Fixture
AFC Champions League
グループI 第5節
2023.11.28
川崎フロンターレ(1位/4勝0分0敗/勝ち点12/得点10/失点4)
×
ジョホール・ダルル・タクジム(3位/2勝0分2敗/勝ち点6/得点7/失点7)
@等々力陸上競技場
Match facts
- 川崎は直近20試合のACLで一度しか負けていない(W14,D6)
- 川崎は直近7試合の公式戦のうち、6試合で3得点以上を記録。ホームでは公式戦5試合連続で3得点以上を記録している。
- ジョホールは日本勢と過去9回対戦して勝利したのは一度だけ。
- 2019年のホームでの鹿島戦。日本遠征は過去に4回行い全敗。
- ジョホールのACLの通算9勝のうち、3つは蔚山相手に挙げたもの。
予習
第1節 川崎戦
第2節 パトゥム戦
第3節 蔚山戦
第4節 蔚山戦
予想スタメン
展望
開幕節の焼き直しはしないと予想
2年前のリベンジ達成まで川崎に必要なのはあと1ポイント。引き分け以上で川崎は次のラウンドに進むことが確定する。逆にここで負けてしまうと、蔚山の地で勝ち点を取れなければ敗退してしまう可能性もある。すでに2位通過の可能性も充分にある12ポイントを確保している川崎としては蔚山とジョホールの直接対決が1勝1敗に終わってしまい、3位転落の可能性を残していることは不運といえるだろう。地の利を生かして必ずこの第5節で突破を決めたい。
今年のACL開幕戦となったマレーシアでの一戦は内容的には今の川崎と少し乖離があるものである。加入直後のゴミスを生かした3トップがナローに守る形で、大外は3センターが根性で埋めるという多摩川クラシコでテストしたプランを持ち込んでの試合だった。普段から川崎の3センターは根性ではあるが、より一層の根性が際立つプランである。
ジョホールとの初戦のポイントは互いに堅く守ったインサイドに差し込んだボールが相手のカウンターとして跳ね返ってくることが多かったことである。カウンターの手札として上回った川崎が奪った1点が勝負を分けたという印象だ。この試合では瀬古のポジトラが決勝点を生み出したマルシーニョを浮かせるのに非常に役に立った。
この試合の川崎の守り方は効果的だったといえる。各駅停車のジョホールのポゼッションに対して明らかに3センターを軸としたスライドが間に合っている。ジョホールはU字でのポゼッションを続けるばかりで、アイマン・ハナピと登里のミスマッチとセットプレーを除けば、川崎が失点する要素が少なかった。
ではこの形を等々力でもトレースするのか?おそらくはNoだと思う。理由の1つは単純に直近でこうした3トップをナローにする守備をやっていないからである。
同じ3センターに大外をカバーさせる守備としてはWGの外切りのハイプレスが挙げられる。しかし、こちらもあまり多くは見られない。全体を押し上げたポゼッションロストからの即時奪回は見るが、GKを絡めたビルドアップに対して外切りのハイプレスを行うケースは減っているように思う。
それよりも川崎のWGの守備の傾向として見られるのはきっちり自陣に戻って自らのスペースを埋めることである。鹿島戦のマルシーニョがその代表例だろう。オーバーラップする須貝について行ったり、松村にダブルチームに行ったりなどリトリートしてからの守備の貢献の高さが光る。先に述べたように、こちらのサイドはアイマン・ハナピに対してスピード的にミスマッチが想定される。それならば、登里や瀬古といった後方の選手に負荷をかけるハイプレスに打って出るよりも、後方の負荷を軽減するようなスタンスで臨みたいところである。
もう1つ、このシステムをやめた方がいいのではないか?と考える理由はジョホール側の事情である。彼らは直近でCFに前回の川崎との対戦時にはいなかったフォレスティエリを起用している。出場時間も徐々に伸びており、等々力では彼が出番を得る可能性は高い。
このCFは勝利した蔚山戦では中盤に降りてボールの収めどころになり、逆サイドに展開することでSBのオーバーラップを促している。この形はジョホールの攻撃のスピードアップに非常にマッチしている。
