突き詰めた結果、トランジッションが差を生み出す
互いに保持には腕に覚えがあるという両軍。立ち上がりは共にCBには過剰にプレッシャーをかけずに中盤をマンツーで噛み合わせるという似たような守備対応となった。
というわけで保持側がどのように対応するか?というところからスタートしたこの試合。先に手応えを持ってボールを動かすことができたのはスペイン。ファビアン・ルイスのサイドフローから左サイドのプレスの切れ目を繋ぐことで敵陣に侵入していく。
クロアチアはモドリッチがプレスのスイッチを入れて4-4-2気味になっていたがファビアン、ロドリ、ペドリの中盤の細かな移動でこれを上回る。逆にスペインがプレスをかける局面になった場合はIHが出ていくことでプレスをかけ切ることができており、スペインは保持でも非保持でも主導権を握る形となった。
クロアチアはそれでもボールを取り戻すことで時間を作りにいく。あくまでポゼッションからというのは彼らなりの矜持なのだろう。より大きく動きながらスペインのプレスの判断を乱していく。コバチッチ、ブロゾビッチの降りる動きからボールを落ち着け、少しずつポゼッションを取り戻すようになる。
ボールを自分のものにすることにフォーカスした結果、この試合ではプレッシングが先鋭化。徐々に互いにオールコートマンツーのような強気な守り方が見えるようになる。そうした中で増えてきたのはトランジッション。この流れにうまく乗ったのはスペイン。先制点の場面ではククレジャの跳ね返しからロドリ→ファビアンと繋ぎながら最後はモラタが仕留める形に。最終的にはボールを自分のものにする手段であるトランジッションから差を分けることになるという現象はなかなかに興味深かった。
2点目は好調のファビアンの切り返しでモドリッチを外すところから。陣地回復の過程を紐解くとククレジャの素早いスローインが前進の起点になっているのは興味深い。1点目も2点目も始点はククレジャである。
ボールを再び落ち着けることに成功したクロアチアだが、スペインは前半追加タイムに容赦なくセットプレーから3点目。前半で試合の行方を決定づける。
後半、クロアチアは強気のプレスで勝負を仕掛けていく。しかしながら、スペインはこれをすぐに平定。試合を落ち着かせることに成功する。
次節を見据えつつ強度を上げていきたいクロアチアはメンバーを変えながら強度をキープしつつ、高い位置から捕まえることをやめない。左に入ったペリシッチが好調なパフォーマンスを見せたのは後半のクロアチアにとっては救いだった。
遅ばせながら鋭さを伴うサイド攻撃のクオリティを見せたクロアチア。押し込む流れからのハイプレスでPKをゲット。しかし、このPKは決められず、その後の押し込むアクションもオフサイドでノーゴール判定。一矢報いることも許されない。
スペインも縦への鋭さには途中交代のオルモでクオリティを維持。早い展開には最後まで食らいついて行ったのが印象的だった。
試合はそのままスコアが動かずに終了。前半で試合を決めたスペインが開幕戦で勝利を飾った。
ひとこと
保持を突き詰めた結果、トランジッションが決め手になるのはなかなか興味深かったし、前線にそうした展開にフィットする鋭さを有するWGを置いているスペイン側がどこまでそうしたことに確信犯だったのかは気になるところである。トランジッションの観点ではヤバイ状況の時からチームを救えるロドリがいるかいないかも大きかった。あと、ストーリー的に書けなかったけど両軍のGKのセービングは素晴らしかった。
試合結果
2024.6.15
EURO 2024
グループB 第1節
スペイン 3-0 クロアチア
オリンピア・シュタディオン
【得点者】
ESP:29′ モラタ, 32′ ファビアン, 45+2′ カルバハル
主審:マイケル・オリバー