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「W杯の予習は計画的に」~コパ・アメリカ2021全チーム総括 part2~

前編はこちら。

目次

ペルー

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■貫くスタイルは相手を選ばず通用

 個人的には今大会でもっとも驚いた存在だった。正直、これまでまともにコパアメリカを見てこなかったせいで、あまり前回優勝のペルーに強烈なイメージはなかったのだけど、このチームは強いチームだなと思った。

 グループステージは第2節から登場しての4連戦で日程的にもやや不利。初戦のブラジルに大敗した時は正直厳しいグループステージになるかと思った。だが、2試合目のコロンビア戦からは持ち味を発揮。ショートパスをつなぐスタイルでコロンビア相手に試合を優位に進め初勝利。その後は手堅い試合で着実に勝ち点を積み重ねていく形でグループステージは危なげなく突破を決めた。

 強豪相手にはサイドの選手が低い位置を取るなど、守備的な措置を取ることもあったが、攻撃面でもつなぎの部分は今大会でも屈指の存在だった。最終ラインからのつなぎという部分で大会でも一番といってもいいくらいだろう。両CHのジョトゥンとタピアを軸にリズムを刻みながら前進していく形は魅力的スタイルを有している南米の強豪の中でも、特に目を引くものだった。その両CHを支えるのは前線のタレント。キープ力を活かして降りても働けるペーニャ、高い位置で起点になれる運び屋のカリージョもペルーのつなぐスタイルをしっかりと下支えできるタレントといえる。

 そして、ラパドゥーラ。チームを支えるエースはつなぎにおいてもフィニッシュにおいても高い貢献度を示す存在。あまり苦手な展開というものがなく、早い展開でもゆっくりとしたつなぎでも活躍できるため、チームが苦しい時においても前線で体を張って孤軍奮闘する場面も見られた。

 さすがに強豪相手に押し下げられてしまった時は苦しい戦いになることもあった。それでも自陣からつないでいくスタイルは貫き通しながら戦うことができた。流れに乗ることができた時間帯においては、ブラジル相手にも主導権を握ることができるポテンシャルは立派である。クラブチームと見まがうような完成度の高さはぜひ来年のワールドカップで再び世界に披露してほしいところだが。

頑張った選手⇒ジョシマール・ジョトゥン
 いやー、いい選手。個人的には今大会最大の発見といってもいいくらい。左利きのリズムを刻める司令塔で超好きなタイプ。攻めあがって得点も取ることができるタイプ。もっとたくさん試合を見たい選手。

今大会まとめ

コロンビア

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■スタイルは百面相?

 コロンビアと言えば、ハメスとかファルカオのような攻撃的なタレントが目立つチーム!ということで、勝手にアタック祭りを決めまくっているチームなのかな?と思っていた。だけど、そのイメージは少し違っていた。

 ただし、グループステージにおいてはその裏切りは良し悪しという感じ。初戦のエクアドル戦は非常にしたたか。セットプレーからの攻撃が練られているのが非常に印象的でトリックプレーから決勝点をきめてみせた。まるでバスケットボールのプレーブックに載っているかのような準備されたような形で味方の飛び出しを使う。工夫されたセットプレーはグループステージの要所でたびたびコロンビアの武器として顔を覗かせることになる。

 ただ、グループステージでは悪い意味でやや気になる部分も顔を覗かせた。非常に淡白であっさり敗れてしまうこともしばしば。続く、ベネズエラ相手には圧倒的に攻め込みながらも崩しきることができない。この試合の内容自体は悪くなかったのだが、この試合からややリズムを崩してしまった感が否めない。

 攻めきれずにペルー相手には正面衝突で敗れてしまうと、続くブラジルには乱戦の中で後半追加タイムで致命的な失点を喫してしまい劇的な敗戦。コロンビアが判定に抗議したせいで長くなった追加タイムに決勝点を叩きこまれるという筋書きはどこか皮肉めいたものでもあった。

 だが、決勝トーナメントでは粘り強さを見せる。クアドラード不在で下馬評では不利とされていたウルグアイ相手になんとかPK戦まで持ち込むことで粘り勝ち。攻め立てられながらもウルグアイ顔負けの縦に早いスタイルで反撃を見せる姿はグループステージのどの試合とも異なるコロンビアのノックアウトラウンドの本気を見た。

 ここから先の主役はサイドアタッカー。クアドラードとルイス・ディアスのサイド攻撃という確固たる武器を軸に、速攻遅攻問わずにサイドから攻撃を攻め落とせるようになる。特にルイス・ディアスの出来は圧巻。出場停止(そういえばこの2人はどちらも途中で出場停止を食らっている)明けからはうっ憤を晴らすようにドリブルで相手マーカーを引きちぎり続け、得点も量産。特に3位決定戦でのペルー戦での決勝ゴールは圧巻。2強にも負けない強烈な個人技で鮮烈なインパクトを残した。

 残念ながらブラジルとアルゼンチンには及ばなかったものの、ポスト2強として南米の底力を感じることができるチームだった。

頑張った選手⇒ルイス・ディアス
 本編でも触れたけど圧倒的な個人技は圧巻。ポルトで中島翔哉のライバルだったらしいという話を聞いたけど、ちょっと完全な上位互換なのでこれは相当厳しいことになっただろうなとおそばせながら思った。

