Fixture
天皇杯 準決勝
2023.10.8
川崎フロンターレ
×
アビスパ福岡
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近10回の対戦で川崎の6勝、福岡の3勝、引き分けが1つ。
川崎ホームでの戦績
直近10戦で川崎の9勝、福岡の1勝。
Head-to-head
- 公式戦での対戦は直近6戦中5戦で川崎が勝利しており、現在3連勝中。
- カップ戦での対戦は2016年のリーグカップでのGSでの対戦以来。等々力開催で0-1で福岡が勝利している。
- ワンマッチ形式では1998年のJ1昇格プレーオフでも対戦し、こちらも福岡の勝利。
- 等々力においては直近12回の対戦で11回川崎が勝利を挙げている。
- 唯一の敗戦が唯一のカップ戦での対戦。
- ・ただし、日曜日の対戦は直近2回とも福岡が川崎を下している。
スカッド情報
- 右下腿三頭筋肉離れで離脱中の大島僚太はランニングをスタート。
- 長期離脱中のジェジエウはボールを使ったトレーニングを行っている。
- 佐々木旭と車屋紳太郎は湘南戦で負傷交代。
- 家長昭博は新潟戦前に負傷を負ったとのこと。
- 佐藤凌我は左膝前十字靭帯損傷及び左膝外側半月板損傷で長期離脱。
- ルキアンは左太もも裏の肉離れで帰国して治療。
- 井上聖也は両前腕骨幹部の骨折で離脱。
- 中村駿は左大腿二頭筋長頭肉離れにより離脱中。
予想スタメン
Match facts
- 直近6試合の公式戦の勝利はいずれもクリーンシート。
- 九州勢との天皇杯は2連敗中。
- 2021年準決勝の大分戦、2013年準々決勝の鳥栖戦。
- クラブにとって6回目の天皇杯準決勝。ここまでは2勝3敗。
- 直近2回の天皇杯の敗戦はいずれも等々力で喫したもの。
- 遠野大弥は直近2試合のホームでの福岡戦でいずれも先制点を決めている。
- 橘田健人の今季の2つの公式戦のゴールはいずれも等々力で89分以降に決めたもの。
- 天皇杯におけるキャリア唯一のゴールは2021年の長野戦。この試合のスタジアムも等々力で91分に同点ゴールを決めている。
- 公式戦4戦無敗でうちクリーンシートは3つ。
- 直近5試合のアウェイでの公式戦は勝ちと負けが交互。
- 直近のアウェイゲームである柏戦では勝利している。
- クラブ史上初めての天皇杯準決勝。
- 昨年まで関東のチームとの天皇杯の対戦は8連敗中(筑波大、町田、水戸、栃木、大宮、FC東京、鹿島、水戸)だったが、今年は関東の2チーム(栃木、湘南)を下して準決勝に。
- 紺野和也は直近2試合のアウェイゲームは2得点1アシスト。
- 今季の6つの得点関与(ゴールorアシスト)はいずれもアウェイで決めたもの。
- 山岸祐也は直近2試合の天皇杯で3ゴール。
予習
第27節 名古屋戦
第28節 柏戦
第29節 鹿島戦
展望
柔軟性と試合を動かすエネルギーの両立が躍進の理由
今週のACLのプレビューで「川崎は2023年で最も大事な一週間を迎える」と個人的に位置づけた。「最も重要な一週間」の前半である蔚山には劇的なゴールで逃げ切り勝利。良い流れで後半の福岡との天皇杯準決勝に向かうことができた。
川崎にとって福岡は通算対戦成績的には相性がいい相手といえるだろう。現在も3連勝中であり、川崎目線で言えば苦しいここ2年の中でも連勝を重ねてきた相手だ。
しかしながら、大一番となると話は別。1998年の昇格プレーオフしかり、2016年の1stステージ優勝が懸かったリーグ戦しかり、川崎は福岡によって重要な一戦できっちりと望みとは逆方向に連れていかれている。2021年の天皇杯準決勝で同じ九州勢の大分に等々力で敗れているのもどことなく嫌な思い出を想起させる。川崎はこうした嫌な過去を払しょくするチャンスを迎えているといっていいだろう。
カップ戦2つにトップハーフをキープしているリーグ戦。現段階でも福岡の2023年シーズンはすでに大成功の部類に入っているといえるだろう。だが、ここまで来たら素晴らしいシーズンにふさわしいタイトルは欲しいところだろう。
そんな前向きな状況とは裏腹にスカッドは怪我人が多く苦しいやりくりになっている。もっとも手薄な感じがするのは前線。佐藤とルキアンというまぎれもない主力が長期離脱を余儀なくされ、前線は山岸、金森、紺野がほぼ出ずっぱりでプレータイムがかさんでいる状況だ。
バックラインも井上の離脱は痛いが、3枚のCBはそろえることはできる。前線と比べて、試合中に交代が少ないことを考慮すれば何とか回るはずだ。中盤は中村がなかなかメンバーに復帰できないが、井手口は鹿島戦では大事をとっていたようで川崎戦には復帰する見込みだ。
そういうわけで福岡の3-4-3の並びはある程度予想が立てることができる。おそらく、アクシデントがなければ多くても2枚くらいしか予想は外れないあろう。
スタイルとしては非常にエネルギッシュなのが特徴的。どっしり構える4-4-2でのゾーンというかつてのトレードマークは消えて、3トップが積極的にCBにプレッシャーをかけるように追い回している。プレスがハマらないと判断すれば5-4-1でのリトリートを図るが、ひとまず立ち上がりにプレスのトライをするというのは予習したどの試合でも共通していた。
