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「アーセナルはギリトップハーフ」〜勝手にプレミア定点観測 総括編 part2〜

 地獄の始まりだ!!前編はこっち。

目次

【11位】アストンビラ

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16勝7分15敗/勝ち点55

■強固なセンターラインに欠けてしまった柱

 序盤戦の台風の目、その2。エバートンと共に開幕直後は絶好調。強豪が軒並みスタートダッシュを失敗する中で、鬼の居ぬ間にプレミアリーグを席捲して見せた。特に圧巻だったのは前年王者のリバプールをぺしゃんこにした7-2。朝起きてスコアを見た時、見間違いかと思ったよ。

 中心となったのは間違いなくグリーリッシュ。カウンターの旗手としても優秀なのだが、特筆すべきは静⇒動への初速。特にサイド攻撃におけるこの抑揚は絶品。相手と正対してにらみ合い、自らを追い越す選手を活用し一気に攻撃のスピードを上げて手早いクロスで仕留める。このタメのおかげで相手のボックス内は乱れ、高さがない速いクロスで得点を決めるのが黄金パターン。サイド攻略においてはプレミアでもトップクラスだった。

 後ろで踏ん張ったのはアーセナルからやってきたマルティネス。相変わらずのセービング力と前線への素早いフィードで特に前半戦はリーグトップクラスのパフォーマンスを見せた。

 気になったのは早い攻撃への耐性の低さと、ショートパスでの起点の作れなさ。センターラインがしっかりしている分、戻れれば堅いのだが、相手の攻め込みが早いと判断がぼやけてしまい、ガタガタのDFラインを攻略される様子は多く見られた。ビルドアップにおいてもミングスとマルティネスのフィードが軸になっており、前線のグリーリッシュという預けどころが怪我で離脱してからは苦しい戦いになった。

 そのセンターラインの部分では代えが効かない選手が多いのが気になった。マルティネス、コンサ、ミングス、マッギン、ルイス、ワトキンス、そしてグリーリッシュは今季のアストンビラで欠くことを全力で避けねばならない選手たち。彼らに依存した分、息切れするのは仕方ないと割り切らなければいけない部分が大きい。

 中心選手のほとんどは大きな怪我もなくシーズンを終えられたが、唯一グリーリッシュだけは長めの離脱をしたのが痛恨だった。終盤、グリーリッシュが戦列に復帰してからのトッテナム戦やチェルシー戦のパフォーマンスを見れば不在時が悔やまれるのは必然である。ワトキンスやトラオレも手前の局面を含めて、大きく貢献はしていたがグリーリッシュはほぼアストンビラそのもの。彼の負傷がブレーキになった分、ボトムハーフに沈む結果になったといっても過言ではないだろう。

MVP:ジャック・グリーリッシュ
 先発時の戦績は13勝3分8敗、先発不在時の戦績は3勝4分7敗と一目瞭然である。以前は売り出し中だった国産の若手がクラブの旗頭になるというのは他チームのファンから見ても感慨深いものがある。
他の候補⇒ジョン・マッギン、オリー・ワトキンス

【12位】ニューカッスル・ユナイテッド

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12勝9分17敗/勝ち点45

■エースとワンダーボーイの継投パターンを確立

 記事の便宜上、トップハーフとボトムハーフで分けてみたものの、実際の上と下の分岐点は勝ち点に10ほど開きがあるこの11位と12位の境目だろう。というわけでここからは欧州にも縁はなかったけど、下がアレだったから割とのんびりとした終盤戦を過ごしたチームである。

    ニューカッスルはオフには積極的な補強を敢行。ウィルソン、ルイス、ヘンドリックなどのプレミア経験のある実力者を引っ張ってきて、スカッドに厚みを持たせた。しかしながら、やっていることは基本的には昨シーズンの延長である。強い相手には5-4-1でベタ引きをして、たまに色気を出すときは4-4-2という使い分けがベース。特に4-4-2の時はウィルソンがしっかり計算できることもあり、攻撃が成り立つことが多かった。

