MENU
カテゴリー

「EURO 2020 チーム別まとめ」~ベルギー代表編~

目次

チーム情報

監督:ロベルト・マルティネス
FIFAランキング:1位
EURO2016⇒ベスト8
W杯2018⇒3位

招集メンバー

GK
1 ティボー・クルトワ(レアル・マドリー)
12 シモン・ミニョレ(クラブ・ブルージュ)
13 マッツ・セルス(ストラスブール)

DF
2 トビー・アルデルヴァイレルト(トッテナム)
4 デドリック・ボヤタ(ヘルタ・ベルリン)
18 ジェイソン・デナイヤー(リヨン)
3 トーマス・フェルマーレン(ヴィッセル神戸)
5 ヤン・フェルトンゲン(ベンフィカ)

MF
11 ヤニック・カラスコ(アトレティコ・マドリー)
21 ティモシー・カスターニュ(レスター・シティ)
22 ナセル・シャドリ(イスタンブール・バシャクシェヒル)
16 トルガン・アザール(ドルトムント)
15 トマ・ムニエ(ドルトムント)
7 ケヴィン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)
19 レアンデル・デンドンケル(ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズ)
26 デニス・プラート(レスター・シティ)
8 ユーリ・ティーレマンス(レスター・シティ)
17 ハンス・ヴァナケン(クラブ・ブルージュ)
6 アクセル・ヴィツェル(ドルトムント)

FW
25 ジェレミー・ドク(レンヌ)
10 エデン・アザール(レアル・マドリー)
14 ドリース・メルテンス(ナポリ)
24 レアンドロ・トロサール(ブライトン)
23 ミヒー・バチュアイ(クリスタル・パレス)
20 クリスティアン・ベンテケ(クリスタル・パレス)
9 ロメル・ルカク(インテル)

各試合振り返り

GS第1節 ロシア戦

画像1

■隙に付け入る前にゲームセット

 Bグループの本命と目されるベルギー。初陣の相手は自国開催の前回のワールドカップで躍進したロシアである。

 ボールを握ったのはベルギー。3CBで後方に数的優位を作り、ポゼッションで落ち着きを作る。ただし、そこから先の前進の手段が見えにくいのが難点。特に中盤を使った前進があまり多くなかった。充実したシーズンを過ごし、今大会でも大きな期待を背負っているティーレマンスだが、この試合はあまりうまく入れなかったように見える。

 ロシアはとにかく前線のジューバにボールを当てることが最優先。何せでかい。あと、地味に器用で左右に動きながらもボールを収めることができる。彼の周りに1人置くことさえできれば高い位置で前を向ける選手を作ることができる。

 そして、彼に長いボールが入ると会場がとても盛り上がる。おそらく、有観客で自国での試合というのは大きいと思う。ちょっとギャグっぽいけど、この手段をうまく味方につけている感はなんか相手からすると厄介な気がする。

 保持はできるけど難はあるベルギー。前進の手段があるロシアにとっては十分に付け入るスキがある相手のように思えた。しかし、早々に痛恨のミスからみで失点を喫してしまう。クリアミスをしてしまったセミニョフはこれ以降もアワアワする姿が見受けられ、開幕戦という舞台に浮足立っていた感が否めなかった。

 前半のうちに2点目を取って試合の大勢を決めたベルギー。トルカン・アザールのクロスのこぼれをムニエが押し込んで勝ち点3を大きく引き寄せた。

 後半は負傷者が両チームに出たこともあり、ややトーンダウンした展開に。そんな中でも絶好調だったのはルカク。インテルでの充実なシーズンをEUROでも開放するようなパフォーマンス。ボールを引き出して良し、ドリブルで進んでも良しと状態の良さをうかがわせた。

 逆にまだ時間がかかりそうなのはエデン・アザール。この試合では試運転にとどまったが、彼と負傷のデ・ブライネがどれだけ状態を上げてこれるかがノックアウトラウンドを見据えた伸びしろになってくるだろう。

試合結果
ベルギー 3-0 ロシア
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
BEL:10′ 88′ ルカク, 34′ ムニエ
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