時にはGKまでプレスに行く3トップ。この方向には井手口と前が控えており前からのプレッシングに追従する形で中盤からも高い位置に出ていくこともできる。中盤を越えられないようにここで跳ね返すのが彼らの使命だ。
攻撃においてはWBの攻め上がりを手早くクロスを上げる従来の形がきっちりと。特に右サイドにおいては、前方に紺野というわかりやすい追い越しのターゲットがいる分、相手がズレについてきにくいことが多い。
福岡の攻撃において特徴的なのはこうした傾向にこだわるよりも、試合の中で相手に合わせて柔軟に攻め手を変えていることである。バイタルを空けてサイドにCHがプレスに来た柏にはバイタルにパスを刺して、3トップのコンビネーションで打開。同サイドから中央までのガードが堅い鹿島に対しては、サイドに大きく展開しながら勝負をかけていく。
こうしたスカスカな逆サイドに向けた展開は、受けたサイドで裏を取りながらラインを下げての順足でのクロスを上げたくなるもの。しかし、右でサイドチェンジの出口になっていたのは紺野。タイプとしては一度正対したがる選手であり、抜け出した状況を利用するタイプではない。ラインを下げるような抜け出しでPAのスペース管理を相手に押し付けられれば、対戦相手は苦しくなる。
しかし、スピーディなサイドチェンジはあまり得意ではないし、先述のように紺野は正対したがるのでズレはできないことが多い。それでも、サイドチェンジされること自体については鹿島も嫌だったはず。自分たちの得意な形でなくとも相手が嫌がるとなればそれにも取り組む。そして、困ったらウェリントンでドーンである。自分たちで試合を動かす部分と展開に迎合する部分を使い分けながら順応していくバランス感覚の良さが2023年の福岡の強みといえるだろう。
WGがプレスの手綱を握れるか
福岡のスタイルの紹介で述べた通り、まずは彼らがプレスに来るのは確実と見ていいだろう。枚数を合わせてくるかまでは変わらないが、川崎のバックラインは厳しいプレッシャーにさらされることになるだろう。
まずはそこをどう外すかを考えたい。プレスを外すのであれば上福元であるが、ここ数試合の流れを見れば重要な試合でのソンリョンを先発から動かすことは考えにくい。
であれば、頼りたいのは山村。蔚山戦のように1つ飛ばす大きな展開を駆使することで、福岡のシャドーに対してプレスに出ていくかどうかの判断を迫りたいところである。
山村から対角のパスがでると考えれば、縦パス好調な大南と組み合わせてこうした相手の動かし方もデザインができる。中盤の背後をダイレクトに狙うようなパスから前進することは可能だろう。
柏戦の福岡は上の図で脇坂が受けたスペースもバックラインで圧縮をかけてきていた。このようにバックラインを上げてくる対応をしてくるのであれば、さらに背後を取るアクションを加えるのがベター。川崎にはダミアンとゴミスという相手のDFの位置を決めてくれるFWがいて、どちら1人は大体ピッチにいる。であれば、彼らとラインを上げてきた最終ラインのギャップをWGでつくのがいいだろう。
押し込んだ時には大外に張るほうがいいが、ハイプレスに対する前進の時は奥を取るイメージの方がこの試合ではいいかもしれない。これであれば家長が出られなくとも、瀬川や宮代の個性を生かす形で十分対応はできるはずだ。
非保持においてはバックラインへの圧をどこまでかけていくかはキーになる。オーソドックスな蔚山戦の守り方は理想だが、ある意味コンディションをピーキングした故の賜物だろう。なぜあれを年間通してやらないのか?と聞かれたらたぶん毎試合はできないからである。
しかしながら、年間は無理でも2試合連続ならば行けるかもしれない。即時奪回時には高い位置まで出ていき、リトリートの時には低い位置まで下がることの両立はこの試合でも求める可能性はある。家長が不在ならば、さらにそのプランは使いやすくなるだろう。
この形の怖いところは蔚山と違って福岡はきっちり川崎の弱点をアナライズしているだろうこと。具体的にはWGがCBにプレスにいった時のWBのスライドが間に合うかどうかである。
登里も山村もスピード勝負には難がある。行きたがる傾向にあるマルシーニョに追従できなければ後方にはミスマッチが生まれてしまうことになるだろう。
仮にWGがインサイドに絞る新潟戦やFC東京戦ベースの守備をするのであれば、CHをどこまで追いかけるかの範囲はある程度決めておきたい。基準になるのはスマートなサイドチェンジが可能かどうかだろうか。当たり前だが、サイドチェンジの経由点はホルダーとの位置関係が重要な要素、ある程度位置を下げるパスを経由してのサイドチェンジはそこまでスピードが出ない。その位置まで下がってしまえば、福岡が鹿島戦のように幅を使うアタックを仕掛けても対抗することができるだろう。
出ていくモードにしても絞るモードにしても、どこまでも追いかけていくのは今の川崎だと悪手。でも追いかけていくこと自体は効果的というのは蔚山戦の学びである。あの試合で最もよかったところはこの出ていくところと出ていかないところの判断のシャープさ。福岡戦でいい試合をしたいのであれば、当然この部分は求められることになる。
タフなミッドウィークを凌ぎ、厳しい試合が続くがここは踏ん張りどころ。正規のレギュレーションでの天皇杯初制覇に向けて、何とかこの試練を乗り越えたい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)