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「勝ちこそ全て」~2023.8.2 天皇杯 4回戦 川崎フロンターレ×高知ユナイテッドSC レビュー

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レビュー

サイドへの過剰サポートが悪循環への入り口

 J1勢に連勝を飾りベスト16に駒を進めた高知。リーグ戦においてもホームで連勝を飾っており、この試合に向けての勢いは十分。そんな彼らとJ1勢の3番手として4回戦で対戦するのは川崎である。

 立ち上がりは高知の守備の激しさが際立つ流れだった。ストライカーの西村と小林心を2枚前線に使い、シャドーを務める佐々木をCHに置くなど攻撃的な布陣の勢いを象徴するように高い位置からプレッシング。トップに入った西村をサポートするようにシャドー、およびCHが2枚目のプレス隊として飛び出しながら川崎のCBに進んでプレッシャーをかける序盤戦となった。

 川崎はこのプレスは意に介さない形でいなす。バックラインでフリーの選手を作ると、前線の小林悠と宮代の動き出しにロングボールを当てていく。前線の動き出しがあること自体は良かった川崎だが、ストライカーの動き出したスペースを押し上げた中盤がつく動きが皆無。それぞれがそれぞれの土俵で裏抜けで勝負しており、複数枚で囲う高知は問題なく小林悠と宮代を封殺していく。

 ボールを奪った後の高知はポゼッションして繋ぎたい姿勢を見せるが、川崎のハイプレスを前に安定したポゼッションに転じることができず。縦パスのロストから川崎の二次攻撃を受ける流れが多く見られた。

 5分経つと、試合は川崎の保持がほとんどの局面を占領するようになる。高知は5-4-1のブロックを組むリトリートモードを発動。川崎が撤退守備を壊していくフェーズに試合が移行する。

 左は登里、右は家長という幅を取る係を決めていたのは悪いことではないが、この大外の選手に対しては高知は1枚でOK。正対すれば家長も問題なく止められるし、登里に対する小林心の守備の粘り強さが非常に印象に残る前半となった。

 状況を悪くしていたのは大外の彼らに横から斜め後ろにサポートにくるIHの瀬古と橘田。近寄り過ぎてしまっては相手の守備者を呼ぶだけだし、ホルダーに対しては横にドリブルする選択を削ってしまう。ホルダーには縦に運ぶしか選択肢がなくなることで、高知はより大外の川崎の選手の縦へのドリブルを狙い撃ちしやすくなるという循環で川崎のサイド攻撃を封殺していく。

 この試合の前半の川崎の攻撃で良かった場面は逆サイドへの展開をエサにDF-MF間で縦パスを受けた橘田のミドルと瀬古が中央の高い位置で2人を引きつけて生み出した宮代の決定機。どちらもIHが中央高い位置で攻撃に絡んだ時である。逆に言えば川崎は前半IHが攻め上がるタイミングを見失い続けていたと言えるだろう。

 大外のケアは少ない枚数でOKという状態なので、インサイドには枚数をかけた網を構築できる高知。川崎の選手が中央密集をパスワークで打開するチャレンジするのを待ち構えておけばカウンターに移行することができていた。

 ボールを奪った高知のカウンターは左サイドの橋本と樋口が旗頭に。前者はシミッチを振り切りかけるドリブルを見せたし、後者はクロスから小林心の決定機を生み出してみせた。

 SBの裏を狙う高知はまず左サイドから裏をとり、高井の死角から入ってくる小林心をカウンターのフィニッシュ役として活用。登里の絞りや戻りが遅れていたらあわやという場面も数多く見られた。

 少しずつ前線の動き出しには活性化の気配が見られた川崎だったが、前半最後はシミッチがパスミスをするなどホルダーの精度はイマイチ。不安を払拭できない状態でハーフタイムを迎える。

交代選手の出来とセットプレーでベスト8を引き寄せる

 ハーフタイム明けの鬼木監督の「外と中をきっちり使い分けていく」というコメントとは裏腹に、川崎は家長を左サイドに出張させる左サイドに専念した崩しを披露。案の定、手薄な右サイドからロングカウンターを食らうなど苦しい展開となった。

 家長が幅を取り直しても、左サイドに偏る傾向には変化はなし。瀬古、橘田などIHが同サイドにスライドして結果、逆サイドに展開する経由点と逆サイドに展開した後の崩しのサポート役を失うこととなった。

 高知はハーフタイムに交代した東家がシャドーに入り、トップには小林心。左サイドの裏をとる樋口を起点に2人のストライカーに向けたロングカウンターを増やしていく。ロングカウンターの頻度は後半の序盤が一番高かったと言えるだろう。

 あっさりとSBの裏を取られ続ける川崎の救いだったのは、前半はさっぱりだった高井が最後の砦として機能したこと。特にシュートのこぼれ球に詰めた小林心のセカンドチャンスを防いだ場面は前半の不甲斐なさを帳消しにする大きなワンプレーとなった。

 保持においても高井、瀬古を軸に徐々に縦パスが通ることで右サイドは活性化。瀬古は時折、左サイドで幅をとる登里への対角パスを織り交ぜることで高知のDFラインを後退させることに成功。時計が進むにつれて司令塔として存在感を増していく。

 ゴールに近づく川崎とカウンターの目が死んでいない高知。この両チームならではのバランスで膠着した試合は終盤に切ったカードの差が決着につながったと言えるだろう。

 川崎は左サイドに入った瀬川によって裏抜けのアクションが復活。さらにはIHにエリア内に入っていく意識が高い遠野が入ることで少しずつ、裏抜けによって作られたライン間のスペースを使えるように。カウンターの頻度が減っていく高知とは対照的な展開となっていく。

 スコアを動かしたのはセットプレー。ニアで触った瀬川によってフリーのシュートチャンスを得た山田が強烈なボレー。これは上田に防がれたが、セカンドチャンスを佐々木旭が押し込んで勝負あり。80分に川崎が均衡を破る。

 ボールを取りに行かなくてはいけなくなった高知に対して、川崎はボール保持から背後を取ることが容易に。強引に2点目を取りにいくというよりは確実なポゼッションから高知のプレスの矢印をへし折っていく。

 反撃を信じて声援を増す観客席とは裏腹に川崎はゲームのクロージングに成功したといっていいだろう。苦しんだ川崎だったが、セットプレーでの1点を守り切りベスト8進出を決めた。

あとがき

 試合の展開を踏まえればどちらに転ぶかわからない一戦を制したことは当然大きな意義がある。負けたら終わり、ジャイアントキリングが当たり前の天皇杯において勝ち以上の価値は存在しないといってもいい。当たり前の話であるが、トーナメントにおいて優勝を目指すのであれば内容が良くたって負ければ意味がない。

 その一方で奇跡の逆転優勝を狙う後半戦スタートの一戦という視点で見れば、この試合の内容はいささか物足りないものだったと言えるだろう。1人の選手の動きに連動できず、密集攻撃にこだわってはロストし危険なカウンターを受ける。内容を90分握ったとはお世辞にも言えない一戦だった。勝ちこそ全て。良くも悪くもこのワードがしっくりくるタフな試合だったと言えるだろう。

試合結果

2023.8.2
天皇杯 4回戦
川崎フロンターレ 1-0 高知ユナイテッドSC
春野運動公園陸上競技場
【得点者】
川崎:80′ 佐々木旭
主審:小屋幸栄

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