   急にキャラ変をしたのが5節のマン・ユナイテッド戦。このあたりから急に保持頑張ろう!に舵を切りだしたのである。どうしたんだよ。というかマンチェスター・ユナイテッドにはボール持たせておけよ!というツッコミをよそに保持にこだわったまま、案の定カウンターで爆死した。

   その後も保持での試行錯誤は続き、結局年明けくらいからシェルビーをアンカーに用いて、インサイドハーフを軽い刑罰のレベルで走らせてスペースを埋めるという作戦に落ち着くことに。アルミロンがやたらこの位置で使われていたのは不服そうにしたせいで刑期が伸びたせいなのではと疑わざるを得ない。

   ただ、怪我人の多さを考慮すればシステムの固定に手間取ったのは情状酌量の余地がある。ドゥブラフカ、ラッセルズ、ヘイデンなど守備で軸になりそうな選手が軒並み目途が立たなかったのは大きな誤算だったに違いない。25試合以上先発しているフィールドプレイヤーがシェルビーとアルミロンの2人だけ。30試合まで引き上げると1人もいなくなるというのは窮状を物語っているといえる。あと、怪我しすぎて交代を全部負傷で使った上に9人で戦った試合とかもあった。

   それでも出ればやる男である人間機関車サン=マクシマンで行けるところまで行ってこい!からの、リリーフエースのウィロックという謎の継投パターンを後半戦に確立。で何とか勝ち点を積み上げ、終盤は残留争いとは無縁で過ごすことが出来た。イギリスにはないはずの昭和という概念を体現するブルースは今年も残留ミッション達成である。2021年もブルースでなんとかなったぞー!!!

MVP:アラン・サン=マクシマン
    シュートが入らなくて怪我をたくさんするウェアタイン地方のロナウド。前半戦とか半分くらい負傷で交代していた気がするんだけど、なんか無理してやっていないか心配である。
他の候補⇒カラム・ウィルソン

【13位】ウォルバーハンプトン

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12勝9分17敗/勝ち点45

■WGへの負荷を取り除けず

 序盤戦は悪くなかったといえる。躍進した昨シーズンほどの堅さや鋭さを感じることはあまり多くなかったけど、成績としては安定したものを残すことが出来た。とりわけいい出来だったのは7節のクリスタルパレス戦。相手からのプレッシャーがほぼなかったこともあり、ルベン・ネベスの展開力がさえわたり、持ち味であるWGの突破を存分に生かすことが出来た。

 暗雲が立ち込めたのは10節のアーセナル戦。この試合でヒメネスが頭蓋骨骨折というシーズンを棒に振る欠場をしてしまったのが大きかった。これによってWGの突破からクロスでヒメネスに合わせるというわかっていても止められないパターンが消滅してしまうことに。

 代わりにトップを務めることが多かったファビオ・シルバも頑張ってはいたが、さすがに18歳にヒメネスの役割を丸投げということ自体がだいぶ無理がある。彼はどっしりワントップというよりも、少しサイドに流れつつ2トップの一角としてプレーするくらいがちょうどいいのかもしれない。冬に加入したウィリアン・ジョゼとコンビを組んだ2トップのオプションとかの方がやりやすそうに見えた。

    CFの代役に目処が立たなかったことで負荷が増えたのはWG陣。軸となったのはネト。おそらく、絶好調のシーズンだったのだろう。誰が相手であろうと1人抜いてクロスを上げるくらいは余裕だったように見えた。だが、相手が内側のマークを捨て、外へのマークをきつくする分、状況は2,3人抜かなければクロスまでたどり着かないほどタフになってしまった。

     前半戦は猛威を振るったポデンスも終盤は負傷の影響か出番が減少。モウチーニョやネベスのように昨季輝いた選手たちの存在感も軒並み低下。最終ラインも踏ん張りが効かないケースが多く、パトリシオに助けてもらうシーンは数多く見られた。

    ヒメネス負傷から始まったスパイラルからは結局なかなか抜け出すことが出来ず。最後の綱であるアダマ・トラオレも攻守に重いスカッドではエース不在のモヤモヤ感を吹き飛ばすのは難しかったようだ。