GS第2節 デンマーク戦

画像2

■超ワールドクラスの証明

 この試合の10分に行われるエリクセンの拍手までに失点するわけにはいかなかっただろう。デンマークの立ち上がりには鬼気迫るものがあった。この大会では珍しいオールコートマンツーでベルギーに面食らわせる。すると、2分には先制点がデンマークに。デナイデルのパスミスを誘ったデンマークのプレス、そしてポウルセンのフィニッシュとセレブレーションは録画みてもグッとくるものがあった。

 3-4-3のミラーでの戦いだが、明らかに出足はデンマークの方が上。対面の選手に反転する自由を与えず、前進する余裕を持つことができないベルギー。中盤のティーレマンスという供給源を封じられた上に、最終ラインのビルドアップのためのサポートや動き直しが少ないため、早々に手詰まりになる。

 左サイドのトルカン・アザールとカラスコのコンビまでボールをつなぐことさえできれば、チャンスにはなりそう。だが、その機会は限定的。好調のルカクにもボールは入らなければ意味がない。

 ベルギーはプレスの勢いでもデンマークに劣っていた。プレスには出ていくものの、反転する余裕は持たせる程度の距離しか詰められず。オフザボールの動きをサボらないデンマークにとって前進は難しくなかった。前半は保持も非保持もデンマークペースだった。

 後半に試合を一変させたのはデ・ブライネ。中盤に降りてくることができるデ・ブライネの登場で中盤のボールの預けどころを見つけることができるようになったベルギー。加えて、ルカクをサイドに逃がすことで前半よりも広い範囲で勝負できるように。同点ゴールはこの形から。ルカクの裏抜けから、前線に顔を出すところまで攻めあがったデ・ブライネが後方から追いついてきたトルカン・アザールにラストパス。同点に追いつく。

 さらに、デ・ブライネは決勝点も。エデン・アザール投入でアタッキングサードの質が上乗せしたベルギーはデンマークの守備を完全に崩す。デンマークはデ・ブライネの登場以降、どうしても押し返すことができずに自陣に釘付けになった。

 終盤はブライスワイトとダムスゴーの2人を軸に敵陣に迫るも、デンマークは最後の一崩しを上乗せすることができず。前半はデンマークペースだったが、デ・ブライネの登場で戦況が一変。アウェイの地で鮮やかな逆転劇を決めてみせた。

試合結果
デンマーク 1-2 ベルギー
パルケン・スタディオン
【得点者】
DEN:2′ ポウルセン
BEL:54′ トルカン・アザール, 70′ デ・ブライネ
主審:ビョルン・カイペルス

GS第3節 フィンランド戦

画像3

■埋められなかったデ・ブライネとのギャップ

 すでに突破を決めているベルギーに挑むのは引き分け以上でグループステージの突破が見えてくるフィンランド。ハムデン・パークで起こした奇跡をロシアの地でベルギー相手に起こす必要がある。

 当然というべきか試合の主導権を握ったのはベルギー。ポゼッションの局面では悠々とフィンランドを押し込み、じっくりを腰を据えて攻略する構えである。保持の局面ではフィンランドの5-3-2のサイドから攻め込む形。ボールサイドにCH、WB、WG、そしてCFのルカクの4枚が揃うことでサイドを打開するパス交換を行う。ルカクはボールサイドに顔を出す担当。押し込んだ局面では中央に留まるよりもサイドに流れることが多かった。

 同サイド攻略、詰まったらサイドチェンジという流れでベルギーの保持は進む。相手のスライドが間に合わないときはサイドのアタッカーの打開のチャンス。WGの個人技を生かす機会である。もちろん期待がかかるのはエデン・アザール。だが、この試合で広いスペースにおいてより存在感があったのは逆サイドのドク。サイドでの1対1においても、カウンターにおいても持ち上がる軽やかさでフィンランドを苦しめる。エデン・アザールより19歳の方が存在感があるというのは少し寂しい。

 ベルギーの話をもう少しすれば、全体的にややパスワークに軽さが足りないところ。オランダやスペインのような軽さはない分、切り返しの鋭さやスピードで一撃ずつ威力ある拳で殴っていくイメージ。これが決勝トーナメントでどっちに転がるかはわからない。もっとも、ベルギーはワールドカップの時からこんなイメージだったけど。

