてくる相手に対しては、左右に素早くボールを動かせるスキルがあるかどうかが大事なファクターになることが多いが、高知がこれができるかできないは日による様子。青森戦ではできなかったが、マルヤス岡崎戦では左右のWBを生かしながら幅を取った攻撃を行うことができていた。
サイド攻撃においては左のWBの橋本がアクセントになる。大外からのカットインやオフザボールの動きから違いを見せて、マルヤス岡崎戦ではPK獲得という大仕事まで果たした。
セットプレーも大きな得点源の1つであり、ニアに合わせてシュートしたり、スラしてファーに送る形からゴールを決めている。勝利した2試合においてはいずれもセットプレーからのゴールが決め手になっており、勝ち点3に直結する貴重なゴールをセットプレーから上げていることがわかる。
非保持においても5-4-1というベースは変わらない。同じ3バックとの対戦となった新宿戦や青森戦においても、相手を高い位置から捕まえるようなオールコートマンツーのような入りはしなかったため、ミラーを生かしたハイプレスというのはあまり得意ではないのだろう。
プレスに出ていくアクション自体もなくはないが、CFが片側に守備で誘導し、同サイドに閉じ込める形で選択肢を削れた時にプレスを起動。この状況においてはWBが列を上げてプレッシャーを強めていく。
ただし、基本はリトリート+ロングカウンターがベース。マルヤス岡崎戦ではリードで迎えた後半はリトリートを基本に自陣からの長い距離のカウンターから相手のゴールを脅かしていた。このようにポゼッション基調ながらも少ない手数での攻撃も機能させることができるチームである。
プランAの持続時間を伸ばしたい
先に高知相手の対策的な目線の話をすれば、ポゼッションに対する守り方だろう。中央を固めつつ、同サイドに選択肢を限定して相手のミスを誘発するような形を作っていきたいところ。
密集に誘導されてしまうと、高知は狭いスペースから大きく展開を作ることができる選手はいないので、手詰まりになることが予想される。川崎は相手を狭いスペースに誘導しつつ、ホルダーにスペースを与えない形でサイドチェンジを封じることに注力したい。
オフザボールが活発な高知の左サイドは要警戒ポイントである。裏に抜けるアクションとカットインの両面にはSBを軸に食らいついていくシーンを作り続けたい。
簡単に対策色が強い話をしてきたが、この試合の川崎には個人的には自分たちが自分たちのことをできるかどうか?の部分を問いたいところ。前半戦の終盤の川崎は90分のゲームコーディネートに難を残して終了したといえる。
4バックでも中盤が戦うことができれば上位勢を組み合うことができる一方で、終盤は不確定要素が強い3バックにシフトせざるを得ない状況が続いている。強いチーム相手に歯が立たなかった序盤戦を踏まえれば状態は悪くはないが、「悪くない」程度で優勝できるほど順位表が突きつける現実は甘くはない。
選手不在や移籍などの外的要因もあるが、そうした部分は特に勝ち点には勘案してはもらえない。今の状況でどれだけ勝ち点を取れるか?その部分の模索を続けていかなければいけない。ACLが入ってくる中でこうしたチューニングをしなければいけないという現状は、怪我人が戻りつつあることを差し引いたとしても明るい見通しは難しいというのが個人的な感覚である。
具体的には4バックで踏ん張れる時間を少しでも長くしていく必要がある。控え選手(特にIH)が4ベースの形に順応し続けることができることもさることながら、先発メンバーがポゼッションを挟みながら交代を後ろ倒しできるかどうかも重要な要素になるだろう。強みがあるプレスは続けてもらえたいが、頻度を減らすための工夫にはチャレンジしたい。
高知戦ではメンバーが大幅に変わる可能性があるが、カテゴリーの差を考えれば誰が出ても90分間試合を制御できる内容を見せたいところ。ジャイアントキリングは天皇杯の魅力であるし、この試合はNHKで中継されるなど注目度もそれなりにある状況だが、「もしかしたら?」という劇的な展開は不要。格上が圧倒するというつまらない天皇杯を実現し、後半戦の足がかりにしたいところだ。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)