今大会まとめ

ブラジル

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サポートキャストの確立は急務

 残念。優勝はなりませんでした。とはいえ決勝トーナメントまでの道のりは危なげなかった。ベネズエラに3-0、ペルーに4-0の2試合で実質決まりだっただろう。

 想像通り、ネイマールは絶好調でひとたびボールを受けると、ゴールまで易々と運んでしまう。本当は降りて受けるストライカーというのは全然怖さを感じないものなんだけど、降りて運んで危ない位置までスルスル入り込んでしまうので、ボールを受け渡すこと自体が危険という事態になっていた。バスケットのドリブルみたいに簡単にファウルもらうのとかは笑ってしまう。10人になって苦しかったチリ戦とかは普通にキープしまくりながら時間稼ぎと陣地回復をしまくっており、チリをいらだたせまくっていた。

 だが、開幕2戦に比べるとそのあとの試合はやや苦しんだように思う。コロンビアとの乱戦は何とか制したが、グループステージの最終節以降は複数得点はなしというのは少し寂しい。問題となったのはネイマールのサポートキャストの不在。ノックアウトラウンドでチームと救ったパケタとは中央をこじ開けるコンビネーションはできていたが、それ以外の選手たちとはうまくハーモニーを奏でることができなかった。

 特にふがいなかったのはプレミア勢。ジェズスは不要なファウルでチリ戦でチームを敗退の危機に晒し、リシャルリソンはクラブシーンでの負傷をそのまま引きずり、決定的な仕事ができずに苦しみ続けた。フィルミーノは彼ら2人よりはよくやったかもしれないが、輝いたとは言えないだろう。

 サイドアタッカーの面々もネイマールとつながれたかと言えば難しく、攻撃のスイッチも崩しもややネイマールに依存しすぎな嫌いはあった。CHとCBを軸とした強固なブロックを有しているだけに決勝でのロディの軽率なミスから優勝を逃してしまったのは非常に残念。逆に言えば、1つのミスをリカバリーできないほど攻撃陣が苦しんでいたということ。大エースのサポートキャストの確立がワールドカップに向けた火急の課題といえそうだ。

頑張った選手⇒ネイマール
 いやぁ、マジでめっちゃうまい。すごい。

今大会まとめ

アルゼンチン

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■ラストピースとジョーカーが華を添えるメッシの物語

 ついにメッシにタイトルが!おめでとう!!!というわけで今大会の優勝はアルゼンチンである。

 自分がサッカーファンになってからのアルゼンチンにはざっくりと2つのタイプに分かれるイメージ。1つは豪華絢爛なアタッカー陣が最適解を模索しながら試行錯誤していくアルゼンチン、もう1つはボロ雑巾のように労働者として汗をかきまくる面々が大エースの脇を固めるアルゼンチン。そして、大体後者で臨んだ方がいい成績を残すというところまでがセットである。

 今回のアルゼンチンはどちらかと言えば後者に当てはまるだろう。正直、前線はド派手なスター集団ではない。ラウタロ・マルティネスは非常に優秀な選手で個人的に大好きな選手ではあるが、従来のアルゼンチンのFWとは異なる。エゴが少なく、良くも悪くも自らが得点を決めることが第一になっていない。アグエロは伝統的なアルゼンチンのFWの系譜に連なる存在だろうが、今大会ではほぼ出番はなかった。別格のメッシを除けば汗かき役が優先されたといえるだろう。

 前線はラウタロ・マルティネスやゴンサレスなどフリーランに長けた面々を並べ、ボールを引き出すことでメッシをサポートする。個人的には今大会のメッシが今まで見てきたアルゼンチンのメッシの中でもっとも気持ちよくプレーしているように見えた。

 バックスも強固でロメロ、オタメンディ、ペッセッラなどコンビの面々が代わっても堅さを維持。中盤もデ・パウルやギド・ロドリゲスを中心に働き者揃い。ローラインを敷いて単純な放り込みを無効化するという意味では、南米最強といっても過言ではない。

 ただ、このアルゼンチンはそれだけではない。堅くて実直なアルゼンチンの従来のイメージになかったものがこのチームにはあった。確固たる正守護神である。何度も危機を救い、PK戦までもつれ込んだコロンビア戦では圧巻のセービングを連発したエミリアーノ・マルティネスこそ、このアルゼンチンにおけるラストピース。堅実なだけではタイトルに届かなかったかつてのアルゼンチンのイメージをゴールマウスから塗り替えてみせた。

 もう1人、栄冠の立役者として名前を挙げたいのはメッシ以外の『大物』としてジョーカー扱いだったディ・マリア。コンディションは絶好調。労働者のイメージも強い選手だが、この大会では大外から何枚も相手を剥がしてのチャンスメイクというスター的な要素が光った。途中出場で劣勢を独力でひっくり返し、ノックアウトラウンド唯一の先発となったファイナルでは決勝点を奪う大活躍を見せた。

 メッシとそれを固める労働者、それに加えてラストピースと唯一の例外。キャストそれぞれがそれぞれの役割を全うしてチームを輝かせて優勝までたどり着いた姿は、まるでメッシに初のタイトルがもたらされるまでの映画を見ているかのようだった。

頑張った選手⇒リオネル・メッシ
 ブラジル人でもメッシにタイトルを取ってほしかった人がいるというエピソードが全て。本当によかったね。

今大会まとめ

 おしまい!

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