 フィンランドの攻め上がりは限られた機会においてのみ。直線的にロングカウンターに進む選択はベルギーのCB陣と正面衝突になってしまい厳しい。それよりは、左右に振りながら進んでいく方がベルギーの守備網をかいくぐるチャンスはあった。だが、高い位置からボールサイドに圧縮をかけ、即時奪回を狙うベルギーに対して逆サイドまで脱出する機会を創出することが出来ない。攻めあがれないながらもひとまず前半はベルギーを封じ、後半に望みをつないだ。

 後半の頭にはフィンランドは高い位置からの奇襲。敵陣に迫るが、ベルギーのCB陣を越えるもう一崩しを組むことが出来ず、クルトワの牙城を崩すには難しいミドルシュートに終始する。

 ベルギーにとってはトランジッションの機会があった方が好都合。前半のブロック崩しに焦れてフィンランドが前に出てきてくれたことにより、好機が転がってきた格好だ。

 フィンランドは中央を閉じてひとまずカウンターを対応しようとするが、問題となったのはデ・ブライネ。フィンランドの守備陣にとっては中央を閉じたつもりでも、デ・ブライネにとっては中央をかち割るスペースが空いている。一度目こそ、オフサイドで得点は認められなかったが、先制点後の2回目はこのスルーパスでの中央打開が炸裂する。

 デ・ブライネの間にあったギャップを埋められなかったフィンランド。ロシアの地でベルギーを攻勢を防ぎきることが出来ず、他会場の結果を祈る3位でグループステージを終えた。

試合結果
フィンランド 0-2 ベルギー
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
BEL:74′ フラデツキー(OG) 81′ ルカク
主審:フェリックス・ブリヒ

Round 16 ポルトガル戦

画像4

■展開にマッチする先制点

 立ち上がりにボールを保持したのはポルトガル。ショートパスを軸にボールを動かす。ベルギーは並び的には3-4-3気味なのだが、トップに入ったデ・ブライネはアンカーのパリーニャを監視する役割。攻撃においても中盤でボールを引き出しながらビルドアップに参加するので、実質的な役割は中盤だろう。中盤の枚数が合わせるマンマーク気味の対応である。

 ポルトガルの保持に対してベルギーは同サイドに圧縮気味に対応する。特にエデン・アザールがいる左サイドにおいては、DFラインのスライドも大きめ。ただし、ポルトガルのボールホルダーに対してチェックが甘くなることがあり、逆サイドへの展開をすることで大きく脱出することができている。担い手となっているのはレナト・サンチェス。ボールを引き出し、強いフィジカルでベルギーの中盤に体をぶち当てながら逆サイドにボールを流す。大会中に上り詰めた中盤の核は、この日も好調だった。

 ただ、彼以外のポルトガルの選手はそこまで横への展開が得意ではない様子。強引に縦につける場面も散見され、左に流した方がいいタイミングでも急ぐ時もあった。この辺りの展開の折り合いは割と個人によってばらけていた印象である。

 一方のベルギーにはデ・ブライネが縦横無尽に動くことで、中盤のマークを引きはがし、フリーになり局面を一気に進めるパスがある。デ・ブライネは相変わらずの射程距離の長さ。縦方向の精度は抜群で、ルカクを軸にポルトガルのDF陣と直接対決する状況を作り出せていた。

 均衡した展開の中で、1つスイッチが入ると『待ってました!!』といわんばかりにカウンター合戦が発動するのが面白い。ベルギーが縦に急げばロナウドを前に残すポルトガルがそこを狙って反撃など、少しのきっかけでダイナミックな展開のスイッチが入るのはなかなかである。先制点となったトルガン・アザールの豪快なミドルシュートはまさしくこの試合のオープニングゴールとしてふさわしいものだった。

 前半終了間際にリードしたベルギーだが、悲劇が起きたのはその直後。おそらく足首周辺を負傷してしまったデ・ブライネが途中交代をしてしまう。後半も一度は出場してみたものの、すぐにプレーを中断。この後のトーナメントやプレミアリーグ開幕に危ぶまれるところである。

