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「Catch up Premier League」~Match week 4~ 2022.8.27-8.28

目次

①サウサンプトン【11位】×マンチェスター・ユナイテッド【14位】

■課題はあれど勢いは殺さず

 前節高い位置からのハイプレスでリバプールを下し、今季初勝利を飾ったマンチェスター・ユナイテッド。その勢いを絶やさないためにもサウサンプトン戦は重要な一戦となる。

 試合はユナイテッドがボールを持つ展開に。ユナイテッドは前節と同じくCB2人とマクトミネイ、エリクセンでビルドアップを行っていく。狙いとなるのはサウサンプトンの中盤の背後のスペースに縦パスを通すこと。このボールが届けばユナイテッドの攻撃は一気に加速する。

 加速を許したくないサウサンプトンは中を締めるように守る。サウサンプトンは基本は4-4-2のセットなのだけど、右のエルユヌシは左のA.アームストロングよりも高い位置をとることが多かったので4-3-3っぽく見える時もあった。ここら辺はちょっとアシメ。

 プレスは内側を消しながらボールを外に押し出すようにして守っていく。ユナイテッドはこのサウサンプトンのプレスに沿うように外にボールを循環させる。

 しかし、ユナイテッドのWGはサンチョとエランガ。特に左のサンチョは1on1でも勝負できる人材。ユナイテッドとしてはそもそもここで勝負することは問題にならない。なのでサウサンプトンのプレス誘導に特に逆らうことなく、ボールを外回りさせていた。中は通せなくても外を回しても問題ない。

 サウサンプトンはユナイテッドのWGに対してSBとSHで挟むようにする。となるとチームとしての重心は下がってしまう。相手を押し下げてバイタルを簡単に使えるようになったユナイテッドは敵陣に容易に入り込める。そのかわり、ユナイテッドは長いボールをだらっと蹴ると跳ね返されてNG。面倒でもサイドから奥行きをとってそこから一手間かけてPAに侵入しなければいけない状況だった。

 ユナイテッドのハイプレスはひとまずは恒常的なものではない様子。プレッシングはハイプレスと呼ぶには憚られる設定のもので、ある程度サウサンプトンにボールを持たせていた。サウサンプトンはゴリゴリ。体を当てながら同数の状況を切り拓いていく!という感じで同数のサイドからクロスを上げる形を作り、エリア内で空中戦に挑んでいた。

 スコアレスで迎えた後半、動いたのはユナイテッド。マクトミネイが前線への走り込みを解禁し、ハーフスペース付近から抜け出しを強化する。その動きを囮に空いたサイドからダロトが鋭いクロスを放り込み、これをブルーノが沈める。インサイドをフリにした大外からの攻めでユナイテッドが先にゴールをこじ開ける。

 ここから反撃に向かうサウサンプトン。前半よりも強度をあげたハイプレスでユナイテッドのビルドアップ隊を脅かす。この辺りの対応はユナイテッドはまだ覚束ないところが否めず、試合を落ち着かせることができない。

 その分、カゼミーロやフレッジを投入し守備ブロックを強化するユナイテッド。サウサンプトンはベラ=コチャプの持ち上がりやリャンコの前線起用など、パワーでこじ開ける試みを最後まで続けていたが、ユナイテッドはなんとかこれを跳ね返し続ける。

 カウンターから追加点の脅威を突きつけることができなかったのは残念ではあるが、連敗スタートしたチームにとっては勝ち点3は何よりも重要。勢いを途切らせないことに成功した。

試合結果
2022.8.27
プレミアリーグ 第4節
サウサンプトン 0-1 マンチェスター・ユナイテッド
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
Man Utd:55′ フェルナンデス
主審:アンディ・マドレー

②ブレントフォード【9位】×エバートン【17位】

■肉弾戦に屈し初勝利はお預け

 お互いにハイプレスは行わず、バックラインからボールを持たせながら様子見の序盤戦。トップに長いボールを放り込みながら手早く攻撃を狙っていく。

 ブレントフォードは肉弾戦重視。トップのムベウモかトニーに長いボールを当てながら前進を狙っていく。ウィサのロングボールから一発で抜け出す形などから決定機を作っていく。