MVP:ペドロ・ネト
    まさしく獅子奮迅の働きであった。さすがにフィニッシュまでとはいかない場面は増えてきたものの、2人ついてくるくらいなら平気で何とかしてくれる場面もあった。
他の候補⇒ルイ・パトリシオ

【14位】クリスタル・パレス

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12勝8分18敗/勝ち点44

■リーダーが定まらないバックス

 お馴染みのザハとゆかいな仲間たち。クリスタル・パレスを見ていて思うのは、相変わらずザハは相手選手と審判に文句ばっかり言っているのだけど、周りの選手たちが明らかに彼に慣れてきたなぁということ。なんかもう『また始まったわ』くらいの感じのスタンスで見ているのが面白い。

 序盤戦はいろんな試行錯誤が見えた。特にCHの人選で色を付けるのがお決まりのパターン。ミリボイェビッチやマッカーシー、マッカーサーというおなじみの面々に加えて、よりビルドアップや攻撃で貢献ができるリーデヴァルドを重用するように。

 しかし、リーデヴァルドは割とすぐにCHとしては自陣に穴をあけまくるフリーダムな機能が搭載されていることが判明。ボールを持たれると、中央にできた穴にガンガン侵入されることが発覚。オプションの域を出るのは難しかったといわざるを得ない。序盤戦はタウンゼントあたりも好調だったけど、しりすぼみになったため通年で計算が立つ攻撃の手段がなかなか見つからなかった。

    というわけで結局は塩振ったザハこそが至高というのが今年のパレスである。ただ、例年と違ったのはザハが優秀な後輩を得たことである。エゼはチャラ系の見た目とは裏腹にしっかりと汗をかいてボールを運ぶことが出来るタイプ。エースのパシリを立派に務めることが出来る選手として重宝した。あと、終盤戦はインサイドハーフを試されたりもしたが、リーデヴァルドよりはまともに守備出来ることも分かった。

 とはいえベンテケも前線の軸として安定した攻撃はともかく、守備での上積みがなければこれ以上の順位に行くのは難しいだろう。ケイヒルで当座をとりつくろったり、クヤテをコンバートしている場合ではなく、新たなDFリーダーを確立しなければいけないのである。冬に余っている前線にマテタを取ってきた挙句、予想通りほぼ使わないというわかり切ったムーブを移籍市場でかましている暇はないのである。

 来季は新監督が就任。ホジソンが何とか守り抜いたプレミアという地位を来季もキープすることが出来るだろうか。

MVP: エベレチ・エゼ
 
終盤戦の大けがが残念。復帰後のプレースタイルに影響がないといいのだけど。
他の候補⇒ウィルフレッド・ザハ

【15位】サウサンプトン

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12勝7分19敗/勝ち点43

■脱せなかったジェットコースター・ムーブ

 台風の目兄弟の末っ子。序盤戦はエバートンやアストンビラのように『今年は一味違うんやで!』感を出していたし、11月には暫定ではあるものの、2日間だけ首位も経験したりした。

    特に序盤戦で際立っていたのは攻撃のメカニズム。SHが大きく内に絞り最終ラインからの縦パスの受け手になる。楔を受けると2トップと短い距離でパス交換を行い、誰かが抜け出して相手の最終ラインを一気に押し下げる。イングス、アダムス、アームストロング、ウォルコットの4人はいずれも万能性が高く、抜け出しやポストはだれがやっても一定の効果を生むことが出来たのも大きかった。フィニッシュだけはイングスがいなくなると精度は割引ではあるが。

    内が彼らならば外にはバートランドとウォーカー=ピータース。特にウォーカー=ピータースの攻撃での存在感は抜群。外だけでなく内に切り込むドリブルで前線の裏抜けを誘発することが出来た。縦パスで違いを見せたのはヴェスターゴーアだ。率直にこれだけ精度の高い縦パスを通せるとは知らなかった。

    ただ、最も躍進を支えたのは間違いなくウォード=プラウズ。キャリアハイのシーズンを送った主将は攻守の貢献だけでなく、プレースキックというSSRのスキルでチームに上乗せをもたらした。

    だが、惜しむらくは11人の替えがほぼ効かなかったこと。特に入れ替えながらでもやりくりが出来る前とは違って、最終ラインは選手を入れ替えるとガクッと質が落ちてしまう。