 縦に相手を揺さぶれるデ・ブライネの不在と先制点を得たことで後半のベルギーはロングカウンターに専念する。デ・ブライネ不在のチームをアザールが牽引。全盛期のようなスピード豊かな突破こそ鳴りを潜めたものの、ボールを落ち着かせてファウルを得て進撃を食い止める一連はさすが。Jリーグファンに向けていえば川崎の家長のような働きであった。

そんなベルギーを見て、ポルトガルは勝負の交代に出る。ジョアン・フェリックスとブルーノ・フェルナンデスの2人を一気に投入し、攻撃への圧力を一気に高める。

 ポルトガルはエリア内での放り込みか、大外へのロングボールでサイドからラインを下げた状態でのエリア内での折り返しが攻撃の主なパターン。ラファエル・ゲレーロがポストを叩くなど、惜しい場面もなくもなかった。だが、ポルトガルは最後までゴールを割れず。フェリックスもブルーノ・フェルナンデスも決定的な働きができなかった。

人員もフォーメーションも変化をつけながら死の組を突破したポルトガルだったがここでストップ。前回王者はベスト16で大会を去ることとなった。

試合結果
ベルギー 1-0 ポルトガル
エスタディオ・ラ・カルトゥーハ
【得点者】
BEL:42′ T・アザール
主審:フェリックス・ブリヒ

Quarter-final イタリア戦

画像5

■カウンターを殴り返せるポゼッション

 『事実上の決勝戦』という看板もちらほらあった両チームの対戦。ベスト8に進出したチームのうち、ここまでの試合で全勝しているのはこの2チームだけである。

 立ち上がりから両チームの色はハッキリしていた。保持の時間帯が多かったのはイタリアの方。保持のイタリア、カウンターのベルギーという形で両チームの攻め手は明確だった。イタリアの4-3-3での保持に対してベルギーの3バックはWBが低い位置を取ることを選択。WBは最終ラインに入り横幅を取って守ることでイタリアの保持を撤退気味に受け止める選択をした。

 撤退の選択肢をベルギーが取ることができたのは、ロングカウンターというわかりやすい武器があったから。むしろ、被カウンターにおけるバックスの強度というのはわかりやすいイタリアの課題でもある。ベルギーの撤退+ロングカウンターというのはその課題を十分に突き付けることができる選択だった。

 実際にルカクが右サイドに流れるところから発動したロングカウンターは威力が十分。イタリアが積極的に高い位置を取るイタリアの左サイドの裏に付け込んだカウンターでベルギーはフィニッシュまでたどり着くことができた。

 この構図の試合の場合、保持側が攻めあぐねながらカウンターで沈むパターンはあるあるである。実際にベルギーのカウンターの一撃は重い。ドンナルンマが驚異的なセービングをしていなかったら先制していたいたのはおそらくベルギーの方だっただろう。

 だが、ベルギーがカウンターでイタリアを殴ったように、イタリアもまたベルギーをポゼッションで殴ったのがこの試合だった。ベルギーは3トップを前に残し、後方を5-2という形で受ける。イタリアでまず動いたのはIH。ヴェラッティとバレッラは比較的外側で受けることが多かった。

 イタリアのWGが外に張り、ベルギーのWBをピン止めしているため、こうなるとイタリアのIHに出ていかなくてはいけないのはベルギーのCH。ここを引っ張り出して中央を手薄にすることでイタリアの攻撃は始まる。ここにWGやSBのオーバーラップが絡んでくることでサイドを崩しきる。

 特にストロングだったのは左サイド。カットインできるインシーニェと大外は全て賄えるスピナッツォーラをヴェラッティが操る。おそらくティーレマンスは目が回るほど忙しかったはず。さらには逆サイドに展開された場合にはベルギーのCHはスライドしなければいけない。いくらヴィツェルとティーレマンスが優秀とはいえ、2枚で横幅を賄うのはほぼ無理である。

 イタリアの2得点はいずれも持ち味が出たもの。ポゼッションで高い位置まで持ち込み、即時奪回でのショートカウンターから仕留めたのが1点目。そして、2点目は釣りだしたティーレマンスが空けたスペースにインシーニェがカットインして決めきった。ベルギーは3人前に残すならば、少なくとも殴り合いには勝たねばならなかったが、前半から後手を踏むことになった。