 エバートンはよりスピードを意識したアタック。ブレントフォードの最終ラインの裏を取るような走り出しで勝負をかけていく。後方のユニットのスピードに難があるブレントフォードはとりあえずラインを下げることで対応。横幅も相手に明け渡してしまい、エリア内を固めることを優先する。そのため、エバートンはブロックの外からの放り込みにトライしなければいけなくなっていた。

 それでもサイドにアタッカーがいるエバートンはブロック攻略の可能性はある。カットインからゴールに迫る形を見せるなど、何も手がないわけではなかった。

 先制点を奪ったのはエバートン。相手の重心が上がっている中でバックラインのコーディのフィードから前進すると、最後は抜け出したゴードンがフィニッシュ。少ない手数でゴールを陥れることに成功する。

 一方のブレントフォードも放り込みから可能性は感じる。しかし、この日のブレントフォードには決定力が足りない。惜しいシュートやポストに阻まれるなど精度の部分でゴールを得ることができない。

 決めきれないブレントフォードに対して、エバートンはカウンターのカウンターから好機を作る機会が増加。撤退守備、そして先制点の起点にもなった低い位置からのコーディのロングフィードなどから試合をコントロールしつつ追加点を狙っていく。

 後半、よりエバートンは引きこもる比率を高めて撤退。ブレントフォードが今度は押し込みながら敵陣を攻略しなければいけない場面である。ただ、エバートンの問題はバックスの空中戦の怪しさ。競り合いに関しての強度で言うとブレントフォード側の戦い方に耐えきれない可能性があるなと思ってしまうマッチアップだった。

 ブレントフォードはハイプレスで即時奪回を試みながら攻守に積極性を高める。エバートンはロングカウンターとブロック守備で撤退して粘っていく形。3-4-3で攻勢を強めるブレントフォードのバックラインの裏を狙っていく。決定力の不足とピックフォードのセービングに阻まれていたブレントフォードだったが、84分にジャネルトがなんとかこじ開けて同点に。

 エバートンはロンドンなどパワー系の選手を前線に置きながらハイボールの応酬に挑んでいく。しかし、最後まで再びリードを奪うことはできず。肉弾戦に耐えきれなかったエバートンは追いつくことを許してしまい、またしても初勝利はお預けとなった。

試合結果
2022.8.27
プレミアリーグ 第4節
ブレントフォード 1-1 エバートン
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:84′ ジャネルト
EVE:24′ ゴードン
主審:ジョン・ブルックス

③ブライトン【5位】×リーズ【3位】

■見応え十分の好ゲームとなった上位対決

 好調同士のチームの一戦は前評判に違わずスリリングな好ゲームとなった。立ち上がり、落ち着かないボールの奪い合いが続く両チーム。特に激しいチェイシングをかけたのはリーズの方。

 ブライトンはこのプレスに対しては大きな展開で対抗。彼らにとって大きかったのは前線にウェルベックがいることである。懐が深く、スペースに走りながらでもロングボールが受けられるウェルベックが最前線にいることでブライトンは逃げ場を確保。いつもほど、ショートパスで丁寧につなげなくとも長いボールできっちり前進することができていた。

 リーズは高い位置からのプレッシングからスタートしたが、相対的な話で言えばブライトンのプレスはやや落ち着いたもの。よって、リーズの方がショートパスで繋ぐ余裕を見せることができていた。

 普段からブライトンのフォーメーションはわかりにくいものなのだが、この試合ではそのわかりにくさに一段と拍車がかかった印象。守備においては5-4-1っぽくも見えるし、攻撃においては3-4-3のような4-4-2のようなと言う感じで一言では説明しにくい。もうブライトンに関しては細かい並びを逐一追うよりも、誰がどんな感じの選手でどうやってタスクを分けているのかを把握する方がいいのかもしれない。

 後ろをしっかり組んだ守備に対峙するリーズはロカが相手のブロックから自由になりながらゲームメイクに奔走。即時奪回からの急戦的なカウンターと大きな展開とライン間への縦パスを使い分けながらブライトンのブロックに立ち向かう。