    そして、出続けているメンバーのコンディションもシーズン進行とともに低下。特に顕著だったのはヴェスターゴーア。開幕当初は鈍足ながらギリギリな判断で相手を加速させる前につぶすことで素早く攻撃に転じることが出来ていたが、徐々に出足が悪くなり単にハイラインで取り残されるだけに成り下がってしまった。

    攻守の歯車がかみ合わなくなった後半戦は急失速。今年もハーゼンヒュットルのチームはジェットコースターのようなシーズンを送ることになってしまった。

MVP:ジェームズ・ウォード=プラウズ
    今季のプレミアナンバーワンプレースキッカー。まるでPKかのように直接FKを決める姿は神々しささえあった。
他の候補⇒ダニー・イングス

【16位】ブライトン

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9勝14分15敗/勝ち点41

■完成しないケーキ作り

 仮にプレミアリーグがビルドアップの美しさで順位を決めるリーグだとしたら間違いなくブライトンにはCLの出場権がもたらされるだろう。

    ビルドアップの軸であるDF陣は深さを作りながら相手のプレスを怖がることなく受け止めることが出来るし、長いレンジのパスもお手の物。相手の動きを見ながら空いているスペースに長短を問わないパスを自在に飛ばすことが出来る。中盤もビスマを中心に持ち運びもパスの組み立てもどちらも準備ができている。

    前線のアタッカーはスペースメイクが得意。FWがサイドに流れればそのスペースにはWBやIHが入り込んでいくという流れになっている。ビルドアップから中押しまでは非常に整っており、リーグで最も規律あるボールの運び方をするチームといっても過言ではない。

   ではなぜこんな順位にいるのか。ひとえにゴールが決まらないからである。理屈抜きでまぁ点が入らない。後は押し込むだけという場面でシュートがとにかく決まらない。ウェルベックもモペイもスペースメイクは一流なのだが、シュートだけはひたすらポンコツである。かといって2列目からそれを補える選手は不在。トロサールとかも全然決まらない。シュートさえ決まればトップハーフにしてもおかしくないのだけども。ケーキをデコレーションして、運ぶ途中で転んで台無しにする。そんなことの繰り返しである。

 ビルドアップに跳ね返しにバックスは割と踏ん張ったと思う。ウェブスター、ダンク、ホワイトあたりは特に。そして、巨人バーンのSB起用。ターゲットマンとしてバンバン放り込むのかと思いきや、普通にワンツーでエリア内突撃とかやるのでめっちゃキャラが立っている。

    個性的な選手たちとメカニズムを浸透するのに長けた指揮官。このチームに足らないのはあとはゴールだけである。

MVP:ベン・ホワイト
   
万能性の鬼。右サイドに加えて中盤もこなし、加入初年度から獅子奮迅の活躍を見せた。
他の候補⇒イヴ・ビスマ
 

【17位】バーンリー

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10勝9分19敗/勝ち点39

■間に合った歯車の噛み合わせ

    序盤戦は非常に苦しんだ。降格してしまった3チームと共に『未勝利カルテット』を結成。第9節のクリスタル・パレス戦まで勝利はお預けと例年以上にハードな立ち上がりのシーズンとなった。

 原因の1つは間延びした4-4-2ブロックだろう。以前までのコンパクトさはどこへやら。ゆるゆるのブロックでは単純に跳ね返すというバーンリーの哲学を体現することはまず無理である。そこにもともとの貧打がかけ合わさり、未勝利の沼にハマっていった。

 風向きが変わったのはCBのベン・ミーが帰還してから。タルコウスキ、ポープとのトライアングルで最後尾を固めると、徐々に本来のソリッドなバーンリーが帰ってくるようになった。

 さらに今年は、じわっと違う一面を見せた試合もあった。彼らはショートパスをつなぐ風習はあまりないが、プレッシャーをかけられなければ、悠々と長いボールを蹴ることが出来ることが判明。特に中盤のマクニールあたりはスペースを与えれば、持ち上がるスキルも蹴るスキルも有している。スペースを与えたくない相手だろう。スパーズのような同じくスペースが大好物でカウンターの上位互換的なチームには殴られてしまうけども。