 ベルギーは速攻では破壊力が十分のルカクとデ・ブライネが遅攻では不発。オフザボールの動きが少なく、イタリアをうまく乱すことができない。というわけで暴れ馬のドクが全てを担うことに。狭いスペースでのタッチがよくなってきたエデン・アザールが負傷していなければもう少しやりようはあったかもしれない。

 しかし、ドクの突破からPKで1点返して以降は沈黙したベルギー。ドクの守り方に徐々に慣れてきたディ・ロレンツォや細かく立ち位置を変えながらカバーにいそしむイタリアにはさすがにDNAを感じた。大会随一のハードパンチャーであるベルギーを後半は封じたイタリア。負傷し、大会絶望となったスピナッツォーラの分までてっぺんまで駆け上がりたいところだろう。

試合結果
ベルギー 1-2 イタリア
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
BEL:45+2‘(PK) ルカク
ITA:31‘ バレッラ, 44’ インシーニェ
主審:スラブコ・ビンチッチ

大会総括

画像6

■らしく勝って、らしく散る

 誰が相手だろうと一撃で死に至らしめる槍を持っている。しかし、その槍を振り下ろす前にはどうしても脇が空いてしまう。ベルギーをざっくりと形容するとそんなチームである。ヴィルモッツからマルティネスに監督が代わっても、タレント力をふんだんに使ったサッカーだったのは間違いない。

 初戦で苦しんだのはデ・ブライネの不在。ミス起因で先制点を取ったロシア戦は完勝だったものの、ボールを敵陣まで運ぶことができずにスマートに勝利を挙げたとはいいがたい。この大会では充実のシーズンを過ごしたティーレマンスを躍進するタレントとして予想していた有識者が何人かいた(俺もそう思ってた)けど、その目論見は外れることになる。後述するが、ベルギーの中盤はタスクオーバーで存在感を示すどころではなかった。

 デ・ブライネの登場で一変したのがデンマーク戦。立ち上がりから鬼気迫るプレスをかけたデンマークだったが、縦方向に自在に動くデ・ブライネの登場で加速が可能になると戦況がガラッと変わる。こちらはシーズンの好調さを維持したルカクに徐々にボールが通るようになり試合は一気に逆転をする。

 デ・ブライネの破壊力は続くフィンランド戦でも。この試合においても攻めあぐねていたベルギーだったが、彼にしか通せない隙間に縦パスを通してしまうのだから恐ろしい。EURO全体を見渡した時に後方からの持ちあがりとダイレクトな展開が多く、中盤が目立ちにくい大会になったと感じていたのだけど、デ・ブライネとモドリッチだけは別格。すごい。

 そのデ・ブライネが負傷で退いてしまったポルトガル戦で見事中核の役割を引きついたのがエデン・アザール。リードしている展開の中で、チームを無事に落ち着かせて手堅い逃げ切りに貢献した。

 しかし、個人がチームを救っていくスタイルはイタリア戦で限界を迎える。3トップの加速力からカウンターで先制点を獲れなかったのが全て。振り下ろした槍はドンナルンマに食い止められてしまう。すると、前残りする前線の穴をイタリアが保持で突くように。ボックスにいると堅いが、守備範囲が広くないベルギーの最終ラインはこの状況で押し上げられず。イタリアに間のスペースを自由に使われまくる。

 その穴を塞ぎに走らされたのがティーレマンスとヴィツェルのCH陣。とにかくこの代表では黒子。前のタレントと重ための後ろで開いたスペース潰しに大忙しという様相で、ティーレマンスはブレイクの隙間すら与えられなかった。

 最後の最後に頼ったのが新星のドクの単騎ドリブルというのも、いかにもこのベルギー代表っぽい。イタリアを下せるポテンシャルを持っているチームだが、ハードパンチが当たらなければ勝てないこともある。ベルギーらしく勝って、ベルギーらしく散るというスタイルに沿った大会を過ごしたチームだったように思う。

頑張った選手⇒ケビン・デ・ブライネ
 中盤受難の大会において、個の力で言えばベストに近いパフォーマンスをしたと思う。特にデンマーク戦の途中投入後の一変は大会を通じて一番効いた交代かもしれない。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次