 だが優位だったのはブライトンの方だろう。リーズはプレスを諦めなかったが、なんせボールを捕まえることができない。ボールを回すスピード、フォローのポジションどりの早さ。どちらもリーズよりも一枚上であり、ペースは彼らのものと言っていいだろう。

 前半は右サイドのマーチが存在感を発揮していたが、後半になると今度は左サイドから勢いづいてくる。トロサールとエストゥピニャンのコンビにカイセドが絡んでくる攻撃は厄介。旋回しながらポジションをくまなく変えて、相手の狙いを絞らせない。

 先制ゴールもこの左サイドの連携からだ。深さをとったウェルベックからはじまった攻撃は、フォローに入ったカイセドから斜めに走り込むトロサールを経由し、最後はグロス。まさに今季のブライトンの詰め合わせと言えるような一撃で先制する。

 リーズは苦しい展開ではあるが、トップ下のアーロンソンが躍動。狭いスペースで縦パスを引き出すだけでなく、そのまま自らターンまで行い中央にパスの預けどころを作ることで反撃の狼煙を上げる。

 しかしながら、後方をやや厚く補強した交代と三笘のように少人数で攻撃を完結できるタレントの投入で、ブライトンは抵抗。運ばれるところまでは許してもゴールを破らせるところまでは許さない。

 上位対決となった両チームの一戦は見事な崩しで先制弾を奪ったブライトンが勝利。順位に違わぬクオリティの高い試合を制した。

試合結果
2022.8.27
プレミアリーグ 第4節
ブライトン 1-0 リーズ
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:66′ グロス
主審:マイケル・サリスバリー

④チェルシー【12位】×レスター【19位】

■本当に10人?

 フォファナの綱引きというもう一つの両チームをめぐる駆け引きは試合前にFabrizio Romanoの『Here we go』によってチェルシー移籍で決着をした様子。レスターとしては手痛い流出ではあるが高額の移籍金とこの試合のチェルシーのスカッドに組み込ませなかったことはせめてもの抵抗という感じだろう。

 というわけでクリバリ不在のバックラインの構成に頭を悩ませることとなったチェルシー。この試合では4バックを選択し、ギャラガーの2CHに再トライをすることになる。

 どちらのチームもじっくりボールを持っての前進には苦戦している印象。チェルシーはアンカーのジョルジーニョを消されており、中央からの侵入は難しい。外を迂回させながら左のハーフスペースからのスターリングのカットインと、右のハーフスペースにおけるハフェルツやロフタス=チークの抜け出しによって打開を図る。

 一方のレスターは左サイドのバーンズから手早い攻撃でのカウンターがメイン。ロングカウンター気味の反撃で少ない手数で攻め入る形である。ただし、アタッキングサードまで進んでからの選択肢がやたらペナ幅に偏っており非常に窮屈。チェルシーはやたら守りにくい状態だった。

 よって、よりゴールに迫っている展開になっていたのはチェルシー。特に効いていた右のハーフスペースからの抜け出しがレスターにハマりつつある。そして、ロフタス=チークとティーレマンスのコンタクトからPK判定。だが、これは直前のハフェルツのプレーがオフサイドにより取り消されることに。

 すると、トランジッションからレスターが活路を見出す。ククレジャのパスミス起点からチェルシーはまずい局面が発生。バーンズからのカウンターでギャラガーを退場に追い込む。これでチェルシーを10人に追い込む。

 しかしながら、この状況を生かすことができないレスター。バックラインからの繋ぎでも数的優位を有意義に使うことはできない。チェルシーはCHに入ったロフタス=チークの上がりを抑制することでバランスを取る。ハフェルツをはじめ、2列目がレスターの最終ラインにアタックをかけられる状況は続いていたので、数的不利を感じずに攻め続けることができていた。

 10人のチェルシーが先制点を奪ったのは後半早々。スターリングが個人技でこじ開けてみせた。反撃に出たいレスターだが、CBがきっちりボールを運べないこととカウンターの起点となっているハフェルツを囲まずに放置していることでなかなか挽回をすることができない。

 保持で押し込めず、カウンターを咎めることができない。5-3-1にシフトしたチェルシーはもっとサンドバック状態にされてもおかしくないのだけど、レスターはなかなかバックラインから押し上げる形を安定して作れない。