 もう1つの違う一面はハイプレス。機を見てハイプレスを繰り出すスタンスが今までのバーンリーに比べると多いように思えた。さすがにシティ相手にはからっきしだったが、生半可なスキルしか持たないバックラインは勢い十分のプレスに苦しんだ。トゥヘル就任間もないチェルシーにも敗れはしたが、彼らもプレスは嫌がっていたように見えた。

 終盤にはストライカーも好調に。ウッドは後半戦はエースとしての地位も確立。ニュージーランド出身の選手として、プレミアリーグで初めてのハットトリックも達成した。

 終盤になって攻守がかみ合ったことで後続とは完全に差がついてしまった印象。谷があっても、盛り返して山を作る部分で優位に立ち、最後は危なげなく残留の権利を勝ち取った。

MVP:クリス・ウッド
 MVPは迷ったけどより意外性があるこちらで。バーンリーのFWらしくキープしてよし、競り合ってよしの強さにプレスを怠らない献身性と得点力がかけ合わさり、後半戦はエースとして君臨した。
他の候補⇒ベン・ミー

【18位】フルハム

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5勝13分20敗/勝ち点28

■理屈も理不尽もない

    ようこそここからが地獄です。15-16シーズン以来のプレミアリーグの挑戦となったが、残念ながら1年でチャンピオンシップに逆戻りをすることになった。

 序盤戦から苦しいシーズンになることは明らかだった。ローン主体で多くの有名選手を獲得したこともあり、開幕直後はまずは戦力のスクリーニングに時間を費やしていた印象である。

 ただ、その戦力をどう生かすか?の部分がなかなか定まらなかった。典型的だったのはミトロビッチ。力強さが魅力なのに本人はやたらサイドに流れるし、周りも周りでクロスさえ上げておけばいい場面でクロスを上げてこないというちぐはぐさ。周りも本人もミトロビッチの能力をどう生かしたらいいかで悩んでいた様子。序盤戦はボールを運ぶ手段はほぼルックマンのドリブル一択だった。

 難しかったのは理不尽な勝ち点や我慢しての一刺しでの勝利というのは全く期待できなかったこと。攻撃陣には理不尽さはなく、ルックマンのドリブルは1人で攻撃を完結するほどの破壊力はない。加えて、ドリブルする距離が長くなればなるほど、周りを活かす余裕がなくなるので、ちゃんとゴールは遠ざかる。すなわち、しっかりと相手を押し込まないと攻撃は成り立たないのである。この手段を模索するのに苦労した。

 加えて、ローラインの守備ブロックの耐久度にも懸念はあった。アダラバイオやアンデルセンは跳ね返しを黙々とやる試合もあったが、基本的にはバーンリーのバックスみたいに跳ね返すストレス慣れしている感じはしなかった。なので、それを90分続けるとか数試合単位で行う作戦の中枢に据えるとかは無理があった。

 それでもパーカーの用兵、あるいは試合途中の采配で押し込める時間、引き込まなくていい時間を1分でも1秒でも伸ばしていか努力は見られた。その結果、終盤にニューカッスルの背中をとらえた時は逆転残留の目もあると思った。

 だが、終盤に待っていた強豪との連戦にはことごとく歯が立たず、ニューカッスルの様子をうかがい知るまでもなく白旗。最後は18位をなんとか守れるかのプライドの勝負となってしまった。

 レンタル組が大半ということで、来季は組み直しが必須だろう。夏の移籍市場から忙しいシーズンになりそう。願わくば、次の昇格の暁にはパーカーのやりたいことがもっと強く感じられるチームでこの舞台に帰ってきてほしいと感じる1年間だった。

MVP:アルフォンス・アレオラ
    アーセナルとの開幕戦で真っ先に補強すべきと思ったのはGK。就活の機会を求めてやってきたアレオラは特に前半戦はスーパーセーブを連発。時に淡白なミスをするときにはめちゃめちゃ傭兵感があったけど、基本的にはとても頼りになる守護神だった。