というわけで川崎としては彼にボールが入るのは防ぎたい。中央を固めることを前提とするならば、SBや外に開いた中盤から斜めのパスを入れられる形を避けたいところである。
当たり前の話だが、前回対戦の3センター超根性モードを採用するとなると、横幅を3人で賄うのが基本になる。こうなればホルダーへのチェックが遅れる可能性も高いし、3センターの間のスペースも開きやすくなる。
逆にWGが幅を埋める前提であるのならば、ホルダーへのチェックと横幅の圧縮の両面で効果はあるといえるだろう。カウンターの開始位置は低くなってしまうが、引き分けはOKであることと前線の裏抜けと中盤のポジトラを信じれるところを踏まえるとバランスはここにあるように思う。
鹿島戦から捨てるところ、持ち帰るところ
続いて川崎がボールを持った時の想定をしてみよう。前回のジョホール×川崎ではジョホールの3人の選手が川崎のCBとアンカーを完全に抑えに来た。蔚山との初戦ではシャドーが前に出て、WBを絞らせるという結構珍しい形も披露。この2つの試合から読み取れるジョホールの傾向はハイプレスへの意識の高さと中央を封鎖することに重きを置いていることである。
こうした相手にまずやってみることはシンプル。ダミアン(もしくはゴミス)へのロングボールである。敵地での蔚山戦におけるジョホールは長身CFであるジヒョンに非常に苦戦。川崎も空中戦で優位をとれる可能性は十分にある。
鹿島戦ではロングボールは不要といったが、この試合とは事情が違うからだ。鹿島はFW-MFのプレスがつながっていないこと、またダミアンが鹿島のCBに対して空中戦で優位をとれないことが予見できるため、早い段階で前線へのロングボールを捨てることを推奨した。
この2つの前提はジョホールにはあるかどうかはわからない。少なくとも、ロングボールを当てて収まるかどうかということに関しては失敗時のリスクの少なさからもまずはトライしておくべきだろう。ここは鹿島戦とは逆のアプローチの方が刺さる可能性が高いと考える。
逆に鹿島戦から持ち帰ってほしいものもある。家長の動きである。鹿島戦の家長はとにかく低い位置に降りてくることがなく、右の大外で位置を守りながらカウンター時には裏抜けでスペースにランをしていた。
ジョホールがプレスに来たと仮定した場合、確かに家長が降りてボールの収めどころにするという考え方もできるだろう。だが、ジョホールは川崎と同じく、敵陣に多くのプレス隊をかけながらずっと自分のターンをやることを好むチーム。いたずらに降りて受けるアクションを増やすことは自陣側にジョホールのプレスの圧力を集めてしまう形で逆効果になる可能性も十分にある。
それよりは鹿島戦通り家長は右サイドの裏抜けに専念する方がいい。安西と同じく、ジョホールの左サイドバックはアリバスにせよコービン=オングにせよ、攻め気が強いプレイヤー。攻守の切り替えの際には空く公算が強い。そのため、同じく家長の裏へのランから決定機を作れるはずだ。
基本的にはトランジッションで裏を狙い、少ない手数でまずは先制点を確保したい。先制点を確保すれば、実質2点のリードを得たようなもの。理想通りに運び、川崎が先制した場合は前線に起点を作るやり方をキープしつつ、スローダウンしながら全体の陣形を押し上げるトライをしたい。カウンターを考えるとやはり登里-アイマン・ハナピのマッチアップは怖いので、ジョホールを自陣に押し下げることを優先することがベターだろう。保持での押し下げてこのマッチアップの相手の優位を消すことを考えたい。
ジョホールのプレスのパターンの中にはハイプレスの中でSBだけややプレスが緩くなっている場合もある。そうなれば、登里の存在はマイナスではなくプラスに転じる可能性も十分にある。フリーで持ち上がり、鹿島戦の先制点のようにマルシーニョの背後へのランを生かす形を使い得点を取れれば川崎の突破は間近だろう。
先に言っておくがこの試合は手段不問、内容問わずポイントを持ち帰ることがマストである。あと1つを手にするために2023年にやってきたことをすべて駆使し、天皇杯にフォーカスした年内を過ごしたいところだ。