 そんなレスターを尻目にチェルシーは追加点をゲット。右サイドで裏に抜けたハフェルツから再びスターリングが決めて点差を広げる。レスターは最終ラインの消極的な対応が目に余る失点シーンとなってしまった。

 レスターはバーンズのカウンターから1点を返すも反撃はそこまで。イヘアナチョ、アジョゼ・ペレスなどの追加アタッカーも得点には結びつけることができず。終始数的優位を感じられない戦い方になってしまったのは嘆かわしい。頼みのヴァーディも不発で、10人のチェルシー相手に勝ち点3を明け渡してしまった。

試合結果
2022.8.27
プレミアリーグ 第4節
チェルシー 2-1 レスター
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:47′ 63′ スターリング
LEI:66′ バーンズ
主審:ポール・ティアニー

⑤リバプール【16位】×ボーンマス【15位】

■鬱憤の全てをぶつけられたボーンマス

 まさかの開幕から3試合未勝利、期待のヌニェスは粗末な一発退場で早く不在、前節は絶不調のマンチェスター・ユナイテッドに初勝利を献上。そんなこれまでのリーグ戦の鬱憤を全てボーンマスにぶつけた。そんな一戦だったと言えるだろう。

 立ち上がりからボールの即時奪回と奪ったらすぐに縦に進んでいくスタンスでボーンマスのゴールに襲いかかり続ける。先制点は3分。サラーからディアスへのボールであっという間にゴールまで辿り着く。

 先制点後もリバプールは手を緩めない。この日のリバプールは精度よりも強度重視。多少、パスが乱れてしまったとしても別にOK。取り返してまた攻撃すればいい。この辺りはちょっとクロップ原理主義っぽい。プレスの手綱を握るのはヘンダーソンであることが多いのだが、前半は隙あらば彼がガンガンプレスに行くのが前半の特徴だった。勢いを殺さないまま、エリオットが追加点を奪い取る。

 20分くらいには試合は一段落。序盤はリバプールのSBは高い位置を取る暇もなく攻撃が完結してしまっていたのだが、試合が落ち着きオーバーラップする隙を見出すことができたならすぐさまミドルを打ち込むアレクサンダー=アーノルドは流石である。

 4点目を決めたのはフィルミーノ。少しラッキーな形ではあったが、ここまでのゴールは全てフィルミーノのアシストだったため、そのご褒美が回っていたと言う感じだろうか。

 前半のトドメはファン・ダイク。ロバートソンからのCKを叩き込み、ゴールショー(前編)を締め括って見せた。

 ボーンマスはなかなか時間を作ることができない。本来であればロングボールを蹴る前にポゼッションをしながら全体を押し上げたいのだが、リバプールの高い位置からのプレッシングがそれを許してくれない。

 4-4-2で挑んだ意図も不明瞭。まぁ、後ろを重くすればいいと言うものではないと言うのは後半も見れば自明ではあるが、それでも2トップが起点にもなれずプレッシングの制限もかけられないと言うのは厳しい。ボーンマスのバックラインは加速したリバプールの攻撃をモロに受けてしまっていた。失点を重ねてしまうのは当然だ。

 後半は5-4-1にシステムを変更し、心機一転したいボーンマスだったが、開始1分でオウンゴールにより失点という考えられる中で最悪の立ち上がりを披露。後半もペースを巻き返すことができず、リバプールのペースで試合は進んでいく。

 バイチェティッチのデビューやカルバーリョの初ゴールなど、後半はちょっといつもとは違う風情の展開になったアンフィールド。終わってみれば合計9得点での大勝。鬱憤を晴らす対象になったボーンマスにとっては気の毒だが、リバプールにとってはもやもやを吹き飛ばす今季初勝利となった。

試合結果
2022.8.27
プレミアリーグ 第4節
リバプール 9-0 ボーンマス
アンフィールド
【得点者】
LIV:3′ 85′ ディアス, 6′ エリオット, 28′ アレクサンダー=アーノルド, 31′ 62′ フィルミーノ, 45′ ファン・ダイク, 46′ メファム(OG), 80′ カルバーリョ
主審:スチュアート・アットウェル