【19位】ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン

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5勝11分22敗/勝ち点26

■新チェルシーキラー、爆誕

    プレミア屈指の見た目が武闘派であるスラベン・ビリッチと共にプレミアの地に舞い戻ってきたウェストブロム。どうやら2部では割と保持に傾倒していた部分はあるらしい。1部でもたまにその片鱗を見せることはあった。高めのライン設定とか、後ろからのゆったりとしたボール保持とか。

 だが、その武器がプレミアレベルだったかといわれると微妙なところ。後方からの保持の仕組みやら、保持におけるプレッシャーへの対応などはなかなか苦しんでいたように思う。バックラインも高く上げた分、しっかりと裏を取られがち。最終ラインのスピード不足は顕著で、強気のライン設定のツケをしっかり払わされていた格好である。ジョンストンが最後の砦となり体を張る場面ばかりが目立っていた。

 前はペレイラのドリブルという確かな武器があったのだが、そこに至るまでの手段がないというのがウェストブロムの状況だった。というわけでビリッチはシーズン半ばに解任。シティと引き分けた直後に監督交代という、無駄にシティに恥をかかせる形で呼んだのはみんな大好きビックサムである。

 そんなビックサムと共に冬の移籍市場でやってきたのはディアーニュ。でかい、動きが緩慢、でかい、めっちゃでかいなどプレミア下位×ビックサム要素満点のFWは瞬く間にチームにフィット。前線の起点としての役割は120点だったけど、降格が決まってからは使われないので多分レンタル元に帰っていくのだろうけど。

 もう1つ印象的だったのは謎のチェルシーキラーぶり。得点力には慢性的に苦しんでいるはずなのだが、チェルシー相手には2戦で8点。特にロビンソンは今季の5点のうち、4点をチェルシー戦でたたき出すという謎の相性の良さを発揮している。チェルシーファンにザラっとした感情を残し、来季はチャンピオンシップでリスタートだ。

MVP:マティアス・ペレイラ
   インパクトではディアーニュだけど、年間を通しての一貫性でいうとジョンストンと彼の2択。迷ったけど、前線で孤軍奮闘したこちらをチョイス。

他の候補⇒サム・ジョンストン

【20位】シェフィールド・ユナイテッド

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7勝2分29敗/勝ち点23

■不甲斐ないFW陣が足を引っ張る

 昨シーズンの躍進が一転、序盤戦から断トツ最下位を一気に走り抜けてしまい圧倒的な一番下を独走したままシーズンを終えてしまった。

    開幕当初はそこまで内容は悪くないように思えたのだが、勝てない時期が続くと徐々にその成績に足を引っ張られるように内容もトーンダウン。ワイドのCBを絡めた攻撃も、人数をかけた撤退守備も昨シーズンのいい状態を支えた武器が2,3回りこじんまりしてしまった感は否めず、徐々に順位に見合ったチームに成り下がってしまった印象だ。

    特に深刻だったのは得点力不足。年間20得点で残留できるチームがいるのならば見てみたいというレベルである。前年度の約半分だ。FW陣が深刻で孤軍奮闘したエースのマクゴールドリックの8得点の次はワンポイント起用の35歳のベテランのシャープの3得点。その他のFWは軒並み1点という体たらくだった。

    もっとも期待外れだったのは夏にクラブレコードでリバプールから加入したブリュースター。終始、何を期待されているのかがわからないプレーが続き、冬過ぎには徐々にプレータイムをもらえなくなるように。終わってみれば結局無得点でシーズンを駆け抜けてしまった。

    大体の試合のパターンは5-3-2⇒4-3-3にビハインドの試合後半に前線を増やすオプションも試したものの、追いつけなかったという流れに収束。シーズン途中には補強の方針の対立でチームを昇格まで導いてきた功労者のワイルダーが辞任。踏んだり蹴ったりなシーズンとなってしまった。

 体制の変化も含めて、非常にダメージが大きな1年になってしまったことは間違いない。ワイルダーが断固として5人交代制を拒否したように選手層も厚みがあるとはいえないチーム。来季は悪い循環を断ち切れる1年になるといいのだが。

MVP:ダビド・マクゴールドリック
    ほかにいません。

全部振り返ったマン。

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