⑥マンチェスター・シティ【2位】×クリスタル・パレス【9位】

2点差も5バックも飲み込み尽くしたハーランド

 昨シーズンのシティのリーグ戦の特徴は特定の相手に勝てなかったこと。大半はシーズンダブルなのだが、1つ勝てなかったチームにはどちらも勝つことができなかったという偏りが出ている。パレスはそのシティが昨年勝てなかったチームの1つである。

 パレスはリバプール戦に見せた5-4-1でがっちりとブロックを組む。ザハがいないとなるとロングカウンターに不安があるけど平気なの?という懸念は意外にも早々に拭われることに。1つ目のセットプレーからストーンズがオウンゴールを献上してしまい、あっという間にパレスが先制する。シティはファウルを犯したプレーにおける対応のちょっとしたお粗末さが高い代償として降り掛かってきた形である。

 シティが反撃の牙を向く前にパレスはなんと追加点までゲット。アンデルセンのCKからのゴールで前半のうちに2点のリードを奪う。

 シティは5バックで来たボーンマス戦と同じくロドリの周りにウォーカーをセットし、カンセロは左サイドの幅をとるアシンメトリーな形を採用する。がっちり組まれたパレスのブロックは強固で特に人数をかけたシティの左サイド側は強かった。寄せるところ、捨てるところがはっきりしており、華麗なパスワークでの侵入をパレスは許さない。

 その分、シティのチャンスは左サイドからの対角のパスからのマフレズorベルナルドの2人、もしくはハーランドとデ・ブライネのコンビからの疑似カウンターでの手早い速攻の2パターンに集約。こうしたシティの攻撃の破壊力はなかなかだったが、エリア内のDFの対応も含めてパレスは粘り強い守備を継続。前半は2点のリードをキープする。

 後半、シティはロドリの位置を上げながら攻勢をさらに強める。するとこの効果は早々に現れる。高い位置をとったロドリからの対角パスを収めたベルナルドが右サイドからの個人技で追撃弾をゲット。ロドリの重心が上がった分、ベルナルドのカットインを守る壁がパレスは1枚足りなくなった印象だ。

 さらにシティは強気の交代で流れを引き寄せる。アルバレスとギュンドアンの投入からアタッカーを増員すると、すぐにハーランドの抜け出しから同点に。

 フォーメーション変更でシティの右サイドはさらに強力になった。ベルナルドのカットインとデ・ブライネの放り込みの両刀使いは手が付けられなくて当たり前。3点目はこの右サイドからの侵入をハーランドが仕上げて見せた。

 パレスはリードされたこともあり、4バックにシフト。プレスを強めて前がかりなチャレンジを行う。ただし、こうしたチャレンジをタダでは許さないのが今のシティである。前がかりなアタックを跳ね返す形でカウンターを打ったシティ。再びネットを揺らしたハーランドがハットトリックを達成する。ハーランドの馬力に圧倒されたパレスの守備陣には気の毒な気持ちしかない。

 2点のビハインド、パレスの5-4-1ブロック。タフな状況を豪快な跳ね返して見せたシティ。難敵克服で無敗キープに成功した。

試合結果
2022.8.27
プレミアリーグ 第4節
マンチェスター・シティ 4-2 クリスタル・パレス
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:53′ ベルナルド, 62′ 70′ 81′ ハーランド
CRY:4′ ストーンズ(OG), 21′ アンデルセン
主審:グラハム・スコット

⑦アーセナル【1位】×フラム【7位】

■想定外のローライン抵抗に立ち向かったウーデゴール

レビューはこちら。

 唯一の全勝でリーグの首位をひた走るという慣れない序盤戦を迎えているアーセナル。今節は昇格組のフラムとの一戦である。

 フラムの特徴といえばミドルプレス。なるべく高い位置からのプレスをひっかけることができるか否かが試合の主導権をにぎれるに直結してくる。

 アーセナルはトーマスとジンチェンコという両名が不在。いつもとは違うビルドアップのスタンスを余儀なくされる。だが、SBにティアニーが入っても今季の上積みであるジャカやマルティネッリのポジション移動は出来ていたし、アンカーのエルネニーは保持では問題なくボールを捌いていた。全く同じようにとはいかないが、大枠を極端に変えずに対応したアーセナルだった。

 ピッチの横幅を広く使いながら組み立てたこともあり、アーセナルはフラムの前線のプレスを回避。ミドルゾーンを突破して見せる。

 かくして主導権を握ったアーセナルだが、フラムの守備陣はこれに対してローラインで必死の抵抗を行う。特に見事だったのはCBとGKの連携。CBが寄せてコースを限定し、GKがセーブするという形でシューターの選択肢を削ぎ落すことに成功。アーセナルは押し込みながらのローライン攻略にかなり手を焼いていた。

 守備においては前半はほぼ完封だったアーセナル。だが、後半に相手に囲まれるようにサイドに追い込まれるとサカのキックをガブリエウがコントロールミス。これをミトロビッチが仕留めてフラムが先制する。

 追い込まれたアーセナルはアタッカーを増員し、大外にサカとマルティネッリを配置。外の基準をはっきりさせつつインサイドにジェズスとエンケティアの2人のストライカーを置く。

 ひきこもるフラムに対してのアーセナルのアプローチは多くの引き出しが見られた。主役はウーデゴール。縦パスを引き出しては1枚剥がし同サイド、逆サイド、自らの突破を使い分けながらチームを敵陣に押し上げていく。

    そんな彼のミドルから同点ゴールが生まれると、アーセナルはさらに勢いづく。フラムがついに勝ち越し弾を許してしまったのはセットプレーから。先制点につながるミスをしたガブリエウが逆転ゴールをゲットし、ついにリードを奪う。

 最後は5人のCBを並べて盤石の逃げ切りに成功したアーセナル。フラム相手に苦戦したが、見事に開幕4連勝を手にした。

試合結果
2022.8.27
プレミアリーグ 第4節
アーセナル 2-1 フラム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:64′ ウーデゴール, 86′ ガブリエウ
FUL:56′ ミトロビッチ
主審:ジャレット・ジレット

⑧アストンビラ【13位】×ウェストハム【20位】

■オープンな後半に流れを引き戻し連続記録はここでストップ

 ここまで唯一の全敗チーム。しかも今季ここまで無得点という苦しみを抱えているウェストハム。今節の相手はこちらも調子がなかなか上がらないアストンビラである。

 ウェストハムはこの試合においては3-4-3を採用。シャドーの2人は非常にナローなポジションを取るのが特徴で、ポストプレーに長けたスカマッカのそばにシャドーをおきたい狙いが見えた並びである。

 ウェストハムの守備は3-4-3~4-4-2~5-3-2の中間くらいのフォーメーションであり、結構陣形は流動的。しかしながら、プレスのスイッチが不明瞭なのが微妙なところ。WBが高い位置から捕まえにいくトライをしているものの、それに呼応して周りがパスコースを潰すなどの動きがない。そのため、アストンビラはホルダーがプレスには苦しむが、周りの選手がボールを受けるのに困ることはないという状況になった。

 アストンビラの保持はアンカーのカマラ、IHのルイスとCB2枚でボールを前に進めていきたいところ。だが、保持が左サイドに偏っている感じは否めず。さらにはこちらのサイドで深さを作れるラムジーや長いフィードを蹴ることができるミングスが不在だったため決め手に欠ける事態に陥る。

 ワトキンスやコウチーニョなどビラの左サイドは流れながらチャンスメイクを行なっていく。ただ、ワトキンスが流れる場合はエリア内に人が足りなくなる場合も多く、ビラは人員確保に苦戦した印象だ。それでもスカマッカとボーウェンのコンビネーションが数えるほどしかなく、WBの攻撃参加の有用性が見えてこないウェストハムよりは出来は悪くはなく、ペースは握っていたと言えるだろう。

 迎えた後半、ベンラーマを投入したウェストハムは4バックにシフトして勝負に出ていく。このシステムがむちゃくちゃハマったか?と言われると難しいところ。というのも後半はやたら互いに危険なロストをかまし合う展開に。プレッシャーがかかってミスをするというよりは相手がいるところにパスを出してカウンターを食らうというなんとも気の抜ける状況が多い試合となった。

 そうした中で決定機を活かせないのがボーウェン。FKのカウンターから迎えた絶好期をはじめ、数多くのチャンスを得るがボールタッチとプレーの判断が遅く、ビラの守備陣が戻る時間を与えてしまう。

 それでも前半のビラペースから試合はフラットまで引き戻された感がある。そうした均衡を破ったのはウェストハム。左のハーフスペース付近に侵入したフォルナルスが右足で振り抜いたシュートは相手に当たりそのままゴールポストに吸い込まれた。

 なんとか8月ノーゴールを免れたウェストハムはここからビラの攻勢に耐えることに。特に右のベイリーのカットインからのクロスと左の大外で攻め上がるディーニュのコンボにはだいぶ手を焼いた。

 それでもギリギリ逃げ切ったウェストハム。無得点と未勝利という悪き連続記録に歯止めを欠ける今季初勝利を迎えることになった。

試合結果
2022.8.28
プレミアリーグ 第4節
アストンビラ 0−1 ウェストハム
ビラ・パーク
【得点者】
WHU:74′ フォルナルス
主審:デビッド・クーテ

⑨ウォルバーハンプトン【18位】×ニューカッスル【6位】

■アグレッシブな保持側優位の決戦

 前節は5-3-2を採用したウルブスだったが、この試合では今季のスタンダードである4-3-3に回帰。やはり、5-3-2はある程度前節のトッテナムの形を意識したものだったのだろう。ヌネスやゲデスといった新戦力をこのシステムに組み込めるか?が当面のテーマになりそうだ。一方のニューカッスルは昨季から獅子奮迅の活躍を見せているギマランイスが欠場。彼の穴を埋められるかがポイントになる。

 立ち上がりから試合は落ち着かない展開だった。どちらかといえば基本的にはボールを持っている側が主導権を握っている90分だった。ホームのウルブスは今季のこれまでの流れを踏襲し、ショートパス主体のボールの動かし方を志向。人数をかけた崩しからアンカー脇をショートパスで使いながら攻略を目指す。

   しかし、ニューカッスルは中盤より後方のボールの受け手へのチェックが非常にタフ。ウルブスは思ったようにボールをつながせてもらえない。だが、ウルブスのアンカーであるネベスが比較的自由を享受できたことと、ニューカッスルのバックラインに対してウルブスがスピードで優位に立てたこともあり、WG×SBのマッチアップに光を見出した感がある。ヒメネスも左右に動き回りながらバックラインからボールを引き出し、攻撃の起点となっていた。

 ニューカッスル側はギマランイスの不在がどこまで響いていたかはわからないが、バックラインの対応が全体的にバタバタ。今季感じていた貫禄のようなものがあまり見えない前半になった。

 それでもニューカッスルが保持から相手を動かす力は十分。ウルブスはIHがだいぶ前後に動かされてしまい、アンカー脇を使われるケースが増えてしまっていた。

 どちらのチームも保持側が優勢で、守備ブロックには間延びして受けがちな難があるという展開。そんな中で先制点を奪ったのはウルブス。左右のサイドで深さを作り、最後はネベスがズドンとミドルで仕留める。ニューカッスルのバイタルは空いていたとは言え非常に見事なミドルだったといえるだろう。

 後半はペースが明確にニューカッスルに。ウルブスは保持で振り回され、サイドに引っ張られながらバイタルが空く形で押し込まれるように。ウルブスは途中からモウチーニョの位置を下げながら撤退を行いアンカー脇のスペースを消しにかかる。だが、それでもニューカッスル、とりわけサン=マクシマンの攻め込みは別格。対人のDFになかなかに厳しい対応をさせていた。

   ネトも悪くはないが、ゴールへのアタッキングサードにおける精度はサン=マキシマンの方が上。ニューカッスルは徐々に攻め手を増やしていく。苦しい展開のウルブスではあるがロングカウンターを繰り出すなど、得点のチャンス自体は合った。ニューカッスルが前がかりになったこともあり、攻め筋は十分実現できる状態だった。実際、あわや2点目のカウンターはゴールとして認められるところだった。ファウルで取り消されたけど。

 ニューカッスルがよかったのは急ぎすぎることなく、じっくりと左右に振りながら前進したこと。ワイドの突破力があるのもあるが、この動きで陣形を押し上げていたことで優勢に立っていた。

 時間がかかった同点ゴールを決めたのはサン=マクシマン。十分でないクリアをダイレクトにボレーで叩き込んで追いつく。攻撃ではじっくりと攻められていた粘り強さで追いつくことが出来たが、慌てがちなバックラインの対応での失点を完全にひっくり返すことは出来なかった。

試合結果
2022.8.28
プレミアリーグ 第4節
ウォルバーハンプトン 1-1 ニューカッスル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:38′ ネベス
NEW:90′ サン=マクシマン
主審:ピーター・バンクス

⑩ノッティンガム・フォレスト【10位】×トッテナム【4位】

■無鉄砲さフレッシュさに立ちはだかる精度の壁

 立ち上がりから勝ち気なプレスを見せていたのはホームのフォレスト。ハイプレスに手早い攻撃から攻守のサイクルを繰り返してゴールに迫っていく。

 しかし、トッテナム相手に早い攻撃を仕掛けるということは当然リスクも伴う。カウンターに関してはトッテナムは専門家とも言っていいだろう。一度ボールを持てば自陣深い位置からでも脱兎の如く駆け上がり、ゴールに迫ることができる。ケインの先制点はトッテナムがフォレストに突きつけたそうしたリスクへのレッスン料を突きつけたものだ。

 しかしながら1点取られたフォレストは同じ路線で反撃を続ける。右サイドに流れてジョンソンを軸に細かいパスのコンビネーションから打開を図る。オフザボールの動きはとても洗練されていて、ホルダーに縦と横の選択肢を提供できていた。

 フォレストが場所として狙っていたのはトッテナムの3バックの手前のスペース。ラインを下げてこの場所にスペースを作り出してマイナスに折り返すという形が主流だった。トッテナムは初めこそ受け止めてのカウンターを繰り出してはいたが、WBでの対応の劣勢からシャドーがポジションを下げるようになると、だんだんとカウンターを繰り出せる機会は減ってくるように。

 ペースを掴んだフォレストだが、彼らに足りなかったのは精度。ホルダーに対するサポートは良好だが、パスワークの正確性は物足りない。特にアタッキングサードにおけるパスの速度と精度は低く、こうしたパスがプレゼントになることもしばしば。保持に関しては良さを見せてはいたが、パスミスからトッテナムに対して必要以上にチャンスを与えていた感じも否めない。あるいはセットプレーでの高さがあれば、前半のうちに同点になっていてもおかしくはなかった。

 後半も試合の流れは大きく変わらずにフォレストに。トッテナムは陣地回復を試みようとハイプレスを敢行するが、これがことごとく空転。プレスが無駄骨になることが非常に多かった。逆に自分達がボールを持っているときはフォレストのハイプレスにあって思うようにボールが進まない苦しい展開になった。なんとか獲得したPKもケインが珍しく失敗。ヘンダーソンはウェストハム戦に続き、早くも今季2回目のPKストップとなった。

 流れはこれで一気にフォレストに傾きそうなものなのだが、やはり精度が邪魔をする。なんでもないパスを相手にプレゼントしてはクルゼフスキを軸としたカウンターを食らうという一連を断ち切ることができない。

 どちらに点が入ってもおかしくない試合で先に折れたのはフォレスト。カウンターから一度サイドで落ち着いたトッテナム。リシャルリソンが素早く攻撃を再起動したが、PA内のフォレストの守備陣はシャットダウンされたまま、これではヘンダーソンが怒るのは無理はないだろう。

 確かにフォレストの保持は良化しているし、無鉄砲に突き進むスタイルは魅力的である。その反面、精度の低さと若さが出てしまうことも多く、その部分はトッテナムとの差になったと言えるだろう。トッテナムが要所で格上の存在感を見せつけて無敗キープに成功した。

試合結果
2022.8.28
プレミアリーグ 第4節
ノッティンガム・フォレスト 0-2 トッテナム
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
TOT:5′ 81′ ケイン
主審:クレイグ・ポーソン

今節のベストイレブン

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